更識家長男はシスコンである。【完結】   作:イーベル

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いろいろ修正してたら二時間ほど遅れてしまった…本当にすまない。


シスコン、休みを貰う。

 刀奈の案内で職員室に行くと人はまばらで天下のIS学園にしては活気が無い。

 ここにいる人達には戸惑いや焦りが見えない事から、普段通りなのだと思う。

 

 「えっと……先輩に更識さんは何してるんですか?」

 

 振り返ると名簿や参考書を持っている真耶がいた。こうしてみると本当に教師のように見える。――信じられないが。諺に『男子三日会わざれば刮目して見よ』と言う言葉があるぐらいだから彼女もそれぐらい括目して見た方が良いかもしれない。

 

 「いや、ちょっと千冬に話を聞きたくてな」

 「織斑先生は今授業中ですから、もうしばらく時間がかかりますよ」

 

 人が少ないのは授業中だからみたいだ。学校だから当然か。

 

 「どのくらい時間がかかるか分かるか?」

 「あと十分ほどですね」

 「じゃあ待たせてもらってもいいか?」

 「ええ、構いませんよ。お茶でも入れましょうか?」

 「別に気を使わなくていいぞ」

 「そういえば、先輩はコーヒー派でしたね。ちょっと待ってて下さい」

 

 そう言うと、俺の話を聞かずに真耶は荷物を机の上に置くと奥の給湯室に向かった。相変わらず人の話を最後まで聞かないそそっかしい奴だな。

 

 「ねえ兄さん。そういえば聞き損ねてたけど山田先生とどんな関係なの?」

 

 言われてみれば話してなかった気がする。いきなり先輩呼びだからそりゃ気になるか。

 

 「中学の後輩だよ。ああ見えてあいつは生徒会に所属してたんだ」

 「へぇ……でも後輩を気に掛けるなんて珍しいわね。そういうの面倒だとか言いそうなのに」

 「……実際面倒だった。重要書類にお茶こぼしたりしてたぞ」

 

 最初こそ育成に苦労したが、伸びしろは大きかった。最終的に役員で一番仕事ができる奴になったのはビックリしたな。俺の会長時代を支えてくれた一人と言えるだろう。

 

 「尚更分からないわね。兄さんは能力主義でしょ? (うち)でもそうだったじゃない」

 「親父の部下の山田さん、覚えてるか? あの人の娘だよ真耶は。下積み時代に世話になったから恩返しみたいなもんだ」

 「成程、義理堅いのね兄さんは」

 「部下の信頼を得るコツってやつだ。覚えておいて損は無い」

 

 刀奈と話しているとトレーにコップを乗せた真耶が戻って来た。

 

 「先輩と更識さん、こちらにおかけになってお待ち下さい。私はこれで失礼しますね」

 

 真耶は机の上にコップを並べると先程の机に戻って行った。まだ仕事があるのかもしれない。指定されたソファは革張りで高級感が漂う。

 きっとIS学園に来る来客が上流階級が多いからだろう。腰をかけると自重によって程よく沈む。心地がいい。だが、自室がちゃぶ台に座布団がデフォルトだったからなのかあまり落ち着かない。

 

 入れて貰ったコーヒーを口にして、しばらく待つ。徐々にソファの感触に慣れてきたところで千冬がやって来た。

 

 「待たせたな。交渉のことで話があるんだったな」

 「ああ。どの程度まで進んでいる?」

 「今のところパスワードを入手できたのは日本だけだ。他は依然として体制を崩していない」

 

 いきなり「機体をこじ開けるパスワードを教えろ」なんて言われて、「はい分かりました」なんて答える馬鹿は居ない。機体一つ一つが国家機密なんだ。軍用を禁止されているとはいえ、裏では国防の要を担っている。それを一国だけでも聞き出せた千冬の手腕はかなりのものだと思う。いったいどんな借りを国に作っているのやら。

 

 「じゃあ日本所属の専用機はもうダウングレードが可能になったか。束にこのことは?」

 「既に伝えてある。もう作業に取り掛かるそうだ」

 

 そうなると俺の出番は無いに等しい。ダウングレードをするにあたってはもう束の専門分野だ。訓練機の移動作業は終わり、ネットワークは切り離し済み。力仕事もしばらくは必要ない。

 

 「となると……俺はしばらく暇人か」

 「ほぉ、休みを削りながら仕事している私の前でそれを言うか」

 

 千冬は苛立ちを隠さずに、むしろ見せつけるようにそう言った。

 俺のやれることは肉体労働であって、今のような頭脳労働は向いていない。千冬がしている仕事を譲り受けたとしても満足にこなせないだろう。結局のところ選択肢は待機以外にないのだ。

 

 「兄さん。事実でも仕事してる人に面と向かって言うセリフじゃないよ、それ」

 「そうだな、すまない千冬」

 「いやもういい。気にはしていない」

 

 刀奈に釘を刺されたので決して口には出さないが、休むにあたって言い訳を心の中でしておく。

 7月に『銀の福音事件』が発生した後、俺と束、クロエは世界中を飛び回り、ISを回収した。その中で一番危険な目に遭ったのは間違いなく俺であり、酷使されたのも俺のはずなのだ。現在は10月。実に三か月の間無休で働いてきた俺はそろそろ休みをもらってもいいだろう。

 

 問題はこの休暇をどのように過ごすかだ。俺にはこの二年間我慢し続けた事がある。妹に再会することもその一つであったが、これはそれ以上にやりたいことだ。

 それは……妹達と一緒に出掛けることだ。俺は二年前の遊園地以降、出来ていない。

 

 今の俺を例えるなら顔の濡れたアンパンマン、絶にされたウボォーギン。しかし、ひとたび一緒に出かければ、元気100倍、鬼に金棒、死神に斬魄刀。次の戦闘に向けて英気を養えるだろう。

 

 早速職員室から出た後、刀奈と簪を誘ってみるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回は姉妹とデートするよ。やったぜ。

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