自称凡人も異世界から来るそうですよ?-『異常な普通』の箱庭活動記録-   作:FGMe/あかいひと

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ぶっちゃけこのギフトの数々は怒られる気がしないでもないですが、そんなの関係ねぇ!


記録その10-功績を打ち付けられたからこそ、彼は英雄

要は簡単な話だったのだ。

 

足元の摩擦力を[0]にしてしまえば、どんなものもツルッといってしまう。まあ、気が付かれたらおしまいなので、一発で思いっきり吹っ飛ばさなきゃならなかったけどネ!

 

そしてその思いっきり吹っ飛ばしたあの能力も単純明快。自分を[0]、原点に見立ててそれ以外を弾く技。[≠0]にRejectの文字を当てたのは前の世界の厨二ボーイ。うん、こっぱずかしいがこのセンスは嫌いじゃないよ!

 

というわけで、僕は勝った。文句のつけようのない大勝利と言えよう。

 

……だと言うのに、なんで僕は足つぼマッサージの上で正座をし、太ももの上に重りを載せられ、首から反省中の看板をぶら下げているのだろうか?

 

「全力で勝ちに行くのがゲームでしょ? だと言うのにこれはあんまりだと思いませんか?」

 

「だまらっしゃいこのお馬鹿様! ある程度は諦めはつきましたが、命は大事にしてくださいっ!」

 

…………だってよ。かぁー、やってらんねーぜ。

 

と、そんなことはともかく、だ。

 

僕が生き返ってる(気絶している)間に、結局みんなは白夜叉サンに『挑戦』したようだ。折角僕が身体張ったのに、とは言うまい。ある程度その心の内は読み取れるから、何も言えなかった。プライドを捨てる勇気もまた、プライドである。

もっとも、その時の逆廻氏の発言は『試されてやるよ、アンタにはその資格がある』だそうで。うん、こんな意地の張り方見たことねーよ。

 

で、白夜叉サンの出したゲームを、代表で春日部サンが受けた。なんでも、グリフォンに認められることが条件だとかで…………グリフォンって、鷲獅子のアレだよね? 実際に目にしたことは無いから知らなかったけど…………すんごいねぇ、空気踏んで疾ってたよ。

 

そして春日部サンは見事クリア。ついでにグリフォンのギフトも手に入れたらしい。…………つまり彼女は、動物の能力を自分の能力にできる、と。そのついでに(彼女にとっては本命の能力かもしれないが)様々な生物とコミニケーションが取れると。率直に言おう、すげぇ羨ましい、なんだそのチート能力。

 

しかしびっくり、そのチート能力はなんと人工物であるのだとか。彼女が首から下げている木彫りのペンダントがそれらしい。…………うん、白夜叉サンがアーティスティックだのなんだの言っていたが、分からんでもない。父さん母さんの職業柄、生物学には少し触れたのだが、アレを系統樹と言うのならば、どれだけ計算して設計したんだろう。美術に関してはトーシロなので詳しいことは分からんが、それでもとても美しく、『未完』の状態で完成しているのは分かる。…………あの系統樹、写しを取ってそれを研究するだけでも面白そう、だな。

 

という流れを経て今に至るが、取り敢えず反省したので立たせてください、痛覚[0]にしていますが、非常に不健全ですので。

 

「不健全なのは貴方の惨状よ全く。脳ってあんな色してるのね…………って気持ち悪くなるのと同時に感心しちゃったじゃない」

 

「お、ではこれでまた一つ賢くなったわけですね? 存分に褒めてくれていいですよ?」

 

「……………………」

 

「嘘ですごめんなさい」

 

だからその冷めた目で睨まないでくださいドMじゃないのでご褒美になりません。

 

っと、そういえば。

 

「黒ウサギ、黒ウサギ。鑑定の件」

 

「あ、そうです忘れてました!?」

 

思いっきり耳をピンと張った黒ウサギ。うん、忘れさせた原因たる僕は何も言えねーな。

 

「あの、白夜叉様。実はですね、本日はギフトの鑑定をお願いしようと思っていたのですが」

 

そう言うと、逆廻クンと春日部サンとともに、例の木彫りペンダントを見てはあーでもない、こーでもないと楽しそうにしていた白夜叉サンの顔が引きつった。あれ、もしかして。

 

「よ、よりにもよってギフト鑑定か…………専門外どころか、無関係もいいところなのだがの」

 

そう言って彼女はまず、春日部サンの顔を両手で挟んだ。

 

「……んぶ」

 

「…………どれ、ふむふむ」

 

次に、逆廻クン、久遠サン、最後に僕と、みんなの顔を挟んでは見つめるという作業を繰り返した。

 

「うむ、四人共に素養が高いのは分かる。分かる、のだが…………これでは鑑定とは言えまい。はて、どうしたものか…………」

 

そう言って、頭をひねり始める彼女。うん、確かに鑑定とは言えないけれど…………。

 

「あのぉ、後日でも構わないと思いますよ? 把握する必要はあると思いますけど、大至急というわけでもありませんし」

 

「しかしそれでは、のぉ。おんしらは私の提示した試練を達成し、おんしに至ってはその覚悟を示した。なれば、主催者として、星霊の端くれとして、『恩恵(ギフト)』を与えるのは義務である。…………ふむ、そう言えば。鑑定とまではいかぬが、おんしらの魂と繋がった恩恵に名前を与えるものがある。ちぃとばかし贅沢ではあるが、コミュニティ復興の前祝いには丁度よかろう」

 

そう言って彼女は柏手を打つ。するとあら不思議、僕らの目の前に光るカードが現れたではありませんか!

逆廻クンにはコバルトブルーの、久遠サンにはワインレッド、春日部サンにはパールエメラルド…………僕のは、スカイブルー。

 

そこに記述されていたのは、僕の名前と─────────

 

◆◆◆

 

景山健太

 

ギフトネーム

→『法則(ルール):原点回帰の理(ビギニングゼロ)

→『人と形りて答えを為す者(フェイクアンサー・イズ・ヒューマン)

→『異常な普通(ノットバットノーマル)

→『新人類の祖』

→『真実の証明』

→『孵らずの英雄』

→『─────(待機中:出力条件を満たしていません)』

→『─────(待機中:出力条件を満たしていません)』

→『─────(待機中:出力条件を満たしていません)』

 

◆◆◆

 

「─────────ッッッ!!!」

 

思わず、手に取った青空を思わせるそのカードを、落としてしまう。

 

覚悟はしていた…………名前を与える物だと聞いてこうなるとは思っていた。だが…………些かこれは多いのではないか?

 

バッグに入ったスタンガンを慌てて取り出し、胸元に当て、スイッチを入れる。心臓は止まり生命活動を停止─────────……………………させ、慌てて能力を起動する。

 

重りの重量を[0]、そして乱暴にはね退けて立ち上がり、カードを拾う。…………書いてある内容は変わらない、ただ事実を坦々と写していた。

 

「ど、どうされました健太さん?」

 

「…………いや、思った以上に僕の罪は重いと思ってね。後で説明するよ、それよりもこのカードについて説明ぷりー」

 

「は、はい、分かりました!」

 

僕らに『恩恵』として与えられたこのカード、名前を『ギフトカード』。正式名称は『ラプラスの紙片』。全知の一端だということなので、この『ラプラス』は、あらゆる状態を完全に把握し、完璧に解析する能力をもった仮想的な知的存在の概念……『ラプラスの悪魔』のことだろう。そんなものも、箱庭にいるのか…………いや、信仰が現象(かみ)を作ることもある以上、ありえなくはない、のだが。

 

で、このカードの持つ能力はざっくりまとめると『ギフトに対する名前付け機能』と『四次○ポケット』だ。いや、本当に四次元かどうかは分からないが、某国民的人気漫画の猫型ロボの腹部についているポケットのように使えるみたいだから、その認識で間違いないだろう。うん、便利だわこれ。

取り敢えず、さっき使ったスタンガンを入れてみると、カードにスタンガンの絵が追加され、『03式緊急心肺停止ショックガン』という名前が、上に並ぶ物騒な文字列の下に現れた。というか、正式名称初めて知ったよ…………ってこれ、名前付けられてるってことはギフト扱いされても問題無いものなんだこれ!!? …………相棒よ、凄い物を作ってくれたんだね。

ちなみに、コミュニティに旗があれば、その紋様がカードにも映し出されるんだって。身分証明書にも使えんのかよ、超便利だ。

 

と、そんなことをちょっと興奮気味に説明する黒ウサギと、補足を入れてくれる白夜叉サンの話にふんふん頷いていると、想定外のところから声が上がった。

 

「へぇ? じゃあ俺のはレアケースなわけだ?」

 

え? と黒ウサギと白夜叉サンが固まり、硬直が解けたあと、白夜叉サンは逆廻クンのコバルトブルーのギフトカードを覗き込み…………、

 

「…………いや、そんな馬鹿な」

 

その顔を驚愕で歪め、彼の手からカードを取り上げ、それを凝視。そして穴が空きそうなほどに、何回も何回も、その目は同じところをなぞっていた。

 

「『正体不明(コード・アンノウン)』だと…………? いいやありえん、全知である『ラプラスの紙片』がエラーを起こすはずなど」

 

「何にせよ、鑑定はできなかったってことだろ。コミュニティ的には兎も角、個人的にはこの方がありがたいさ」

 

そう言って彼はカードを取り戻し、学ランのポケットに入れた。楽しそうだねぇ全く。

 

「それによ、おそらく俺のなんかよりも余程おかしいだろうのがそこにいるぞ。ぶっちゃけ俺は自分の恩恵よりもアレの方が気になるな」

 

ですよねーッ!! うん、説明するって言ったからそれは構わないけど話逸らされるのに使われた感ぱねぇ!! つか、いまの発言でその場の全員の視線が集まったんですケドー!!?

 

「…………まあいいけどね。ほら、あんまり見てて気分のいいものじゃない」

 

そう言ってポイッと白夜叉サンの方に僕のカードを投げて渡す。そしてそれをみんなが覗き込んで…………案定全員息を飲みやがった。黒ウサギと白夜叉サンなんか、もう目ん玉飛び出るぐらいに。

 

「お、おんし…………これは一体…………!?」

 

仕方ない、とため息一つ。幸せが逃げると言われても、これはどうしようもない。

 

取り敢えず、僕は分かりやすく、簡潔に一文で纏めて、こう言った。

 

 

 

 

 

「僕は、『終わった主人公』なんだよ」

 

 

 

 

 




死因→感電による心肺停止
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