自称凡人も異世界から来るそうですよ?-『異常な普通』の箱庭活動記録-   作:しにかけ/あかいひと

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サブファイルその1:『異常な普通』と『虚構演者』
記録その1-嘘を流せ、景山健太


嘘も本当も綯い交ぜに、騙り続けて早幾年

 

気付けば不様な三流(ヘタクソ)作家も、あれよあれよと伝説に

 

平凡だった少年は、危機を乗り越え大人になり

 

信じた未知を口ずさみ、最後は偉大なエンターテイナー

 

しかししかしその代償、失うものは優しい嘘

 

嘘も本当も綯い交ぜに、騙り続ける少年は

 

いつしか言葉で全てを歪め、虐殺するは悲しい現実

 

舞台の上で彼は嗤う、こんな筈ではなかったと

 

誰も彼もが彼を笑う、こんな夢こそ見たかった

 

夢を忘れた世界にて、彗星(ほし)の如く生まれた演者

 

舞台の上の嘘の世界で、嘘の如き現実(ほんと)を流す

 

それはそれは、嗚呼それは

 

■で■すら■ろして■ろす、旅歩きの■■のよう

 

紛れもなく彼は英雄、嘘の世界を救った英雄

 

侮蔑を込めて彼は名乗る、ワタシは『虚構演者(フィクション・ディスチャージャー)

 

 

◆◆◆

 

 

「こわいなぁ…………」

 

Ciao!! ワタシ景山健太、何処にでもいる普通の高校二年生ェ!! ただ、ちょーっと他の人より恩恵が多いことが個性かなっ!

 

…………なーんておふざけは置いておいて。

 

 

─────────────

 

→『虚構演者(限定解放)』

 

→『─────(待機中)』

 

→『─────(待機中)』

 

─────────────

 

 

自分のギフトカードを見て、溜息を一つ。ここ最近の出来事の中で、特に頭を悩ませるものだった。

まだ誰も目覚めてないノーネーム本拠にある図書館にて、僕はうんうんと唸っていた…………悩みの種の原因、急に出力条件を満たしたらしい新たな僕の恩恵を調べるために。

 

だがそれなりに蔵書数が揃ってるけれど、流石にピンポイントで僕の新たな恩恵に繋がる手懸かりは存在しておらず、どうしたものかと更に頭を悩ませる。

 

ちなみに、なんでこうこそこそと誰も起きてない時間を狙って調べものしてるのかと言うと、理由は二つある。

 

まず一つ、弱小コミュニティの建て直しにはお金がとても掛かるから。それはもう凄く掛かるみたいなのだ、その辺りは良く分からんので頭の回る&本職の方に丸投げしたけど。今までは黒ウサギが稼ぎを得ていたけれど、それはコミュニティの維持だったからなんとかなっただけで、これからはもり立てていかなければならんのだ。貯蓄もいるし、これまでの何倍ものお金がいるだろう。あ、なにもお金だけじゃないか…………。

まあなので、せっかく喚んだ異世界人、遊ばせておく訳にもいかず、僕らはその辺で開催されてるギフトゲームに参加しては小銭を稼ぎ、それが無いときは日雇いのバイトをして小銭を稼ぎ…………と、自転車操業の真っ最中であるため、こんな時間にここにいる。自由時間がないとは言わないが、僕に関してはその間を惜しんででもお金や資源を稼いでおきたいところ。何か事業でも起こし軌道に乗ればある程度は楽になる、それまでの辛抱だと思って全力で休憩時間もレッツワーキン。そうなると自分のことに充てる時間が睡眠時間ぐらいしかなく…………あれ? そもそもその気になれば睡眠時間なんて削れるじゃん僕! と思い付いて、夜時間はずっと図書館に籠ってるのだった。僕のギフトに繋がらなくても知識は無駄にならないからね。最近自室には着替えでしか戻った記憶がないよ、あはは!

 

次に、このことをあまり知られたくないということ。みんなを信用してないわけじゃなく、寧ろ自分が信用できないからだ。

…………だっておかしいだろぉ、なぁんで非才の凡俗にそんな才能あるんだって話。少なくとも中学までは、異能を消せるだけの、マジで何の取り柄もないことが僕のアイデンティティだったのに!

 

(((それは違うぞ!)))

 

…………なんだ今の、何処から発信された電波だ?

 

まあ、そんなわけでこそこそとする。全力でハイディング、僕の異能をフルスロットルで気配も何もかも捉えられないように消して馴染ませる! …………ふふふ、そのお陰で自殺カウントが過去稀に見るレベルでうなぎ登り、精神的にもちょっとヤバイかなーって思いつつ、そんな不調も消し飛ばし、図書館に住まう真夜中の不審者ロードを邁進して…………。

 

「でも流石に疲れたぁ…………」

 

キュー…………と机にうつ伏せる。メンタルの不調を消し飛ばしても、記憶が一気にメンタルを殺す。じゃあ記憶を消すか、というわけにもいかず。そんなピンポイントでしんどい記憶とか消せんし趣味じゃねーわ。

でも、その自分の趣味を貫いて体調不良って言うわけにもいかねーし、倒れてる暇ねーし、自分の命を燃やしてでもなんとか『ノーネーム』を軌道に乗せないと…………手紙を飛ばした瞬間から、なんとなく向こうからこっちに来そうな気はしてるけれどそれでも努力しないとかあり得ないし寧ろ頑張るし、それに既に『対魔王コミュニティ』として売り出してる以上、いつ以下なるときもそういう厄介事に対応できるように努力するのは当然の事だし何より魔王っていう理不尽がそもそも気に入らないしというか思考がどっちらけであああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ……………………。

 

「…………ダメだ、流石にダメだ、文字通り命削り過ぎて精神が病みかけてる…………体調管理できないガキかよ僕は」

 

いやまあここまで本気になるとは思ってなかったからでもあるけどね。誰だ好き好んで自殺までして組織に身を捧げるヤツは、僕だけど。

 

…………そういや、自殺カウントの報告を義務付けられてたっけ。嘘言って実際よりも少なく報告してるけど。一応あれから一回しか死んでない設定…………ふふふ、バレたら強制休暇、そしてカウンセリングかな? 現状から考えるとあまり笑えない未来予想図だね。

 

「先手を打って休もう、そうしよう」

 

気合いを入れて、勢いよく立ち上がりながらこっそり叫ぶ。

 

「僕は今日休みを貰うぞ、ジョ○ョォォオオオッ! ─────ウッ!!!?」

 

きゅ、急に息がつま────────────────

 

 

◇◇◇

 

 

「知らない天じょ…………知ってる天井だな」

 

「あ、気が付いた」

 

…………どうやら事故死カウントが増えたらしい。暫く横になった覚えのない自室のベッドで僕は目を覚ました。

 

「って、また春日部サンか。デジャブを感じるよ」

 

「ということは、また死んだってことでいいの?」

 

どうやら少し怒ってるらしい春日部サンが監視役のようだ。なぜわかるか? んなもん、最近の悩みの種筆頭が原因だよ。

 

「自殺じゃないよ! 多分…………エコノミークラス症候群だ」

 

「エコノミークラス症候群…………別名旅行者血栓症。倒れていた場所が図書館だったことを考えると、真夜中にずっと悪い姿勢で本を読んでた、ってところかな?」

 

「…………凄いね春日部サン、探偵の素質があるんじゃない?」

 

「健太は詐欺師の素質がありそうだけどね」

 

ありゃりゃ、否定はしないけど随分と怒ってるなぁ…………。

 

「十六夜の予想だと、ここ最近ずっと図書館で調べものをしてるってことらしいけど」

 

「黙秘権を行使します」

 

「それを聞いた黒ウサギが、そういえばいつ頃からか夜中に健太が部屋にいないって気がついてたけど」

 

「黙秘権を行使します」

 

「健太の能力って応用が利くみたいだから、一切逃れられない黒ウサギの耳も、本人の認識をずらして誤魔化してたんだろうなって、私は予想したんだけど」

 

「黙秘権を行使します」

 

「それで、飛鳥がそんなに大掛かりな能力を使ってるのだとしたら、自殺カウント誤魔化してるんじゃないかって言ってたけど」

 

「黙秘権を…………いや、もうだめか、全部ばれてやがる」

 

ガッデム、全員スペック高いから芋づる式に全てが明かされてるじゃねーか。

 

「……そんなに私達、頼りない?」

 

「それは全力で否定するよ。全員僕なんかよりもずっと箱庭向きだ。頭で劣るから潰しが利かんことを、ここ最近の小銭稼ぎで突き付けられたんだ」

 

ルイオス氏追い詰めるのに頭は回ったけれど、あれはそういうこっちゃないからなぁ。どうにも僕の頭の回転は、誰かを悪意で以て出し抜く時にしかフル回転しないのかもなぁ、嫌になるぜ。

 

「頼りないのは、信用ならないのは自分自身だ。箱庭に来て余計に自分が分からなくなった。重く受け止めてるわけじゃないけど、この先のことを思うと不安で仕方なくてねぇ、何か答えがあるかもしらんと、図書館に忍び込んでたわけですよ」

 

「頼りないなんて、そんなことはないと思うけれど…………」

 

「そう言ってくれるだけで心が軽くなるってものさ。いやまぁ、今回ばかりは本気で反省した。メンタルもやられたし、今日は素直に休む。だからお叱りは勘弁です」

 

「誰もそんなことしないよ」

 

えぇー、本当でござるか?

 

「既に怒るを通り越して『守護らねば…………ッ!』って領域」

 

「うぅん、喜べない!」

 

「流石に誇張はしたけれど、怒っても変わらないって諦めたのは間違いない。本気で申し訳なく思ってるなら、せめて報連相はしっかりして」

 

「はぁーい」

 

なんというか、本当にダメダメだねぇ僕ちゃん…………。

 

 

 

 

 

 

「全く…………これがあの『フィクション・ディスチャージャー』だなんて」

 

 

 

 

 

 

……………………………………………………え?

 

「春日部サンッ! その『フィクション・ディスチャージャー』って何処で聞いたの!?」

 

「えっ? …………えっと、言ってもいいのかな、これ」

 

「知ってるんだね!? 知ってるんだね!!?」

 

そう言って、僕はポケットに入れていたギフトカードを取りだし、春日部サンに見せた。

 

「…………なるほど、そういうこと」

 

「まるで手懸かりが掴めなくて参ってたんだ…………多分、それ景山健太のことなんだろう?」

 

「うん…………同じって言っていいのか分からないけれど。平行世界から喚ばれたって黒ウサギが言ってたから、別人かもって思ったんだけど…………」

 

これは…………思わぬところから情報が聞けるのかもしれない。控えめに言って救世主だわ。

 

「時間が空いてる時でいい、教えてくれないかな? 君の知ってる景山健太のこと」

 

「……うん、いいよ。なんなら、今からでも大丈夫だよ?」

 

「ありがとう春日部サン、お願い」

 

 




死因→エコノミークラス症候群
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