リクエストをくれたポワールさんへ、特にお待たせしました。
お気に入り登録2000件とか調子乗ってました……すいません。
前置きはこの辺にして、どうぞ!
「さて……審判も到着したところで始めようか、『第一回 妹&弟自慢大会』を!」
……あれ? おかしい。数年ぶりに先輩と二人っきりになれると思って来たんですが、到着と同時にその幻想は砕かれ、胸を揉まれ、審判に任命され……いったい何がどうなって……。
「先輩? ど、どういうことなんですか?」
「いや、千冬が誘っても一緒に飲みに来てくれる同僚がいないって言うから、束と一緒に付いて来たんだ。しかしだな……いくらやっても決まらないんだ」
織斑先生に酒飲み友達がいないのは沼とも例えられる酒豪っぷりに教師陣でついて行ける人物がいないからで、決して孤立しているわけでは無いんです。私も知らずに付き合って次の日は……。その話は置いておきましょう。
「決まらないって何が決まらないんですか?」
「何がって、そりゃぁ……決まってんだろ。なぁ?」
「そうだね~」
「そうだな」
当然の如く篠ノ之博士と織斑先生が同調する。そんな知ってて当然みたいな態度何ですか!? まるで私だけが授業について行けてないみたいな雰囲気になってますけど、突然呼び出されてこの状況に対応できる人物がいたら私はビックリです。結局、私はその”決まらないこと”について聞くことにしました。
「いや、それじゃ分かりませんよ……」
「仕方ない教えよう。さっきまで、誰が弟、妹を最も愛しているかについて談義してたんだが、議論は平行線をたどる一方でな。このままではいつまでも決まらない……」
「そ、そうなんですか」
確かに先輩は学生の頃からシスコンで有名だったし、織斑先生も弟の織斑君の事だと目の色を変えます。篠ノ之博士も臨海学校の時の様子からして妹の篠ノ之さんを溺愛していましたし……。決着をつけることは難しいと察しました。
「という訳でルールを決めたんだよね~」
「ああ、この中の誰よりも自分の弟、妹を愛しているのならば、その魅力を第三者に伝えることが出来るはずだ。という訳で真耶にはその第三者になってもらう」
☆
これから行うことは妹、弟の魅力プレゼン対決だ。
ルールはシンプル。まず、公平なテーマを審判に設定してもらう。それに沿ってプレゼン、その結果誰が最も魅力的に感じたかを審判がジャッジ。というものだ。
当初はテーマ等を決めなくても良いのでは? という声も出たが、「お前達の妹の魅力は小一時間で説明できるものなのか?」と、千冬の突っ込みが入ったのでテーマを設定。話す内容を不本意ながら簡略化した。もう一度言う。
束が渡したフリップに真耶がテーマを書き終えたようで、見えるようにひっくり返しテーブルに突き立てた。
「テーマはズバリ、『チャームポイント』です!」
『チャームポイント』その人物の最も魅力的なところ。また、人を最も引き付ける部分のこと。俺達の戦いに相応しいテーマだ。やはり真耶を審判に推薦したのは正解だったと確信する。
テーマが決まったところで、用意していた割り箸くじを引く。確認すると順番は千冬、俺、最後に束という順番に決定した。チッ……と心の中で舌打ちをする。
今回の対決の場合重要になるのはインパクトだ。順番が遅くなればなるほど与えたインパクトは判定まで残りやすい。故に三番を引きたかったが……このくじ引きを制したのは束。一歩リードを許してしまった。
この頂上決戦、力量はほぼ互角。油断は出来ない。彼女たちは俺に匹敵するシスコン・ブラコンなのだ。故に「運」ですら敗因になりえる。
そんなことは頭に入っていないかのように千冬は豪快にジョッキに入ったビールを喉に流し込み、泡のついた口元を親指で拭いその先を舐めた。
「一番手は私だったな。私が押したい一夏のチャームポイントは……『腕』だな」
「腕ですか?」
「ああ。刃の影響もあったのか、最近トレーニングに励んでいるみたいでな。まだまだ未熟ではあるものの引き締まって無駄のない体に変わってきている」
あらゆる競技において審判にも好みが存在する。例を挙げれば野球の球審だ。彼らのストライクゾーンは微妙に異なるし、場合によってはゲームの流れも大きく作用される。故に審判の好みを探ることも試合の内なのだ。
その点千冬はきっちりと把握していた。この話題は間違いなく真耶のストライクゾーンど真ん中。一夏君はそこいらの男子より遥かに高い運動神経を持ち合わせ、その肉体美は女性からしたら魅力的な要素。唯一、弟をアピールする強みを生かしたプレゼン。やはり一筋縄ではいかないな、
「特に普段ISスーツに隠れて見えない上腕が私の一押しでな……」
千冬のプレゼンはこの後三十分ほど続いた。
▼▼▼
「以上だ」
「これからの成長が楽しみですね~織斑君は」
「ああ、次は刃の番だぞ」
そう言って挑戦的な笑みを浮かべる千冬。非の付け所のない弁論。完全無欠そんな言葉がぴったりだ。だが、俺はその完全を妹の愛で乗り越えて見せよう。
「そう急かすな千冬。まだ始まったばかりだろう? ところで真耶、何か飲むか? 今日は無理を言って来て貰ったからな、俺が奢ろう」
「いいんですか? じゃあお言葉に甘えて……カシスオレンジでお願いします」
対話において、楽しく話を聞いて貰う事が個人的に大事だと思っている。断じて俺が気持ち良く話すのではない。それには『リラックス』と『共感』が必要だ。
まずは『リラックス』。アルコールを入れて緊張を弛緩させ、さりげなく真耶の右側に移動する。人間は心臓に近い左側から話しかけられると圧迫感を感じ警戒する。友好的にな印象を与えるにはその逆。右側から話しかける必要がある。
そして『共感』。これは話題の選定の条件。今回のテーマ『チャームポイント』はテーマを絞り込むという役割を
故に、その中から真耶が最も好みそうな物を選択する。
全員で共有している枝豆を口に放り込み、かみ砕く。塩気のあるそれを
「そうだな……俺が押したいチャームポイントは『髪』だ」
「髪ですか。二人とも艶があって、サラサラしてそうで羨ましいです……」
「昔はよくブラッシングとか手伝っていてな。風呂上がり、部屋にブラシ持って来て『お兄ちゃん今日もやってくれる?』って上目遣いで聞いてくるんだ……」
▼▼▼
「う、羨ましいです!」
よし、好感触。一部ではあるが妹達の魅力を余す事無く伝えられた気がする。全く、うちの妹達は罪深い。またファンを増やしてしまった……。いくら真耶でも予防線は張って置かないとな。
「うちの妹が羨ましいか? 絶対にやらんぞ」
「いや、そうじゃなくて……」
「じゃあ、どういうことだよ?」
「そ、それはですね……」
「はいストーップ。束さん待ちくたびれたよ~」
痺れを切らしたように束が真耶の言葉を遮った。
「じゃあ山ちゃんいくよ~箒ちゃんのチャームポイント、それは! 『おっぱい』だよ!」
「ふぇ!?」
駆け引きの欠片もないな……。真耶が混乱しているじゃないか……グラスを倒してしまっている。そんなの知ったこっちゃ無いと言わんばかりに束は話を続けた。
「なんといってもあの揉み心地が……」
▼▼▼
「以上だよ~」
俺と千冬はまるで打ち合わせをしていたかのように同時にため息をついた。
さて……肝心の結果はどうなったのやら。
「真耶、結果を聞かせてもらおうか」
「はい織斑先生。ズバリ優勝は……刃先輩です!」
それを聞いてカウンター席で静かにガッツポーズを取る。勝つべくして勝った。俺のシスコン力はこの中で最も高いと確信できる戦いだった。
にもかかわらず千冬と束はあまり悔しそうな顔をせずに席を立って会計を済ましていた。
何故だ。彼女らを親しい身としては違和感しか感じない。だがそれも次の言葉で勘違いである事に気付く。
「やっくん、たかが
「全くだな……これはまだ序章にすぎん。刃、私達の戦いはこれからだ。二次会に参加しないつもりか?」
あまりにも安い挑発。だが、ここで引けば俺の勝ちはまぐれの様に扱われるだろう。参加しない訳にはいかない。そこまでの覚悟があるのであれば完膚なきまでに叩きのめしてやる。
「行くぞ真耶。俺たちの戦いは……まだこれからだ!!」
最終成績 百戦 刃三十三勝、千冬三十三勝、束三十三勝、一分け。
おかげさまで無事完結。
感想評価をくださった皆様、ありがとうございました。
ここまでモチベーションを絶やさずにやれたのは皆様のおかげです。
これからも何かしらの創作は続けていきますで見て下されば嬉しいです。
まだリクエストを貰っているのでまずはそこからですね。
この話の感想等お待ちしております。
では!