兄さんがいなくなってから半年ほどが経ち、私は父さんにあることを頼みに部屋に出向いていた。単刀直入に言えば
私がそう思いったったのも
父さんの頃は腕っぷしの強さと義理と人情といったものが重視され半極道のような特徴だったが、兄さんが当主に変わったとたんにハッキング等による情報収集部隊、護衛に長けた人材の大量採用を行い情報交換を行いながら護衛をするスタイルに変更された。
故にアナログな手段で指揮を執っていた父さんとは連携が上手くいっていないのも無理はない。
その点私が当主になれば兄さんまでとはいかずとも、機械の扱いが絶望的な父さんよりはましだ。
「止めておけ。お前が考えている以上に
いつものやさしい表情ではなく鋭く凍り付かせるようなその目つき、威圧感。これが私達に見せてこなかった顔。ただ立っているだけでも私は逃げ出してしまいたくなる。…でもそれじゃダメなんだ。兄さんはいなくなってしまった。父さんだっていつまでもいるわけじゃない。だからこれからは私が兄さんの代わりに簪ちゃんを、家族を、この家を守らなくちゃいけないんだ。
「……覚悟は決まってる。いずれは誰かがやらなくちゃいけないんでしょう?だったら…私がやる。兄さんの代わりを私が……! これは、ここだけは譲れない。」
「今は認められない。この程度でそのざまならのこのこ出て行ったところで無駄死にだ」
あっさりと却下されてしまった。決意をなかったことにされてしまったようで腹が立った。それは爪が手の平に食い込む痛みが気にならないほどだった。
「…だが覚悟は伝わった。二年だ。二年でお前を鍛え上げる。そのあとでもう一度その覚悟を問おう。だから死に物狂いでついてこい。明日から始めるぞ。いいな?」
「う、うんわかったわ」
正直断られたと思ったからちょっと拍子抜けだ。思わず間抜けな返事をしてしまった。
「…ハァ。もっとシャキッと返事をしろ。明日から動きやすい格好で5時には道場に来い。いいな?」
「はい!」
決意を改めて固め、まだ見えぬ兄の背中を目指し歩き出す。いつの日か追い越して見せると心に決めて…。
☆
VTシステム、正式名称はヴァルキリートレースシステム。モンドグロッソ各部門の受賞者、ヴァルキリーの動きを模倣し搭乗者に関係なく機体性能を引き出すことが出来る。
だが身に余る力はその身を滅ぼす。搭乗者は使用後、肉体的及び精神的に大きなダメージを負う。そのことを束は設計から見抜いていたため何度も警告を促して来た。
「だけど中々聞き入れてもらえないんだよね~」
「そうかそれは大変だな。まあ頑張ってくれ」
彼は興味も関係もないのもあって返事はかなり適当だ。対岸の火事としてまともに取り合ってくれない。けれど私とて伊達に半年彼と暮らしている訳ではない。こういうときどうすれば彼が動くかも
「まあそう言わずに聞いてよ。ここにやっくんの妹の写真があるんだけど……」
そう言って一枚の写真を懐から取り出す。つい先日入手した「登校する姉妹シリーズ」の最新版だ。姉妹が制服で家の門からそろって出てきたところが収められている。
それを目にしたとき彼は目を見開き写真に手を伸ばす。
「おっと! 危ないね、束さんじゃなかったら取られていたよ」
間一髪で写真をその手から遠ざける。まさに目にも止まらぬ速さでとはこの事だ。
「話を聞いてくれればさらにもう二枚は用意してあるけどどうする?」
「さて、どこまで聞いていたかわからないからもう一度話して貰えるか束?」
相変わらず妹のこととなると変わり身が早い、聞く姿勢は既に真剣そのものだ。私も人のことは言えないがちょろいなと思ってしまった。私はVTシステムの危険性とその対応についてもう一度話し始める。
▼▼▼
「なるほどなそれで……聞き入れて貰えないなら腕ずくでってことか? それ以外ならお前がハッキングすれば済む話だからな」
彼が言ったように聞く耳を持たないなら腕ずくで従えるしかない。データを消したところでまた研究を再開されてしまうのなら意味がない。
「話が早くて助かるよ。武器はこっちで用意するしリハビリの仕上げには丁度いいでしょう?」
「ああ、それに刀奈はISに関わりたいと言っていたからな……そのために危険はなるべく取り除いておきたい」
実に彼らしい理由。たとえ離れていたとしても第一に妹の為とは……シスコンが発揮されている。
「妹達の住みやすい世界の為に一肌脱ぎますかね」
彼のやる気は当初とは比べ物にならないぐらいに上昇していく。それもまた彼がシスコンであるからだ。
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