更識家長男はシスコンである。【完結】   作:イーベル

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彼の天敵

「お久しぶりです先輩!」

「ま、真耶……か?」

「はい!」

 

 本人が返事をした。俺の見間違いではないようだ。それにしても何で…。

 

「山田先生!」

「はい! 織斑君。先生が来たからには安心してください」

 

 せ、先生…? こいつが? 成程、だからここにいるのか。にしても…変わってねえな。この調子だと生徒にからかわれそうだ。いやそれよりもだ。

 

「もうすぐここは教員部隊が包囲します! 大人しく投降してください!」

 

 真耶は銃の照準を合わせた。いつものおどおどした感じは無くしっかりと構えている。

 

「チッ……面倒な」

 

 残ったビット四つ全ての銃口があっちこっちに向く。恐らくその先に教師部隊がいるのだろう。引き金に指をかけてビットの銃口に光が灯る。しかし放たれることは無かった。

 

「……スコールか。引け……だと? こんな奴ら脅威に……分かった」

 

 声を荒げて反論しようとするが、論破されたようだ。そしてライフルを真上に向けて発射。この部屋を崩しにかかった。二年前を彷彿とさせるこの状況の中、簪は一夏君によって空いた穴から脱出した。ファインプレーだな、やるじゃないか。

 

「先輩!」

 

 真耶が手を伸ばしてきた手を掴む。俺達はコンクリートの豪雨を振り切り脱出。その間にサイレント・ゼフィルスは既に水平線の向こうに姿を消していた。

 

 ☆

 

 襲撃者は立ち去り、何とか防衛に成功したIS学園。その一室に兄を保護したとの連絡を受けて私は駆け足で向かった。生徒の長として決して褒められる行為ではないが、今回ばかりは目をつぶってもらいたい。

 扉の前にたどり着くとそこからかすかに話し声が漏れていた。

 

「先輩! 観念して上着を脱いでください! 出来ないなら……実力行使に出ます」

「や、やめっ……見てないで助けろ束! クロエ!」

「刃様。ここは従っておくべきかと」

「そうだね~何だったら束さんも参戦するよ~。ほらほら~大人しく服を脱ぐのだ~」

 

 ど、どういうことなの……? この状況? 突っ込み所が満載過ぎる。山田先生が兄さんを先輩と呼んでるし、クロエと呼ばれた女の子は兄さんの本名を知っていて、さらに逃亡中の篠ノ乃博士と思われる人がこの部屋にいる。そして…全員が兄さんの上着を狙ってる!? 頭が真っ白になって上手く考えがまとめられない。

 

「何してるのお姉ちゃん?」

 

 後ろから耳元に声を掛けられて鳥肌が立った。一夏君と一緒に簪ちゃんがやって来たようだった。人差し指を口に当て「静かに」というサインを出すと、二人は黙って扉に耳を当てた。

 

「この……離せ! 離してくれ……!」

「ちーちゃんも見てないで手伝ってよ~」

「ハァ……そうだな…怪我人相手で気が進まんが……。私も参戦しよう」

 

 織斑先生がいることが判明し、私の脳に更なる混乱をもたらした。一夏君はすかさずドアを開けて慌てて中に入る。

 

「な、何やって……え?」

 

 勢いよく叱りつけるように話し始めた一夏君だったけど途中でそれが止まった。恐る恐る私も空いたドアから中の様子を覗き見る。簪ちゃんも同じようにして私のすぐ近くから覗き込んでいた。

 織斑先生とうさ耳ドレスの人によってベッドの上に押さえつけられる兄さん。その対面には山田先生。その手にある物を見て私と簪ちゃんは全てを察した。

 

 兄さんは昔からとてつもなく、これ以上ないぐらいに……消毒液が嫌いだ。

 

 

 ▼▼▼

 

 

「すまない、取り乱した……」

 

 体中を消毒されてしばらく動く気配のなかった兄さんは、そう切り出した。今のはなかったことにするつもりらしい。兄さんのいるベッドを囲むようにして丸椅子に座る。兄さんの他に部屋に今いるのは織斑先生と山田先生、一夏君と私達姉妹。最期に篠ノ乃博士と思われる人とクロエと呼ばれていた女の子だ。

 

「刀奈と簪にはこの二年、心配をかけた……特に刀奈は俺の代わりに当主を押し付けた形になってしまったな……。悪かった」

 

 そう言って私達に向かって頭を下げる。兄さんには兄さんの理由があったのだろうし、責める気はない。こうして戻ってきてくれた。それだけで十分だったから。

 

「頭を上げてよ兄さん。本当に無事で……よかった」

 

 視界がにじむ。駄目だ……。笑顔で出迎えるって決めたのに……。簪ちゃんに勇気づけられてからなんだか涙もろくなっちゃったかな。

 

「泣くなよ刀奈。せっかくの大人っぽくなったかと思ったのに……相変わらず泣き虫だな」

「そんなこと……ない」

「お姉ちゃん、これ使って」

 

 ハンカチを手渡されて、湧き出る滴を一度で拭い。強く瞼を閉じてから開いて誤魔化した。よし! これで大丈夫。

 

「更識姉、大丈夫か?」

「はい」

「では、改めて聞こうか。お前達は何のためにここを、いや…世界中のIS関連機関を襲撃している?」

 

 織斑先生の問い。その鋭い視線は兄さんを含めた三人に突き刺さった。

 

「もとよりそれを話すつもりで来た。隠すつもりは無い」

 

 それはとても気になっていたことだ。いくら調べても無差別に襲撃しているようにしか思えなかったあの襲撃に何の意味があったのか。それが明かされる。

 

「俺達の目的は全てのISコアを回収し、ダウングレードすること。及び、第三次世界大戦の阻止だ」

 

 

 




ようやく(まともに)刀奈と再会できたよ!やったねシスコン!

調べた所最近は傷口は消毒しない治療方法がオススメらしいですね。さらっと調べたので本当かどうかわかりませんが。


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