来週のジョジョも楽しみです。
雑談はこの程度にして、本編をどうぞ。
「なあ、一夏君。ちょっとシャワー貸してくれないか?」
「別にいいですけど……ちょっと遠いですよ?」
「海辺に止めてあるラボに戻るよりはマシさ」
汗が
廊下は朝練から戻った子が多く、タオルを手に額の汗を拭っていた。きっと俺と同じように汗を洗い流してから、朝食に行きたいと思っているに違いない。
少し歩くと一夏君の部屋にたどり着いた。鍵を開けて貰って部屋に入る。
「へぇ……中々いい部屋だな。他の部屋も同じ造りになってるのか?」
「ええ、そうみたいです。特に変わったところは無いですね」
「そうか、なら安心だ」
この環境ならば刀奈や簪は窮屈な思いをする事無く学校生活を送れているはずだ。疑問が一つ解消された。
タオルを持っていたバッグの中から取り出す。着替えは……パンツだけ持ち込めばいいか。男部屋なので配慮する必要はないだろう。シャワーがあるという洗面所のドアノブに手をかけて、扉を開けた。
「え?……きゃあ!!」
髪色に近い水色のショーツ、侵入者に戸惑いながら隠された豊かな胸。それらの隙間から見え隠れする引き締まった肉体。おいおい……どうしてここにいるんだよ……。
その直後、鳩尾に繰り出された右ストレートは甘んじて受けた。
▼▼▼
「だ、大丈夫ですか? 刃さん」
「問題ない。しっかり目に焼き付けた」
「心配しているところはそこじゃないですよ!」
サムズアップで答えると一夏君はそう否定した。もしかして彼は俺の体をいたわってくれているのだろうか?そんな心配はされた事が無かったので新鮮だ。それよりも気になることがある。
「なあ一夏君。ここは君の一人部屋だと資料で確認したんだが……どういうことだ? 返答によっては―――首をはねる」
「ええ!?」
「兄さんったらやめてよ! 一夏君は悪くないからその刀をしまって!」
洗面所から刀奈が着替えを済まして出て来た。どうやら無意識のうちに青天井を展開していたみたいだ。言われた通りに腕輪に戻した。
「……どういうことだ」
「私は一夏君の護衛として、この部屋にいたのよ。やましい事は一切ないから安心して」
「本当なんだろうな?」
「ええ」
刀奈はにこやかに返事をした。どうやら本当らしい。例え嘘だとしても、妹の言うことを疑うことは決してあってはならない。兄として恥ずべき行為だ。
「わかった、信じよう」
結局のところ確信するだけの証拠も情報も得ていない。一時の感情に身を任せて一夏君を疑ったが、刀奈の言う通りなら見当違いもいいとこだ。
「疑って済まなかった一夏君。シャワーを予定通り借りるぞ」
「は、はい!」
勢いのある返事を聞きながら俺は今度こそ洗面所に足を踏み入れた。
▼▼▼
刀奈と一夏君は授業があると言うので、その場で別れた。暇になった俺は束の手伝いをしに整備室に来た。今日はパスワードが分かっている訓練機だけでもダウングレードするらしい。スライドドアは前に立つと、炭酸飲料の蓋を開けたような音を立てて、自動で開いた。
「ふ~ん。それでかんちゃんは授業サボってここにいるんだ~」
「サボっている訳じゃ……」
あれ?どうして今日は刀奈といい簪といい、俺の予想外の場所に現れるのだろうか…。束にしては珍しく初対面に近い相手にも友好的だ。二人並んでキーボードを叩いている所を見ると、束は簪に仕事を手伝わせているように見える。俺が遅かったから手伝わされているのかもしれない。声をかけて俺が代わらなければ。
「おはよう簪、束。手伝いに来たぞ」
「お! 遅いよやっくん! どこで油を売ってたのさ~」
「道場で」
「本当に売ってたんだ……」
「それより簪はどうしてここにいるんだ? 刀奈は今日、授業があると言っていたが……」
「私は許可を貰って専用機の調整をしていたの」
どうやら束にこき使われていたわけでは無いようだ。視線を簪から上げると、先日展開していたISがそこに鎮座してた。所々傷や故障が見られる。機械に詳しい訳では無いのでどう直すのか見当がつかない。
だが、簪の努力の結晶である機体が傷ついたのは救援が遅れた俺の責任でもある。何とかして手伝ってあげたい。
「束、簪の機体の修復を手伝ってやれないか?」
「……どうして?」
「交渉が一番早く成立する可能性があるのは日本だ。仮に全ての機体のネットワークが切断出来ないうちに暴走したとしよう。対抗戦力はその間に切り離せた機体と、俺や千冬、お前みたいな例外のみだ。少しでも戦力は多いに越したことは無い」
「ふ~ん。――――――――で、本音は?」
「簪の手助けをしたい」
口から出まかせを吐いた後、素直にそう答えた。束相手なら下手に嘘をつくよりは効果的のはずだ。俺と違って頭も良いからな…。チラッと簪を見ると申し訳なさそうな表情でこちらを見ていた。
「私がそこのかんちゃんの機体を直すとして、やっくんは何を私にしてくれるの?」
俺のがこいつにしてやれること……か。―――――駄目だ思いつかない。こいつの出来ないことはほぼ無い。例外として料理が挙げられるが…束はクロエの作った黒焦げ料理でも満足して食べきる奴だ。決してグルメではない。手料理を振る舞って喜ぶのはクロエの方だ。対価として相応しいものが思い当たらない。なら仕方ないか。
「お前に借りを作る。俺の信条に反しないものであれば、一つだけだが言うことを聞こう」
「随分魅力的だけど……それで本当にいいの?」
「構わない」
「じゃあ交渉成立~やっくんならそう言ってくると思ったから、既に修理は開始してるよ~」
相変わらず仕事が早い。既にということは、俺の行動は予測されていたようだ。俺が束の妹に対する感情が何となく掴めるように、その逆もしかり、という事か。簪がこっちに近づいてきて俺を少し見上げるようにして話しかける。
「――良かったの?あんな簡単に、条件出しちゃって…」
「いいんだよ、もしかして迷惑をかけた、とか思ってるか?」
「……うん。ごめん」
「そういう時は『ごめん』じゃなくて『ありがとう』のほうが俺は嬉しいぞ。それにな、多少手間がかかる方が可愛く見えるもんさ」
それを聞いて簪は照れくさそうに笑って、小さく『ありがとう』と呟いた。
あ~上目ずかいで簪ちゃんに「ありがとう」とか言われたい…。と思いながら書きました。夏休み中の激務で疲れた心が癒された気がします。
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