自称凡人も異世界から来るそうですよ?-『異常な普通』の箱庭活動記録-   作:しにかけ/あかいひと

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(遅くなってすみません…………こっそり投下)


記録その5-鬼札に成り得るからこそ、彼は本命

 

必死こいて能力使った反動なのか、少し体が重い。そんなことを思いながら意識を取り戻し、目の覚めた僕は、ベッドに寝かされていた。…………何処かは分からないけれど、固いな。まあ掛けてある布団はまあまあだからいいけれど。

 

「……ん、気が付いた?」

 

そして、そんな僕の監視役であろう人が、その場にいた。春日部サンである。

 

「うん、最っ高の目覚めさ」

 

身体を起こし、少しだけ辺りを見渡してからそう口にする。どうやら、ここはどこかの個室らしい。外の窓から見える景色は暗く、あれからかなり時間が経ったようだ…………と思ってると、春日部サンがその目をジトっとさせて睨んできた。

 

「…………必要以上には言わないけれど。アレはどうかと思う」

「ふむ」

 

アレ、と言うのはあの下衆虎を再起不能にする為に一回死んだことを指しているのだろうね。

 

「でも、アレは確実にあの場で潰すべきだった。でも、僕は君たちの手札を知らなかった。そして、君たちの能力でアレを潰し切れるとの確証が得られなかった。だから、ああするしかなかった。んまあ、コンタクトを取る手間を惜しんだ点と、君たちを信用しなかった点については謝りましょう。でも、アレを潰す為に死んだことについては一切謝らない」

「…………そう。まあ、いいけれど。黒ウサギと飛鳥の方が怒ってたし。私からは、『立場を入れ替えて考えてみて』とだけ」

「……ん、それもわるかったよ。すまんね」

 

あ、そうだそうだ。気になることがあったんだ。

 

「あの後、どうなったの?」

「掻い摘んで説明すると、」

 

・ガルド=ガスパーは老衰で死亡。そして『フォレス・ガロ』は強制解散し、構成員はそのほとんどが罰を受けた。んで、吸収させられていたコミュニティは解放。その原因たる僕は、一応は殺しをしたけれど正当防衛が認められ、且つガルドの行ってきた所業が法の下に照らされた一助になった為に不問。それどころか、フロアマスターからの謝礼が出るらしい。

・それはともかく、死んでちょっとしてから黒ウサギと逆廻クンが帰還。またも死んでる僕に黒ウサギが取り乱す。僕の介抱を落ち着かせる為に黒ウサギに任せ、3人とリーダーが顔を付き合わせる。『この状況、利用できはしないか?』と。

・そして『ノーネーム』である僕が、『魔王の配下である悪党コミュニティの長』を倒したという『事実』を利用して、『ジン=ラッセルのノーネーム』を、『対魔王コミュニティ』として名を売るという方針を定めた様だ。その際、リーダーと少し揉めたらしいが、逆廻クンの説明で納得し、あることをやってもらうことを条件に了承。

・そして、フォレス・ガロがゲームで奪い取っていた旗の返還をリーダーが行い、『魔王退治はジン=ラッセルのノーネームにお任せ(意訳)』と宣伝した。これで良くも悪くも魔王から狙われることとなり、しかし志を同じくし、でも力の足りなかった皆の支援を受け易くする下地を作り、コミュニティを手っ取り早く立て直す作戦、その一歩目が成功。

・んで、本来ならこの後にも行く予定の場所があったらしいのだが、フォレス・ガロに纏わるゴタゴタの所為で時間を食い、さらに僕が死んだ様に眠っている為にその予定を明日以降に繰り越しせざるを得ず、これからの拠点となる『ノーネーム』へと。

 

「で、今に至る」

「成る程、説明ありがと」

 

想像以上に、話と事態は進んでいるらしい。そして、割と望んだ方向に。

だがしかし、『ノーネーム』を『魔王退治専門コミュニティ』として舵を切るには、いささか早すぎではなかろうか? あと、危険も過ぎる。

 

「まあこの辺りは後で逆廻クンに話をしないとダメか…………ま、そういう風に舵取りせざるを得ない状況を作り出した僕だ、文句なんて言えんけどな」

「でも、十六夜は『どっちにしろこうするしか『ノーネーム』に未来はない』って言ってた。必要以上に気にすることはないと思う」

「なら、そういうことにしておく」

 

そう思って背を伸ばす。ボキボキという音が、非常に心地いい。余談だが、骨の折れる音は、とても素敵な音らしい。僕はイヤだけどねそんなもの。

 

「とりあえず、報告してくる。皆心配してたから」

「んー、分かった。ごめんね、手間かけさせて」

「そう思うなら、次からは自重すること」

「アイアイマム」

 

そう言ってふざけつつ敬礼してみせる僕に、『こいつ絶対反省してないな』という視線を向けたあと、彼女は立ち上がり、部屋に一つあるドアから出て行った。

 

…………反省はしていますよ、反省は。もうちょいうまく立ち回れたら死んだことにも気付かれずに処理できたのに、とね。

 

そんなことを考えたバチが当たったのだろう。僕が入れ替わる様に飛び込んできた黒ウサギに涙目で説教を受けることになった。

 

うん、すまねぇ☆

 

 

◇◇◇

 

 

「で、説明してくれんだろうな?」

 

黒ウサギの説教、久遠サンのお叱りを受け、最後にやってきたのは逆廻クンだった。とりあえず、のっけから飛ばすねぇ…………。

 

「ヤダ、めんどくさい。健太なにもやってない…………」

「…………」

「なんて、言ってる場合じゃないのね。まあいいけどサ」

 

顔は軽薄そうに笑ってんのに、目が笑ってない。流石にヘラヘラと流すのは難しそうだ。

 

「悪いけど、能力について話はしないからね。分かってないことが多いんだ。それに、僕だけ話すのはフェアじゃないと思うの」

「まあいいけどな。だが、何をしたのかぐらい言ってくれねぇと、この先の方針が決められない」

「そりゃ簡単な話さ。ギフトを消した」

「だろうな」

 

知ってたんかいオノレ。なんて思いながら青筋を立てる。なんで言わせたし。

 

「確認ってヤツだ、念の為。一応黒ウサギや御チビ様に、『ギフトを消す様なギフト』はあるのかって聞いたが、あるにはあるが強引に掻き消す様なものに関しては心当たりが無いっつー答えが返ってきた。纏めると、『ありえない』ってこった」

「成る程、だから確認を取ったと。でも、ありえないことは無いさ。僕の対峙したガルド=ガスパーなる虎は、悪魔の霊格を得ていた。ピンポイントのギフトを掻き消すギフトなら、ありえなくは無いだろう? この場合、僕が『悪魔祓い』ってことだけど」

「確かに。そういうギフトなら存在しているとは言われたし、『悪魔祓い』なら可能かもしれないとも言われた。が、お前にそれらしい所が見受けられなかったことと、それだけでは説明のつかないことがあった為に、それは無いと断定した」

「というと?」

「件の虎は、悪魔だけでなく、人間のギフトも持っていたそうだ。だが、その痕跡がどこにも無い。これをピンポイントで消す様なギフトは、人間には備えられるはずがないとのことだ」

「……………………」

 

なんだろう、本当のことを言ってるのに追い詰められてるこの感じ。悪魔祓いだってことも嘘じゃねーもん。

 

「まあなんだ、何が言いたいのかって言うとだ」

 

轟ッ! と空気を打つ音を響かせて、僕の額に拳が添えられた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

なんてこったい、僕は疑われているのか? ま、分からんでもないがな。

とはいえ、そう思われるのは心外である。だが、

 

「たとえそうじゃない、と言っても僕には証明できるものが何もない。強いて言うなら…………僕は人であって人でなし。だから、そういうこともあり得るかもしれない…………ということかな」

「アレだけ自分を人間だと言い張ってたのに、翻すのか?」

「そりゃ、あの場ではそうやって言っておく方が都合が良かったからね。つか、のっけからそんなこと言ってみろ、頭を疑われる」

 

そう言って、僕は逆廻クンの目に視線を合わせる。

 

「嘘は吐く。逃げも隠れもする。良心だって痛まない。だけど、自分の心に誓った矜持を折ることはしない。僕と、僕に関わった全ての為に。だからもう一度言うよ。僕は魔王という理不尽を赦さない。……ま、それはこれからの行動で判断すればいいさ」

 

というか、

 

「本音や覚悟が聞きたいのなら、真正面から聞いてくれ。そんな演技、見破れないとでも思ったか」

「なんだ、バレてたのか」

「不死身だと公言してる人間相手に、そんな脅し効くわけないだろうことは、君の方が分かると思うけどな。頭良さそうだし」

 

むすっとしながら睨むと、逆廻クンはヤハハと笑って拳を下ろした。

 

「とりあえず、現状明かせる情報は貰ったから、そういう奴なんだと思ってやるよ。つーわけで、対魔王の尖兵としてボロ雑巾の様に使い倒してやるから覚悟しておけよ」

「へーへー。リーダー気取りかよ……」

「じゃあお前、あの御チビ様にこの『ノーネーム』回せると思ってんのかよ」

「今は無理っすな」

 

まあ、それでも逆廻クンが回さなければならないってワケでもないけどな。例えそれがベストなんだとしてもね。言わないけれど。

 

「つーか、なんで対魔王コミュニティに舵取りしたし」

「それをお前が言うのかよ」

「そうせざるを得ない状況にしたことは謝るよ。でも、もっと穏便にだね…………いずれはそうしないとなぁとは漠然と思ってたけど、もう少し足場を固めないと」

 

名前と旗を奪ったのは魔王である。だから、その魔王がもう一度襲いたいと思える様な状況を作り出す必要はある。

けど、まだ現状も分からん状況で背水の陣を張るのは間違ってる気がするんだ。

 

「いや、そういうわけじゃ…………いや、それでいい。確かにそう思わないでもなかったが、魔王とでも戦えるだろう人員を遊ばせておく理由にはならないだろ?」

「……それ、自分のこと?」

「ヤハハ! まあ、今日丁度神格っつーもんを持ってるらしい駄蛇をぶっ飛ばしてきたとこだから、この箱庭でもまあまあらしいのは分かったがよ。本命はお前だ、自称凡人」

「んー、突っ込みどころが多くて悩んじゃう!」

「ちなみに報酬で水源は手に入れたぞ」

 

おお、凄いねぇ。そういえば、水を今までどう調達してたか知らないんだけど。

 

「ガキ共にバケツで運ばせてたらしいぞ」

「流石です逆廻様」

 

思わず様付けだよ。子供にそんなことをさせるもんじゃない。よくやった。やはりあの時君を送り出したのは間違いじゃなかったのね!

 

「で、何故僕が本命?」

「『不死身』『恩恵削除』。この二つが揃うだけでも、魔王のギフトゲームでジョーカー足り得る。魔王の1番の武器を、コスト無しで殺ぐことができるんだからな。後はそれを成す為に必要な精神力。それも、さっきの見る限りおそらく問題ないだろ。少し癪だが、現状このコミュニティでの最大戦力はお前だ」

「…………成る程」

 

こき使ってやるというのは、そういうことなのか。あと、少し癪という台詞から、彼は負けず嫌いである様だ。まあそれは今はいいとして。

 

「だが、お前の自己申告を信じるならば、通常のゲームではあまり役には立てそうにない。無論、致命傷を受けてもどうにでもなるのはアドバンテージにはなるが、それ以外は普通の高校生。軽く話を聞いただけでも人外が蔓延るこの世界で、それだけでやっていけるとは思えねぇ」

「んー、まあそうだねぇ」

「そんでもって、『恩恵削除』は通常のゲームでは使わない方がいいだろう。ルールの上では問題無くとも、変に目を付けられる原因になる。後、対魔王コミュニティが魔王と似た様なことしてどーすんだって話だな」

 

確かに今話しただけのスペックだと、そういうことになるわなぁ。通常のゲームでは使えない鬼札。でも、鬼札を遊ばせておく余裕はウチにはない。だから、積極的にその札を切れる状況を作り出す、と。

 

「まあ、魔王を潰すと誓ったし、もちろん喜んで神風特攻するけどさ…………でも、それにしたって」

 

その魔王のゲームというのがどういうものなのか、わっかんねーんだよな。と言うか、僕個人の頑張りでどうにかなるものなのだろうか? という疑問もある。

 

「まあそこで君は、『実戦経験を積むことで全体の急激レベルアップを図る』とでも言うんだろうけどさ」

「よく分かってんじゃねぇか」

 

果たしてそれが上手くいくのかねぇ……いや、意地でも上手く行かせるけど。

 

「その為にも、知識は必要だね……」

 

半日死んでた身であるが、つくづく前途多難だよなぁこのコミュニティ。

 

 

◇◇◇

 

 

さて、体調が完全に回復した頃。

コミュニティのみんなが全員寝静まった夜。

 

「さて、暇だ」

 

既に寝てた様なものである僕は、もう一度寝ることができず、暇を持て余していた。

 

「……ふむ、どうしたものか」

 

とそこで部屋の隅に、箱庭に持ってこれたショルダーバックが目に入った。ちなみに、壊れた自転車は黒ウサギが回収してくれた。ファンタジーってスゲェよな、カバン無くても物の持ち運びができんだぜ?

 

「まあこの中に何が入ってるのかって言われてもね」

 

そう思って、中を漁り…………目を剥いた。

 

「え、ちょ、ええ?」

 

スマホが、着信中だった。

え、ちょ、圏外だったよね? つか、異世界に繋がるかよ普通? …………いや、既にこの状況が普通じゃないんだ、何が起こっても不思議じゃない。

 

そして、その着信相手は…………本来なら僕の誕生日を祝ってくれるはずだった幼馴染からだった。

 

「…………なんだろう、出るのがすごく怖い」

 

そう思ってると着信は途切れ待機画面に切り替わった…………そしてそこに映る、『不在着信:97件』という凄まじい情報と、同じ相手からの大量のメールを知らせる通知。

 

「ヒィッ!!?」

 

圏外なのに通じてるってのは、まあ百歩譲って納得しよう。なにせ我が幼馴染殿は、僕が知る中で1番の規格外で異常な存在だからだ。この程度のこともできるのかもしれない。

でも、これは流石に怖いしヒく。思わず悲鳴をあげて後ずさる程度には。

…………ああ、そういえばそろそろ精神的に不安定な時期になる頃だったか。

 

そう思いながら僕は、せめて掛かってきた電話は取ろうと、スマホに手を触れた。

 

が、それがいけなかった。

 

『バチンッ!!』

 

スマホが、火花を散らして爆発した。と言っても小規模だ。特に問題はない…………なんてことはなかった。

 

「ギャア!!? 服に火が点いた!!?」

 

爆ぜた火花が服を焦がし、黒煙を上げながら赤い光を灯した。そして、今の状態の僕だと、これはどうしようもないということ。

 

燃え始めたパーカーを脱ごうとしたらその間にジーンズに引火、そしてそれも脱ごうとしたらパンツや靴下まで…………つか僕呪われてないコレ!!?

 

「…………諦めるか」

 

このままだと脱ぐ過程で部屋を焼き、今いる建物を火事で焼失させかねない。つか、既に全身の2/3以上火傷してるので死ぬのは避けられない。

 

文字通り身を焦がす痛みに耐えながら、僕は部屋を燃やさない為に窓を開け放ち、飛び降りる。幸い、飛び降りた先に燃えそうなものはなかった。

 

「うう、とりあえず水路探すか…………」

 

視界が赤で埋め尽くされ、意識を失うまで。僕は、文字通り死ぬ様な痛みを少しでも和らげる為に水路を探すのだった。結局見つからなかったけど。

 




死因→焼死
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