更識家長男はシスコンである。【完結】   作:イーベル

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ちょっと遅れたのはCGコンプの為に奮闘してたとかそんなんじゃないです。
クリスティーナが可愛くて悶えてたなんてことは無いです。
ちょっと世界を騙してたんです。

そんな前置きは置いといて、本編をどうぞ


青空少女

じっとりと湿気を含んだ風が頬を撫でる。雲一つもない青空。だが照り付けるような暑さは無く、ぽかぽかとした温かさだ。心地がいい。

 

「やあ、久しぶり」

 

後ろから声を掛けられる。男とは違う少し高い声。こいつはいつも後ろから話しかけてくるな……。正面から堂々と話しかければいいものを。振り返り、自分より身長が低い彼女を見下ろそうとする。

が、俺の目に映ったのは水色のドレスからはみ出た細く白い足。

 

「――ん?」

「そんなに足元見てどうしたの? 私の足がそんなに魅力的?」

 

視点を上げて見ると、黒髪の女性がいた。特徴からして間違いなく青天井なのだろうが、外見年齢が違い過ぎる。どういうことだ? 成長したのか? 思考することに没頭して一瞬固まるが、残念ながら俺の頭脳で解は導けそうにない。

 

「どういうことだ? その見た目、成長したのか?」

「ん? ああ~これ? ただ単に君の好みを履き違えていたみたいだったから。ちょっと大きくなってみました」

 

どうよ! と言わんばかりに胸を張る青天井。前回会った時と違って豊かに成長したモノが強調された。どうやら見た目の年齢は自由に調整できるみたいだ。ちょっと待て、こいつ俺も好みって言ったな。ということはつまり……

 

「俺をロリコンだと思っていたってことかよ!」

「いや、ね。ほら君があまりにも『妹、妹』って言うからああいう幼い感じが好きなのかと思ったんだ。クロエさんだっけ? も結構幼いし……だからそのあんまり怒らないで欲しいなー」

「あの見た目だと下手したら娘って言うレベルだぞ……まあいい。それで? 俺をまたこの空間に呼び出した理由は何だ」

 

腑に落ちないのはそこだ。どうしてこの訳の分からないタイミングで呼び出されたのかだ。前回と違い生命(いのち)の危機と言う訳でもない。理由を見つけることが出来ない。

 

「聞きたいことがあって……」

「俺にか? 言っておくがそこまで学があるわけでもないから大した受け答えは出来ないぞ」

「いいの。難しい事を聞く訳じゃ無いから」

 

青天井は軽く深呼吸すると、口を改めて開いた。

 

「本当は前会った時に聞こうと思ってたんだけど、どうして君はそんなに『強さ』を求めるの?」

 

口にしたのはそんなシンプルな問いだった。そんなことは単純すぎて考えることは皆無だったけど、今や俺の一部にも等しい彼女にはその訳を思いのままに語ることにした。

 

「昔、完膚なきまでに叩きのめされた事がある。今じゃ目も当てられないぐらいに無様に敗北した。その時は親父が助けに来て事なきを得たが、情けない姿を妹達に見せちまった。あんなに悔しいと思ったのは初めてだった」

「信じられないね」

「当時は俺も信じられなかったよ。負けるなんて思ってなかったからな……。それからは手を抜いてた鍛錬も必死にやった。自主的に日が昇る前から馬鹿みたいに、いや馬鹿だから体を鍛えた」

 

その習慣は今でも残り、いつも朝早く訓練を始めている。学校へ行く目的は学業から仮眠場所へと変わり、成績はトップから最下位に転落したが代わりに身体能力は大幅に向上した。

我ながら頭の悪い特訓をしたものだ。あの頃はまだ若かったな。

 

「悪い、話がそれた。それで何で強さが欲しいかだったな。要するに俺は妹達に見限られるのが怖かったんだよ」

「怖かった?」

「ああ、怖かったさ。実は妹達は『こんなのお兄ちゃんじゃ無い』だとか、

『こんな兄さんはかっこ悪い』とか思っているんじゃないかって怖くなった。だからそんな不安を捻じ伏せられるだけの『強さ』が欲しかったんだ」

「それで今に至るわけ」

「そうだな」

 

隣で青天井が納得したように何度もうなずく。俺の回答はどうやらお気に召したようだ。

 

「見ても、話を聞いていても根っからの妹依存症……。あなただからこそ納得出来た。でもそれは過去の事でしょ? これからは何のために欲しがるの?」

「さあな。でも()いて理由を付けるなら妹達に褒めて欲しいから、かな」

「フフッ、今も過去も根本にあるのはそれなんでしょうね。面白い人がマスターになってくれて良かった」

 

彼女は笑いをこらえながらそう言った。この空間の色が少しずつ薄れ始めていくことに気が付いた。

 

「どうやら今日はここまでみたい。また今度お話しよう!」

「わかった。寝不足になりそうだから回数は控えてくれ」

「うん! じゃあねマスター」

 

 

▼▼▼

 

俺と空色の空間のつながりは断たれ、ゆっくりと現実へと意識が戻って来た。後頭部に温かくやわらかい感触がしてその正体を突き止める為にゆっくりと瞼を開ける。覗き込むように俺の顔を見ている女性。

 

「あ、起きた。おはよう兄さん」

 

その声を聴いて意識が冴えてきた。俺は刀奈に膝枕をされていたみたいだ。いつものように浅い睡眠ならば、幸せな時間を噛み締められたはずだった。この時ばかりは相棒を恨まざるを得なかった。

 

「いつも言ってるけど、立ったまま寝るのはどうかと思うわ。寝るときはしっかり寝ろっていつも私達に言ってたじゃない」

(バカ)は風邪をひかないんだよ」

「それ、気が付いてないって事でしょ」

「――否定はしない」

 

刀奈は呆れたようにため息をついた。整備室前の廊下で立って寝ていたのは失敗だったか…。

 

「そういえば兄さん。織斑先生が交渉に成功したって言ってたわ。これから話があると思う」

「わかった。情報ありがとう」

 

礼を言ってから、上体を起こしてソファに普通に座り直す。横に並んだ刀奈の顔を見て、二年前と比べて大人びた雰囲気を帯びていると感じた。なんだか寂しさと嬉しさをごちゃ混ぜにしたみたいな感情が()いた。

 

「親父も……こんな気分だったのかもな」

「え?」

「何でもない、それより職員室まで案内してくれないか? さっきの話を直接聞きたい」

「OK、一緒に行きましょう」

 

刀奈は立ち上がると手を差し伸べた。俺はその手を取ってソファから立ち上がった。

 




感想評価等お待ちしております。

では…
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