足柄「見た目なんて、ただのこけ脅しよ!」
三機のケルベロスバクゥハウンドに砲撃をする足柄だが、普通のバクゥより速い速度でそれを避けた。そして二つある小型の頭部からビームを放つ。次々に砲台が吹き飛ばされ、うち一発が足柄の足に命中し、彼女は膝をついた。
足柄「痛っ…きゃあ!」
ケルベロスバクゥハウンドの体当たりを受け、足柄は数メートルほど飛ばされた。全身に鈍い痛みを感じながら起き上がろうとしたが、すぐに取り押さえられてしまった。彼女を見下ろす三つの目を見て足柄は恐怖した。その頭部から二つのビームファングを生やしたのを見た時、自分がどうなるかを想像してしまったからだ。ゆらりと三機は頭部を上に上げた。
足柄「ひっ⁉︎……あ、ああ…‼︎」
ケルベロスバクゥハウンドが頭部を振り下ろすのと、足柄が絶叫を上げたのはほぼ同時であった。
那智「足柄っ⁉︎…こいつ!」
湾岸部で戦っていた那智はすでに絶命しているのにもかかわらず足柄への攻撃をやめないケルベロスバクゥハウンドに砲撃しようとしたが、海面から浮上したゾノのクローに頭を掴まれ、フォノンメーザーの接射を受け犠牲者のリストに加わった。
それがきっかけになったかはわからないが、一旦押し返していた艦娘達の状況が再び窮地に陥った。海上の防衛隊は壊滅し、その穴を抜けたモビルスーツ隊が地上への攻撃を開始する。その様子を見ていた提督は決断を下した。
提督「…現時点をもって鎮守府を放棄する!総員、負傷者を連れて退避せよ!」
指令を受け、提督の意図を理解した艦娘達は逃げるための戦闘に切り替えた。陸上でも憲兵や職員らが避難を始めていたが、憲兵達に一機のグフが向かっていった。
憲兵「うああ!来るなっ来るなぁ!」
憲兵は銃を撃つが、そんなものでモビルスーツを倒せるはずがない。メインカメラや関節部を狙えば多少動きは止められたかもしれないがパニック状態で撃ったそれは装甲に火花を散らすだけに終わり、憲兵達は一人残らず斬り殺されていった。一方で艦娘達に対しては極力急所を狙わず足などを撃って逃げられないようにして鹵獲をしていた。
提督はというと自身も避難を始めていた。鎮守府を放棄し、多くの命を散らせた責任を取るために。死んで責任を取るのは簡単である。が、それでは自分の指揮の所為で死んでいった者達に対して顔向けができない。生きてその罪を一生償うのが彼の考えであった。ようやく外に出れた彼だが、彼の目の前には銃を向けたシグーがいた。
提督「なっ⁉︎」
シグーは彼の脳、心臓、肝臓を撃ち抜き、彼が罪を償う機会を奪った。やかて艦娘達も退路を塞がれ、鎮守府は陥落した。
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再び人間狩りを始めるなか、セントヘレンズはヴェサリウスに状況を報告していた。
セントヘレンズ〈第二目標は攻略できたが、同志を三人失った。モビルスーツも大量に撃墜された。深海棲艦もそれなりの被害がでてる。〉
ヴェサリウス〈こちらも二人やられた。他も同様だ。〉
セントヘレンズ〈ヴェサリウス、本当にこの戦力でトラックを全て陥せるのか?〉
全ての部隊に数人ほどやられたとなれば、全部で四十人以上の被害がでている事になる。このままではトラックを全て陥す頃にはほとんど生き残っているザフト艦はいなくなってしまう。セントヘレンズはそう危惧していたがその問題はヴェサリウスによって解決した。
ヴェサリウス〈それなら問題ない、ついさっき連絡が入った。アレが成功したそうだ。こちらも既に実行している、工廠の施設は無事と言っていたな?そこにデータを送るからそちらも実行してくれ。〉
セントヘレンズ〈本当か⁉︎…わかった、すぐに実行する。〉
工廠に向かうともうデータは送られていた。セントヘレンズは建造施設の計器を操作し、既存のデータを消去した後、データに書いてあった値を入力する。
セントヘレンズ「よし、資材を投入しろ!」
ザフト艦が資材を投入し、セントヘレンズは建造開始のボタンを押す。するとタイマーが表示されたが、躊躇わずバーナーを使い高速建造を行った。
タイマーがゼロになり、建造ドッグの扉が開いた。中から現れたのは、ボズゴロフ級潜水空母の姿だった。
セントヘレンズ「おお…!」
すると別のボズゴロフ級が近寄り、報告した。
ボズゴロフ級「隊長、開発の方も成功しました。」
彼女が連れて来たのはジンやザクなどのモビルスーツやグゥルであった。つまり、ザフト艦の建造と、モビルスーツやグゥルなどの開発に成功したという事であった。
世界や装甲素材が違うのだから、当初はそれらは不可能だろうと思っていたが、ヴェサリウスは出来ると踏んでいた。そう思うのにはある根拠があった。
まず建造だが、本当に大戦時の艦が艦娘になっているのなら、七十年近く前の艦の武器が近年現れた深海棲艦に有効なのが腑に落ちない。その点から考えて建造には何かしらの常識を超えた技術があると考えた。また、深雪やグラーフのように大戦時に参加していない、もしくは建造されていない艦娘もいることから存在すらしない異世界の艦も造れる可能性が高いとも考えた。
開発については、開発を行うにあたり鋼材、燃料、弾薬、ボーキサイトの四つの資材を使うのだが、そのどれもが最低値がある。例えば燃料や弾薬を使わない電探を開発するのにも燃料や弾薬を投入しなくてはいけない。また、艦載機のタイヤのゴムやキャノピーのガラスなど、明らかに投入した資材とは違う素材ができる事から電力で動き、素材も違うモビルスーツが造れてもおかしくはない。そして実際それができた。
セントヘレンズ〈うまくいったぞヴェサリウス。これで戦力の低下は解決できる。〉
ヴェサリウス〈それなら資材の量によるが十数人ほど建造してくれ。モビルスーツも載せる分以外にも占領地の防衛用として配備するよう頼む。資材が足らなければ周辺海域から回収すればいいだろう。〉
セントヘレンズ〈そういえば、捕虜の艦娘はどうする?〉
ヴェサリウス〈前に渡したリストに載っていない艦娘は解体して構わん。その後で
セントヘレンズ〈…本当にやるのか?だが
ヴェサリウス〈ユニウス戦役を経験した君達にとって苦い思い出のある機体なのはわかるが、味方になれば心強い。失敗したら処分すればいい話しだ。〉
セントヘレンズ〈…了解。〉
通信を終えたヴェサリウスは後ろを見る。そこにいたのは進軍途中に偶然見つけたローラシア級数人の姿であった。
ヴェサリウス「君達が
ローラシア級「はっ!」
その場から離れるローラシア級を見た後ヴェサリウスは怪しく微笑んだ。彼女が望んでいた物の一つが手に入ったからだ。
ヴェサリウス(
その後ヴェサリウスは通信室に向かう。すると既に通信の復旧が終わっていた。
ヴェサリウス「通信先は全てのトラック鎮守府で間違いないな?」
ピートリー級「はい、いつでも出来ます。しかし、何故全てに通信を?」
ヴェサリウス「士気向上の為だ。」
ヴェサリウスはマイクに近づき、一息ついた後、通信を始めた。
ヴェサリウス〈全てのトラック鎮守府にいる人間に告ぐ、私はナスカ級高速モビルスーツ駆逐艦、ヴェサリウス。ザフト及び深海棲艦連合軍の総司令官だ。〉
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トラック鎮守府総司令部
春馬「何だこの通信は⁉︎」
第六十六鎮守府から発せられた通信に総司令部は騒然となっていた。
通信士「総司令!この通信、トラック鎮守府全てに発せられています!」
彼らの騒ぎをよそにヴェサリウスは通信を続ける。以下がその内容である。
ヴェサリウス〈我々は今日の〇四〇〇に君達の鎮守府に攻撃を仕掛け、この第六十六鎮守府から第百五鎮守府までの四十の鎮守府を制圧、占拠した。また、そこにいた人間は我々が全て始末した。我々の現在の目的はトラック鎮守府全ての制圧だ。最終的な目的はまだ言えない。だが我々も手痛い被害を受け、進軍を一時中断している。だがこれは我々が君達、もとい艦娘を甘く見ていたゆえの慢心が生んだ被害だ。次からはそうはいかない。本気で君達を潰すつもりでやる。君達が取る行動は三つある。一つ目は鎮守府に留まり、進軍してくる我々を迎え撃つ行動。二つ目は逆に我々のもとに攻め込み占拠された鎮守府を奪還する行動。最後におとなしく鎮守府を放棄し我々に明け渡す行動だ。どれを取っても構わないが、鎮守府を放棄しても、我々は君達を追撃する。だが戦うにしても忘れるな、移動時間があったとはいえ、いまの時刻は一五五〇。半日足らずで四十の鎮守府を制圧するくらいの戦力は我々は持っている。現在我々の戦力は少し低下してるが君達を迎撃するくらいならできる。明日の〇一〇〇に戦力を整え再進撃をするつもりだ。これは君達に対する挑戦だ。君達の判断は任せる。〉
通信が切れると騒ぎはさらに大きくなった。
士官A「四十の鎮守府が制圧されただと⁉︎そんな馬鹿な事が⁉︎」
士官B「いや、それなら今まで連絡がつかないのも頷ける…だとすれば奴らは本当にここまで攻め込む気か⁉︎」
士官C「それに、ザフトとはこの前大本営で言っていた…。」
春馬「全員落ち着け!」
全員が静かになったのを見計らい、春馬は話を始めた。
春馬「もしこの事が本当なら今までにない非常事態だ。さっきの通信は録音してあるか?」
通信士「ええ、録音してあります。」
春馬「ならすぐに大本営に録音と共に状況を伝えてくれ。そして各鎮守府には始めに二十の鎮守府が連絡不能になった事から、第四十六鎮守府から第六十五鎮守府までの鎮守府に迎撃の準備を命じてくれ!だが戦闘中に危険と判断したら艦娘を含めた全員を撤退するようにも言ってくれ!生きていれば必ず反撃のチャンスはある!他の鎮守府にも同様の連絡を頼む!」
士官ら「はっ!」
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戦艦水鬼「イイノカ?奴ラニコチラノ状況ヲ伝エテモ?」
ヴェサリウス「奴らにわからせる必要がある。どんな準備をしても我々には無力だとな。」
戦艦水鬼「ダガ、アークエンジェルトカ言ウノハオ前達ト同ジ世界ノ者ナノダロウ?」
ヴェサリウス「それも問題ない。青井の情報によればアークエンジェルはモビルスーツを持っていない。姉妹艦のドミニオンが持ってるらしいがこの数相手では無駄だ。そう思うとあの男はもう少し生かしても良かったな。」
戦艦水鬼「ナルホド。シカシ意外ダナ。オ前ガ駆逐艦ダトハナ。」
ヴェサリウス「人は見かけによらないと言う言葉があるだろう?まあ私は人ではないがな。さて、そろそろ実験を始めるか。」
ヴェサリウスは工廠に向かう。そこには奇妙な残骸が置いてあった。それは彼女が偶然にも発見し、開発による量産も出来ていた。ヴェサリウスが興味を持ったのはそれが持つ装備である。かつてザフト軍を苦しめたそれが、今手元にある。虫の化け物のように見えるそれは、連合が開発したモビルアーマー、ゲルズゲーの下部ユニットであった。
もちろんこれだけでは動かない事はヴェサリウスは承知している。ゆえに
ヴェサリウス(向こうの世界の物とこちらの世界の者…適合するかはわからないが、やってみる価値はある。その為に艦娘をわざわざ生け捕りにしたのだから。)
敵軍の物であった物を利用する事に関してはヴェサリウスは何も感じない。敵軍の物を使いたくなければヘリオポリスでの作戦はそもそもしなかっただろう。利用できる物は何であれ使うのが彼女の主義であった。
ヴェサリウス(アークエンジェル…私達を止められるものなら止めてみろ…!)
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ある海域にて四人の艦娘が海を駆けていた。和服をモチーフにしたデザインの服を着ているが、一人は黄色と黒色の服、残りの三人は青と白の服を着ていた。進軍するザフト艦達をみた四人のうち三人はかつての戦友、アークエンジェルと合流する為に行動しているが黄色と黒色の彼女は違った。彼女はアークエンジェルと面識がないし、ネームシップたる彼女は妹達三人とは根底の主が違う。だが、かと言って一人だけで行動する訳にもいかないので一緒にいるだけである。
アークエンジェルがこの世界にいる事は彼女達は直感でわかった。何故なら自分達とアークエンジェルは同じ国で造られ、自分達は彼女のタイプシップだった。いわば親戚に近い者である為何となく存在がわかったのだ。
二度も国を焼かれた彼女達は駆けていく、この世界でもそのような悲劇を起こさない為に。
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別の海域にも二人の艦娘が佇んでいた。一人は青と白の服を、もう一人は薄紫色の服を着ていた。
彼女達は存在そのものが罪であった。彼女達の母体となったアークエンジェルは光の道を歩んでいたのに対し、自分達は影の道を歩み、影の中で死んでいった。数え切れない罪を犯していった。ゆえに艦娘として生まれ変わった今、償い切れないその罪を償う為、アークエンジェルの元に行こうとしていた。彼女達もまたアークエンジェルの親戚に近い者であり、アークエンジェルの存在が感じ取れていた。
彼女達は海を駆け始めていったが、いつの間にかその姿は煙のように消えていった。
結構足柄さんの身を心配する人多かったですね。
まあ、予想通りでしたが。
さて、増えていくザフト軍、そしてヴェサリウスが行おうとしている実験とは?
最後に出てきた六人の艦娘、誰かわかりますでしょうか?
では次回をお楽しみに。