更識家長男はシスコンである。【完結】   作:イーベル

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勢いで書いた。後悔はある。だがそれでも…俺は間違えてなど――いなかった(適当)


拾った彼女はツン多め。

「買い物?」

「うん。くーちゃんと一緒に行って来て欲しいんだ」

「構わないが……買い物なら俺一人で事足りるぞ」

「いや、くーちゃんを外に出してあげたいんだ。今まで研究室に押し込められていただろうから……」

 

 確かにクロエにはそんな当たり前の自由すら無かっただろう。VTシステムから出てきた彼女を拾って来たのはいいが、いつ見ても部屋でぼーっとしているし気分転換に連れ出した方がいいか。

 

「わかった。少し出てくる」

「任せたよ、束さんは夜まで試したいことがあるから残るけど、夕飯は作りに帰ってきてよ~」

「ああ」

 

 くたびれたスーツを翻して、クロエのいる部屋に足を進めた。

 

 

 ☆

 

 

 コンコンとノックの音が私の居る部屋に響く。誰だろう?やけにテンションの高い女性だろうか?藍色の髪の男だろうか?それとも……また白衣の人達だろうか。思い出すたびに寒気がして鳥肌が立つ。

 

「入るぞ」

 

 扉が開き明かりをつけていない部屋に廊下から光が差し込む。それが眩しくて私は目を細める。正面に立つと私の手を取って座っていた体を無理やり立ち上げた。

 

「外に出るぞ…ついてこい」

 

 言われるままに彼について行く。言葉足らずで何が目的か分からないがどうせ私には他に選択肢が無い。廊下を歩いていると彼は途中で足を止めて窓の外を眺める。何か気になることでもあったのだろうか。

 

「ここらでいいか……。クロエ、今からやることは束には内緒にしてくれ」

 

 窓を開けながら私にそう言った。束と言うのは恐らくあの女性の事だろう。彼以外にこの場所にいるのは彼女だけだ。わざわざ言うのはこれから後ろめたいことをするからなのだと推測できた。

 

 私を横抱きで抱えるとしっかり掴まってろよ、と言って窓から飛び降りた。

 

「……え?ひゃぁ!!」

 

 状況が呑み込めずに初めてと言っていいほどの叫び声を上げる。数百メートル上空からの落下に何度か意識を手放しかけたのは言うまでもない。

 

 

 ▼▼▼

 

 

「はぁ……はぁ……い、いきなり何するんですか!? 死ぬかと思いましたよ!!」

 

 息を乱しながら問いただす。心臓がかつてないほどに激しく脈を打っていて、立っている砂浜はブレーキ痕で深く削れていた。

 

「まあ良いだろう、生きてるんだから」

 

 駄目だ、この人はクールで知的な印象だったが、頭のねじが飛んでいるどころか、取り付けられていないのではないかと思ったほどだ。ついて行ったら命がいくつあっても足りない。

 

「……帰らしてください」

「そうつれない事を言うなよ、やっと本音が外に出てきたところじゃないか」

 

 言われてみれば確かに自然と思ったことが口に出せている。彼はそれを狙っていたのだろうか。

 

「何が目的ですか?」

 

 腑に落ちない、ここまでして私と話してなんのメリットがあるのだろうか。導くことが出来なかった解を問う。

 

「なに、同じ居候同士仲良くしたいと思っただけさ。――不満か?」

 

 不満だらけだと言い返そうとすると、彼はいつの間にか持っていた缶を山なりに投げて、私は何とか両手でキャッチした。水滴がついていて少し冷たい。

 

「ココアで良いだろう?嫌ならもう片方はコーヒーだ。そこのベンチに座るぞ」

 

 会話のペースを常に握られていて考える間もない。言い返すことを諦めて彼の隣に少し間を開けて座った。

 

「そう距離を開けるなよ…―――なんなら膝の上でもいいぞ」

「ぜーったいに座らないので安心してください!」

「それは残念だ。いい眺めだから少し高い所から見せてやろうと思ったのに」

 

 ほら、とさっきまでいた砂浜の方を指差す。

 

 どこまでも続く透き通った水平線、水色の絵の具で隙間なく塗りつぶされた空には綿菓子みたいな雲が浮かんでいる。

 今まで過ごして来た狭い世界ではきっと見ることが出来なかった景色に私は言葉を失っていた。

 

「どうだ? いいもんだろう」

 

 彼の言葉で現実に戻された。はっとして、彼の瞳を見つめ返す。

 

「別に普通です。こんなのいつだって見れます」

 

 素直に綺麗だったと言うのは気に食わなかったのでそう返した。彼はプルタブを引いて缶を開け、一口コーヒーを飲んでから話始めた。

 

「俺はそんな当たり前が好きなんだ。海を前にすると自分がちっぽけに見える」

「ちっぽけに…ですか?」

 

 意外だ。力のある者はそれをより大きく見せたいものだと思っていたからだ。それがISを生身で相手をする彼程の実力者なら尚更だ。

 

「ああ…思い上がりを正し、慢心を無くしてくれる。足りない物を見つけて、自分を更に高めたくなる―――クロエはどうだ? 自分にないものは見つかったか?」

「――いえ…わかりません」

 

 そう聞かれて考えてみたが何も思いつかない。

 

「ならこれからは何かしたいことを探してみろ。時間はいくらでもある」

「……はい」

 

 自分のしたいこと…考えたことが無かったけれどこれからは少しずつ探していこう。手に持っていた缶を開けてココアを口にする。甘みが口の中に広がった。

 

 

 

 

 

 

「そういえば……あなたの足りないものって何ですか?参考までに聞きたいです」

「燕はそろそろ切れそうだから次は海を割ろうかなと思ってるんだがどう思う?」

 

 やっぱりこの人の頭はねじを付け直すどころか設計からやり直した方がいいと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




※彼は特殊な訓練を受けています。良い子は決してパラシュート無しでスカイダイビングしないように。


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