ブルマの日々   作:GGアライグマ

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ナメック星で問答勝負

 予想通りランチは面倒だった。日中まともに働かず、むしろ邪魔をする。罰として食事抜きにすれば、子どもの食料を盗む。夜には人質を取って逃げようとする。

 ナムと俺の戦闘力がランチを遥かに凌駕していたからよかったが、そうでなければ人質作戦には対応できなかった。

 ランチのあまりの横暴さに、住民達が一斉にランチを無視し始めた。血気盛んな男がケンカを挑むこともあったが、ふつうに負けた。その男は集団でランチを襲う計画を立てたが、俺が事前に察知してナムに男達をボコってもらった。

 

 そんなある日、俺は地元住民に呼び出された。

 ナムを中心に不満げな老若男女が集まっていた。

 

「もう我慢の限界だ。あの娘をもう一度刑務所に送ってくれ」

「黒い方は大人しいが金髪は悪魔だ」

「せめてこの村から追い出してくれ」

 

 ナムも年配の住民に圧されて「彼女にとってもここで敵意に晒されるのはいいことではない」と言った。

 

 一理あったので、ランチは移住させることにした。ぴったりな教育機関があった。亀ハウスだ。

 

「すみませーん」

「ぬっ。ピチピチギャルが3人!」

 

 俺は黒髪状態のランチを連れて行った。しばしの挨拶の後「二重人格のもう片方があまりにも暴れるので手が付けられません。教育して欲しいです」と頼んだ。

 

 亀仙人は黒髪ランチだけを見て了承した。俺は金髪ランチを見せる前に逃げた。

 後日、亀仙人から怒りの電話があった。「すみません」「申し訳ない」と口では謝ったが、引き取るようなことは言わなかった。

 

 

 

 緑化計画は順調に進んだ。だが、並行してやるべきことがあった。

 次の天下一武道会の直後に、ピッコロ大魔王との戦いが始まる。ちょっと間違えれば悟空が死んだり、ピッコロが死んでドラゴンボールが復活しなかったりする。

 保険の意味で、ナメック星のドラゴンボールを使えるようにしておきたい。一度に3つ使えるのは保険どころか強みになる。今のうちに知り合いになっておけば、フリーザに襲われる前に星ごと移転の指示もできる。

 ナメック星の位置はジャコに調べてもらった。宇宙船はジャコのものを参考にしつつ父と共にさらなる発展系を作った。

 

 高校卒業後、ナメック星へ旅立った。ユフィも連れて行った。彼女をギアスの星へ返すためだが、ここナメック星のポルンガは願いを3つ叶えられるということが役に立つ。

 まず、俺もギアス世界に興味がある。ロボット技術と美少女の多さで。だから行ってみたい。そこでシェンロンには1つ目の願いでギアスの星の座標を、2つ目の願いでそこまで行けるワープ装置を用意してもらいたい。そうすればギアスの星、ナメック星、地球をいつでも行き来できる。ナメック星人の移住も簡単になる。

 また、ユフィはルルーシュのギアスに掛かっている。ジェレミアのギアスキャンセラーで治せるかもしれないが、先にドラゴンボールの力で治しておいた方が安全だ。

 

 さて、ナメック星に来たはいいが、村を探すのが大変だった。俺の感知能力はそこまで敏感ではなかったし、ナメック星人は普段気を抑えていて、地球人並みしかない。

 だが、初めの村さえ見つければ後の村は教えてもらえばいい。そう思って粘った。

 3日後、ようやく初めの村を見つけることができた。

 

「どこからやってきた。異星人達よ」

 

 ナメック星人とのご対面。獣人に見慣れているからそこまで衝撃的ではなかったが、生で見ると二次元とは違う気持ち悪さがあった。

 

「地球という星です。ドラゴンボールに願いたいことがあってやってきました」

「むっ」

 

 ナメック星人の顔色が変わった。

 

「お主らから邪悪な気は感じぬ。いいだろう。ドラゴンボールをかけた試練への挑戦権は認めてやろう」

 

 試練? そんなのあったのか?

 俺が眉間を寄せると、長老らしきナメック星人はにやりと笑った。

 

「まずは願いを教えてくれ」

「彼女は私の星に住んでいますが、故郷は別の星です。しかしその故郷への帰り方を知りません。よって私達は、彼女の故郷の星の座標とそこへ行くためのワープ装置が欲しい」

「なるほどの。そちらの娘さんも同じか?」

「はい。もっとも私は、私の願いよりも苦しんでいる人を救うために使って欲しいのですが」

 

 あれ? 事前に話し合ってこの願いでいいと確認を取ったのに。早くも足並みが揃わない?

 

「うむ。なるほどの。2人の願いが異なる場合、それぞれ別に試練を受けてもらうことになる。そしてピンクのお嬢さんに関しては、もう少し具体的な願いが決まるまで試練自体も保留だ」

「はい」

 

 真面目な顔で頷くピンク。使えねえな。

 

 この村の試練は長老との知恵比べだった。お題は「ドラゴンボールで一人生き返らせるとして、もっとも世界に貢献できるのは誰か」というものだった。

 

「概念的な存在。例えば全知全能の神を生き返らせるというのはありか?」

「概念的な存在はありだ。しかし全知全能の神がいたとしたら、その存在に生き返らせるという概念を適応することはできない。いつでも生死を飛び越せる全能にとって、生死という境は存在しないに等しいからだ」

 

 カテゴリーがあるからそれを区別する言葉がある。というような話だろうな。

 こういう話は頭の体操になっておもしろいな。

 

「確かに。ならば正義の神を蘇らせるというのはどうだ?」

「構わない。しかし私は正義をどう定義付けるかを問う」

「万人を喜ばせることができるならば正義と言っていいと思う」

 

 まあそんな方法はないと思うが。いや、あるかもしれないな。

 

「万人を喜ばせる方法は?」

「とても難しい。ある人にとっての喜びが、ある人にとっての苦痛だったりする。これを避ける1つの方法は、趣味思想ごとに住み分けることだ」

 

 民族自決で国ができるイメージだな。だがそれだけでは万人を救えない。

 

「しかし、殺人鬼は殺人にしか興味がないかもしれない。そういう趣味を叶えるのは難しい」

「殺人鬼を幸福にし、且つ犠牲者を不幸にしない方法は思いつくか?」

「1つの方法は、犠牲者を自殺志願者に限定することだ」

「しかし、えてして殺人鬼は、生きたいと願うものを殺すことに幸福を感じるものだ。自殺志願者では満足しない殺人鬼をどう幸福にするのか」

 

 ツッコむなあ。アニメではできない話だ。

 

「虚構の犠牲者を作ればいいかもしれない」

「例えば?」

「犠牲者が人間のように動く人形であればいい」

「ウソも方便。お主が言う正義は虚構によって実現できると」

「考えたことはある。万人を夢の世界に誘い、喜びの幻想を見せ続ける。そうすれば誰もが幸せに暮らせる」

「その幸せの形でいいと思うか?」

「正直、否定はできない」

「うむ」

 

 NARUTOを見ていて思ったことだ。ナルト達はオビトの無限月読、誰もが幸せになれる夢の世界を真っ向から否定した。が、そう単純に悪と断じられるものではないと思っていた。

 平等な喜び、苦痛のない世界を求めるなら、皆がそれぞれ夢の世界に入るしかない。

 

 実際、と言っていいのかどうか、俺はドラゴンボールという虚構の世界に入れて満足している。前世の地球より毎日が充実している。金には困らず、自由に世界を旅し、悪と戦い、かわいい娘と戯れる。

 虚構の世界を望むのは俺だけではないだろう。あるサイトのネット小説など、ほとんどが地球から異世界に転生か転移するものだった。読者もそういう作品にポイントを与えていた。それだけ虚構世界への憧れがあるのだろう。

 

「快楽ばかりの幻想が、お主の求める理想か?」

「快楽ばかりではない。苦労もまた充実感を増すための肥やしとなる。しかし最終的な人生の評価は充実感の大小で判断するかもしれない」

「ふむ。まあそれもよし。わしならば……」

 

 そんな感じで長々と問答が続いた。幸福論のようなものについて語り合っていると、1つの1つの願いの重さを感じるようになった。責任感のようなものである。これが過ぎると慎重になり過ぎて何も願えなくなってしまいそうだ。

 長老は頭ごなしに俺の考えを否定するわけではなかった。ただ、より具体的に、シェンロンに願える形にもっていこうとしている感じだった。

 

 1つ目の問答をクリアするのに1ヶ月かかった。俺は「用事がある」と言って地球に戻り、地球のドラゴンボールでレッドリボン軍やドクター・ゲロの殺された善良な人間を蘇らせた。その後、ランチや緑化事業の状態を確認し、再びナメック星へ飛んだ。

 

 その後、約1ヶ月で試練突破、約一ヶ月地球滞在、と交互に続いた。そして約1年後、6つのドラゴンボールを持って最長老の下へ行った。

 

「初めまして。最長老様」

「ええ、初めまして。そしておめでとうございます。よくぞこの短期間で6つの試練を突破しましたね。見事です」

 

 1年って早いのか。まあブルマの頭脳だしな。

 

「最長老様、最後の試練の前に伝えたいことがあります」

「なんでしょうか?」

「私には未来の知識というのものがあるのです。説明すると長くなるのですが」

 

 俺はチラとネイルを見る。転生についてはあまり多くの人に知られたくないので記憶を読んでもらうことにした。

 

「あの、記憶を読んでもらっても?」

「うん? 誰かが私の能力を喋りましたか?」

「そんな感じです」

 

 最長老はあまり気にした風もなく巨大な手を前に掲げた。俺は頭がその手に覆われるよう移動した。

 ふっと妙な刺激が全身を巡った。記憶を読み始めたのだろうか。

 

「おっ、と」

 

 最長老の腕にグッと力が入る。俺はこの世界の未来知識を持つ転生者であることや、この後この星に起こるかもしれない不幸について知ったからだろうか。

 

「ふうー、このようなことがあるのですね。長く生きてきましたが一番驚きました」

 

 驚いたと言っているが、雰囲気はあまり変わっていない。表情も軽く微笑んでいる。

 

「あっ。もうよろしいですよ」

 

 俺は最長老の手から離れる。

 

「うーん。試練は、そうですね。このネイルを笑わせることができれば合格にしましょう」

「なっ、最長老様!」

「ダメですか?」

「い、いえ、私など意見できることではありませんが」

 

 ネイルが驚いて怒鳴ったが、最長老は緩く笑うだけだった。

 俺も多少驚いたよ。今までの知恵比べとかナゾナゾとかめちゃんこ面倒だったからな。最後はどれだけ厳しいかと覚悟していたが、すぐに終わりそうだ。

 

「ふとんがふっとんだ」

 

 適当に言ってみたが、ダメだな。ネイルは真顔のままだ。

 

「ぷふっ」

 

 あっ、最長老様は笑ってくれた。いい人だ。

 

「ぴっこよー」

 

 パンの真似だ。ダメみたいだな。これも反応無し。

 

「ダニぃ! 10円! ピアノピアノピアノ! も、もうおしまいだあ。ふふっ。この俺を超えることなどできぬぅ。僕は父さんを超えてしまったんです。消えろ、ぶっ飛ばされんうちにな。チャオズは置いてきた。ばいちゃばいちゃ」

 

 ネイルはドラゴンボールの鉄板ネタにもなかなか反応しなかった。

 しょうがないからDr.スランプを思い出し、ばあさんがアイキャッチでせんべえを食べるネタをやってみた。やっとネイルが小さく笑った。それでも合格らしかった。

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