アメリカの領海にある島『
襲い掛かる弾丸の雨を青天井で薙ぎ払う。物量戦術とは厄介で面倒だな…俺の目的は一つだけ、無意味な殺生はしたくは無い。彼らの動きを止める為に右足を大きく上げて振り下ろす。
衝撃が伝わり大地が震える。彼らはそれに驚いて銃撃に隙が生じた。それに乗じて峰打ちで意識を飛ばした。廊下に男達が横たわる。
今使ったのは『震脚』。主に中国拳法でよく使用される技だが……本来は攻撃技ではない。ガキの頃に親父が「本気でやったら地震起こせるんじゃね?」とその場のノリでやったところ非常に局地的であったものの、震度3程度の地震が発生した。
それを今回再現したわけだが、想像以上に効果的だったのでこれからも使うことにした。
一度刀を腕輪に戻して再び進む、今ので警戒レベルを上げられたのか先ほどとは打って変わって誰も出てこなくなった。それでいい……。
やがて大規模な訓練場のような場所に出た。そこには狙い通り立っていた…アメリカ代表イーリス・コーリング専用機。
「ようやく出て来たな……『ファング・クエイク』」
「待ってたぜ、イナズマサムライ……!」
「それは止めてくれ……恥ずかしくてたまらん。今はジンって名乗ってるんだ」
「そんなのどうだっていい……俺たちの
爪型の武器を両腕に展開して臨戦態勢に入る。ピリピリとした殺気が俺に突き刺さりゾクゾクする。これほどのプレッシャーは久しい。上出来だ…遊んで行きたい気持ちもあるが手は抜いていられない。
腰に巻いたポーチから両手にそれぞれ二本ずつ取り出して構えた。
「そんなナイフじゃ俺に傷を付けるどころかその前にポッキリ折れちまうぜ!」
いきなり『
右手のナイフを二本、敵の軌道を逸らすために投合する。だが、両腕の爪でからめとり見事に回避された。国家代表ともなるとこれは通用しない。
「ご自慢の刀はどうした? 出し惜しむならここで死ぬぜ!」
虎が獲物を狩るときのように右手の爪を振り下ろす。確かに受け止めるなら刀の方がナイフより強度が高い、だがこの間合いまで近づかれたならその長い刀身はかえって邪魔だ。
俺は爪と爪の間にナイフを入れ込み受け止めた。ずっしりと重みのある衝撃が腕に伝わる。
「何!?」
「あいにく俺のナイフは
ポーチから更にもう一本取り出して眼球に向けて突き出す。
「くそ!」
後ろに下がって間合いをとる。今のシチュエーションは分が悪いと判断したのだろう。後退する速さには追い付けないがただでは離させない。今度は左手のナイフ二本を投げつけた。
彼女は先ほどと同じように軌道をそらして無力化する。ポーチから最後の一本を左手で取り出す。
「噂以上だな……刀が無くてもそれか。本当はナイフが本業か?」
「いや、俺の本業は刀だ。ナイフは副業さ」
動きの止まっている彼女に持っている最後の二本を投合すると今度も弾かれる。
「おいおい……話してる最中に攻撃とはブシドーってやつに反するんじゃないか?」
「そんな精神は持ち合わせていないんでな。これで……王手だ」
徒手空拳で歩いて間を詰める。
「手ぶらで近づくとは舐められたもんだな!!」
彼女がスラスターを吹かし突撃しようとした瞬間、手に握っていた
「う、動けねぇ! 何をしやがった!?」
「ナイフにワイヤーを括り付けてあったんだ。目を凝らしてみろ」
日の光にさらされてわずかに光る細く強靭な糸。束特性のワイヤーだ。いくらISに乗っていようと簡単には引き千切ることは出来ない。
青天井を右手に、歩いて目の前で止まる。
「中々に楽しめたぜイーリス・コーリング。もし機会があればもう一度戦いたいぐらいだ」
「手を抜いておいてよく言うぜ」
「いや、俺に刀以外を取らせたんだ。誇っていい」
そう言うと彼女は鳩が豆鉄砲を食ったように驚いていた。
「名前をもう一度聞かせてくれるか?」
「ジン・クロニクルだ」
「そうか、ジン…俺の完敗だ。好きにしろ…早くナタルのところに送ってくれ」
彼女は諦めたように瞳を閉じた。
俺はビリヤードのキューを構えるように剣を構える。上半身のバネをフルに使い止めを刺す。
ーーー
極められた刺突がシールドバリアを突き抜き右肩の装甲を破壊する。
ISが強制的に解除されて彼女が地面に落ちた。
「なんで殺さない……ナタルがいないのならこんなところに居たって……」
ボロボロ涙をこぼして俯く彼女の指から指輪となったISを回収する。
「イーリス・コーリング、お前の命は俺が預かる。ここで死ぬことは許さん」
「どうして……」
「好きにしろといっただろう?お前には次に戦う時は
「そんなことで?」
「ああ。だからその時までその爪と牙を研いで待ってろ、俺は更にその上を行く」
そうして俺は
これが簪にばれたら「刀だけで勝てないのは甘え」って言われるからな。もっとトレーニングを積まなければ…束に重力が百倍になる部屋でも作ってもらおうかな……
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