AA「それじゃ、しっかり掴まっててね。…それ!」
雷・電「わぁ〜!」
アークエンジェルは今、屋外にて駆逐艦の子らを抱えて飛行していた。あれからすでに一週間が経過しているが、既に彼女はここに馴染んでいるようだった。
この一週間に起こった事だが、まず野井の報告書を受けとった大本営はすぐに野井とアークエンジェルを招集し、事情聴取や検査を行った。数日の検査の結果、彼女に敵性はないと判断され、正式に野井の鎮守府に着任する事が決定した。その後鎮守府に戻ってきたのが二日前の事であった。検査に時間がかかったのは、彼女が未知の艦娘である事と、彼女が来たと同時に起きた敵艦隊の襲撃との関連を疑われた事にあった。もちろん、身の潔白は証明された。
AA「さてと、次飛んでみたい人〜?」
その言葉に我先にと駆逐艦達が集まってくる。全員と仲が良くなっているアークエンジェルだが、特に懐かれているのは駆逐艦達が多い。時々こうして遊んであげている姿から、『天使の保母さん』などと呼ばれたりもしていた。
また、検査の時にわかった事が一つあった。それは、艦載機の存在だった。彼女のハッチを調べたところ、スカイグラスパーが二機、ストライカーパックと共にあったという事であった。スカイグラスパーの性能も検査されたが、当然の事ながら艦娘が持つ艦載機とは比べ物にならないほどの高性能を持っていた。モビルスーツこそ無かったが、それだけでも充分な戦力である。また、潜水能力がある事を話したところ、全員が目を丸くした。圧倒的火力を持つ砲撃に自動対空システム、ミサイルや魚雷も発射可能で空も飛べて潜水も可能、さらには艦載機も飛ばせるとなればそんな反応も当然だ。
駆逐艦達と戯れた後、アークエンジェルは工廠へと足を運んだ。
明石「あ、アークエンジェルさん。例の物、ちょうどできたわよ。」
明石が造ったものは、アークエンジェルの実弾装備の演習用模擬弾であった。さすがにゴットフリートやローエングリンは実戦でしか使えないが、バリアントなどの実弾装備は演習に使った方がいいだろうと考え、明石や妖精達が苦労の末に造ったのだ。
AA「ありがとうございます。」
明石「じゃあ早速それ使って演習してみてくれる?提督にはもう話してあるから。」
アークエンジェルは模擬弾を各装備に装填し、演習場へ訪れた。既に演習場には野井がおり、その近くで長門が準備をしていた。その他にギャラリーが何名かいた。
野井「アークエンジェルか。明石から話は聞いている。君も準備が出来次第演習を始めてくれ。」
少ししてお互い準備が終わり、互いに向かい合った。
野井「それでは演習を始める。ルールはどちらかが大破判定を受けたら決着とする。それでは、始め‼︎」
野井の合図を受け、両者は動き始める。長門の先制攻撃を避けつつ、アークエンジェルも攻撃を始めようとする。
AA(バリアント、長門さんに照準ーー)
その時であった。アークエンジェルの脳裏に色々な言葉が浮かんだ。
AA(長門さん…味方…仲間…家族…⁉︎)
突然胸が締め付けられるような感覚になり、アークエンジェルはその場にうずくまった。異変に気付き、長門は彼女に呼びかけた。
長門「アークエンジェル?大丈夫か?」
AA「ハァッ、ハァッ、ハァッ…」
しばらく苦しそうに呼吸をした後、そのままアークエンジェルは意識を失い、倒れこんだ。
長門「アークエンジェル⁉︎」
野井「長門、至急彼女を医務室に‼︎他の者は明石を呼んでくれ‼︎」
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医務室
明石「外傷はないから、精神的な原因で気を失ったのね。」
ベッドに横たわるアークエンジェルを見ながら明石はそう野井に告げた。
野井「そうか。だが、何故急にそうなったんだ?」
明石「恐らくだけど、何らかのきっかけでトラウマが思い起こされてそうなったのかもね。」
野井「トラウマが…。」
電「演習で、誰かを沈めてしまったとかですか?」
野井「いや、それなら演習する時に倒れてるはずだ。一体何が…?」
一同が悩んでいると、ふと、レーベが口を開いた。
レーベ「…誤射、じゃないかな?」
野井「誤射?」
レーベ「うん、アークエンジェルさんは長門さんを撃とうとしたら倒れたんだから、もしかしたら艦時代に仲間を誤射して沈めたんじゃないかなって。」
野井「なるほど、一理あるな。どちらにせよ、本人から言わない限りその事について聞かない事だ。わかったね?…では、それぞれ戻ってくれ。明石、彼女が起きたら連絡を頼む。」
そう言い野井達は出て行った。だが彼らは一つ勘違いをしていた。彼女が沈めたのは仲間以上の存在であり、また、それは誤射では無かった事である。
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アークエンジェルは夢を見ていた。それは、自分がまだ艦だった頃の記憶を第三者の視点から見ている感じであった。
夢の中のアークエンジェルはある艦と撃ち合っていた。お互いに損傷し、そのうちに、相手の艦から脱出シャトルが打ち出さた。そのすぐ後、相手の艦から一条の光軸がアークエンジェルに向かい放たれた。その光軸がアークエンジェルの
AA(これって、もしかして
「ローエングリン、照準…。」
どこからか聞こえたその声の後、艦のアークエンジェルからローエングリンの発射口が光り始める。
AA「っ⁉︎待って、やめて!撃たないで!
アークエンジェルの叫びも虚しく、ローエングリンがその艦に放たれた。
AA「やめてぇぇぇ‼︎」
ローエングリンはその艦の
AA「あ、あぁ…いやぁぁぁ!」
----------------
AA「ハッ‼︎」
アークエンジェルは勢いよく体を起こし、目が覚めた。
AA「今のは…夢…?」
明石「気が付いたみたいね。かなりうなされてたけど、大丈夫?とりあえず、これで顔を拭いて。今提督に連絡するわ。」
そう言い明石はタオルを差し出す。アークエンジェルはタオルで冷や汗まみれの顔を拭き取った。
少し経つと野井が部屋に入ってきた。
野井「大丈夫かい、アークエンジェル?」
AA「ええ、とりあえずは平気です。あの、私はどれくらい気を失ったのですか?」
野井「だいたい一時間位かな。それより、君に嫌な事を思い出させてしまって、すまなかった。」
AA「いえ、提督は知らなかったのですから、気にしないでください。…ですが、今後の演習なのですが…。」
野井「わかっている。もう君に演習はさせない。君は味方を撃つことにトラウマがあるみたいだからね。」
AA「ありがとうございます。」
その後体調を戻したアークエンジェルは医務室を後にし、中庭のベンチに座って考え事をしていた。
AA(前にもしこの世界に
?「どうしたんだい?そんな顔して。」
突然声をかけられ、アークエンジェルがその方を見ると、最上の姿があった。
AA「最上さん?」
最上「よければ相談にのるよ。」
最上がアークエンジェルの隣に座る。アークエンジェルはしばらく考えた後、口を開いた。
AA「あの、もしですよ?もし自分の所為で沈めてしまった仲間がいて、その人がどこかにいるってわかったら、どうしたらいいんでしょうか?」
最上「…!(まさか、その質問をボクが受けるなんてね…。)」
AA「あの、最上さん?」
最上「…これは、ボクが体験した事だけど、聞いてくれるかい?「ええ。」ボクがまだ船だったころ、航行中に妹の三隈と衝突事故を起こした事があるんだ。結果三隈は大破したボクを護衛してる時に敵の攻撃を受けて三隈は沈んだんだ。」
AA「それって⁉︎」
最上「うん、広い意味ではボクが三隈を殺した事になる。」
アークエンジェルは驚いていた。まさか、
最上「この姿になってからもずっと考えてた、あの時ボクが衝突しなかったら三隈は沈まなかったんじゃないかって。もしかしたら三隈はボクを恨んでるかもしれない、会わない方がいいかもしれない、そんな事ばかり考えてた時、三隈がここに着任したんだ。」
最上は一息ついた後、再び語り始めた。
最上「三隈に会った時、ボクは彼女に泣いて謝った。ボクが衝突した所為で沈めてごめん、許してくれなくてもいい、ただ謝らせてくれって。そしたら三隈は笑って許してくれた。あれは仕方ない事故だったから気にしなくていい、そう言ってくれた時は嬉しかった。」
AA「…。」
最上「だから、アークエンジェルさんも一度その人に謝ってみたらどうだい?相手ももしかしたら理解しているかもしれないから。自分であれこれ悩むより、まずは本人にきちんと会って話すべきだよ。」
アークエンジェルは最上の話を聞いて気づいた。自分はただ過去の過ちから逃げていただけであった。相手が恨んでいたらどうしようと自分に言い訳をして向き合うことを拒んでいた。そう思うとアークエンジェルは心のつかえが取れたような気がした。
AA「最上さん、相談にのって、ありがとうございます。おかげで悩みが解決しました。」
最上「どういたしまして。」
アークエンジェルは最上に礼を言い、その場を離れた。その足取りは先程に比べ軽くなっていた。
AA(そうよ、悩むよりまずはちゃんと謝ってからその後を決めよう。だから、もしこの世界にいるなら待っててね、
ーーードミニオン。)
ドミニオン、それは彼女の妹の名前であり、彼女を悩ませたその言葉が今は違う意味を持った。
決意を固めたアークエンジェル、彼女は果たして妹と再会できるのか。
それでは次回をお楽しみに。