市が運営するISアリーナ。ここで開催される行事『キャノンボール・ファスト』。
専用機持ちの増加もあってリレー制で行われるバトルレースは、チーム数の減少を補うため教員チームの参加が提案され、私達生徒会によってその案は可決された。
そして訓練機部門も終了し、残すは専用機部門。専用機持ち三チームが出そろう。チーム分けは以下の通り。
第一チーム:《第一走》凰鈴音 《第二走》シャルロット・デュノア《アンカー》ラウラ・ボーデヴィッヒ
第二チーム:《第一走》セシリア・オルコット《第二走》篠ノ之箒《アンカー》織斑一夏
第三チーム:《第一走》更識簪、《第二走》フォルテ・サファイア《アンカー》更識
そして教員選抜チームの入場。誰が選抜されるのかはなんとなく予想がついている。
まず織斑先生。ここは鉄板。初代ブリュンヒルデを参加させない訳が無い。集客も良さそうだし。
そして山田先生。なんか押し付けられても断れなそうだ。最後の一人は誰かしらジャンケンとかで決めているんじゃなかろうか……。
「簪ちゃんは誰が来ると思う?」
「え? えっと……織斑先生は当然として、篠ノ之博士辺りが出てくる……かも」
そうだった。篠ノ之博士も今年から教員だから選定の範囲内。だとすると気は抜いていられ無さそうね……。ある意味一番の強敵かもしれない。
気を引き締めた上で、カタパルトを見つめる。最初に出て来たのは山田先生。ラファールのカスタム機に乗って登場。
その次は織斑先生。搭乗機は打鉄。目立った変更点は見られないものの、恐らく彼女の動きに耐えられるようにカスタムしてあるだろう。
となるとアンカーは篠ノ之博士か……。そう思ったがその予想は裏切られた。
《アンカー》更識
ディスプレイには確かにそう映っていた。
▼▼▼
束から連絡を受けた俺はIS学園に来ていた。何でも今日は授業参観らしい。
仕事はどうしたって? 悪いな小林。残業代付けとくから、非力な私を許してくれ。
それにしてもIS学園ってすごいな! 市のアリーナを貸し切りでいったいどんな授業をやるんだろうか? きっとIS戦闘訓練に違いない。だとしたら写真の撮りがいがある。ここ数年運動会にすら行けなかったからな! 今日の為に新調した一眼レフが火を吹くぜ!
上機嫌の俺は周囲の目を気にせずスキップで進んでいると、アリーナの外周でいつものうさ耳ドレスの天災が手を振ってることに気が付いた。
「おっ! やっくんよく来たね~」
「束か。お前が案内役とは明日は槍でも降るのか?」
それぐらいあり得ない現象だった。本来こいつは座標データを送り付けて、そこで布団を敷いて寝ているぐらいに興味がある事以外怠惰である。それはラボに居候していた時に把握している。
「いやいや~ちょっと特殊な場所に入口があるからね。他の親御さん達を案内するよりやっくん一人を案内した方が楽だから残ったんだよ~」
「成程な。それなら納得だ」
「じゃあこっちね~」
束は「関係者以外立ち入り禁止」と書かれたドアを開けた。俺は束の後ろに続いて暗い廊下を歩く。
「そう言えば、体の調子はどう?」
「まあ問題ない。ほぼ元通りだ。そうじゃ無かったら楯無に再襲名してねぇよ」
「そっか~。じゃあもう
確認するようにそう言った。こいつなりに心配してくれたのだろうか? 良い所あるじゃないか。妹以外にも心配出来たんだな。立派だぜ束。俺だったら間違いなく気にかけない。
更衣室の前で立ち止まると、拡張領域から何やら取り出した。
「ここでいったんこれに着替えて貰える?」
「これは……俺が着ていた戦闘着か?」
「そうだよ~まだラボにストックがあったから持って来たんだ~」
「やだよめんどくせぇ。こちとら早起きしてスーツでビシッと決めて来てんだよ」
授業参観はあの子の両親はどんな人? みたいな感じで子供たちの視線を浴びる場だ。下手に目立ちすぎても駄目。ダサ過ぎても駄目。ほどほどにフォーマルな服装が大事なのだ。俺も学生時代苦労した物だ。
親父、おふくろ……結婚式みたいな服装は止めろってあれほど……。
まあともかく、
「まあ聞いてよやっくん。ここのアリーナは三六〇度観客に囲まれているんだよ。もしそんな中に工作員が……」
「それを早く言えよバカ! 今すぐ用意するからちょっと待ってろ!!」
ひったくるようにして戦闘着を奪い取って更衣室に駆け込む。
授業中、無防備な刀奈や簪に人ごみに紛れたスナイパーが狙撃を……なんてことになったら……。
絶対に守り切って見せる。この授業参観、孤独な戦いを乗り越えて見せる!
スーツを雑に脱ぎ捨てて、戦闘着に着替える。この間一分とかからない。世界中のIS回収していた時に身に付けた早や着替えを久々に披露し、そのまま廊下に飛び出る。このとき、カメラと三脚を持つ事を忘れない。
「さあやっくん、後はこのまま真っ直ぐ進んでいけば会場だよ~。急いでね! この間にも妹ちゃん達が――」
その言葉を最後まで聞くことなく全力で駆けだす。
長廊下の先に開け放たれた出口が
響く大歓声。俺を見つめる全方位からの視線。そして巨大なサーキットコースが目に入った。
『教員チーム、アンカー! 世界を制覇した『青い稲妻』! 更識楯無の登場だ――!!』
やたらとテンション高い実況。それに呼応し更に大きくなる歓声。
俺は状況を呑み込めずポカンと口を開けて、その場に立ち尽くしていた。
次回は後編。
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