それでは本編どうぞ。
二十三話 脱走
ラバウルへの核攻撃を終えたヴェサリウス達は帰路に着く途中、戦艦水鬼と合流した。
戦艦水鬼「サスガ核攻撃ダナ。凄マジイ威力ダ。ソノ力ガアレバ我々ハトウトウ地上ヲ…!」
ヴェサリウス「ああ、そうだな。」
そしてヴェサリウスはある指令を下した。
ヴェサリウス〈全軍、『プランB』に移れ。〉
次の瞬間、戦艦水鬼は腹部に熱い感覚がよぎった。見ると見ると彼女はいつの間にか発艦していたブリッツのビームサーベルによって貫かれていた。
戦艦水鬼「ガハッ⁉︎ヴェサリウス、一体…何ヲ…⁉︎」
ヴェサリウス「簡単な話だ。仲間の量産ができ、核を手に入れた今、君らとの協力は無意味になったんだ。プランBとは、不要な君ら深海棲艦の処分の事だ。今頃占拠地でも処分が行われてるだろうよ。」
戦艦水鬼「ヴェサリウス、貴様ァ…‼︎」
彼女の怒りが届く前にブリッツは右腕を振り上げ、彼女の上半身を縦に両断した。そしてその亡骸が沈んでいくのを確認すると再びヴェサリウスは帰路に戻っていった。
ヴェサリウス(さて、次はアークエンジェル達の始末だ。それはガモフに任せるか。それと、今日は本部に戻らず近くの占拠地に留まるか。
そう思いヴェサリウスは本部にいるガモフへと連絡を始めたのであった。
ヴェサリウス〈ガモフ、一部の部隊を連れて本部を離れた後、夜中に仕掛けろ。〉
ガモフ〈了解。〉
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鎮守府
野井「はい…はい…わかりました。」
通信を終えた野井はアークエンジェル達に向き直った。
AA「それで、大本営はなんと?」
野井「明日の正午、うちと呉、佐世保、ショートランド、ブルネイ、パラオの全ての鎮守府でトラックを総攻撃しろとの事だ。他の鎮守府は万一の為に備えるそうだ。」
メネラオス「やはりそうなるか…。」
イズモ「だがこの戦い、勝てなければ我々、ひいてはこの世界の明日はないぞ。激戦になるのは間違いない。もしかすれば我々の内、誰かが死ぬかもしれぬ。」
野井「……アークエンジェル、今すぐみんなを大広間に集めてくれ。」
AA「わかりました。」
十分後、大広間へ全艦娘が集まると野井は壇上に上がり、艦娘達に告げた。
野井「君達も知っての通り今朝、ラバウル総司令部がザフトの核攻撃を受け、消滅した。それで先ほど大本営より、明日に複数の鎮守府で総攻撃を行いザフトを撃滅せよと指令がきた。これは今までのどんな大規模作戦よりも過酷なものだと思う。轟沈どころか、沈む身体すら残らない激戦になるだろう。そこでだ、今から軍を退役したい者はこの後僕のところまで来てくれ。退役を許可する。」
その言葉にその場はざわつくが、気にせず野井は続けた。
野井「死にたくない者、戦いたくない者は遠慮せず来てくれ。その事に関して僕は何も咎めないし咎める者を僕は許さない。それでも戦う事を選んだらこれだけは守って欲しい。この戦いが負けられない事は知っているが、どうか、生きて帰って来てくれ…!それが、僕の願いだ。」
その後の鎮守府内の空気は異様な雰囲気に包まれていた。艦娘達はそれぞれ、姉妹や仲間と話し合い、これからどうするかを決めていた。
金剛「比叡達はどうしますカ?」
比叡「私はお姉様と一緒ならどこへでもついていきます!」
榛名「榛名は戦います…!もう、
霧島「敵の力が未知数な以上、勝てる確率はわかりません。ですが、最初から諦めたくありません!」
金剛「…なら、みんな一緒に戦いまショウ‼︎」
三人「はい‼︎」
金剛達が戦う決意を固めている頃、阿賀野型姉妹も相談していた。というよりは末っ子の酒匂を心配していたのであった。
阿賀野「酒匂、別に私達に合わせなくてもいいんだよ?」
能代「あなただけ抜けても大丈夫だって、提督も言っていたじゃない?」
矢矧「だから、もう一度よく考えて?」
三人の会話から分かる通り、酒匂は戦う道を選ぼうとしていたのだ。酒匂は艦時代に核実験によって沈んだ。そしてザフトは核を持っている。三人の姉は酒匂に過去を思い出させたくないがゆえに退役の道を選ばせようとしていた。
だが、酒匂の考えは違った。
酒匂「…正直、怖いよ。また、あれを受けて沈んじゃうんじゃないかって。でもね、怖いからって何もしなかったら、もっと怖いと思うの。過去は変えられないけど未来は変えられるでしょ?もう私みたいな目に合う人達を生み出したくないから、私は戦うの。」
矢矧「酒匂…。」
阿賀野「…わかったわ。そこまで言うなら止めないけど、約束して。必ず、みんなでここに戻ってくるって。」
酒匂「…うん!」
彼女達だけでなく、他の艦娘達も同じように戦う事を決意していた。果たして、それは勇気ある行動なのか、はたまた愚行なのか、それは、彼女達次第である。
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その夜、ザフト本部にてミネルバは脱走の準備を進めていた。話を聞けば、ヴェサリウスやガモフら主要なメンバーはここには居ないそうである。なら、今夜がチャンスである。脱走の方法は、目の前の牢屋をタンホイザーで見張りのボズゴロフ級二人もろとも吹き飛ばし、そのまま強行突破する予定であった。
脱走ルートを作る為、ミネルバはタンホイザーのチャージを始めようとした時であった。誰かが複数こちらに近づいてくる足音が聞こえてきた。
?「おい、交代の時間だ。」
ボズゴロフ級「ん?そんな話は聞いていないが?」
?「だろうな。」
ボズゴロフ級「は?…グッ⁉︎」
殴打音が聞こえ、その後セントヘレンズ、ニーゴランゴ、デズモンドの三人の姿が見えた。
ミネルバ「あなた達…!一体どういうつもり?」
セントヘレンズ「私達はここを脱走する。手を貸してくれミネルバ。」
デズモンド「今までここに閉じ込めといて今更だが、このままだとこの世界は滅んでしまう。」
ニーゴランゴ「だからお願い!私達とまた一緒に戦って!」
ミネルバは少し考えた後、彼女達に聞いた。
ミネルバ「…あなた達は今まで何をしてきたかわかってるの?」
セントヘレンズ「確かに私達は今までこの世界でたくさんの人や艦娘を殺した。だが、だからと言ってあのままヴェサリウスのいうなりになって人類を皆殺しにする訳にはいかない…!罰なら後で幾らでも受けるさ。」
ミネルバ「…なるほどね。いいわ、一緒に脱走しましょう。手筈はどうなってるの?」
それには檻を壊しながらデズモンドが答えた。
デズモンド「まずはバクリィーが工廠のデータを操作してこれ以上のザフト艦やモビルスーツ、核の増産を不可能にさせる。その後お前のタンホイザーで通信室を吹っ飛ばす。バクリィーはもう行動し始めてる。我々も急ぐぞ。」
しばらくして、牢屋から爆音と煙が立ち上り、工廠にいたピートリー級達はざわつき始めた。すると、バクリィーが血相を変えて飛び込んできた。
バクリィー「おい、何やっている⁉︎ミネルバが脱走したぞ‼︎」
ピートリー級達「何だって⁉︎」
バクリィー「奴は南の港から逃げるつもりだ‼︎ここは私が守るから、お前らは奴を追いかけろ‼︎」
ピートリー級達「はっ‼︎」
ピートリー級達が出て行くと早速バクリィーは行動を始めた。まずはここのデータが他の占領地のデータと連動するようにし、そこから各データを削除し始める。十数分程で作業は終わり、データの再構築を不可能にする為、バクリィーはパスワードを入力する。
バクリィー「パスワードは…『ナチュラルと共に核なき世界を』。これなら多分大丈夫なはず…!後はここを破壊して…」
?「何をやっているの?」
突然背後から声をかけられ驚いて振り向くと、彼女の一番上の姉であるピートリーとヘンリー・カーターの姿があった。
バクリィー「姉さん達…⁉︎」
ピートリー「これは裏切りって事でいいのよね?」
ヘンリー・カーター「お前にしては面白い事をしてくれるな。」
バクリィー「…止めないでください、邪魔をするなら例え姉さん達でも…!」
戦闘態勢に入るバクリィーだが、それとは裏腹に二人はクスクス笑っていた。
ピートリー「安心してバクリィー。私らはあなたの味方よ。」
バクリィー「へ?どうして…?」
ヘンリー・カーター「アタシらはバルトフェルド隊所属だ。隊長たるバルトフェルド、もといレセップスがいない以上仕方なく奴に従ってたが、アレを撃った事でアタシらも限界がきたさ。だから裏切る事にした。手始めにここを破壊しようとしたところでお前に会ったって訳。」
バクリィー「…信じていいの?」
ピートリー「お姉ちゃん達を信じなさい。」
しばらく悩んだものの、バクリィーは姉達の言葉を信じる事にした。
バクリィー「わかった。まずはここを破壊した後、セントヘレンズ達がミネルバを連れて北で合流する予定だから、始めましょう。」
三人は各自搭載されたミサイルや砲台、モビルスーツを用いて工廠を完全破壊し、北へと向かっていった。
合流地点で待機していたセントヘレンズ達はピートリー達の姿を見て驚いていた。
セントヘレンズ「なっ⁉︎バクリィー、その二人はどういう事だ⁉︎」
バクリィー「姉さん達も私達と同じでヴェサリウスに不満を持っていたの。だから、一緒に脱走する事にしたの。」
デズモンド「信用できるのか?」
バクリィー「姉って事を除いても、信用できるわ。」
セントヘレンズ「…そこの二人、協力してくれるのはありがたいが、もし妙な真似をしたらわかってるな?」
ピートリー「ええ、わかってるわ。」
セントヘレンズ「よし。ミネルバ、南の港に向けてタンホイザーを撃て。追っ手を少しでも減らす。」
ミネルバ「了解したわ。」
ミネルバはタンホイザーのチャージを始める。やがてチャージが完了し、標準を合わせる。
ミネルバ「タンホイザー、発射‼︎」
瞬間、ローエングリンと同規模の光の柱ともいうべき光条が辺りを照らし、港に命中し、港はそこにいたザフト艦を巻き込み大きな爆炎を上げた。それを確認した一行は転身し、全速力で駆けて行った。
ミネルバ「アークエンジェルの居場所はわかるの?」
セントヘレンズ「事前に司令部のコンピュータから鎮守府のネットワークに進入して調べた!このまま真っ直ぐだが、近くの島で追っ手を撒くつもりだ!」
一行は駆けていく。そこに希望があると信じて。だが、彼女達は知らない。全てはヴェサリウスの思惑通りになっていると。
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鎮守府
決戦に向け、アークエンジェル達の艤装を整備していた明石と夕張だったが、その中に奇妙な物が付いているのを見つけた。そしてそれがチカチカと発光しているのを見て、二人は戦慄した。
明石「これは、発信機⁉︎」
夕張「って事は…?」
二人「ここに敵が向かって来ている⁉︎」
事実、発信機を頼りにガモフ率いる攻撃隊がアークエンジェル達のいる鎮守府に向けて侵攻中であった。
これにより、鎮守府に一つの悲劇が訪れる事となる。
仲間の死という、大きな悲劇が。
深海棲艦を見限ったヴェサリウス。
ミネルバ達の脱走、その結末とは。
そしてアークエンジェル達に迫る危機。
果たして、彼女達の運命は?
それでは次回をお楽しみに。