ある日起きたら小さくなっていた。
「赤ちゃーん。ママですよー」
見知らぬ縦長の金髪の若い女に日本語で言われた。
「あっ。そう言えば名前を考えていなかった」
しょぼそうな白衣の男が出てきた。青みがかった銀髪だった。
「まあ。それは困ったわねえ」
「うーむ。ブルマなんてどうじゃ? フィット感のよさそうな名前じゃ」
「だったらこの娘にぴったりね」
「もう少し考えてやったらどう?」
ベッドから覗き込むように12歳くらいの女の子がいた。
「あら? ダメかしら? 喜んでるように見えるけど」
「あぎゃあああ。うんぎゃああああ」
「ほら。喜んでるわ」
「そっかなあ」
抵抗むなしく、ブルマと名付けられてしまった。
俺がドラゴンボールのブルマとして転生した直後の話である。
俺はいろいろ考えた。女としての生。何度か死ぬ未来。ヤムチャやベジータと交わる原作の流れ。
吐き気がした。こんなものは耐えられない。男と交わるくらいなら死んだ方がマシだ。上手くいけば生き返られるし。
とりあえず原作は壊すことにした。ヤムチャともベジータともくっつかない。レズだろうが女の子と寝たい。ドラゴンボールで男に性転換したいくらいだ。うんそうしよう。
問題はベジータが抜けるかもしれないことか。極悪人から改心できずブウ戦で復帰できない。まあその分悟飯を鍛えておけばいいか。あいつは押しに弱いから鬱陶しく修行しろと言えば修行するだろう。才能もベジータや悟空を上回るらしいからビルスやゴールデンフリーザにも対抗できるはず。悟空が万一心臓病で死んだときにも悟飯が強ければ人造人間に勝てるしな。
なんだ。余裕じゃん。ドラゴンボール転生ノーデス攻略のカギは悟飯が握っていたんだな。
となると悟空をチチと結婚させることも重要になるな。二人の出会いは原作をなぞろう。
その後、おもらしの羞恥に耐えつつ成長していった。母親は美人だが授乳にエロさは感じなかった。女に生まれたからだろうか。鳥山絵のギャグキャラだからだろうか。
俺の頭脳はそれはまあ良かった。想像力の点では原作ブルマに及ばないが、計算力はおそらく同等。前世の知識のおかげでずる賢さを持つ。
とりあえず趣味でガンダムのようなロボットを作ろうと思う。上手くいけば実践に役立つし。あとは筋トレ理論の研究だな。これも悟飯の修行に役立つかもしれない。
それと、俺も男だったから、自分がどこまで強くなれるのかに興味がある。もちろんこの世界で最強なんてのは無理だろうが、舞空術で空を飛んだりかめはめ波を撃ったりしてみたい。実はグレートサイヤマンみたいなこともしてみたかったりする。
5歳の時に銀河パトロールのジャコと出会った。ジャコ自身にはあまり興味はないが、宇宙船の反重力装置と光線銃とタイムマシンには興味があったので見せてもらった。俺の能力では覚え切れないのでメモをしまくった。
宇宙船を操縦させてもらったところ、センスがあるらしく銀河パトロールに入らないかと誘われた。ヒーローには憧れるがサラリーマンは嫌だと言った。かわいくないガキだと返された。
ちょうどその頃に射程2000mの光線銃が完成した。大きさは子供が両手で持てる程度だが威力はガンダムのビームライフルと変わらないと思われる。まあホイポイカプセルの技術でエネルギーと断熱材を隠してるだけでそれを表に出せばビームライフル並の大きさになるが。
小学校に入る頃に、武術の訓練を真剣に始めた。俺は腸内細菌健康論を信じているので主に山でトレーニングをした。食料もできるだけ加工の少ない物を栄養のバランスよく食べた。
俺は日々健康になっていった。そのおかげか多少頭の回転も早くなり、7歳の初めに重力装置の開発に成功した。自分のトレーニングと巨大ロボットの機動性強化に使うつもりである。
10歳の頃、それなりに納得できるロボットの開発に成功した。しかし強すぎる力は余計な戦いを生むので、誰かに売ったりはしない。とは言え寝かせておくのももったいないのでジャコに寄付した。
11歳の頃には、2倍の重力を克服していた。
背もそれなりに高くなり、戦えそうだったので、地元の格闘大会に出てみた。地元と言っても西の都だからかなり大きな大会だ。U12に部で軽く優勝できた。来年はU15に出ることにした。
さて12歳。2.5倍の重力を克服していた俺は、身長158cm、体重45kgとなっていた。日本の感覚で言えば小学生としては大きい。しかし相手は白人どころか獣人も混じっている中学生。特に3回戦の男子は身長250cm体重200kgもあるライオン人間だった。まず見た目に恐怖してしまい、体が固まった。実際ぶつかってみて力の差も感じた。一方的にボコられ、死の恐怖も感じたがセコンドが降参のタオルを投げてくれた。
セコンドはお嬢様を怪我させてしまったと言って顔面蒼白だった。俺は気にするなと言っておいた。もちろん父のブリーフも彼を攻めたりはしなかった。
やはり種族の差は大きい。恐い。サイヤ人やフリーザはこんなものではないというのに。
武道を辞めたくなったが、その度に舞空術とかめはめ波を扱う自分を思い浮かべ、奮起した。この場合大会に出る必要はないかもしれないが、訓練したら試してみたくなるのが武道家なのである。
13歳の大会では準決勝で獣人間に当たった。3m近いヒグマだった。
しかし俺は3倍の重力を克服し、体重も53kgまでビルドアップしていた。頭脳を生かした読み、スピードを生かしたヒットアンドアウェイの戦術をとり、攻撃を的確に急所に当てていった。
しかし敵の爪が首の近くに当たり、出血が酷くなったのでドクターストップとなった。
セコンドは卑怯だなんだ言っていたが俺は文句を言わなかった。今後俺は殺し合いの場に身を投じるかもしれないのだ。この程度で文句を言っていられない。
14歳の時は大会に獣人が出ていなかった。優勝できたが、今度こそ獣人を血祭りにと意気込んでいただけに拍子抜けだった。来年は天下一武道会に参加しようかなあなんて思ったが、5年に一度の開催でそれは3年後だった。原作が始まっている。時が経つのは早い。
15歳では大人の部に挑戦してみた。かつて俺をボコってくれたライオンとヒグマもちょうど参戦していた。しかし、この時の俺は女の体になっていた。胸と尻が性的なアピールをしているのだ。身長165cm、体重58kgとパワー系のプロポーションだが、ここの男達はむしろそんな体型を好んだ。目線が気持ち悪かった。試合では手を抜かれた。
なあなあな感じで進み、優勝してしまった。まあ本来の実力でも1、2番くらいの強さはあったが。マスコミのインタビューはうざいので金の力で黙らせた。
そして16歳。春にドラゴンレーダーを完成させ、夏休みが来る。いざ、ドラゴンボールの原作へ。
大人顔負けの力を手に入れた自信はあったが、まだ恐竜や銃器は恐い。安全第一に弾丸を通さない特殊スーツと巨大ロボットのホイポイカプセルを用意した。これらはグレートサイヤマンのようにボタンひとつで展開するようになっている。また、冒険を楽しむためのワイヤーショットと空気圧で飛ぶ立体駆動装置も用意した。普段から森でトレーニングをしていることもあり、ターザンのような移動が可能である。
移動はバイクとジェットフライヤーで行う。
実家にあった二星球、北の谷にあった五星球を手にいれる。次はとうとう悟空と対面か。
恐竜のいる森に入った。恐いから特殊スーツを着て光線銃を出しておいた。運良く獣には襲われず、悟空の近くまで来れた。
「う、うわあああ! なんだおめえ! 妖怪か!」
バイクを壊されたくないのでとりあえずホイポイカプセルに戻す。そして両手を上げる。
「うわ! 消えた! 妖術か!」
「違う! 俺は人間の女だ! 戦闘の意志はない!」
「人間!? ウソをつけ! おめえみたいな人間オラは知んねえぞ!」
悟空は警戒して俺に如意棒を向ける。
めんどくさいなあ。
「とにかく俺は女だ! 女は大切にするもんだ! そうだろ!」
「く、くぅうう。そうだな。じっちゃん言ってたもんな。おい女! 怪しい真似するんじゃねえぞ!」
悟空は俺の目の前に来る。クンクンと臭いを嗅ぐ。
うわっ。こいつくせえ。風呂入ってないな。
「おい女! お前目も鼻も口もねえじゃねえか! どうやってオラのこと見てんだ!」
特殊スーツのままではダメか。しょうがない。解除する。
「うわあああ! やっぱり妖怪!」
「違う! 俺は女だぞ!」
「く、ぎぎぎっ」
恐いなあもう。なんでこんなことで命の危険を感じなあかんのよ。
その後なんとか説得し、共に旅に出る。誘い文句は「孫悟飯の師匠に会えるかもしれないぞ」だった。
恐竜が恐いのでジェットフライヤーでとっとと森を出る。悟空はまた妖怪だなんだ叫んだのだった。次のドラゴンボールを求めて海へ。孤島にちょこんと乗った家を発見する。ジェットフライヤーを止めてノックすると、そこからはファンキーな爺さんが。
「むっ。ピチピチギャルがわしの家へやってきたじゃと!? いかんいかん、妄想のし過ぎか」
「お爺さん、こういうボールをいただけませんか? なんだったら多少のサービスはしますので」
「サ、サービス!?」
その後、パンチラと肩たたきによってドラゴンボールをゲットした。悟空は孫悟飯の昔話を聞いて、弟子になるとかなんとか言っていた。筋斗雲はくれなかった。
再びジェットフライヤーで移動する。そこは静まり返った街だった。
ドラゴンボールの反応がある民家へ向かい、ノックをする。
「ごめんくださーい!」
反応がない。うーん、留守か。
「退いてろ」
悟空はそう言うと、ドアの前で構える。まさか。
「ちょっ」
「ほいっと。ほら、開いたぞ」
正拳突きで鍵を壊し、ドアを開いてしまった。こういうことやっちゃうんだよねえ。まあ金はいくらでもあるから弁償はできるが。
「とーーー!」
おっ、斧を持ったおっさんが走ってきたぞ。そして悟空に命中。斧が壊れ、悟空は頭を抱えてうずくまる。
そう言えばこんなのもあったな。ウーロンの街か。
「す、すみませんウーロン様。しかし娘だけは!」
やはりウーロンだったか。
その後交渉を行った。ウーロンを退治する代わりにドラゴンボールを得るのだ。
種は分かっているので俺が戦闘を買って出た。
変装せずふつうに半袖半ズボンで待機する?、紳士服のイケメンに化けたウーロンが花束を持ってやってきた。
「むっ、ピチピチギャル! しかもその格好、都会の娘だな」
「あら? いい男じゃないの」
ウーロンはうれしそうな顔で寄ってくる。俺も笑顔で演じる。ウーロンは目の前で立ち止まり、紳士らしく一礼。その顔面に俺の膝ゲリが迫った。
「このような場所に花がべっ」
膝は綺麗に決まり、ウーロンは一撃で気絶した。変身は解ける。当然の帰結である。
ギャルのパンティを、などと言われたら困るのでウーロンは村に置いておき、次のドラゴンボールへ向かう。その前に、荒野があった。悟空のレベル上げにヤムチャと戦わせることにした。
疲れたから休憩などと適当な理由を作って広野に降りた。ホイポイカプセルで家を出し、特殊スーツに身を包んで寝る。
と、不意にエンジン音が聞こえた。それは徐々に近づいてきて、家の傍で止まる。
「おい! 腑抜けども! 俺は荒野の盗賊ヤムチャ様だ! 死にたくなかったら有り金全部とカプセルを渡すんだな!」
「外がうるせえな。何て言ってんだ?」
「泥棒だ。懲らしめてやれ」
「泥棒? 悪いやつなんか? よーし」
カプセルハウスから出る。俺はスーツを着たままで。手には一応銃を持っておく。
「き、貴様! なんだその格好は!」
ヤムチャは俺を見るなり怒鳴った。だが、その後にたじろぎ始める。
「む、胸があるじゃないか! 貴様よもや女か!」
ヤムチャは顔を真っ赤にして言う。そうか。そう言えばこんな設定もあったな。
めんどくさいなあ。
「悟空、やっちゃって」
「ええんか?」
「な、何!? 舐めやがって! バカなガキめ! く、くうううっ。覚えてやがれ!」
「ヤ、ヤムチャ様ー!」
ヤムチャはそう言うと去っていった。
レベル上げにもならんとは。使えんやつ。
「なんだったんだ。あいつら」
ヤムチャは放っておき、次のドラゴンボールへ。
ドラゴンレーダーはフライパン山を指していた。しかしこの山は燃えていて近づけない。これは神の炎なので水では消えない。亀仙人に消火を頼むべきである。
そこへ、怒りの形相の牛魔王とチチがやってきた。
「ごらあああ! またオラの宝さ盗みに来ただか!」
「出てってけろー!」
牛魔王は悟空に斧を投げ、チチは俺に光線銃を放つ。
「あっぢぢちっ」
あっ、言うほど熱くなかった。多少火傷したが服は貫通していない。さすがは俺の服。
「ぐわあっ」
悟空は如意棒で斧を弾こうとしたが、斧は思いの外重かったようで、逆に悟空が弾き飛ばされた。
牛魔王は猛烈なスピードで悟空の追撃に向かう。
こいつはやばい。久しぶりに死の緊張感が出てきた。
「お、お待ちください! 我々は亀仙人様の知人です!」
「か、亀仙人様あ!」
牛魔王の動きがピタリと止まる。
「出てってけろー!」
チチは止まらない。頭の兜をブーメランのように投げる。
危なっ。ギリギリで回避する。
「うーっ」
俺を睨むチチ。兜はブーメランのようにチチへ向かって返っていく。俺は石を拾い、兜へぶつける。兜は方向を変えて飛んでいく。
「あっ。待ってけろー!」
これで時間は稼げたな。
「お、おめえそれ! 如意棒じゃねえか! どこでさ手に入れた!?」
牛魔王の方もなんとかなりそうだ。
孫悟飯の縁もあり、なんとか話はついた。亀仙人をつれてくればドラゴンボールはくれることになった。早速ジェットフライヤーで亀ハウスへ向かう。道中悟空はチチにパンパンやっていた。悟飯フラグの完成である。
「ぬおおっ。またピチピチギャルが現れよった! もしやわしのことが好きなのか!」
「亀仙人様。実はお願いが」
「む? お願い? しかし、わしは暇ではないからのお」
「叶えてくれたら裸で背中流したりして」
「は、裸あ!? み、見ちゃってもいいのか!?」
「偶然見えちゃうのはしょうがないかな」
「くっ、くくくっ。ようし分かった。亀ちゃん頑張っちゃうもんねー」
そういや亀のツッコミがないなあと思いつつ、ジェットフライヤーで再びフライパン山へ。亀仙人は人数オーバーにより小さいガメラに乗ってやってきた。
亀仙人のかめはめ波で火は消える。ドラゴンボールは簡単にゲット。俺は約束通り亀仙人と風呂に入った。亀仙人の鼻血が体について汚かった。あと嫌らしい手つきで尻と胸を何度も触られた。ムカついたが我慢した。
兎人参は特に問題なし。よって最後の難関、ピラフの番となる。
特殊スーツに身を包み、今まで秘匿してきたスイッチをオン。
高さ約6m、重さ約10tの人形ロボットが出現し、俺はそのコックピットに包まれる。
「うわあああ! な、なんだあ!」
「行くぞ悟空! あの城を落とす!」
ピラフが悪人ということは警察に確認済みである。光線銃で門を溶かし、勝手に侵入する。悟空は驚きつつも後ろを付いてくる。
「オラオラオラ!」
ホイポイカプセルで巨大ドリルを取りだし、壁を削っていく。程なく貫通。ロボットが通れるように穴で円を描き、蹴って倒す。
「ご、ごらあきしゃまあああ! 人んちに何やっとるかあああ! 俺をピラフ様だと知ってのことかあああ!」
ピラフ、マイ、犬もロボットに乗ってやってきた。三体のロボットはすぐさま合体し、俺のものよりやや小型な一体となる。
合体中に攻撃してもよかったが、勝てる自信があるから合体させてあげた。
「死ねえええ!」
ピラフはいきなりミサイルを3発放った。俺はロボットを後ろに急加速させ、飛び上がって回避する。
反重力装置のなせる技だ。体への負荷は大きいが、俺は今年3.5倍の重力を克服したし特殊スーツもある。問題ない。
「マイは生かしてやってもいいが、犬とピラフはいらん!」
俺は光線銃で反撃する。真ん中のマイを避けて上のピラフと下の犬を二連射。見事命中し、ピラフマシンは爆破した。
「ひゃあー。すっげえなあおめえ」
悟空は一応生死確認をする。三人とも生きているようだ。ピラフはドラゴンボールを懐に持っていた。
さあ、いよいよシェンロンとのご対面だ。
願いは、正直迷っている。男になりたい気分はあるが、女として頑張ってきた自負がある。これをやめてしまうのはもったいない気がする。だから殺されかかってるかわいいお姫様をここに瞬間移動させて、とかそういうのにしようかなと思う。そんでレズライフを楽しもう。
「出でよシェンロン、そして願いを叶えたまえ」
外が暗くなり、神の龍が現れる。
「ひゃー。でっけえなあ」
「さあ、願いを言え。どんな願いでも1つだけ叶えてやろう」
「では、殺されかかっているめちゃんこかわいいお姫様をここにテレポートさせてちょ。この星の姫じゃなくていいから」
「容易いことだ」
容易いのか。わくわく。
おっ、来た! ピンク! 幸薄そう! でも美少女!
「ゼ、ゼロ! じゃない? き、きゃああああ!」
ふふっ、驚いてるな。尋常じゃないびびり方だが。まあシェンロンでかいもんな。
「ぐおおおおおおおおお!」
うるっさ! 真上から大声。何これ。シェンロンの声じゃなかった、というか悟空!? 大猿になってる!? なんで!?
「願いは叶えてやった。さらばだ」
シェンロンは消え、ドラゴンボールは飛んでいく。俺は急いでロボットを出し、ピンクの美少女を手に乗せて逃げる。
「があああああー!」
うひへえええ。後ろからすごい叫び声。恐あ。
あれ? かと思うと声が止んだ。なんで?
恐る恐るモニターで後ろを見る。悟空は急激に縮小していっている。夜も明けて、太陽が出てきた。
ああそうか。シェンロンのあれで夜になって満月が見えたのか。