更識家長男はシスコンである。【完結】   作:イーベル

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青い稲妻

 IS学園に入学してそろそろ一年が経過し、生徒会の先輩から会長の座を譲り受けて学園の運営にも携わり、忙しい日々を送っていた。

 そんな中で学園の理事長轡木(くつわぎ)さんから気になる情報を伝えられた。なんでも次々とISに関わっている施設、組織を襲っている人物がいるというものだ。

 今年こそ何のトラブルもなく終わろうとしているが、簪ちゃんが代表候補生となりIS学園に入学を目指し、専用機持ちが二人も入学する予定である以上警戒しすぎるということは無い。よく目を通しておこうと思い、資料を手に取る。

 

『青い稲妻』そう呼ばれる人物はISスーツのような服で、肘と膝に動きを阻害しない程度のプロテクター、判明している武装は刀一本のみ。

 最大の特徴はISの武装展開のみでの高速戦闘を得意とすること。敵との間合いを詰めるときに帯のように引かれる髪が稲妻のように見えることからその異名が付いたそうだ。

 そしてこの人物はIS開発者、篠ノ乃束博士の下についている可能性が高い。襲われた施設の殆どが篠ノ乃束博士の警告を無視した事によって襲われている。

 実力行使のための切り札、まさに博士の懐刀(ふところがたな)と言うのに相応しい人物だろう。

 

「刀奈様、何か考え事ですか?」

「ひゃ!?」

 

 何の音もなく背後に回っていた(うつほ)ちゃんに声を掛けられて驚いた。それも情けない声を上げて……。虚ちゃんとは幼馴染だけれどなんだか恥ずかしい。

 

「相変わらず刀奈様の反応は面白いです。よろしければ紅茶でもお入れしましょうか?」

「ええ、お願いするわ。でもからかうのは止めにして欲しいのだけれど……」

「わかりました、考えておきます」

 

 そう怪しげに笑うと電気ケトルでお湯を沸かし、ティーセットの用意を始めた。虚ちゃんは前々から私をからかうことがあったけどこの頃はなんだか更に頻度が増している気がする。どうしてだろうか?威厳の問題だろうか?兄さんと接しているときはいかにもといった感じの従者な感じの接し方だったのに……。

 

「虚ちゃん、私ってそんなに威厳が無いかな?」

「どうしてそう思うのですか?」

「いや、兄さんに比べて虚ちゃんになめられていると思ったから……かな?」

 

 お湯をケトルから移して紅茶の準備を進めている虚ちゃんに聞く、その動作には全く無駄のない洗練された動きだ。

 

「そうですね、確かに楯無様(17代目)と比べて威厳は無いかもしれないですね」

 

 容赦のない指摘は鋭く私の胸に突き刺さる。そうか、そんなに私に威厳は無いのか…。しばらくこのネタで凹める気がする。

 

「―――ですが、もうそろそろ刀奈様も襲名なさるでしょう? 長い付き合いの友人としてからかえるのも後わずかだと思うと少し寂しかったのです。そう思われていたのならば以後は気を付けます」

 

 虚ちゃんは申し訳なさそうにそう言ってティーカップを会長席に置く。紅茶のいい香りが鼻腔をくすぐった。

 からかう事にそういう意味が込められていたとは知らなかったから自然と口角が上がる。従者とは言いつつも友人として接してくれていたのは嬉しかった。

 

「べ、別にそんなことは無いわよ。虚ちゃんはこれからも今まで通り接してくれて構わないわ。ええ、なんて言ったって私と虚ちゃんの仲だもの気にしないわ」

 

 照れ隠しで紅茶を口に含みカップで少し赤くなっているであろう顔を隠した。

 

「さて、これで許可は貰ったので当主になってもからかい倒しても問題無いですね」

「え?どういうこと?さっきのは……」

「はい。冗談です。それと刀奈様、昨日サボった仕事が残っています。一気に片付けますよ」

 

 ドン、と山のような書類の束が置かれる。嘘みたいだ。この間も大量の書類を終わらせたばかりなのに。正直に言って早く逃げ出したい。椅子から立ち上がる。

 

「今日は逃がしませんよ刀奈様。引退された先輩方にも連絡したところ、見つけ次第連れ戻してくれるそうです。それと今日は顧問の織斑先生も後で様子を見に来るそうですよ」

 

 完璧に逃げ口を失った。織斑先生に連絡済みとは、謀ったわね虚ちゃん……!

 

「もう虚ちゃんのバカー!!」

 

 やけくそ気味にペンを取って書類に向かった。

 

 

 

 

 ―――千冬()の到着まであと二時間。この時ばかりは優秀な従者を恨んだ。

 

 

 ☆

 

 

「ねえねえやっくん! これ見てよこれ!」

 

 静かなラボに声が響く。もうそろそろ寝ようと思っていたのに何の用だろうか。下らない用事だったら帰ろう。

 束の部屋に行きノックをして入る。

 

「よく来たねやっくん! これだよこれ!」

 

 渡されたタブレットのモニターを覗き込むとそこには『青い稲妻に気を付けろ』と言った警告文。

 

 特徴を読んでいくと、

 ◦藍色の髪。

 ◦刀一本しか使わない。

 ◦経歴、素性等は一切不明。

 ◦写真を添付する。(フルフェイスのヘルメットからでる藍色の髪、全身を覆うタイプのISスーツとプロテクターに刀)

 

「誰だよこんな厨二感溢れるネーミングした奴は……!」

 

 思わず端末を床に叩きつけてしまった。

 

「いや~おもしろいよね。えっと…『青い稲妻』さん」

 

 ケラケラ笑いながら俺と目を合わせる束。いつもより行動に苛立ちを覚える。

 

「何ですか刃様、束様。何がそんなに面白いのですか?」

「ああ、くーちゃん。これだよこれ」

 

 お腹を抱えながらも俺が床に叩きつけたタブレットを拾って画面を見せる。あれで壊れないのは流石天災印のタブレット。

 クロエはしばらく文を読んでからこらえ切れずにクスクスと笑い始めた。束と違って我慢している分まだ許せる。だが笑われるのは腹立たしい。

 

 

 

 二人の様子を見て俺は次までに偽名をしっかりと考えることに決めた。

 

 




次回原作突入(予定)。
ここからシスコンは更なる進化を遂げる!(予定)

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