自称凡人も異世界から来るそうですよ?-『異常な普通』の箱庭活動記録-   作:しにかけ/あかいひと

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一巻分エピローグ、短めです。


記録その17-その締まりの悪さ故に、彼は自称凡人

 

今回のオチ。

 

「「「じゃあ、これからよろしくメイドさん」」」

 

「「「えっ?」」」

 

「…………ハァ」

 

ノーネームに戻ってきた僕たち。完全無欠の大勝利に気分を良くしていた僕の脳味噌は、問題児達の発言に一気に頭痛を訴え始めた。

 

「というか、何故にメイド? 言いたくはないけれど、便宜上モノ扱いになるから、使用人対応ってこと?」

 

「ま、そういうことだな。所有権の取り分については、今から決めるってことでいいだろ。全員が自分の仕事を全うしたからな」

 

「でも、やった仕事の中身を考えると、どう考えても私の取り分は少ないのよね」

 

「同じく」

 

「く、黒ウサギは反対ですよ! レティシア様を家政婦にするなんて!」

 

「いや、落とし所としては良い着地点じゃないか?」

 

「レティシア様!?」

 

想定外のところから同意の声が上がった、レティシアさんである。

 

「今回の件で、私は君達に恩義を感じているのだ。コミュニティに戻れたことも、コミュニティに希望をもたらしてくれたことを」

 

「それで、恩返しとでも?」

 

「そういうことだ。コミュニティが苦しい時期に寄り添えなかったのだから、その分を別の形で返していきたいと思うのは、自然な流れだと思わないか?」

 

「そうかもしれないけどさー…………」

 

ならば僕が言うことは一つである。

 

「その所有権云々、僕ちゃんは放棄しまぁす」

 

「「「えっ?」」」

 

「あん?」

 

今度は久遠サンに春日部サン、レティシアさんが驚き、十六夜クンが妙なものを見る目でこちらに視線を寄越した。いやいや、そもそも知的生命体の所有権云々は僕にとってはヘヴィだよ…………。

 

「多分、僕が所有権云々の話し合いに参加したら、確実に取り分が多くなる。レティシアさんが乗り気な以上、メイドさんとしてノーネームをバックアップしてくれることは何も言うことはないけどさ、諸々の事情から女の子の所有権云々は、僕にとって厄ネタにしかならんのだよ…………」

 

「女の子という歳でもないけどな、私は」

 

「見た目考えろ長命種族め」

 

いや、本当に厄ネタなんですよ…………具体的に言うと僕が前の世界に残してきた相棒とかね。

 

「何かの間違いでその相棒が箱庭に来ちゃった場合、『浮気者』呼ばわりされたくない。そうなったらもう本気で立ち直れなくなる」

 

「ふむ、なにやら事情があるようだな。詳しくは聞かないが」

 

そうしてくれると助かります。

 

「というか黒ウサギィ…………なんであの女郎も呼ばなかったんだよぉ…………明らかに僕なんかよりも箱庭向き且つ頭も回るし、何より僕より強いのにぃ…………」

 

「く、黒ウサギは依頼をしただけなので誰を呼び出すかまでは…………」

 

…いやまぁ、じきに来るだろうけどな、僕を追いかけて。刺されないか本気で心配である。

 

「というわけで、お先に休ませてもらうよ…………頭使うと眠くなっていけない」

 

そう言って、僕だけその場から抜け出して自分の部屋に戻るのだった。

 

あとで聞いた話だと、所有権に関してはその場のメンバーで等分ということで話が着いたらしい。

 

 

◇◇◇

 

 

「疲れたー…………」

 

部屋に入り、そのままベッドにダイブ。今日はもうなにもしたくないと思いながら、睡魔に身を委ねて目を閉じる。しかし眠るに至るほどではないため、夢の世界へは旅立てないのだが。

 

(ここ数日でいろんなことがあった)

 

箱庭のこと、ゲームで命のやり取りをするこの世界のこと。

 

魔王のこと、ゲームを強要し悪用して暴れる無法者のこと。

 

名無のこと、無法者に掲げる旗と名を奪われた人々のこと。

 

仲間のこと、何かを求めて箱庭に喚ばれた少年少女のこと。

 

自分のこと、突き刺さる功績を理由に喚ばれた化物のこと。

 

(めんどくさいことに巻き込まれた、と思った。いろんなことが僕の手から離れたあとのことだ。ようやっとゆっくりできる、その矢先のこれだ)

 

一生分の厄介事は処理しきったと思った、それなのにまたも僕は何事かに巻き込まれた。本当に善意だけでゲームでいろんなモノをやり取りする世界に喚ばれただけならば、素直に喜べたんだけど。

 

(自分で言うのもあれだけど、それなりにお人好しではあると思う…………それでも今回ばかりは無視して()()()()()()。僕には、それができる力と理由がある)

 

あの場で水死したのは、本当にショックを受けたわけだからではない。単純に、能力を起動させるのに必要だったから。その気になれば、僕の理解が及べば、世界の壁すら乗り越えられるのだから。

 

(でも何故に僕は、戻らないと決めたのか。やっぱり共感と同情かな)

 

昔殺した類の外道がいて、昔の僕みたいなヤツがいて、どうしてもその姿が一番苦しかった頃と、ダブってしまう。どうしても、見過ごせなかった。

 

(それに、気になることもある。僕以外に喚ばれた三人のこと)

 

僕が何らかの理由で以て喚ばれたらしいことから、他の三人もまた何かしらの理由で喚ばれたはず。間違ってもランダムではない。それに、十六夜クンは僕のことを知っている様だった。それぞれ平行世界から喚ばれたと聞いたが…………もしかしたら、僕ら四人はどこかで繋がりがあるのかもしれない。

 

(そして、何より僕自身のことだ。白夜叉サンと黒ウサギは、確信を持って僕が箱庭に喚ばれたのは必然だと言った。身に覚えのない功績(ギフト)のことも、出力条件を満たしていないとなっている3つのギフトのこともある)

 

確かに自分のことを理解してるとは言い難い。分からないことの方が多いと言っていい。でも、それでも身に覚えのない恩恵、才能についてはそもそもが意味不明だ。今回の件でなにより、自分に対する謎が深まったと言えよう…………頭がいたい。

 

(…………アイツには悪いけれど、僕は此処で色んなことに対する回答を見つけるべきなのかもしれない。それ以上に、見て見ぬ振りをするには、あまりにも僕のトラウマを抉ってくる)

 

多分それは、僕らのこれからのことを考えるのにも必要なことだと思うのだ。…………連絡手段があれば、と思って、目を開けて体を起こす。

 

部屋に備え付けで置いてある机と燭台。部屋の光源であると同時に、封蝋の…………。

 

「手紙を飛ばす位は、できるか」

 

あいつみたいに、電波も糞もないところにまで電話を繋げるようなことはできないけれど、それぐらいならできるかもしれない。ケータイこそ壊れたが、それでもあの着歴の異様さは覚えてるし、それだけ心配かけたことを心苦しく思う。せめて、無事を伝えるだけでもしておかないと。

 

そうと決まれば、準備が必要だ。紙と封筒と、あと印璽があれば完璧か。文房具自体は最後の荷物にも入れていたからね、ボールペンで十分だろう。

 

気合い充分、勢いよく立ち上がり…………立ち眩む。あ、痺れるように視界が黒くなり、頭をフラフラとさせ、バランスを崩し…………

 

「…………あっ」

 

倒れる瞬間に全てを悟る。位置的に頭をぶつける先が机の角。つまり…………ジ・エンドだ。

 

(色々と、締まらないなぁ僕は)

 

とりあえず、どうせ後で死ぬんだしと諦めた僕は、そのまま自分の体を重力に任せた。

 

 

◆◆◆

 

 

いつか何処かの世界でのこと。

 

月光に照らされた死んだ街で一人俯く誰かの元に、不自然な軌道を描いて一枚の手紙が舞い降りた。

 

それを読んだ誰かは、顔をあげて静かに呟く。

 

「…………嗚呼、そういうことだったのか」

 

答えを得た誰かは立ち上がる。もう此処には様はないとばかりに、その場から姿を消した。

 

それを見ていたのは、月と、墓標のように建ち並ぶ廃墟のみ。

 

 

◆◆◆

 

 

 




死因→頭部強打、頭蓋骨陥没、脳損傷
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