戦闘終了後、契約を終えたキャスターが聞いてきた。
「盾の嬢ちゃん、あんた宝具はどうしたよ」
無論のことながら、彼女は自分の真名を知らない。
故に宝具がなんなのか知らない。
これは致命的でということで、キャスター主導の元、宝具解禁のための模擬戦が組まれることとなった。
何故かその相手は、私。
「なんでですか? あなたでも相手は十分務まるでしょうに」
「それじゃダメなんだよ。この先にいる誰かを倒すためにはな」
「宝具がいると?」
「それに、あの二人も休ませておいたほうがいい」
「あの二人……そちらのほうが主目的じゃないんですか?」
「いんや、宝具がなきゃ、英霊じゃねぇんだよ。ちっこい嬢ちゃんみてぇな、イレギュラーな存在にすらあるんだからな」
「いつ知ったの?」
「あの時だ、お前さんの宝具については、ある程度読みが付いてる。じゃなきゃ俺はお前にも触ってらぁ」
「あ、やっぱり気がついたんだ」
「眼帯のネェちゃんがもしあの時のお前さんを触ってたらと思うとゾッとしねぇな」
「相手くらいは選べるよ」
「そうかい」
夢を見ている。
そう結論づけられるほどに、その荒野には――
―――無数の剣が突き立てられていた。
自分は、ファエナがマシュと模擬戦をするのを見るまでもなく、疲れ果てていたのか、さほど荒れていなかった民家で眠りについてしまった。
のだと思う、サーヴァントとつながったマスターは、英霊が英霊になるまでの道のりを夢で見るのだという。
これもその一つなのだろうか。
見回せば小高い丘があった。
丘の上には男がいた。
男は背を向けこちらを見ることもなく、ただ一言、
「君が、あの子のマスターか?――いや、君もというべきだろう」
「あなたは?」
「私か? 私は、君たちがファエナと呼ぶ、―――――の父親に当たる存在だ」
聞き取れなかった、いや、ここが彼女の中だとして、あえて聞き取らせなかったのかもしれない。すぐにいやが応にも聞くことになるとそう言う意味で。
「私とあの子に面識そのものはない。しかし、私を引き継ぐ形であの子はこの世界を再現できる」
「それは――」
言葉を遮りながら、男が続けた、
「――言うに及ばず宝具と呼ばれるものだろう。私にも使えたはずなのだがね。やはり私は彼のようにはなれない」
まるで男は自嘲するように言った。
「正義の味方に憧れたのだ。記憶がすり切れるほどの正義の味方に、そんな彼に憧れた男がいたんだ。男は二度目の人生で、彼の力を手に入れた。そんな男の昔話だ」
目が覚めると、まだここは夢の中なんだと思えた。
無限に続く襖と畳、まるで牢獄のようにさえ感じられた。
温もりを感じるはずの木の天井ですら、金属よりも冷たく感じたほどだ。
「気がつかれましたか?」
声がした方に目を向けると、女性がいた。
両足は見えず、両手はその和服には似合わない、白い手袋で隠されていた。
髪が前にたれており、その表情をうかがい知ることはできない。
「あなたは?」
「私ですか? 私から名乗るのも久しいことですが、あなたがたが契約したファエナと呼ばれるものの生みの親、母親に該当する人物です」
「母親、ですか」
「もっとも、母親らしいことはできず、あの子を自らの腹に入れたことはありません。が、それでも一応生みの親と言えます」
何故か、自らを嘲るように母親という言葉を紡ぎ出す彼女をじっと私は見ていた。
「さて、どこから語りましょうか。そうですね、力があったが故に道具にされた女の話をしましょう」
次回も同じく