自称凡人も異世界から来るそうですよ?-『異常な普通』の箱庭活動記録-   作:しにかけ/あかいひと

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短いですスンマセン…………。


記録その6-齟齬があるからこそ、彼は疑われる

 

燃えたはいいが、そのまま死体を晒すわけにはいかない。

そう思った僕の判断で、音は『消して』いた。あの黒ウサギの耳は、おそらく見た目だけじゃないはずだからだ。

 

穴ぼこどころか燃えて灰になった服も復活。損傷なんて『無かった』。

 

「ふー」

 

燃えた痕も消し、燃えた事実を感じ取られないようにしたあとで、僕は息を吐いた。

 

まったく、気分は完全犯罪に腐心する探偵漫画の犯人だ。しかもチートである。どうなってんの?

 

「さて」

 

正直眠れないし、今から寝たら朝に響く。そも、睡眠を必要としない身体である、悲しいことに。

 

と言うわけで、『ノーネーム』探検だ。敷地内にどんなものがあるのか、それぐらいは把握しておきたい。

 

「というわけでレッツ、」

「ダメです!」

「あいてっ!?」

 

スパコーン! と、軽い音でハツられた。後ろを振り向けば、ハリセンを持った黒ウサギが、髪の毛真っ赤にして怒ってた。

 

「痛いじゃないか、なにをする」

「だまらっしゃい! それはこちらのセリフです! 夜中にふと目を覚ましたら、健太さんの心音だけ消えてて、心配したんですよ!」

 

ありゃ、そこまで消しちゃったか。失敗失敗。

 

「それで部屋に向かったら、もぬけの殻! しかもそこかしこに燃えた跡! 心音が復活したと思ったら部屋は何事も無かったかのように元どおりになりますし…………悪い夢でも見てる気分でした」

「あーらら……」

「貴方のことですよ貴方の!」

 

いやぁ、そう叫ばれても…………。

まあ、心配かけっぱなしなのでなにも言いませんがね。

 

「いやぁ、申し訳ない。ここにきてから黒ウサギには心配かけてばかりだね」

「く、黒ウサギのことは大丈夫です! それよりも健太さんの方が……!」

「やーねぇ、僕は平気さ。そういう風にできている。死にたがりと思われるのは心外ってもんさ」

「違うんですか?」

 

酷いな、そんな意外そうな顔するなんて。否定はできないけれど。

 

「そういう風にできていると言ったのは、僕の能力が…………こっちの世界風に言うとギフトかな? を、使うのに『死』に近づくことが条件として必要なのだよ!」

「……………………」

「嘘でしょ、みたいな顔をしないでよ本当なんだから。実演…………は、したら怒りそうだからしないとして。どうも、僕のギフトは防衛機能に近いものがあるらしいので」

 

そういうと、理解の灯りが点ったらしい。黒ウサギの顔に納得の色が浮かぶ。

 

「というわけで、死にたくて死んでるわけじゃないのです。結局死んでないけど。アレです、肉を切らせて骨を断つです。肉切られるどころか死んでますけど」

 

それでも、最近は死に近づくという定義が緩いことに着目して、スタンガンで一瞬心臓止めるだけで能力使える様になってたけど。スタンガンで強くなるなんて、主人公っぽいよね! 具体的に言うとどっかの文学少女がスタンガン浴びて無敵モードになるあの感じ!

 

…………火災の原因、スタンガンじゃなかろうか?

 

「そうなのですか…………いや、それにしても問題があると黒ウサギは思いますヨ?」

「んん?」

「健太さんのギフトの正体、本質は明日に回すとして……不死身のギフト自体は、人間が持つには珍しいものですが、ありふれたギフトです。ですが、進んで死ぬ所持者は非常に少ないです。もとより死んでいるも同じな『不死者(アンデッド)』ならともかく、生きている所持者は死ぬことを忌避しています。それは痛みもそうでありますが、生物としての『死を避ける本能』があるからです」

「なるほど…………つまり、あっさりと死ねる僕は生者として欠陥があると?」

「そ、そこまでは思っていません。ですが…………トラウマを抱えた人がこうなりやすい、とは思っています」

「……………………なるほど?」

 

思わず、心臓が跳ねた。幾ら表情を取り繕っても、バレてしまっただろう。

 

「まあ否定はしないよ。多分だけど、黒ウサギと同種のトラウマ持ちだろうからね」

「……え?」

 

だから、刺し違えてやる。いや、別に恨みからの行動ではなく、『お互い無闇に触れられたくないでしょう?』という意思確認だ。

 

「というわけで、散歩してくるよ。昼間寝過ぎた所為で如何しても寝れなくてさ。んじゃ!」

 

半ば逃げる様にその場を離れた。声をかけるでもなく、追ってくるわけでもないという事は…………そういうことなのだろう。そういうことにしておいた。

 

 

◇◇◇

 

 

そして、その数分後僕は後悔することになったのだった。

 

「なんと言いますか…………」

 

『魔王』というぐらいだから、素で世界征服とかできちゃうぐらいの危険なクソヤロウだと思ってた。

 

素で世界征服? ()()()()()()()()()()()()()

 

「マジかよ…………」

 

目に映る光景は。何百年もの時間をかけて朽ちていったであろうゴーストタウン。

 

木々は枯れ、土地は死に、残った建屋は、人の生活の跡は、忽然と消えた様な最悪の形で残っていた。

 

凡人らしく語彙は貧弱…………だが、それで良かったと今は思う。この光景を、言葉で表す術なんて持ちたくない。それ程までに、ドス黒い感情で埋め尽くされる光景だった。

 

思うに、魔王の襲撃があったのはそう前の話では無いはずだ。あのクソ虎の口ぶりからするに、10年以内の出来事だろう。

 

10年でこの『死んだ』光景を作れる…………いや、痕跡からするに一瞬だろう。最低でも時間を操作する能力はある筈。時間操作ともなると…………神クラスか。

 

舐めていたつもりは無かったけれど、想定外だ。これは…………本気でこの世界に骨をうずめる覚悟で事に当たらないといけない様だ。

 

皆は、見たんだろうな。多分、黒ウサギは見せた筈だ。最後通牒として。引き返すなら今だって。

そんでもって誰1人脱退してないんだから、あいつらバカだろって話だよ。こんなん僕が相手したら、死亡カウント5桁は超えるぞ。

 

もしかしたら、対魔王コミュニティとして舵取りするのは時期尚早だったんでは…………?

 

「なんだ、怖じ気付いたのか?」

 

そして、そんな僕の背後に立っていたのは、逆廻クン。おそらく、黒ウサギのやり取りが彼の寝室まで聞こえたのだろう。ったく、大きな声で話すから…………。

 

「すまんね、起こしちゃったかい?」

「いいや、興味深いモンも観れたし気にしてねぇ。それで、どうなんだ?」

「最低でも1万回は死ぬ覚悟を決めた」

「女性陣が泣くぞ流石に」

「死なないって約束して、全て上手く行くならそうするよ。でも僕はリアリストでね」

 

実質コスト無しの生贄でどうにかなるなら、その方がいいじゃない。なんて、そんなこと言うと多方面から怒鳴られそうだけれど。

 

「で、逆廻クンはこれを見た上で、対魔王コミュニティとして『ノーネーム』を再興させるつもりなの?」

「ああ」

「多分、魔王もピンキリなんだとは思うよ。でも、今の此処だとピンの方の魔王相手だと、瞬殺だ。それでも?」

「土台、不可能なことをやろうってんだ。それぐらいのリスクは必要だ」

 

…………はぁ、全く。

 

「本当に僕を使い潰すつもりなら、それでもいいよ」

「……………………」

 

彼の眉が、ピクリと動いた。

 

「そして、その代わり僕も積極的に君らを頼ろう」

「…………ハァ、やり辛ぇな。()()()()()()()()()()()()?」

「……それ、どういう意味?」

「文字通りの意味だ。俺の知ってるアンタは…………いや、なんでもない」

 

そう言って、彼は背中を向けて本拠に向かって歩き出した。僕は、何も言わずにその背を見送った。なんだか、聞いたらダメな気がしたのだ。

 

とはいえ、答えは出てるけど。

 

「…………過去にあったことはないな。ということは、未来の僕が『逆廻十六夜』に会っている?」

 

ファンタジーって、恐ろしいなぁ。

 

「よし、気を取り直して」

 

何はともあれ、後悔はしたが来て良かった。もしかしたら、僕だったらこの死んだ光景をどうにかできるかもしれない。そのためには、積極的な情報収集だ。

 

陰鬱な気分になりながらも、適当な建屋の中に入ろうと、一軒家サイズのソレのドアを開け…………

 

 

 

 

ビシリ

 

 

 

 

建屋から、しちゃいけない音が聞こえた気がする。そして、その僕の耳がえた情報に違わず、建物がこちらに向かって崩れそうになっている。

 

「…………よし分かった。落ち着け景山健太。一歩間違えたらお前は死ぬ」

 

そーっとドアから手を離し、忍足で回れ右して歩き始める。

 

よし、僕は運命に勝ったんだ!

 

 

 

 

 

 

なんて、そんな言葉は後ろから殺到してきた瓦礫に埋もれてしまいましたけどね。

 

 

 

 

 




死因→圧死
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