「あら、こんなところに誰ですかー?」
間延びしたそれでいて、よく聞こえる声がする。
「私以外にここには来れないはずなのに……乙女の秘密を覗いちゃう悪い子はどこかなー?」
この声を自分はよく知っている。
ただし画面の向こう側でだ。
「あ、こんなところにいましたかー。サイバーゴーストなんて希薄すぎてわかりませんでした。……じゃあ、消される用意はいいですか?」
声色が変わる、とても冷たいものに。
慌てて身振り手振り、声まで出して、自分の現状を伝える。
見えている世界にノイズが入るほどの存在がそこにはいた。
BB、月の裏側の世界の構築者にして支配者。
彼女の一存で消されてしまうほどに、自分の存在は薄っぺらいことが自覚できた。
巨象の足元にいる、バクテリアくらいの差である。
「って、あら?」
とたんに、ノイズ混じりの世界から、クリアな世界へと変わる。
まるで目の前の存在が根底から変わってしまったかのように。
そこから先は、スムーズな応答ができた。
彼女が自我を持ってしまった理由、それを行った人物とそしてその末路も話した。
そしてここが、ムーンセルを掌握する前のBBと平行してある掌握したBBの隠れべやであることを。
「ふーん、つまりあなたが私を観測し直したから、本来ムーンセルに飲まれているはずBBちゃんは、BBちゃんになれていると。理論が成り立っていませんね」
信じてもらう他なかった。
「でもいいんです。BBちゃんは、都合のいいことは受け入れちゃうタチですから」
一応の安全は確保できたわけだ。
「ほとんど感知できないサイズMBくらいの存在に助けられているなんて、そんなのBBちゃん我慢できません」
教鞭をこちらに向けながら、
「あなたを、
嫌な予感がした、僅かな希望を持って男だということを話したが
「それは残ねーん。一途なBBちゃんが選択肢として男を残すはずがないじゃないですか」
デスヨネー。
「というわけで、愛らしい後輩ちゃん計画発動です」
後輩ちゃん計画の骨子が決まればあとは、ムーンセルの力を利用すれば何ら問題なく、15くらいの中学生になるはずだったが、
「えっと、よくにあってますよ」
「おバカ!! なんてことしてくれたんですか!! これじゃ小学生じゃないですか?!」
間に立てば、縦の意味でも横の意味でも谷である。
着ている月原中学校制服として作られた服は、完全に無理して妹が姉の制服を着ている状態である。
メルトの萌え袖+膝下20センチまで隠れる絶対領域皆無のスカートといえばいいだろうか。
とにかく、無理がある。
これもかわいいから大丈夫です、先輩と無理して言ったものの。
「そんな諦めた顔で言われても説得力が湧きませんよ」
そんなに諦めた顔をしていたのだろうか。
ちなみに名前に関しては、どこからか現れた
ゴスロリとか、人形としての人生とかはなんとか阻止した。
名前の由来はFEから来ている名である。
しかし、幸せな時間は終わりを告げる。
月の裏側が、終を迎えるのだ。
そのことに悔いはないし、何より彼女にとってのハッピーエンドを見れたからいいとしよう。
崩れる世界で、正座しながら天井を眺めていると、床が抜けた。
『私を
聖杯―――それは願いを叶えるもの。