今回はシスコン分が少なめですがどうぞ。
「束、拳銃はあるか?」
「拳銃?あるけど……何に使うのさ?」
「久々に撃っておかないと勘が鈍るからな」
そう言えば初めて会った頃は日本刀ではなく拳銃をメインとした戦闘スタイルだった。だから日本刀をメインに変えていたのは強い衝撃を受けたのを覚えている。
もうそろそろ五年前になるのだろうか。あれはまだ私がやっくんが言うところの面倒くさかった頃。やっくんが楯無になる前、つまり本当にやっくんだった頃の話だ。
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ISを開発して白騎士事件を起こした後、私は
その日は目が覚めていつも通り研究室に向かうと、本来私しかいない部屋に同い年くらいの男の子がいたのだ。その子は目を閉じて壁にもたれ掛かっている。服装は今と同じように黒のスーツ。違いを挙げるとしたら袖が余っていて明らかにサイズが大きい物を着ていた。いや、着られていたと言った方が良いかもしれない。
「……あなたは誰ですか?」
私は驚き、しばらく頭が真っ白になったがそう聞いた。瞼を気だるそうにゆっくりと開く、ついでに大きくあくびもする。彼は本当にどうでもよさそうに私を見つめた。
「起きたのか……俺はお前の護衛だ。決して怪しい者じゃない。ほら」
そう言って一枚の紙を内ポケットから取り出す。内容を見るとどうやら契約証のようだ。篠ノ乃束の護衛に更識
「刃さん、ですか。これからよろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げると刃さんもよろしくと言って頭を下げた。
それから彼は数日の間、開発をする私の姿を部屋の隅で眺めている。私はともかく学校に行かなくていいのだろうか?今日はごく普通の平日だ。気になったので聞いてみることにした。
「……俺はいいんだよ、義務教育は終わってる」
もしかして言いずらい事を聞いてしまっただろうか。高校には行っていないのはこのご時世でごくごく稀だ。護衛なんて命を賭けている仕事をしているのだ。きっと深い訳があるはずだ。……謝らないと。長引くと仲を修復しにくくなるのは箒ちゃんの件で分かり切っている。
「あの、その…なんというか、えっと……ごめんなさい」
「どうして謝る」
「いや、悪いことをしたなって思ったからで、えっと……「面倒な奴だな、俺は好きで学校に行ってない、家を継ぐにはそっちの方が都合がいいんだ。何より妹の近くにいられる」
私の言葉をさえぎって何でも無かったようにそう言った。考えすぎだったのだろうか、妹の為とはいえ思い切ったことをするなと思った。
「一緒にいるだけでも幸せなのだからこの行動は当然で、必然だね。お前に謝られる理由は無い」
当然で必然か、私は箒ちゃんにそんなことが出来ただろうか。いや出来なかった。だから私はここにいる、白騎士事件を起こし、家族をバラバラにしてしまった。箒ちゃんに嫌われてもしょうがない。後悔先に立たずとはよく言ったものだ。考え込んでいると、ガチャと重みのある金属音がした。
「え?」
顔を上げると彼が両手に拳銃を構えている。殺気に当てられて、体が固まった。
「―――動くな。次動いたら容赦はしない」
本気だ。何となく直感でそれが分かってしまった。彼の顔には躊躇いなんてありはしない。
「ど……どうして、あなたは……」
躊躇なく引き金を引き発砲音が響いた。しかし私の体には当たらず背後の空気を紅く染めた。
「ぐぁ!!」
「何ぼさっとしてる! 早く逃げるぞ」
首根っこ掴んで持ち上げられた。窓を足で蹴破って外に出る。
「チッ、親父は何してやがる。サボってんのか?」
「ちょっと待ってください! 誰もいなかったのにどうしたんですか銃なんて撃って」
「襲撃だ。光学迷彩なんてもん持ちだしやがって……大方お前を誘拐か暗殺しに来たんだろうよ」
「どうしてそんなことする必要があるのさ。私は要望に応えてコアを作っていたのに!」
「そりゃそれで得をする人間もいれば損するのもいるからさ。例えば現役の軍人、ISが導入されれば多くの人材が路頭に迷うことになる。」
「なるほどそれは分かったけど、いい加減首を持って走るのは止めて! 苦しい! 苦しいから!」
彼は一度立ち止まって手を放す。思わず咳込んでしまった。
「すまない、慌ててしまっていたな。おぶって行くから背中に乗れ」
しゃがんで背中を私に見せる。追われている以上手段は選んでいられないので私はそこに体を預けて腕を彼の首に回した。いつもより視線が高くて少し怖い。
「軽いな、飯食ってんのか?」
「最低限食べてるよ」
「そうか。よし…これで両手が空いた」
袖から手榴弾が落ちて彼の手に収まる。『暗器使い』衣服に小型の武器を仕込む。暗殺向けの戦闘術。それが彼の戦い方なのだろう。
「しっかり掴まって、一旦目を閉じろ」
言われたとおりにさっきより腕を強く締めて目を閉じる。ピンッと音がした後、真っ暗な視界が赤くなって、強く体が引っ張られる。ジェットコースターにでも乗っているようだった。
バシャバシャと足音が違和感のあるものに変わって、顔面に風が吹き付ける。それに抵抗しながらゆっくりと目を開ける。周りは一面水面。水たまりの上なのだろうか。あれ? ……波がある。
「海の上!? どうやって水上走行してるのさ!?」
「トカゲにできるんだ。俺に出来ない道理はない」
――――いや比べる対象が人間じゃない時点でおかしいから。
後編に続く。
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