大天使、着任す   作:NTK

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二十二話 悪夢再開/女神推参

メネラオス「ピースメーカー隊、だと…!」

 

ヴェサリウス「そうさ、その威力でボアズを宇宙の塵にし、プラントを攻撃しようとしたピースメーカー隊さ。洗脳が出来たら、真っ先に運用する。そうなれば例え全ての鎮守府が総攻撃をしても勝てる。それどころか地上を全て焼き尽くす事もーー」

 

ヴェサリウスに向けて光条が飛んできたが、それはキマイラによって防がれた。攻撃をしたのはメネラオスだったが、様子がいつもと違っていた。

今までの凛々しい雰囲気はなく、ただただ怒りのみを表現した顔をしていた。

 

メネラオス「………だ。」

 

ヴェサリウス「ん?何だ?」

 

メネラオス「妹達はどこだ‼︎答えろヴェサリウス‼︎」

 

そう言いメネラオスは突撃するが、ガモフによってそれは阻まれた。

 

ガモフ「そう熱くなるなメネラオス。せっかく妹達に会えるんだ、もっと喜べばどうだ?ただし、敵としてだがね。」

 

メネラオス「黙れ‼︎ガモフ、貴様はどうなんだ⁉︎お前達ザフトが忌み嫌っていた核を使う事に対して、何も思わないのか⁉︎」

 

ガモフ「思わないさ。」

 

メネラオス「何⁉︎」

 

予想外の答えにたじろくメネラオスに対し、ガモフは淡々と続けた。

 

ガモフ「知っての通り、私はあの日任務中にお前と共に沈んだ、言わばクルーゼ隊の面汚しだ。この世界に生まれ変わり、あてもなく彷徨っていたところで隊長と再会した。隊長はそんな私を再び仲間として認めてくれた。だから私とその恩義に報いて、ザフトだ連合だの関係無しに、隊長の為にこの身を捧げると誓った!その為なら核を使おうとこの場で自爆を命じられようとも喜んでそれに応じるだけの覚悟はある‼︎」

 

メネラオス「なっ…⁉︎」

 

ヴェサリウス「その心意気はいいが、今君に死なれると困る。ここはキマイラ共に任せて、退くぞガモフ。」

 

ガモフ「はっ‼︎」

 

ガモフはそのまま水面にエネルギー砲を放つ。高温で熱せられた水面は一気に蒸発し、その水蒸気で一時的に視界が塞がれる。やがて視界が晴れるとそこには二体のキマイラがいるだけだった。

 

メネラオス「くそっ…‼︎」

 

イズモ「とにかく、まずはこいつらをなんとかしなくてはな。」

 

ガーディ・ルー「これは形こそ違いますが、ゲルズゲーと見ていいでしょう。陽電子リフレクターを装備した機体ですから、懐に潜り込めばどうにかできますが、艦娘を素体にしてますから弱点が同じかはわかりかねません。」

 

イズモ「対処法がわかればいい。アークエンジェル達は左を頼む。私らは右をやる。いくぞ愚妹共!」

 

その合図を始め、イズモ姉妹は春雨タイプのキマイラに、アークエンジェル達は神通タイプのキマイラに向かっていった。二人のキマイラは手にした銃器や前脚部のビーム砲、さらには魚雷にて応戦する。イズモ達は牽制用に攻撃するが、やはり陽電子リフレクターに弾かれる。

 

イズモ「なるほど、これは厄介だな。隙があれば懐に潜り込めるのだが…!」

 

すると、キマイラーー春雨がこちらに向けて言葉を発し始めた。

 

春雨「そこ……の人…。私…が、動き…を…と…めます…。その隙…に、はや…く…!」

 

イズモ「お前、いったい何を…?まさか、艦娘としての意識がまだ残っているのか⁉︎」

 

驚愕するイズモをよそに春雨は続けた。

 

春雨「もう…誰も……死なせたく…ないの…。だから…お願い…しま…す。」

 

意識が残っていたという事はこれまでに艦娘を殺しているときも自覚していたのだろう。おそらくは命令を拒否できないよう何か細工をされているのだろう。かつての仲間を自分の意思とは関係無しに自分で殺す苦痛は相当なものだろう。それらを理解した上でイズモは確認をとった。

 

イズモ「…本当にいいんだな?」

 

春雨「はい…!」

 

イズモ「わかった…!」

 

言うなりイズモは急接近し、春雨に近づく。春雨はイズモを迎撃する意思を抑えているのか、銃口を向けては逸らしてを繰り返していた。やがてイズモは春雨の上半身の付け根にゴッドフリートを押し付けた。そして躊躇いなくそれを発射した。光条は春雨と下部ユニットを切り離すように分断し、爆破した。バランスを失った春雨の上半身をイズモは抱きとめた。するとどうだろう、彼女の体は憑き物が落ちたかのように深海棲艦の姿から元の姿に戻り始めていた。

 

春雨「…ありが…とう…。」

 

微笑みながらそう言った彼女は穏やかな表情で永遠の眠りについた。それとほぼ同時にアークエンジェル達も神通の下部ユニットを破壊し、苦しみから救ったのであった。

 

イズモ「……戦う理由が一つ増えたな。アークエンジェル、奴らを必ず止めるぞ。」

 

AA「ええ…!」

 

その後、避難完了の連絡を受け、彼女達は鎮守府へと帰っていった。

 

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元トラック総司令部にてセントヘレンズ、ニーゴランゴ、バクリィー、デズモンドは悩んでいた。自分達が核を使う事に対して、果たしてそれは正しいのかと。

 

デズモンド「ヴェサリウスは本当に核を使うつもりなのだろうか?」

 

セントヘレンズ「ほぼ間違いなく使うだろうな。あいつの目的は人類の抹殺だ。それには核が必要不可欠だ。しかも、この世界にはコーディネーターはいないからそれはかなり楽になる。」

 

ニーゴランゴ「でも、核を使うなんて…!」

 

よく考えれば彼女の信奉するクルーゼはザフトの身でありながらコーディネーターをも抹殺しようとし、情報を連合に売った男である。そのクルーゼが搭乗し、その意思を継ぐ彼女についていった自分達が愚かだったのかもしれない。セントヘレンズ達はユニウス戦役を生きた者達であり、前大戦の悲惨さを知り、核を特に嫌っていた。

当初彼女達がヴェサリウスから伝えられた事は核は見つけてもなるべく使わないとの事だったから彼女を信用し、ついていったのであった。

悩む彼女達に向けて冷ややかな声を言う者がいた、

 

ハーシェル「何を悩んでいる?躊躇う必要などどこにもない。ナチュラルどもなどさっさと核の火で殺し尽くせばよいのだ!」

 

フーリエ「当然の事だろう?」

 

セントヘレンズ「…お前達は何故そんな事が言える?前の大戦の事はお前達も知ってるだろう?」

 

ハーシェル「ああ知っているさ。あの後ユニウス条約で核とミラージュコロイドの使用禁止となった……だがそれは五年と経たずに破られた‼︎」

 

ダンッ‼︎とハーシェルは床を勢いよく踏み鳴らし、怒りを露わにした。

 

ハーシェル「私とフーリエを殺したガーディ・ルーには何が装備されていた⁉︎ミラージュコロイドだ‼︎奴らは条約を破り、我々からモビルスーツを奪った‼︎ニーゴランゴ、貴様を沈めたアビスは元々は我々のものだろう?」

 

ニーゴランゴ「ええ、そうよ。だけど、モビルスーツを奪った事なら私達だってあるわ。それはお互い様よ。」

 

フーリエ「…確かにな。だが問題は奴らが条約を易々と破棄した事にある‼︎私ら二人だって、二度とあんな悲惨な戦いをしたくないと思っていた。ユニウス条約で平和になると信じていた。だがそんな思いを奴らは踏みにじって、ミラージュコロイドだけでなく、核をも使ってきたではないか‼︎」

 

ハーシェル「だからこの世界に生まれ変わった時に誓ったのだ、二度と奴らを信用してはならぬと‼︎奴らも、その味方をする艦娘も、一人残らず抹殺すべきだと‼︎それを今更何を怖気づいている?貴様らだってこの世界で散々奴らを殺しただろう?モビルスーツで殺すのか核で殺すかの違いだ。汚染されても我々の世界じゃないんだ、気にする事はない。どちらにせよ、もう核攻撃は止められないさ。」

 

そう言い二人は去っていった。彼女達の言う事はもっともである。ブレイクザワールドの後、ザフトは地球に支援をしたのだが、コーディネーターが犯人だとわかると掌を返して敵意を露わにしていた。それにハーシェル達はユニウス戦役での最初の犠牲者だ、気持ちはわからなくない。だが、一つだけ言える事がある。

 

セントヘレンズ「艦娘も抹殺だと…?私達だって、艦娘(・・)なんだぞ…!」

 

セントヘレンズ達の中で何かが変わりつつあった瞬間であった。

 

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鎮守府

 

まず心配したのは野井の処分だったのだが、彼の采配が無ければ大本営は陥されていた可能性もあったため、特に処分はなかった。だが、そんな吉報をも打ち消す程、アークエンジェル達の情報は大きかった。

 

野井「核、だって…⁉︎」

 

イズモ「ああ、この世界の核がどんな威力かは知らないが、おそらくそれを遥かに上回る威力を持つことは間違いない。なんせアガメムノン級四隻分のメビウス全機の攻撃で宇宙要塞が完全破壊されるくらいだ。地上で使えば地形が変わるのは言うまでもない。」

 

メネラオス「だから、奴らが核を使う前に止めなくては…!」

 

長門「待て、止めると言うことはピースメーカー隊を倒すと言うことなのだろう?それに関しては、その、メネラオスは…?」

 

長門の言いたい事はわかる。ピースメーカー隊を倒す事は、メネラオスの姉妹を殺す事になる。それをメネラオスはどう思っているかであった。当のメネラオスは拳を固く握り締めて答えた。

 

メネラオス「…大丈夫だ、覚悟はしている。もう二度と、妹達にあんな事はさせたくない。洗脳が解けるようならそうしたいが、できなければその時は…頼む…!」

 

長門「…!わかった。」

 

その拳から血が滲んでいるのを見た長門はメネラオスの覚悟を知り、頷いた。

 

メネラオス(ドゥーリットル達…せっかく蘇ったお前達を殺すよう命じたこの姉を…許してくれ…!)

 

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ヴェサリウス「良くやったボズゴロフ。これ(・・)があれば充分だ。ピースメーカー隊は?」

 

ボズゴロフ「そちらも洗脳済みです。」

 

ヴェサリウス「そうか、なら全員に伝えろ。明朝に仕掛ける(・・・・)とな。」

 

ボズゴロフ「ようやくですね。」

 

ヴェサリウス「ああ、私はこの日が来るのをずっと楽しみにしていたよ。」

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翌朝 ラバウル総司令部

 

春馬「何もかも本当にすまない。避難の受け入れだけでなく、手当までさせてもらうとは。」

 

総司令官「友人のよしみだ、これくらい当然さ。にしても…手痛くやられたものだな。」

 

春馬「ああ…。私は総司令官失格だ…沢山の部下を死なせてしまった…。未知の敵とはいえ、これではあいつらも浮かばれない。」

 

総司令官「春馬…。」

 

その時、警報が辺りに鳴り響き、ザフト襲来の知らせが執務室に届いた。

 

総司令官「やはり来たか…!総員、配置について迎撃せよ!」

 

春馬「奴らは私を生かすつもりはないみたいだな。」

 

彼の予想は間違ってはいない。ザフトの目的はトラック鎮守府の残党狩りもあるがもう一つ、別の目的もあった。

やがて戦闘が始まったが、その戦い方に春馬達は違和感を感じとった。

部隊を展開せず、ただ一点のみに集中して突破しようとする戦い方をとっていたのだ。挟撃を加えられるリスクを物ともせずまるで何かの通り道を作るように進撃するザフト軍に艦娘達も疑問に思ったが、すぐにその謎は解けるようになる。

ある程度道が出来たところでヴェサリウス、ヘルダーリン、ホイジンガーの三人が前に出て来た。三人の手には長大なミサイルランチャーを持っていた。三人はそれぞれ安全装置を解除し、構えた。

 

ヴェサリウス「さぁ、この世界の歴史に刻まれる事を、始めようかーーー発射‼︎」

 

それを合図に三人はトリガーを引き、ミサイルを発射した。そのミサイルの先端には、核を表すマークが刻み込まれていた。

 

秋月「あれはミサイル?させない‼︎」

 

近づくミサイルに気づいた秋月は撃ち落そうと高射装置を放つが、中々当たらなかった。どちらにせよ発射されてしまったそれ(・・)はもう誰にも止められない。

だが、それ(・・)が執務室に直撃する寸前に高射砲が命中した。

 

 

 

 

 

瞬間、辺りは光に包まれた。

執務室、工廠、宿舎にそれぞれ命中したそれーー核ミサイルから発生した衝撃波と熱波は春馬やラバウル総司令官、さらには艦娘とモビルスーツを木の葉のように吹き飛ばし、蒸発させ、塵一つ残さず焼き尽くした。そして上空には巨大なキノコ雲が発生した。

幸か不幸かヴェサリウス達の側にいて生き残り、その光景を見て呆然としている艦娘を仕留めていく中、ヴェサリウスは哄笑を上げていた。

 

ヴェサリウス「クフフ、ハーハハハ‼︎クルーゼ、見ていますか?これが貴方に送る、核の花束です‼︎ハハハハハ‼︎」

 

今この瞬間、ラバウル総司令部は地図上から完全に消え去ったのであった。

 

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キノコ雲はアークエンジェル達のいる鎮守府にも小さくだが見えていた。それを見た彼女達は膝から崩れ落ちた。

 

メネラオス「くそっ‼︎間に合わなかったか…‼︎」

 

AA「何てことを…‼︎」

 

当然それは外村のいる鎮守府にも見えていた。外村はそれを見て絶望した顔を浮かべていた。

 

外村「そんな…!親父……親父ぃぃーーーっ‼︎」

 

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ザフト本拠地(旧トラック鎮守府総司令部)

 

核攻撃の知らせを受けセントヘレンズ達は苦渋の表情を浮かべた。

 

バクリィー「とうとうやってしまったか…!」

 

デズモンド「これじゃあヤキンの繰り返しじゃないか!」

 

そんな中、セントヘレンズは静かに口を開いた。

 

セントヘレンズ「みんな、聞いてくれ。私は、

 

 

 

軍を抜けて、アークエンジェル達と一緒に戦う。お前達はどうする?」

 

彼女の発言に一同は驚いたが、すぐに全員が頷いた。

 

セントヘレンズ「決まりだな。今夜決行する。ただ逃げる訳じゃない。ある程度被害を出させてから逃げるぞ。」

 

ニーゴランゴ「でも、どうするの?仮に被害を出させても追いつかれたら意味ないわ…⁉︎まさか?」

 

セントヘレンズ「そうだ、彼女(・・)に協力してもらう。」

 

デズモンド「しかし、協力してくれるのか?」

 

セントヘレンズ「わからない。でも、それしか方法はない。」

 

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彼女は牢屋にいた。ザフトの身であったが、ヴェサリウスのやり方に異を唱えヴェサリウスとの協力を拒んだ為にこの牢に閉じ込められていたのだ。脱走しようにも周りはザフト艦だらけで一人では脱走は困難であった。

そして核攻撃の知らせを聞いて彼女は憤りを感じ、無理だとわかっていても脱走を今夜決行すると決めたのであった。

 

?(裏切り者だと罵られても、こんな事、絶対に許す訳にはいかない‼︎例え私一人でも戦うわ‼︎)

 

そう思い彼女ーーーミネルバは夜を待ち、牢屋を睨みつけていた。




ついに放たれた核。離反を決意するセントヘレンズ達。
そしてミネルバ推参。
彼女達はアークエンジェルと合流できるのか?ヴェサリウスの野望を止める事はできるのか?
では次回を楽しみに。
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