本日未明クラス代表戦にてIS学園は突如襲撃を受けた。襲撃犯はこの間情報にもあった『青い稲妻』。代表候補生の凰鈴音さんを瞬時に脱落させ、織斑君を相手に圧倒的な格の差を見せつけた。
学園側としてはやりたい放題やられて逃走を許してしまい生徒への信頼を損ねる結果になった。
だけど、得た物が無かったわけでは無い。青い稲妻の戦闘を直に見れたことは大きい。
フィクションを現実にした剣術を得意とすることや例え竹刀であろうともISに対して決定打を与えられる身体能力を持つこと。そしてその身体能力はISの補助が無い状態の物であること、襲撃時に高熱源反応が感知されなかったため必然的にそう考えるしかない。
確認すればするほどその姿に、二年前から消息を絶っている兄さんを重ねてしまう……。
いや、とその浅はかな考えを首を振って振り払う。兄さんがこんな事をする理由がどこにある。兄さんは簪ちゃんや私の安全を第一に考えてくれた。こんな危険に晒すような真似をするものか……。
コンコン、生徒会室の扉を叩く音がする。今は私以外にこの部屋にいない。
「はーい、空いてるわよ」
ドアノブが捻られて解放される。廊下にいたのは私の最愛の妹だ。ツカツカと足音が静かな室内に響く。ソファはボス、と衝撃を吸収して簪ちゃんを受け止めた。そして横にあった丸いクッションを抱えてそこに顔を
沈黙が続くがそれは自然と苦痛ではなく安らぎを私に与えてくれる。この二年……厳しく苦しい鍛錬に耐えられたのも、こういった時間が以前と変わらずあったからだろう。
顔をクッションから上げて簪ちゃんは沈黙を破った。歩いて私が座っている席の隣に立った。
「ねえ……お姉ちゃん。聞きたいことがあるの」
「何を聞きたいの?」
そう返しておきながら私にはそれが何かわかっていた。
「今日の襲撃した人ってお姉ちゃんから見てどう思う?」
やはりそうだった。簪ちゃんも何となく感づいてたんだ。そう言えば生徒会で映像を見ながら対策を練っていた時に庶務の席で難しそうな顔をしていたことを思い出した。
「……似ているけれど、もし兄さんならこんなことをする理由も動機も分からない。それにあり得ない。
「でも、もし生きていると仮定すると納得いく点がいくつか合ったんだ」
簪ちゃんの話の目的が見えない。兄さんはもういない。もう帰ってくることは無い。だから私は代わりに妹を、家族を守るためにここまでやって来たんだ。それはこれからも変わらない。例えそこに自身の意思が無くとも……。
「―――――どういうこと?」
「まずあの刀、私達がプレゼントした『晴天』にそっくりだった。刀身がメタルブルーの刀なんてそうそうないよ。それは調べた私達がよく知っているよね」
「そうそうないだけで無い訳じゃなかったじゃない。偶然よ」
「そうかもしれない、でも…あの人はなんて名乗った?」
「ジン・クロニクルって名乗ったわね。それに何の意味があるのよ?」
「ジン……だよね。お兄ちゃんの襲名前の本当の名前は?」
「
「そうだよ、音読みで読むとジンになる。私には苗字の方は良く分からないけどね…」
刀までなら偶然だと思っていたけれど、こうして並べられるとそうとは思えなくなってきた。
「ここからは推測だけれど……お兄ちゃんはドイツで死にかけた所を連れ去られて逆らえないように何らかの脅し、もしくは命を脅かす枷を付けられた、そして言われるがままにこの二年ずっと従って来た……。でも今日、兄さんを知るお姉ちゃんがいるIS学園が標的になった。だから今まで隠して来た名前を暗号にして名乗ったんだ……お姉ちゃんに自分が生きているって伝える為に!」
「兄さんが……生きてる?」
「声だって、立ち姿だってそのままだった……間違いないよ」
そう言われて二年前から流していなかった粒が頬を伝う。
本当は気が付いていた…でもその考えを自分自身が信じられなかった。もしそうじゃなかったとき、再び現実を見せつけられて…耐えられる自信が無かったから最初から否定してただけ。
「―――ありがとう…簪ちゃん……ようやく向き合えそうだよ」
「うん、今日ぐらいは泣いてもいいよ……思いっきり」
両手を広げて簪ちゃんはそう言って、私は胸の中で二年分貯めた涙を流した。目を赤くして、そこにあった滴をハンカチで拭った。
「絶対に……兄さんを助けるよ。簪ちゃんも手伝ってくれる?」
「うん、任せて……涙もろい当主に代わって頑張る」
「言ったな~カッコイイ所見せてあげるわ!」
二人だけの部屋で姉妹は決意を新たにする。これからは二人三脚で兄の背中を追う………。
☆
「ヘックチ!!」
「大丈夫か束? 風邪か?」
「いや、なんか寒気がして…」
「妹の誕生日プレゼント制作に気合入れすぎて風邪引くなよ」
「ノープロブレムだよ~束さんは風邪知らずなのさ!」
感想評価等お待ちしております。では…