更識家長男はシスコンである。【完結】   作:イーベル

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シスターズバトル

 突然のサイレンに戸惑う生徒たちに避難指示を出しながら廊下を駆け抜ける。目的地は学園最深部。あそこにはここの管理システムが存在している。そこで今何が起こっているのかを一刻も早く事態を把握したい。

 そうしなければ、どんな対策を立てればいいのか見当がつかないからだ。

 

 廊下から普段からほぼ人通りが無い通路に入る。複雑に入り組んだ道を減速することなく走り抜けていく。やがて突き当たりにあるナンバーキーにたどり着いた。

 

 焦りからなのかいつもより息が荒れている気がした。空気を大きく吸ってから吐き出して、間違いのないように数字の羅列を打ち込んで扉を開放。中へと足を踏み入れる。

 

 通路には埃を被った書類なのかゴミなのか、よく分からない紙束が積み上げられていた。ここはかつて束がISコアを量産していた時に使っていた場所らしく、整理整頓がされていない。

 出て行った後も貴重な物なのかどうか判断が付かないから手つかずのままなのだろう。

 

 いや、考え事をしている場合ではない。早く管理システムのところへ行かなくては。足の置き場の無いほどちりばめられた紙切れを踏みしめてさらに奥に進んだ。

 

 ▼▼▼

 

 電源を入れてモニターを起動させると、そこに映し出されたのは授業で何度も目にした二機。各国の防衛の為にと、帰国を命じられた彼女たちの専用機だった。

 なぜあいつらがここにいる……? 母国の防衛任務を受け、帰国したはずだ。オルコットもボーデヴィッヒも愛国心のある人間で、その任務を抜け出してここに来た意味が理解できない。

 

 混乱し、情報が上手くまとめ切れない。苛立ちを隠せずに頭をかきむしった。

 

 「――――見つけた」

 

 ゾクッと寒気を感じる。まるで夏場に氷水を背中に入れられたかのようだった。

 私は素早く体を反転。視界に映ったのは黒い機体。

 敵は既にブレードを振りかぶり、目の前まで迫っていた。あと一歩で間合いに入る距離に迫る。とっさに近くにあったパイプ椅子を投げつけて時間を稼いだ。

 椅子は真っ二つに切断されてしまった。少しでも判断が遅れていたら自分がああなっていたことは想像に難しくなかった。

 

 私は刃みたく素手での戦闘は得意ではない。それでも他者を圧倒できるのは圧倒的な身体能力の差があるからであって、IS相手だとその力関係は成立しなくなる。

 だから武器がいる。そうでないとまともに戦う事もままならない。

 

 部屋の奥にある木製の扉を体当たりで破り、廊下を突き進む。細長く一直線に伸びた廊下はISを展開したままでは通ることは出来ない。必然的に敵も走って追いかける事になる。

 生身同士なら私に走って追いつく道理は無い。タイルを蹴って一気に加速、廊下を駆け抜けて開けた空間に出た。

 

 中央はかつて私が操った暮桜の銅像。床には血痕があった。何者かが戦闘を行った後なのだろう。何か良い武器が無いか辺りを見回す。すると奥の机の上にナイフと拳銃が置いてあるのを発見した。

 駆け寄り手に取る。埃を被っていたがナイフの強度自体は問題は無い。だが拳銃の方は弾丸が装てんされておらず、使い物にならない。対ISを想定するなら豆鉄砲みたいなものだから、無くても問題は無い。むしろ腕力で威力を底上げできるナイフの方が幾分か優秀だ。

 

 「あれが暮桜か、手間が省けたな」

 

 追いつかれたみたいだ。右手でナイフを強く握り、敵と暮桜の間に入る。バイザーに隠れて瞳は見えないが、口元は不気味な笑みを浮かべていた。

 

 「……お前の目的は何だ?」

 「…………」

 

 返答はない。聞かれて目的を答えるのは三流以下。かわすのは言葉ではなく刃のみ、という事か。

 敵はスラスターを使い、さっきより素早く距離を詰めてきた。横薙ぎに剣を振るう。

 今度は逃げない。敵の動きを見切り、フットワークを活かして懐に潜り込む!

 スライディングして、太刀筋を掻い潜る。立ち上がって、顔面にナイフを突き刺した。バイザーにヒビが入る。胴体を蹴って再び元の間合いに戻す。

 

 私の経験上ISとの戦闘において、最も絶対防御を発動させやすいのは顔面だ。装甲も薄い、もしくはむき出しになっている事が多く、シールドエネルギーを効率よく削れる。さらに言えば視覚的恐怖を刻みやすい。

 そのような狙いから顔を狙ったのだが……敵は何事もなかったかのように立っている。

 

 「やられたな。流石は姉さんだ」

 

 壊れかけのバイザーに手を添えて、粒子化させた。表情があらわになる。

 つり目に黒髪。まるで私をそのまま幼くしたような容姿。

 

 「まどか――――なのか……?」

 「そうだ、私は織斑まどかだ」

 

 もう会えないと思っていた。その妹が目の前にいる。両親と共に行方をくらましてしまっていた妹が……。

 でもどうして、まどかがISに乗って学園を襲撃しているんだ?

 

 「どうして、って顔だね。姉さん」

 「それはそうだろう。お前今までどこに……」

 「どこに? ハハッ、そうだ……知るわけがないか。姉さんがのうのうと暮らしている間に何があったかなんて。そういう所、本当にイライラする。憎らしくてたまらない!」

 

 まどかは口を堅く結んで私を睨みつけると、剣を私の喉元へ突き出す。ナイフで起動を逸らし、直撃を避けたが、左肩にかすった。スーツが裂けて、赤い直線が肌に引かれた。

 

 「待てまどか! 私はお前と戦う気は……」

 「無くたっていい。私が姉さんを殺すだけ」

 

 焼き尽くせ――――黒騎士

 

 炎がまどかの剣に収束して、剣の大きさが倍以上になった。

 ナイフ一本では流石にあれは防げそうにない。

 

 「ここまでか……」

 

 炎剣が振り下ろされた。熱が私を焼き尽くす直前で何か白い影が見えた。

 

 「零落白夜(れいらくびゃくや)発動!」

 

 あらゆるエネルギーを無力化する剣が炎を切り裂いた。私より少し背が高い背中がなんだか頼もしい。

 

 「大丈夫か千冬姉!?」

 「遅いわ……馬鹿者」

 

 私は素直になれず、いつもの様に文句を言った。




全ては姉の為に、頑張れ一夏君!次回へ続く!!

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