ブルマの日々   作:GGアライグマ

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ピッコロ代わりの自作自演

 ヒーロー協会を作ることにした。

 理由はいくつかある。

 

1.悟飯をヒーローとして育て、修行の習慣をつけさせるため。

2.サイヤ人へ人体を変える人間を見定めるため。

3.パン世代以降の平和のため。

 

 1は可能だと思う。原作で悟飯はヒーローに興味があった。ヒーローと言えば修行するべきという誘導は可能だと思う。チチについても、ヒーロー教育の中にエリート勉強を含めておけば文句は言わないだろう。

 2は、サイヤ人に変えずとも、正義の心を持った戦士は多い方がいいと思う。街へ飛んだ気功波を止めるだけでも何万人も救える世界だ。用心にこしたことはない。強者が多ければ元気玉も大きくなる。

 3は、サイヤ人の子孫が自惚れ始めた時に、力による凶悪犯罪を防ぐということだ。強大な力を持つ存在はやがて自惚れ、横暴になっていくものだ。サイヤ人をこの星で量産したとして、ウーブやパンが生きている間はいいが、世代が変わると王を目指して世界征服を始めるかもしれない。そうなると何人かは死ぬだろう。しかしヒーローが大勢いれば早めに防げるだろうし、征服などできないと思わせることができれば征服の発生確率も減らせる。

 

 ヒーロー協会の宣伝と悟空の強化のために、一芝居うつことにした。

 ピッコロ大魔王編の再現を行う。ロボットを用いて王を誘拐し、ロボットに新たな王を名乗らせる。そいつと悟空を戦わせ、なんとか倒させる。一部始終をカメラに収め、演説を始める。「今後の平和のためには軍隊では足りない。ヒーローこそが必要なのだ」と。国王にも同意を求める。という流れだ。

 ロボットは悟空より若干強くしかし修行すれば勝てるレベルにした。具体的には人造人間9号を元に機動性と装甲を若干強化した。さらに人工知能の部分を遠隔操作機能にすげかえた。操作するのはもちろん俺だ。ロボットの見た目は夜神ライトを参考にした。

 

 問題は悟空がテレビを見るかどうか分からないことだ。タイミングが重要だ。新しい王を宣言してから時間が経ちすぎるとどうしても混乱による犠牲者が出る。

 ところが、ある日その悟空が俺の家にやってきた。

 

「なんの用だ?」

「オラの四星球がなくなっちゃってさあ。ドラゴンレーダー貸してくんない?」

 

 そう言えば勝手に拝借してさらには使ってしまったのだった。

 

「そうか。待ってろよ」

 

 チャンスだ。悟空にスパイロボをつけておき、亀ハウスなどに立ち寄ったタイミングでキングキャッスルを襲う。

 納屋に入った俺は、ドラゴンレーダーを取り出し、若干細工を施す。製作済みの小型の盗聴器と通信機をつけるだけだから時間はかからない。

 一仕事終えた俺は、悩み顔で悟空の元へ戻った。

 

「おっかしいなあ。ドラゴンボールに反応がない。誰かが使っちゃったんじゃないか?」

「へ? そうなんか?」

「そういや最近急に空が真っ暗にならなかったか? ええっと、そうだ。ちょうど天下一武道会の日だったか」

「あっ! あれか!」

 

 空が急に暗くなっていたことに悟空が気づいていたこともあり、なんとか誤魔化せた。

 

「くっそー。誰が盗んだんだ。腹立つなー」

 

 悟空はドラゴンレーダーを受け取り、不満顔で去っていった。

 

 俺は完成したロボットをキングキャッスル付近に待機させ、時を待った。

 悟空は山にこもり、黙々と修行を続けた。テレビのある場所へ向かうのに何年かかるか分からない。だからこちらから先に動くことにした。

 

 サーモグラフィで国王の位置を確認。まっすぐその部屋へ飛び込む。

 

「な、なんだあいつは!」

「国王様!」

 

 大勢の衛兵が銃弾を撃つが当たってもダメージはない。

 何の問題もなく窓ガラスを突き破り、その先の鉄格子をひん曲げていく。

 

「やあ、犬王様」

「な、何者だ貴様!」

「俺は夜神ライト。新世界の神だ」

「何!?」

 

 一瞬で国王に接近し、襟首をつかんで持ち上げる。

 

「ぐっ。くくっ」

「貴様ァ! 国王様を離しやがれ!」

 

 衛兵達が突っ込んできた。俺は国王を脇に挟み、窓から飛び出る。

 

「なっ! 国王様ぁ!」

「国王様を救え! 地上の衛兵は受け止めよ!」

 

 衛兵達が落下する国王を受け止めようと右往左往する。しかしこの人造人間は舞空術が可能だ。飛び出した勢いのまま直進し、町を去る。目指すは国営放送のテレビ局だ。

 

 再び窓ガラスを突き破り、ニューススタジオへ。

 

「きゃあああああ!」

「な、なんだぁ!?」

「俺は夜神ライト。新世界の神だ」

 

 アナウンサーからマイクを奪い、演説を始める。

 

「やあ諸君。私は夜神ライト。この世を憂い、真に正義を愛する男だ。この役立たずの犬畜生とは違ってな」

 

 俺は国王を指差す。

 

「いっ、犬畜生だと!?」

「お、お前! 国王様になんて口を!」

 

 俺は指から気弾を放つ。全ての反抗的な人間に対し、ギリギリ当たらないような位置へ。

 

「力がなければ何もできない。力があったとしても、正義の心と覚悟がなければ悪と戦うことはできない。だからレッドリボン軍などという愚かな集団がのさぼることになったのだ。お前達にいいことを教えてやる。レッドリボン軍を壊滅させたのはこの俺だ」

 

 レッドリボン軍を滅ぼしたのは悟空だが、この演説の真偽なんてどうでもいいことだ。視聴者が興味をもてるような内容で、且つ悟空を引き寄せなければならない。

 そしてこのタイミングで悟空に話しかける。

 

「おーい悟空! 強そうな悪人が現れたぞ!」

「ん? ブルマ? どこにいんだ?」

「ドラゴンレーダーに通信機をつけてたんだ。それよりもテレビを見てみろ。おもしろいことになってるぞ」

「テレビ? つってもオラ森にいるからなあ」

「じゃあ近くの街へ行ってみろ」

「えー?」

「つっよいやつがお前と戦いたそうにしてるぞ」

「強いのか! じゃあちょっと行ってみっか」

 

 悟空は筋斗雲を呼び、辺りを飛び回る。小さな町を見つけ、そこへ飛んでいく。カフェの中に入った。

 

「らっしゃい。坊や一人かい?」

「うん。おっちゃんテレビつけてくれる? ブルマがうっさくてさあ」

「ブルマ? テレビならあそこだけど」

 

 悟空がテレビを見る。ちょうどいいタイミングで軍隊が国王を救出しにやってきた。

 夜神ライトは舞空術でテレビ局の窓を出る。再び銃弾の雨に晒される。しかしその銃弾を両手で軽く掴みとっていく。そしてお返しに全ての銃弾を投げ込む。投げた銃弾は兵士の足や腕を掠めていく。

 

「うぎっ」

「ば、化け物め」

 

 と、この隙に国王は部屋から逃げ出していた。まあテレビが映してくれさえすれば問題はない。

 

「これが力だ! 犬畜生は逃げることしかできない! 俺は世界を変えることができる! さあ! 真に正義を信じる者よ! 俺についてこい! 強大な軍隊、警察に生まれ変わるのだ! 全ての悪を根絶やしにする! この俺がレッドリボン軍を破壊したように!」

 

 悟空は演説に興味がないだろうが、戦いには関心したようだった。

 

「ひゃーっ。つっええなあ。あいつ」

「そうだろ。戦ってみろよ。あいつ正義だなんだ言ってるが悪いやつだぜ。何せレッドリボン軍を滅ぼしたのは自分だと言っている。本当は悟空がやったのにな」

「そこはどっちでもいいけど」

 

 悟空はカフェを出て、再び筋斗雲で飛び出す。キングキャッスル近くのテレビ局へは俺が誘導した。

 ちょうど俺が戦車を投げ飛ばしたところだった。兵士達がぐぬぬとなったところへ、悟空が降り立つ。

 

「き、君! やめるんだ!」

「あの子、空から降ってきたような」

 

 兵士達が止めるが、悟空は構わずに夜神ライトを見る。

 

「おっす」

 

 悟空はまだライトを悪人だと思っていないようだ。実際こいつを怒らせるほどのことはしていないしな。未だ誰も殺していない。

 

「孫悟空か」

「オラのこと知ってんのか?」

「当たり前だ。天下一武道会の準優勝者だからな。俺も武術には自信があるんだ」

「へえ」

 

 ライトは構え、ニッと笑う。悟空も筋斗雲から降り、構えた。

 そして戦いが始まる。

 

「ちぇい!」

「ぐっ」

 

 突っ込んでいき、接近戦へ。俺の拳、脚がぽこぽこ当たる。悟空の攻撃も当たるが、ダメージはほぼない。

 

「でやぁ!」

「うぐっ」

 

 右ストレートが顔面に入り、悟空は吹っ飛んでいく。

 

「いちちっ。かってえなあ、おめえ。まるで鉄を殴ってるみてえだ」

 

 殴った頬は腫れているが、悟空はまだケロッとしていた。しかしライトが勝つのは時間の問題だろう。

 

 再び近接戦闘が始まる。悟空はやや速くなった。しかしこれは一瞬で成長したのではなく、先ほどが本気でなかったからだ。そういう風に感じる。

 俺も若干スピードを上げる。先ほどと同じように俺の右ストレートが入り、悟空が吹き飛ぶ。

 

「はあ、はあ。くっ、参ったなあ。思ったより強えや。はあ、はあ」

 

 早くも息切れしている。やはり今回は全力の戦闘だったからだろう。それに今の悟空は無駄な動きが多いのですぐに疲れてしまう。

 

「ならこれはどうだ。か、め、は、め」

 

 悟空はかめはめ波の構えを作った。俺も対抗して手の平に気をためる。

 

「波ああーー!」

「ハアッ!」

 

 気功波と気功波のぶつかりあい。威力はほぼ同等。

 2つの気功波は中央でせめぎあった後、弾ける。

 

「うわあっ!」

「ちっ」

 

 悟空とライトも衝撃で吹き飛ぶ。辺りを土煙が覆う。

 

「とんでもない戦いです! これが人類と人類のぶつかりあいなのでしょうか! 私は夢を見ているように思えてなりません!」

 

 アナウンサーが叫ぶ。上手く実況してくれているようだ。

 やがて土煙が晴れる。

 

「はあ、はあ、はあ。ぜえ、ぜえ」

 

 悟空はしんどそうに立ち上がっていた。

 対してライトはすまし顔。服についた埃を払い、舞空術で悟空に近づいていく。

 

「ちっ。効いてねえか。ますますやばくなってきたな」

 

 そして再び接近戦へ。

 悟空に先ほどのような元気はない。

 

「うっ、おぐっ。ぐううっ」

 

 ライトの攻撃が鳩尾や足の付け根などに次々と入る。悟空は歯を食いしばって反撃するが、軽くかわすかガードされ、ほとんどダメージを与えられない。

 一方的な戦いとなった。

 

「はーっはっはっは! 俺の勝ちのようだな!」

「くっ、くそっ」

「ひどい。なんてやつだ夜神ライト。子どもを苛めて笑ってやがる」

 

 テレビの実況も、二人への驚きからライトへの怒りへと変わってきた。

 と、兵士達が銃を放つ。ライトは再び軽くつかみ、投げ返す。

 

「ぐはっ」

「いだだだっ」

 

 その間、悟空はライトへの攻撃を止めていた。フェアプレーの精神だろう。そして兵士達に向かって叫ぶ。

 

「や、やめろ! 余計なことはすんな!」

 

 戦いに水をさすな、という意味と、無駄だからライトを怒らせて余計被害を出すな、の両方の意味だろう。

 

「な、何を言うか! 子どもに任せておけるか! 命をかけて戦うのは大人の役目だ!」

「そ、そうだそうだ!」

「だけど」

 

 兵士達は物陰に隠れながら叫ぶ。悟空は言い返さない。口論のようなことは嫌いなのだろう。

 夜神ライトはにやりと笑い、手のひらに気を集めていく。その手を兵士達に向ける。

 

「や、やめろ! お前!」

 

 悟空が叫ぶ。ライトはにやりと笑う。

 

「ひっ」

「うわあっ!」

 

 兵士達が驚きおののく。悟空はライトに突っ込んでいく。

 

「ふん」

 

 ライトは貯めたエネルギーの一部を使い、悟空を振り払った。

 

「ぎゃっ」

 

 そしてもう一度兵士達に狙いを定める。

 しかし、そこで俺が飛び出す。

 

「隙あり!」

「なっ!」

 

 俺の手刀がライトの首に命中。首はばっさり切れ、生首が飛んだ。

 生首と言っても機械仕掛け。血は出ず、オイルや火花が散る。俺はライトの生首をキャッチした。

 

 兵士達はポカーンとなった。悟空もだ。

 しかし、ハッとして動き出した。

 

「き、機械だったのか!? こいつ!?」

「誰だお前は!?」

 

 兵士達がライトの姿に驚きながら、特殊スーツ姿の俺にも警戒する。

 

「ブ、ブルマ! なんでここに!」

 

 悟空は特殊スーツのことを知っている。足を引きずりながらよろよろと近づいてきた。

 悟空は驚き慌てて俺とライトの生首を見比べた。その時、ライトの口が動いた。

 

「ふん、まだ俺と戦えるような武道家がいたか。まあいい。この体など所詮機械だ。代えはいくらでもある。いずれこの世界は俺の手に落ちる。それまでせいぜい犬畜生の世話をしてやるんだな」

 

 もちろんこのセリフをしゃべっているのは俺だ。声は特殊スーツからも若干漏れている。

 かなり不安だったが、悟空はジッと生首を見つめている。バレていないようだ。

 生首の自爆装置を作動させる。

 

「わわっ」

 

 俺は慌てて生首を真上に投げる。生首は空高くで大爆発を起こした。

 悟空も兵士達もポカーンと空を見上げたのだった。

 

 その後、国王がテレビクルーを連れてやってきた。

 国王は俺と悟空に頭を下げ、感謝の言葉を述べた。俺は適当に挨拶を返した後、特殊スーツを解除した。

 

「えっ、女!?」

「しかもかわいい」

「というかカプセルコーポレーションの娘さんじゃ……」

 

 驚く周囲をよそに、カメラに近づいていく。さっとマイクをもらう。

 

「全世界の皆さん。カプセルコーポレーションのブルマです。今回はなんとか悪をしのぐことができましたが、やつの本体は未だ生きています。この世界はまだ平和になったとは言えません。あれほどの強敵と対峙するためには、こちらも相応の力が必要です。そこで、私は選ばれた武道家による自警団を組織しようと考えています。プロで活動するヒーローのようなものです。力自慢の方は是非参加ください。我々カプセルコーポレーションが全力で支援します」

 

 これでよし。次の問題は選別だな。

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