大天使、着任す   作:NTK

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十六話 侵攻開始

青井「どういう事なんだこれは‼︎」

 

青井は密会用に用意した部屋でヴェサリウスに怒鳴りつけた。

 

青井「私はアイオワを破壊しろとは言ったが、施設までやれとは言っていない!あの施設は我が社にとって貴重な取引相手でもだったんだぞ!」

 

取引相手とは言いつつも、その取引相手が造った艦娘を破壊しろとのたまう青井の矛盾した発言にヴェサリウスは呆れながら応える。

 

ヴェサリウス「我々は慈善事業でやっているのではない。不穏な芽はきちんと根まで摘むべきでしょう?」

 

青井「もういい‼︎今後貴様と手は組まん‼︎」

 

足早に去っていこうおする青井にヴェサリウスは呟く。

 

ヴェサリウス「そうか、こちらももう君は用済みだからな。」

 

青井「何?」

 

振り向いた青井は次の瞬間、ヴェサリウスから放たれた一発のCIWSに胸を撃たれ、即死した。

彼の死体を見下ろしながらヴェサリウスは薄く笑った。

 

ヴェサリウス「馬鹿な男だ。本気で自分の会社を経済回復したければ艦娘と協力すればいいものを、何故我々に手を貸した?結局目先の事に視野を奪われて本質が見えなかったんだよ、君は。」

 

ヴェサリウスは死体の側にICレコーダーを置いた。

 

ヴェサリウス「これには今までの密会の内容が全て録音されている。銃声を起こしたから警察が来るのは時間の問題だ。これを警察が調べたら、深海棲艦と繋がっていたとして君の会社は倒産することだろう。今まで利用させてもらってありがとう。」

 

そう言い残しヴェサリウスは立ち去っていった。彼女の思惑通り、警察が現れ、ICレコーダーを確認した警察は大本営に連絡、その後彼の会社は倒産した。

 

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アークエンジェル達三人は野井と共に大本営に行き、ザフト艦、及びそれらが所有するモビルスーツについての特徴を伝えていた。

それを聞いた大本営の士官らは蒼白になった。アークエンジェルのいた世界の技術力は既に体感済みであったが、それらが敵となってくるとなると慌てざるを得ない。アークエンジェル達は彼らに、ザフトのモビルスーツの多くは艦の砲撃で撃破できる事から艦娘でも倒せない事はないと伝えた。また、ザフト艦はナスカ級など一部の艦を除けば速力はそれ程高くはない事も伝えた。

報告を終えたアークエンジェル達は部屋を出る。すると、外村ともう一人、老年の男がいた。その姿を見て三人は驚愕した。

 

三人「ハ、ハルバートン提督⁉︎」

 

彼の姿はかつて地球連合軍第八艦隊の司令官であり、メネラオスと共に散ったデュエイン・ハルバートンにそっくりであった。

 

外村「君達、何か勘違いしてないか?この人は外村春馬(はるま)准将。俺の親父だ。」

 

春馬「初めまして、息子の紹介の通り、私は外村春馬だ。よろしく。」

 

AA「あ、いえ、こちらこそ…。」

 

野井「それで、何故准将がここに?」

 

春馬「今後について話し合いをな。では、失礼する。」

 

そう言い外村親子は部屋に入っていく。

 

AA「そういえばドミニオン、何でハルバートン提督の事を知ってるの?」

 

ドミニオン「私のデータベース内にあの人の事が載っていたの。」

 

メネラオス「それにしても、よく似ている…。あの親子は同じ鎮守府にいるのか?」

 

野井「いや、龍がブルネイ方面で、春馬准将は確か、トラック泊地の総司令官だ。ここに来るなんて、よっぽど重要な事なんだろう。」

 

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ボズゴロフ「ヴェサリウス、いつになったらオペレーション・ティターンを発動するつもりだ?もう既に三日は経っているぞ?」

 

ある島にてボズゴロフ、ピートリー、デズモンド、ヴェサリウスが集まり、ボズゴロフがヴェサリウスに問いかけていた。

 

ヴェサリウス「まあ待てボズゴロフ。今頃大本営は我々への対応について各鎮守府から提督を集めている。もちろん、攻撃目標のトラック泊地の提督もな。」

 

ピートリー「ならば、指揮官がいない今が好機なのでは?」

 

ピートリーの言う事はもっともである。指揮をするものがいないのなら、より敵を叩きやすい。だがヴェサリウスの考えは違った。

 

ヴェサリウス「それもそうだが、逆に言えば今攻撃をしても指揮官は無事という事だ。そうなれば奴らに反撃の機会を与える事にもなる。有能な指揮官が生き残っていれば我々への対抗策を考える者も現れるかもしれぬ。ゆえに、攻撃はそいつらが戻って来る頃を見計らって行う。会議の内容と距離から予想して四日後が妥当だろう。」

 

ピートリー「なるほど、そういう事か。」

 

ヴェサリウス「納得したならいい。では、改めて確認しよう。」

 

ヴェサリウスは地図を広げる。そこにはトラック泊地の勢力圏にある鎮守府の位置が記されていた。

 

ヴェサリウス「まず総司令部だが、勢力圏の中央部ではなく、この日本に一番近い鎮守府だ。そこから他十一の鎮守府が防衛ラインを築き、他の鎮守府がある程度の間隔で設置されている。数は百五。規模は小さいものでも七十前後の艦娘を所有している。防衛ラインの鎮守府となれば二百はいるだろうな。」

 

するとデズモンドがある疑問を口にする。

 

デズモンド「待て。確か艦娘の種類は二百もないと前に聞いたが?」

 

ヴェサリウス「艦娘達は建造などで全く同じ姿をした艦娘が何人も着任している鎮守府も少なくない。」

 

デズモンド「全く同じ姿?まるでクローンだな。」

 

そう言った瞬間、彼女はヴェサリウスに砲塔を突きつけられていた。

 

ヴェサリウス「……今のはどういう意味だデズモンド?」

 

恐ろしく低く、殺気を込めて発したその声にデズモンドだけでなく、他の者も背筋に悪寒が走った。デズモンドは慌てて自らの失言に弁明した。

 

デズモンド「ま、待てヴェサリウス!そういうつもりじゃなかったんだ!」

 

ヴェサリウス「…わかった。だが、次は許さんぞ。…では、続きを話そう。」

 

先ほどの殺気を失くし、何でもなかったかのようにヴェサリウスは続けた。

 

ヴェサリウス「それで、我々が攻め落とすのは防衛ラインとその少し手前にある四つの鎮守府を除いた八十九の鎮守府を第一攻撃目標とする。残りは後で叩く。」

 

ボズゴロフ「八十九⁉︎そんなに一気に陥せるのか?」

 

ヴェサリウス「軍事基地とはいえ、鎮守府には機銃砲座や砲台といった艦娘以外の防衛手段はない。言わば兵舎を攻撃するのと同義だ。それに、八割程戦力を削いだら一部の同志や深海棲艦に占拠させて進軍する。そもそも一日で八十九も陥す訳ではないからな。一日で半分程陥せれば良い方だ。」

 

ピートリー「生き残った艦娘や人達はどうする?」

 

ヴェサリウス「それも深海棲艦に伝えてある。人間は皆殺し、艦娘達は抵抗すれば殺し、そうでなければ生け捕りにしろと。利用できるかもしれないからな。」

 

恐ろしい事を言うヴェサリウスだが、それには誰も反応しなかった。彼女達は人間、もといナチュラルに多かれ少なかれ怨みはある。しかもこの世界にはコーディネーターはいないので気兼ねなくやれる。

 

ヴェサリウス「では四日後の明朝に仕掛ける。それまで各員は準備を整えておけ。特にピートリー級やレセップス級陸上戦艦は水上移動を覚えておく事だ。スケイルモーターは水上でも使えるらしいが、実際に使った者は少ないだろう。」

 

ピートリー「それなら心配ない。」

 

デズモンド「既に我々は全員水上移動をマスターした。」

 

ヴェサリウス「ならいい。」

 

彼女達は海底へと戻っていく。四日後に起こす惨劇の準備をするために。

 

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鎮守府

 

メネラオスは一人自室にて考え込んでいた。ザフトが現れた今、自分は戦力になれるのかと。

彼女は過去に自らが指揮する第八艦隊が数で劣っていたはずのヴェサリウスらとそのモビルスーツ隊に壊滅したことを思い出していた。そして自身もガモフと共に大気圏に散った。艦娘となって生まれ変わったとはいえ、モビルアーマーしか持っていない自分は太刀打ちできるのかが心配であった。

 

メネラオス(いや、違うな…。)

 

メネラオスは自分の考えを否定した。

 

メネラオス(私はまたあの時のように守れたはずのものを守れずに失って死んでしまうのが怖いだけだ。私とメビウスはモビルスーツには無力でも、アークエンジェルや長門達を守れるだけの力はある。あの時のような事はさせはしない…!)

 

その時扉をノックする音が聞こえ、扉を開けると長門の姿があった。

 

メネラオス「長門?どうしたんだ?」

 

長門「いやな、お前が昔の事で思い悩んでいないか気になってな。「よくわかったな。」同じ旗艦を務めた身だ。なんとなくわかるさ。入っていいか?」

 

メネラオス「ああ、構わないが。」

 

長門を部屋に入れ、椅子に座らせると、長門は少しして口を開いた。

 

長門「確かメネラオスは仲間と共に散ったんだよな?「ああ。」私はその逆だ。あの戦争で生き残ってしまった。そして私はアメリカに引き渡されて、ある作戦(・・・・)を受けて沈んだ。今でもたまに夢に出る。」

 

メネラオス「…。」

 

長門の艦としての経歴は以前資料で読んでいたのでメネラオスはそれについては深く触れず、黙って聞いていた。

 

長門「その事を抜きにしても私は後悔していた。仲間が次々に沈んでいったなか、旗艦である私が生き残ってしまった事に。同じ旗艦だった大和も沈んだのに、何故生き残ったのだろう、それならいっそ仲間と共に沈んだ方が良かったと思っていた。だが、お前の言葉を聞いてそれは変わったよ。」

 

メネラオス「え?」

 

長門「お前は仲間と共に沈んだことを後悔していた。それを聞いて思ったんだ。もし私が戦場で沈んでも同じように後悔していたと。だから艦娘となったこの人生では、悔いのない方を選ぼうと決めた。だからお前も、悔いのない選択をしろ。それが私の言える事だ。」

 

メネラオス「長門…!ありがとう、参考になった。お礼に、今度時間があれば奢るよ。」

 

長門「私は結構食べる方だぞ?」

 

メネラオス「構わないさ。」

 

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四日後、午前三時五十分

 

ヴェサリウス達は深海棲艦と共に目標の鎮守府まで進軍していた。彼女達は部隊を二十程に分け、それぞれの場所へと向かっていた。彼女達ザフト艦七人前後に対し、六十程の深海棲艦が付いていた。その数にヴェサリウスは感嘆していた。

 

ヴェサリウス「これ程の数を付けてくれるとは、感謝する。」

 

戦艦水鬼「コレクライ我々ノ全戦力ノ四割ニモ満タナイ。元々我々ハ、タマニ反攻作戦ヲ行ウクライデ基本ハ占拠シタ場所ノ防衛ヲ行ッテイル。戦力ハ自然ト多クナル。」

 

その言葉に頷くとヴェサリウスは各員に連絡を告げる。

 

ヴェサリウス〈総員、目標まで20kmに達したらモビルスーツを発進させよ!〉

 

その合図を受け、ザフト艦達はそれぞれモビルスーツを発進させた。

ボズゴロフ級は大型ドライチューブからグーン、ゾノ、アッシュなどの水中モビルスーツを、垂直リニアカタパルトからはディン、バビ、グフなどの飛行モビルスーツやグゥルにのったジンやゲイツ、ゲイツR、ザクなどを発進させた。

ピートリー級やレセップス級はさすがにバクゥやザウート、カズウートなどの陸上に特化したモビルスーツは発進できないが、ジンオーカーが発進し、ドミニオンのダガー隊と同じように水上を移動していった。

次々に発進完了の連絡が来るなか、ヴェサリウスは次の指令を出す。

 

ヴェサリウス〈総員、モビルスーツの発進が完了次第、対空ミサイルやVLSの発射準備開始!発射目標は鎮守府全域!モビルスーツ隊で発射できる武器があるものはその準備を指示せよ!オペレーション・ティターンの発動と共に攻撃を開始する!〉

 

発射態勢に移りながら、それぞれの場所でボズゴロフ、ピートリー、デズモンドが檄を飛ばしていた。

 

ボズゴロフ〈我々ボズゴロフ級は、ザフト軍唯一の水上艦だ!その誇りと威信にかけてこの戦い、必ず勝利に導くぞ!〉

 

ピートリー〈いいか!我々は陸上戦艦だ!水上での戦いはイレギュラーであり、我々の真価は陸上にある!〉

 

デズモンド〈それゆえに、陸上にたどり着くまでに沈むことは許されない!我々が沈むならその場所は水上ではない!陸上だ!〉

 

それぞれの檄を聞きながら、ヴェサリウスは最終指令を出した。

 

ヴェサリウス〈ではーー〇四〇〇(マルヨンマルマル)、オペレーション・ティターン…発動‼︎〉

 

ヴェサリウスの合図と同時に、ザフト艦達は攻撃を開始した。その時刻は奇しくも、オペレーション・スピリットブレイクが発動した時刻と同じであった。




なんか長門とメネラオスにフラグが立った気がする…。

ついに始まったオペレーション・ティターン。
スピリットブレイクは失敗したが、この作戦は果たして…?
それでは次回をお楽しみに。
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