自称凡人も異世界から来るそうですよ?-『異常な普通』の箱庭活動記録- 作:しにかけ/あかいひと
かっこよく決めようとして滑って転んで後頭部直撃という笑えそうで笑えない事態に陥った後、女性陣には無駄に労られ、逆廻クンにはケラケラと笑われたことは僕の新たな黒歴史となることでしょう。
それはともかく、どうやら僕が死んでいる間に彼らも『ノーネーム』に加入することになったらしい。マジか、正気の沙汰じゃないね。
「既に散々な目にあってる景山くんだけには言われたくないわね」
「さらっと考えてること読むんじゃないよ」
逆廻クンは面白ければ何でもいい、とのこと。まあそれだけじゃない気もするけどね。この手の人間は、自分よりも凄いものを求める気がする(偏見)。
久遠サンは、おおよそ他人の望み得る全てを放り出して来たから、スタート地点の状況は然程気にはしないとのこと。おじょーさまの考えることはよー分からん。
春日部サンは、友達作りにこの世界に来たのだとか。いつの間にか僕も彼女の人間の友達3号として登録されているが、悪い気はしないので事後承諾もOKだ。
そんなこんなで我々一行は、黒ウサギサンの先導で本当の意味での箱庭(今いる場所は外側らしい)に向かって歩いていた。
(大丈夫か? 泥濘はないか? 罠もないよな?)
とりあえず、これ以上死ぬのは基本的に勘弁なので、注意深く周りを見渡す。死んだ所為で知らない天井を見る羽目になるのは嫌なのだ。
「せめて爆死だけは避けたいものだ…………あれ痛いし」
「不死身以外は一般人っつーのも嘘臭く聞こえるな。どこの一般人が爆死する機会があるんだよ」
「ちょっと一生にあるか無いかの機会に恵まれてね。なんなら蜂の巣にされたこともあるよ…………もうあれ痛いを超えて途中から何も感じなくなるんだよね…………」
まあ流石にファンタジー世界で銃器を相手に戦うなんてことはなさそう…………無いよね? フラグとか嫌だよ?
「で、それはともかく逆廻クン。キミ、今からどっか行きたいんだろう? 黒ウサギサンの意識が僕に向いてない間に行ってきたらどうだい?」
「気が付いてたのか?」
「単なる勘だけど」
まあ割と……どころか本気で察したら外さない勘を、勘と呼べばだけど。
「君のソレと僕のソレは一緒にはできない程の差があるが…………『浪漫』は男にとっての心の燃料の1つだ。補充するにはもってこいの世界だろうし、はっちゃけるのも悪くないんじゃない?」
「面白ぇこと言うじゃねえか。そんなら、一緒についてくるか?」
「そりゃ勘弁ってね。君みたいなあからさまな規格外なら未だしも、僕みたいな死なないだけの凡人を連れて行くのは興醒めの原因にしかならない。…………僕もこれ以上は死にたくないからね」
本来死ぬという行為は1回だけの特別なものだ。バカスカ死ぬのは精神的にも『死』という現象の貴重性を保つためにもやってはいけないのよ!
「じゃあまぁ…………土産話楽しみにしてるよ」
「おうとも」
そう言って、逆廻クンは勢いよくその場から飛び出していった。
…………とりあえず、黒ウサギが気がつかないように頑張ろうか。
◇◇◇
さて、そんなわけでようやっと入口へと到着したらしい。分厚い外壁のその向こうには、どんな光景が広がってるのだろうね?
「ジン坊ちゃーン! 新しい方を連れてきましたよー!」
黒ウサギがテンション高めに、前方にいるダボダボしたローブに身を包む男の子に声をかけた。
「お帰り、黒ウサギ。そちらの3名が?」
ダボダボ少年は『ジン』というらしい。そのジンくんが、不安げな目をしながら僕らを見て黒ウサギサンに問うた。
「はいな、こちらの御四名様が──────」
クルリ、と振り向いた。
ビシリ、と凍りつく。
「…………え、あれ? おかしいですね、黒ウサギの幻覚なんでしょうか…………十六夜さんはどちらに?」
「ああ、逆廻クンはあっちに行ったよ。多分世界の果てでも見に行ったんじゃないかな?」
指差して親切に教える僕ってばマジ善人。まあそんな冗談はともかく。
「ウ、ウソでしょう!? なんで止めてくれなかったんですか!!」
「いやだって、『浪漫』は男にとっての心の燃料だし。補充しないと死んじゃう」
「嘘おっしゃい!!」
「実演してもいいけど」
「健太さんの場合はシャレにならないからやめてください!!」
まあそんな漫才を展開していると、ジンくんが顔を青ざめさせながら声を荒げた。
「た、大変です! 『世界の果て』にさギフトゲームのため野放しにされている幻獣が!!」
「幻獣、と言うと?」
「は、はい。ギフトを持った獣の総称なのですが…………『世界の果て』付近には強力なギフトを持った幻獣がいます。出くわせば、人間ではとても…………!」
「あら、それは残念。もう彼はゲームオーバー?」
「ゲーム参加前にゲームオーバー…………クソゲー?」
「心にもないことを言うもんじゃありませんぜお嬢様方。ほら、草葉の陰から逆廻クンが怒って現れるかもしれませんよ?」
「冗談を言っている場合じゃありませんっ!」
御尤も。流石に冗談のたちが悪かったね。
「では、えっと…………ジンくんとお呼びしても?」
「え、ええ。コミュニティのリーダーをしている『ジン=ラッセル』です」
「ではリーダーと。その幻獣とやら…………土地神以上の力を持ってる奴はいるのでしょうか?」
「基準にもよりますが…………流石に神に届き得るものはいないとは思いますが」
「そうですか」
うん。それならば多分安心かなぁ。
「はぁ……感動した後にコレですか。仕方のないことなのかもしれませんけど。ジン坊っちゃん、申し訳有りませんが、御三人様のご案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「分かった。黒ウサギは?」
「此処にはいない最後の同士を捕まえてきます。…………何もなければいいのですが」
まあ万が一ということもあるのはあるわな。ほら、現に3回ほど人死が。
「それでは、一刻程で戻ります。それまで、ご無事でッ!!」
瞬間、黒ウサギの髪の毛が緋色へと変わる。…………え、黒ウサギじゃなくて赤ウサギなのん?
と、思ってる間にバビュン! と空気を切り裂きながら、弾丸の如く飛び出す彼女を見て、僕らは感嘆の息を漏らす。
「………箱庭の兎は、ずいぶん速く跳べるのね」
「………地球のみんなも、かなりの脚力だけど」
「………ああ、あの脚力ぱないもんね。でもアレはもはや………兎じゃなくてUSAGIでしょ」
人間大になったって、あんなに速くは動けまい。黒ウサギ…………恐ろしい子!
「ウサギ達は箱庭の創始者の眷属。力もそうですが、様々なギフトの他に、特殊な権限も持ち合わせた貴種です。彼女なら余程の幻獣と出くわさない限り問題はないと思うのですが…………」
「…………『ノーネーム』は最底辺の証だと聞かされたんだけど、なんか彼女だけ別格だなぁ」
「ええ、僕らも彼女に負担を掛けてばかりで申し訳なく…………え?」
僕の発言に何かびっくりするところがあったのか、リーダーの言葉が詰まる。
「ああ成る程。安心していいわジンくん。黒ウサギからあなた達の、そして私達がこれから加入するコミュニティ『ノーネーム』についての説明は受けてあるわ」
「……納得した上で決めたから、慌てる必要はない」
「え、ええ……? ありがとうございます」
…………なるほど、隠すつもりだったからその様にリーダーも動いていたわけだから、面食らったわけね。
「じゃあ自己紹介をば。僕の名前は景山健太。で、そこのお嬢様ルックの彼女が」
「久遠飛鳥よ。最後に、そこで猫を抱えているのが」
「春日部耀。以後よろしく」
「コミュニティ『ノーネーム』のリーダー、ジン=ラッセルです。若輩ではありますが、よろしくお願いします」
さて、挨拶も終えたところでようやっと入口だ。願わくば、魔王戦以外は死ぬようなことがありませんように。
◇◇◇
トンネルをくぐり抜けると、そこは雪国…………何てことはなく。欧風の街並みが広がっていた。……あと、不思議なことに外からは天幕に覆われていた筈なのに、空に太陽が浮かんでいた。
どうにも、内側からは不可視らしいあの天幕は、陽の光が浴びれない種族のために設置されてるんだとか。…………吸血鬼か。あまりいい思い出ないんだよなぁ。あいつら強過ぎて倒すのに13回は死ねる。
まあそんなこんなで、黒ウサギと逆廻クンを待つという名目で、僕らは六本傷の旗を掲げるカフェテラスで一息つくことに。
座った瞬間、とはいかないが、座るとすぐに店の奥から猫耳ウェイトレスが飛び出てきた。…………うさ耳少女がいるなら、猫耳少女もそりゃいるか。
「いらっしゃいませ! 御注文は?」
「えーと、紅茶と緑茶を二つずつ。あと軽食にサンドイッチを四つと」
「にゃにゃー!」
「かしこまりました、ティーセット四つにネコマンマですね」
…………え?
思わず僕らは春日部サンの抱える三毛猫に視線を向ける。
というか、それ以上に春日部サンが無表情だった顔を思いっきり驚愕の色に染めていた。わぁびっくり。
「三毛猫の言葉、分かるの?」
「そりゃ分かりますよー私は猫族ですから。お歳の割に随分と綺麗な毛並みの旦那さんですし、ちょっぴりサービスさせてもらいますねっ」
「にゃーにゃにゃー、にゃーにゃー」
「やだもーお客さんったら!」
三毛猫サンの鳴き声にイヤンイヤンと尻尾を振った猫耳ウェイトレスさん。そのまま店の奥に消えていくが…………うーむ、すごい絵面である。
「……箱庭ってすごいね三毛猫。私以外に三毛猫の言葉が分かる人がいたよ」
「にゃーにゃにゃー」
「ちょ、ちょっと待って春日部さん。貴女、もしかして猫と会話ができるの?」
「珍しいことでもないでしょ? 僕の親友はなんやかんやして動物と喋れるから」
「「「え?」」」
あり? 今度は僕の方に視線が集まった。
「確か、『動物の言葉が分かる翻訳機〜☆』とか言って自慢してたし。でも鳥類はちょっと厳しくてまだまだ研究しないと、とも言ってたけど」
「………ちょっと、会ってみたいかも」
「そう言ってもらえると嬉しいね。まあ、その為には魔王をぶっ飛ばしていかないといけないわけだけどさ」
なお、そのあとの会話から、春日部サンは生物となら誰でも意思疎通ができるらしい。羨ましい…………僕、不死身になんてなれなくてよかったから、イルカと喋りたいのよ…………。
「春日部さんは素敵な力があるのね、羨ましいわ」
「本当に羨ましい…………僕なんか不死身だぜ? スプラッターだぜ? ざっけんなって話だよね」
「あら、私からしたら、それも素晴らしい能力だと思うわよ景山くん」
「お世辞でも嬉しいよ。ちなみに、久遠サンは?」
「私? 私の力は…………その」
あ、しまった。どうもデリケートな話題だったらしい。どうしよう? と内心あたふたしていると、僕らの座ってる席に、大男がやってきた。
ぱっと見2メートルオーバーの身体に、ピチピチタキシード…………なんというか、きんもい。
「おんやぁ? 誰かと思えば、東区画の最底辺コミュニティ『名無しの権兵衛』のリーダー、ジン君じゃあないですか」
……………………なんか、嫌な野郎だな。性格もさることながら…………その中身が。
「えっと、リーダー。僕らのコミュニティって『名無しの権兵衛』だったんですか?」
「いえ、『ノーネーム』で間違いありません。僕らの新たの同士の誤解を招くので、間違いを教えるのはやめてくれませんか、『フォレス・ガロ』のガルド=ガスパー」
「黙れこの名無しが。聞けば新しい人材を呼び寄せたらしいじゃないか。よくもまあここまで過去の栄華に縋ることができるものだ…………そうは思わないかい、異邦人の皆さん?」
そう言って、彼は空いてる席にドカリと腰を下ろした。…………品の無い愛想笑いだなあ。もっと、どうにかならないものかね? いや気にしてもしゃーないか。
「失礼ですけど、同席を求めるならば名乗ったのちに一言添えるのが礼儀ではなくて?」
「ついでに言えば、初対面なのに過剰に馴れ馴れしいと思うのですよ。フレンドリーなのは良いことだと思いますが」
「し、失礼。私は箱庭上層に陣取るコミュニティ『六百六十六の獣』の傘下である「烏合の衆の」コミュニティのリーダーをしている……… って待てやゴルァ!! 誰が烏合の衆だ小僧ォ!!」
…………おお、リーダーってば意外と毒舌さん? まあ今ので大体このガルドと名乗った男についてはわかったけど。
「まぁまぁ落ち着いてくださいお二人とも。争いは何も生みませんよ? ま、それはともかくとしてガルドさん。貴方、どうして半ば割り込む形で同席したのですか?」
「それはですね、彼の────」
「先に言っておきますが、僕と彼女達はリーダーが率いるコミュニティの実情を聞かされています。だから、『新人を騙すなんて』などというお門違いな義憤をされても困る、とだけ」
そう先手を打つと、ガルドさんは面白い様に固まった。
「な、な……正気か!?」
おっと素が出ましたねー化けの皮剥がれるの早すぎー。
「あ、ゴホン! 失礼しました。ですが、少し認識が甘いのではと、私は思いますがね」
「ほぉ、と言いますと?」
「実情を聞いた、という前提で話を進めさせていただきますが。『ノーネーム』は、そうであるというだけで詰みなのです」
曰く、名前が無いというハンデから商いなどができず、人材に乏しい為にゲームがまともにできない。再興する手掛かりを既に奪われているも同然…………らしい。
『その点ウチは両者合意でのコミュニティを賭けたゲームで勝利を重ねて、この区画のほとんどを手中に収めた云々』などと自慢してたのは半分スルーで。
「成る程。ガルドさんの言い分は分かりました。ですがそこまで心配していただかなくても大丈夫ですよ。そうであることは想像はついていましたし、むしろ最底辺コミュニティの方が、少なくとも僕にとっては都合がいいのです」
「……そうですか(チッ)」
こ、こいつぅ…………舌打ちしやがった。ま、まあいい。
「そちらのお嬢さん方も、やはり彼の様に?」
「ええ。私は他人が望み得る全てを捨てて箱庭に来たの。環境なんてあまり気にしないわ。それなら私は、より面白い方に付くだけよ」
「友達を見捨てて乗り換えるほど、薄情じゃ無いつもり」
「お、面白い方……!? 友達……!? そんな理由で…………」
わかっちゃいたが…………ふむ、ここまでフルボッコだと逆に同情しちゃうな。
「…………チッ。黒ウサギを引き抜くダシに使えると思ったが、アテが外れちまったぜ」
「おぉ、黒い本性剥き出しってところですか? まあ1人でも人質要員確保できたら、あのお人好しっぽそうな黒ウサギならホイホイついていきそうですよね、加入するかはともかくとして」
しっかし、気に食わないねぇ…………。
「悪魔とも言えねぇ木っ端異形に足元見られんのは気分が悪くなる」
「…………あぁ?」
「言い方を変えよう。この、三流が」
「こ、このッ───────」
沸点が超えたのか、エセ紳士風の態度を全てかなぐり捨てて、その巨腕を俺の方に突き出してきた。うむ、コレは死ねる。
「
…………ガルドの動きが、止まった?
「ッ!!」
慌てて声を上げた人物……久遠サンに視線を向ける。なんだか、不機嫌そうだ。
「景山くん……貴方、また性懲りも無く私たちの目の前で死ぬ気? これから友達になろうって人の死体を見る趣味は無いのだけど」
「あ、ああいや、ありがとう久遠サン。ちなみにこれが、キミの能力なんだね?」
「ええ。あまり好きでは無いのだけどね。軽く命令するだけでこのザマよ」
こりゃまあなんとピッタリな……とか思ったら失礼だろうけど。支配系の能力……生まれ持っての指導者ということね。
「く、くそッ!! どんなギフトを使ったのか知らねぇが、解きやがれ!!」
「お断りするわ。少し、貴方に質問ができたの。ですから、
「─────ッ!!?」
またも久遠サンから出された命令に、ガルドは苦悶の表情を浮かべつつも椅子に座り込む。すげー、警察署に1人は欲しい人材なんじゃ?
「お、お客さん!当店で揉め事は控えてくださ──」
「お、丁度いいや。猫耳ウェイトレスさん、今から少し面白いものが見れると思うんで、少しだけ見ててくれませんかね?」
奥からただならぬ雰囲気を感じ取ったらしいさっきのウェイトレスさんが飛び出てくる……が、とりあえず押さえておこう。確かに気になるところはあるのだ。僕の思ってることが確かなのなら…………おそらく、証人はいた方がいい。
「まず疑問その1、『ガルド=ガスパーはどうしてコミュニティを拡大できたのか?』…………ということかな?」
「……自分の帰る場所を賭けるという状況は、おかしい」
「2人の言うとおりね。貴方はこの地域のコミュニティに
「や、やむを得ない状況なら稀に。しかし、これはコミュニティの存続を賭けたかなりのレアケースです」
「でしょうね、箱庭に来たばかりの私でもそうであろうことは想像がつくわ。だからこそ、ゲームを強制できる特権『主催者権限』を悪用する魔王は恐れられてるはず。なのにその特権を持たないあなたが何故強制的にコミュニティを賭け合うような大勝負を続けることができたのかしら。そこのところ、
またも強制される久遠サンの命令に逆らおうとするガルド……必死に口を閉じようとしている様子がわかる。…………まあ、おそらく無駄だろうけどね。
「き、強制させる方法は様々だ。一番簡単なのは、相手のコミュニティの女子供を攫って脅迫すること。これに動じない相手は後回しにして、徐々に他のコミュニティを取り込んだ後、ゲームに乗らざるを得ない状況に圧迫していった」
「……………………!」
想像以上の下衆さに思わず息を飲む。
こうなってくると、最悪の状況が頭を過る。
「まあ、そんなところでしょうね。貴方のような小者らしい堅実な手です。けれど、そんな違法な手段で吸収した組織があなたの下で従順に動いてくれるのかしら?」
「各コミュニティから、数人ずつ子供を人質に取ってある」
ああ、もうダメだ。おそらくその人質は…………
「……そう。ますます外道ね。それで、その子供達は何処に幽閉されてるの?」
「もう殺した」
想像したくはなかったその言葉に、思わず息を止める。
「初めてガキ共を連れてきた日、泣き声が頭にきて思わず殺した。それ以降は自重しようと思ったが、父が恋しい母が愛しいと泣くのでやっぱりイライラして殺した。それ以降、連れてきたガキは全部まとめてその日のうちに始末することにした。けど、身内のコミュニティの人間を殺せば組織に亀裂が入る。始末したガキの遺体は証拠が残らないように腹心の部下が食」
「
久遠サンの一喝。ガルドは口をガチンッ!! と閉じる。それと同時にパチンと鳴らした指の音で、奴の拘束が解かれた。
「おいおい…………勘弁してくれよ。僕、こんな方向での『ひとでなし』は期待してないんだけど。もしかして、箱庭ってこんな外道ばっかのかねリーダー?」
「……彼の様な悪党は、箱庭でもそうそういません」
「ああよかった。もしそうなら
「厳しいです。吸収したコミュニティから人質を取ったり、身内の仲間を殺すのは勿論違法ではありますが……裁かれるまでに彼が箱庭の外に逃げ出してしまえば、それまでです」
「…………成る程」
ゆらり、と僕は立ち上がる。
自分の瞳を黒い黒い虚に換えて。
「嗚呼不愉快、嗚呼不愉快。僕の目の前で…………外道な異形が息をしている」
「こ、このクソガキィ…………テメェ、どういうつもりか知らねえが……俺の上に誰がいるかわかってんだろうなぁ!? 箱庭666外門を守る魔王が俺の後見人だぞ! 俺に喧嘩を売るってことはその魔王にも喧嘩を売るってことだ!? その意味が分かってんのか!!」
「分かるわけが、ないだろう?」
口元に嗤みを乗せ、一つ一つ歩を進める。
「悪いけど、こちとら怖いもの知らずの新人でね……抹殺対象が来ると脅されたぐらいで怯むほど、現実見ちゃ、いねーんだよ」
さあ挑発だ。人間のガキにここまで足元見られてんだ、クソみたいなプライドをぶら下げてるだろうこの木っ端悪魔なら、おそらく…………
「黙れェェェェェェエエエエエエエエエエエッ!!!」
振り上げられた巨腕。そして振り下ろされる拳が、僕を潰さんと頭部に迫る。
グチャリ、と響いたのは、何の音だったのか?
気が付けば目の前の外道は、皺くちゃになった虎の様な右腕を抱えながら呻き、僕の右腕は見事にひしゃげ、血をドボドボと垂れ流していた。
「ぐ、ぐぁぁあ…………!!!?」
「虎がベース、長く生きたことにより人間の霊格、悪魔と契約したことにより悪魔の霊格がごちゃ混ぜになった、雑種中の雑種。化けの皮を剥がしてしまえば……こんなものか」
「ちょ、景山く────」
「黙ってろ」
「……ッ!!」
邪魔をされては困るのだ。この虎は、ここで僕が塗り潰す。
「ガ、ガキィ……この俺に、何をした!!?」
「別に…………本来お前の在るべき姿に戻すだけ。余計なモノを身に付けたから、お前は道を外した。ならばそんなもの、必要なんてありはしないだろう?」
異物を排除する、僕本来の能力。
その能力が作用し始めていることを示すように、右腕を起点に奴の身体がどんどんしわがれた虎になっていく。
「や、やめろ……よせ……! 今まで、どれだけの犠牲を払って…………! そ、そうだ、お前達『ノーネーム』だろ!? 奴隷も、金も必要な筈だ!! 何でもやる、だから俺から…………俺からそれを───────」
「『
後に残されたのは、息も絶え絶えな老いた虎。
「あ─────────」
そして僕も失い過ぎた血の為に、ぐらりと地に倒れこむのだった。
ああ、早速死んでしまった。だがまぁ…………満足だ。
死因→失血死