太平洋某所。そこから海底に潜り数百メートル。太陽光がほぼ届かない、人工衛星の監視の目すらくぐり抜ける場所。それが彼女らのアジトであった。
「世界各国でやけに派手に暴れてるようね」
金髪の女スコールは確認するようにそう言った。
「ああ、だが好都合だ。誰が、何のつもりか知らねえが、襲撃するのに良い目晦ましになる」
男のような口調でそう答えた女性はオータム。彼女の頬には二年前の事故でついた一本の傷が痛々しく残っていた。
「そうなるといいのだけれどどうも引っかかるのよ」
「何がだよ、スコール」
「ここまでお膳立てされていると罠かと疑いたくなるわ。今思えばエムに頼んだ『サイレント・ゼフィルス』の強奪の時だって、上手く行き過ぎた気がするのよ」
「そりゃそうだけどよ……考えすぎだろ。ラッキーぐらいに考えておけばいいさ。ただでさえ上からの指示の意図が分からないんだからよぉ」
「そうね。ハァ……『IS学園の制圧』とは厄介なものを押し付けられたわね……」
上から指示された命令はIS三機だけの彼女の部隊ではほぼ成し遂げられない。何せ学園には世界各国から集まる優秀なパイロットたちが数多く在籍し、それを指導する教員の実力も折り紙付きだ。
密偵として送り込んだ人材が所属しているとした国に戻されたのは不運だったが、しかしそれ以外はおおむね順調だ。IS学園の生徒はおおよそ五分の一が帰国し、戦力は半減。そして目の前に侵入するための
上に従うのならばここで仕掛ける他ないのだ。
「オータム、エムに十日後に仕掛けると伝えて。準備させなさい」
わかったよと返事をするとオータムは扉の奥へと消えていった。
▼▼▼
「そうか、分かった準備しておこう。さっさと下がれ」
私は虫を払うかのようにシッシッ、と手を振る。オータムは気に食わなかったのかやはり逆した。「弱い犬ほどよく吠える」という言葉が
「人が下手に出てりゃ調子に乗りやがって!」
胸倉をつかみ取ろうと手を伸ばすが、空を切った。背後に回ってナイフを突きつける。
「……っ!! お前、俺に手を出しやがったら……」
「分かっている。ナノマシンが脳を焼き切る、だろう? 殺しはしない。だから余計な体力は使わせるな。分かったら下がれ」
オータムは舌打ちをして去って行った。
与えられた窮屈な個室の中の多くを締めているベットに横たわる。ヒンヤリとしたシーツの感触が肉体に走った。
右手を天井に向けてめいいっぱい伸ばす。届きそうで届かなかったこの距離がこの十日で埋まっていく。
これまで
どんな痛みにも耐えた。
どんな命令にも従った。
どんな任務もこなした。
「やっとだよ姉さん…あなたを殺せば永遠に、ずっと…愛情は私の物だ」
伸ばした手をギュッと握り、体の横に降ろした。
「――――ああ……待ち遠しいよ……姉さん」
私はそっと瞳を閉じて日付を一つ進めた。
☆
波の穏やかな透き通った海が見える島。まだ初夏のような日差しが照り付ける中、俺は赤髪の女と対峙していた。辺りには他に
「初めましてだな……現
「その風体からして情報通りなら、「ジン・クロニクル」とお見受けするが……いかがかな?」
ツインテールが風でなびく。世界最強の闘気が伝わって来た。
「覚えられているとは光栄だな」
「立て続けに国家代表を下しているんだ、嫌でも耳に入るさ。作戦行動中に待ち伏せされているのは想定外だったが……。いざ尋常に勝負といこうじゃないか」
IS学園に所属する以外で最後の「特記戦力」イタリア代表アリーシャ・ジョセフターフ。専用機は嵐の名を持つ『テンペスタ』。それが今展開される。着崩していた着物が消えISスーツに変わった。失われていた右腕には義手。腰に鞘に収まる日本刀が展開された。ISにある拡張領域を利用すれば自由に出し入れできるので、鞘は必要ないはず。それ故にかえって不気味だった。
穏やかな波が心なしか、荒々しくなった気がした。
目の前のテンペスタの姿が消える。ザッ、と背後でかすかに地面に砂に着地した音がした。横目に銃口が構えられているのを捉えた。光学兵器による三連射。青天井を展開し、二発を打ち払い、出来たスペースをくぐり抜ける。
刀身が熱で溶けた。即座に腕輪に戻す。感情を表に出して動けば即座に
三射目を体制を低くして避けて走り抜ける。顔を上げた。そこには
突然濃くなる殺気。体中の毛穴が閉じて寒気を訴えた。
その構えを見た。かつて俺が模倣し、完成させたその動きを。
驚きを誤魔化すことは出来ない。まさか俺以外に再現できる人間がいるとは思わなかったから。
出遅れたら回避不可の神速剣術が放たれる。
『飛天御剣流―――九頭龍閃!!』
九つの竜が俺の背後から迫った。
ヤンデレ・シスコン・マドカ&アリーシャ・ジョセフターフ登場。
先に言っておくと二人は本作ではキャラ崩壊が激しいです。
感想評価等お待ちしております。
では…。