自称凡人も異世界から来るそうですよ?-『異常な普通』の箱庭活動記録- 作:しにかけ/あかいひと
「…………ふう、まあこんなものかな?」
死屍累々。侵入者…………おそらくペルセウス所属の人達と思わしき骸が辺りに散らばっている。いや、死んでないんだけど。つか、死んだのは僕だけなんだけど。
「バ、バケモノめ…………!」
「あら、まだ心が折れてなかったのか。うんうんスゴイナー。まあ、震えてる時点でその心の強さは無意味無価値なんだけどねぇ、うん」
僕がやったのは単純なことだ。厳密には違うけれど、見えない壁で侵入者達ごと僕を閉じ込めて『この先を行くなら、僕を倒してからにしろ!』と言っただけだ。そしたら嬉々として殺しにくるんだから堪ったもんじゃないよ。
まあ、殺した程度で死にはしないのだから、無理ゲーに付き合わせたようなものですけどね。
「まあ、屈してないならまだ可能性はある。じゃ、頑張ってみて? 殺し続けたらいつかは倒れてしまうかもしれないゾ!」
「くそ…………何が頑張って、だ…………!」
「あははははは、まるで僕が加害者みたいに言うなぁ酷い酷い。さっき君が言ったようにバケモノなのかもしれないけど、歴とした人間なんですよぉ?」
腰を抜かして、ガタガタと震え、視線が定まらず、恐怖で粗相をしているのか股を濡らしてアンモニア臭を纏う男の顔を覗きこむ。
「僕がしたことは、君らをこの場で足止めしているだけじゃないか。君らにも事情があるのかもしれないけど、侵入者を見逃せるほど脳味噌お花畑じゃないし。それ以外は、なーんにもしてない。無抵抗に殴られ、刺され、斬られ、何度も何度も殺された。まあ、邪魔になってるのは間違いないから、それでチャラ。つまり僕らは平等だ! いいよね平等って!」
「ぐっ…………!」
「むしろ、殺人という罪が無かったことになってるんだから、そんな責められる様な目で見られるとかありえないんですケドー! 最初の内は皆が皆、何度殺しても問題ないことに受かれて暴力の快感に身を委ねてたじゃないですか! 本来なら取り返しのつかないことなんですから、涙こぼして感謝すべきだと思いマース!」
無論、感謝なんて逆立ちしてもあり得ないだろうけど、嘘は一つもついてない。ついてないんだ。
「ほらほら、君も楽しんで僕を殺してたろう? 僕を倒すにはまだまだ足りないんだから、もっと愉しんでレッツマーダーしなきゃ! さあ、ちゃんとその刃物を持って、狙いを定めて?」
「ひ、ひぃ!!?」
落ちていた西洋剣を拾い、男に握らせてニッコリと笑う。さらに恐怖を煽られたみたいだけど却ってそれが良かったのか、その剣を僕に突き出してきた。…………だけど震えすぎていてブレッブレで、脇腹に少しだけ刺さっただけだった。
「もー、ダメダメじゃないか。ほら、お手本を見せてあげるから」
剣を抜き、男の手を包み込むように添えて、剣の刃を僕の首に当てる。
「いいかい? ちゃんと見て、その感触を身体に刻み込むんだよ?」
「い、いい、嫌だ!! もうやめてくれ!! 俺が悪かったから、もうやめてくれ!!」
「ん? 異なことを言うね。君は何も悪いことをしてないじゃないか。君は間違ったことをしていないじゃないか。侵入するのに、障害は排除するものなのだし、君の行動は自然なものだ」
「違う、違うんだ! 俺は、俺はあのバカなリーダーに命令されて!!」
「つまり、職務に忠実だったと。尚更悪い点が見当たらないね、うん。でも嘘はいけないなー、その言い方だと『望まず僕を殺した』みたいじゃないか。素直になろうぜっ! 協力してやるからさ!」
震える手を押さえ込み、火事場の馬鹿力での抵抗を[0]にし、刃を首に、徐々に徐々に沈ませていく。相手が気絶しそうだったので、意識を途切れさせないように無理矢理繋ぎ止める。
「僕は申し訳なく思ってるんだ…………君らをここから通す訳にはいかないけど、君らの邪魔をすることを。だからせめて、君らのストレスの発散くらいには、付き合ってあげようと。『殺されないと』釣り合わないだろう?」
「離せッ! 離せ離せ離せ離せ離せ離せ離せッ、離せッ!! もう殺したくない、殺したくないんだよぉぉぉおおおおおおおッ!!」
「だから、嘘はダメだって。んじゃ、一気に切り落とすよー、んッ────────」
抵抗を[0]にして、刃が一気に首を絶つ。
僅かに残った生の猶予で、男の顔が笑ってるのか泣いてるのか分からない顔になってるのが分かった。
そしてまた、巻き戻る。墜ちた首は、再びあるべき位置へと納まる。
「─────っと。さあ、これでまた一歩近付いたね! じゃあ、今のを踏まえて上手に僕を殺してみようか! …………って、」
力が抜けている。目は面白いように世話しなく動き回り、ビクンビクンと痙攣。口はだらしなく開かれて、意味なく音が垂れ流される
「はは、ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは────────」
「あらら、壊れちゃったか。まあ、壊すつもりでやったけど」
殺され続けるだけで壊れるんだから、人間ってのは軟弱にできてるよなー。
◇◇◇
最後の人は、敬意と侮蔑を込めて丁寧かつ雑に壊したから特にイカれちゃったけど、その場にいた人間、大体似たような感じで壊れてたので、せめて格好だけは整えてあげようと、股間とかケツの穴のあれとか、汚れとか、ヨダレとか、そういうのは全部消して、綺麗にしておく。僕は手を下して…………ないことはないが、基本的になすがままにされただけだ。とはいえこの状態を見てそうとは信じられないとは思うから、多少の体裁は整えないとね。
そして逆に、僕が殺されまくった痕跡は残す。撒き散った血、くっ付けずに元に戻した為に放置された四肢、その他諸々。弄られないように、その状態を[固定]した。
誰が悪い? と問われたら、僕が悪いと僕は『思う』。口には出さないけど、これは僕が悪いだろう。如何に彼らに問題があったとしても、嫌がる彼らに精神的虐殺を敢行して殺しきったのは間違いなく僕である。
だが僕はこう『言う』だろう、『誰も悪くない、ただ彼らの運が悪かっただけだ』と。
そこに嘘は一つもない、隠し事はあるが。僕は侵入者を留めるために全力を尽くした。これは自然な流れであり、それ以外は殺されまくっただけだから、悪くはないだろう。侵入者の彼らだって、リーダーとやらの命令に忠実だっただけだ。そりゃ、途中暴力と殺人の背徳感に酔っちゃってたけれど、職務の一環と言えなくもない、障害は取り除くべきものだしね。ただ、僕が殺したところで死ぬような、そもそも死んだところで倒れるようなタマじゃなかったのが、彼らの運の悪さだろう。
申し訳なく思うし、悪いとは思う。だが、僕は今の行為を反省したりはしない。少なくとも、敵を潰すということに関しては何一つ。別に僕は、聖人君子でもなんでもないからね。僕らを嵌めようとする連中に対して持ち合わせる慈悲なんて、これっぽっちも持ち合わせてないよ。…………まあ、あのロリ吸血鬼がいなければ、皆がハッピーになれたことを考えると、なにしちゃってくれたんだあの白髪ロリ、と悪態を吐きたくなるけど。後味は悪くなった。
それに、僕なら『直せる』。取り返しがつく。覆水が盆に返る。(過程はともかく確信的に)壊したことは責められるだろうが、交渉の場で切れるカードになるだろう。人を人とも思わないようなヤツがリーダーだったら困るけど、その時間違いなく僕らは何かしらの方法でゲームに持ち込み、部下を廃人にしていける。流石に部下が全員使えなくなったら、コミュニティの維持が困難になるだろう。これは、余程の破綻者でもなければありえず、件のペルセウスのリーダーがそうであることは余り考えられない。だって話聞いてると小物っぽいし。
「しっかし、死にたくない死にたくないと言っときながら、これだからなぁ…………」
死にたくないのは事実である。ただ、敵を潰すなら使えるものは全部使うだけ。まあ、自分の死亡すら使ってまで人を壊すことに躊躇いが無いことはおかしいと思うけど、戦場に慣れきった傭兵が人を殺すことを必要以上に躊躇うことが異常なように、似たような環境に投げ込まれた僕が今さらそんなことを気にしてたら、そっちの方が異常だ。
なにせ、たった二人で国相手に戦争かましたからな、僕は
死因→断頭