自称凡人も異世界から来るそうですよ?-『異常な普通』の箱庭活動記録-   作:しにかけ/あかいひと

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赤域「お、久しぶりに感想や」

『ランキングを見ていたら「異常な普通」とタイトルに書かれてて、懐かしくて思わず読んでしまいました!前作と違った活躍、楽しみです! 』

赤域「…………(ホロリ)」

不覚にも泣いちゃいました。
本当嬉しかったです、ありがとうございます。


その7-前兆を感じ取れるからこそ、彼は異常な普通

 

◆◆◆

 

 

「人間とは、不自由な生き物だと私は思うね」

 

「そして、心の何処かで不自由さを望んでいる」

 

「うん? 君はそんなことないだって?」

 

「まあ、単なる私の持論だから、気にしなくていいさ」

 

「しかし、だね」

 

「人間が完全に自由になれば、何になるのだと思う?」

 

「…………ふふっ、興味深い回答だ。確かに『無敵』だな」

 

「だがね、少し足りないと思うぞ」

 

「人間であることの不自由さを取っ払ったら、無敵ではあるが、人間ではなくなる」

 

「そう、行き着く果ては『バケモノ』だ」

 

「私は、君がそんなバケモノにならないことを願っているよ」

 

「ん? 私が誰かって?」

 

「おせっかい焼きの、天才研究者だ」

 

 

◆◆◆

 

 

結局、そのあとすぐに黒ウサギに救出されて強制的に自室に放り込まれた。まあ、散歩を一度は止めた人間がいつの間にか死んでたらそうなるわな。

 

そんなわけで、寝れない僕はスマホの電源を落とし、カバンの奥に隠れていた魔改造された拳銃型スタンガンの軽いメンテナンスをして朝を迎えた。うぅ、朝日が目にしみる。

 

と、ここでコンコンと部屋にノックの音が飛び込んできた。

 

「はぁい、どぞー」

 

ぎぎぎ、と音を立てて開かれたドア。その向こうに居たのは、三毛猫を抱きかかえている少女。春日部サンである。

 

「お、春日部サンか。おはようございます。こんな凡人のところに何用かな?」

「…………。まだ寝てる? 頭ゆすろうか?」

「にゃあ…………」

「寝言は寝て言えと? 悪いけど死なないこと以外はリアルに凡夫だからな?」

 

全く酷いこと言うぜ。猫にも呆れられたっぽいし。超解せぬ。

 

「……本当に?」

 

春日部サンは、僕の言葉を信用してない様だった。しかも、その表情には確信の色が見て取れた。

 

…………まさかとは思うが、春日部サンも、未来の僕と会ってんの? 流石に気のせいだと信じたい。

 

いや、むしろこう考えられるかもしれない。未来の自分が元の世界にいるという事は、僕はこの箱庭から帰還できたということだと。

 

「…………♪」

「……? 多少は機嫌悪くすること言ったつもりなんだけれど」

「酷いな。だが僕は許そう。今、素晴らしいことに気がついて心がはち切れそうな程に嬉しいんだ」

「健太って……変わってるね」

「うっそだー。僕ちゃん凡人だもーん。…………いや、不死身な時点で否定できんけどな」

「そういうところもそうだけど」

 

まあそれはそうとである。

 

「結局春日部サンは何しにここへ?」

「朝食の準備ができたって。起きてるのは分かってたからそれを伝えに行こうって」

「にゃあ、にゃにゃあ」

「あ、そうだったの。ご足労かけてすまんね」

「違う。そこは『ありがとう』でいい。友達、でしょ?」

「……! そうだね、ありがとう春日部サン。それじゃ、場所が分からないから案内も頼んでいいかな?」

「うん、着いてきて」

 

…………どうしよ、控えめに言って嬉し過ぎる。

 

 

◇◇◇

 

 

「というわけで、今からコミュニティ『サウザンドアイズ』に行き、皆様のギフト鑑定をして貰いたいと思いますっ!」

「断る」

「却下」

「同じく」

「以下同文」

「まさかの鑑定拒否デスカ!!?」

 

朝食後、黒ウサギが僕らを会議室的な部屋に集めて、こんなふざけたことを宣いやがった。なので息を合わせて皆で拒否の姿勢を。達成感と共にやるハイタッチは格別だ。

 

「そもそもが、人に値札貼られるのが趣味じゃない」

「勝手に分類されて、分かった様な顔されるのは癪だもの」

「…………とにかく、鑑定とかって気分はあまり良くない」

「というか、分からないからいいってこともあると思うんだ、僕ちゃん思うに」

「そ、そんな…………」

 

と、学級崩壊したクラスの担任みたいに狼狽えた…………と思えば一転、頗る真面目な顔に切り替わる。既に弄られ役として定着し始めた黒ウサギだが、真剣な空気を読み取れないほど、僕らは空気が読めてないわけでも、子供でもなかった。

 

「黒ウサギにはそういうことはありませんが、そういう方がいるということに対して、黒ウサギも理解がないわけではありません。寧ろその意思は可能な限り尊重すべきだと思います。ですが己の恩恵の理解の度合は、自らの命運に直結します」

 

黒ウサギの言葉に、逆廻クンは目付きを尖らせ、久遠サンは苦虫を噛み潰した様な顔をし、春日部サンは不気味に押し黙る。…………僕は、感情を読み取られない様『ヘラヘラしつつも真剣な空気を振りまいている様な顔』を心掛けた。

 

んで、逆廻クンが口を開いた。

 

「……まあ、一理あるわな。対魔王コミュニティとして名を売った以上、いつ如何なる時も襲撃に備えなければならない。その時に、テメェの武器すら把握できてねーんじゃ、お話にならない。そういうことか?」

「Yes. 恩恵によっては、理解を深めることでより成長するものもございます。逆に、理解が浅ければ手痛い代償を被ることもございます。魔王とのゲームに限らず、その知識は決して皆様の不利益にはならないでしょう。戦うと……我々と共に戦ってくれる皆様だからこそ、ギフトの鑑定はしていただきたいのデス。何かあってから、では遅い」

「「「「……………………」」」」

 

耳が痛いな、畜生。

 

「まあ、いいわ。我儘を言っている場合ではないものね。それはともかく、その『サウザンドアイズ』というのは、ギフト鑑定士とも言うべき方々がいるコミュニティということなのかしら?」

「名前からして、『千の瞳(サウザンドアイズ)』……鑑定には向きそう」

「そんなに大量の目に見つめられたら怖くてちびりそう」

「流石に千の瞳を持つ生物は…………いないわけではないかもしれませんが、そういった方向での直球ネーミングではございません。『サウザンドアイズ』は、特殊な『瞳』のギフトを持つ者たちの群体コミュニティ。箱庭の東西南北・上層下層、その全てに精通する超巨大商業コミュニティです」

「なんだ、厨二病共の集まりなんだ」

「14歳の少年少女に見られる妄想癖と一緒にしないでください! 言っときますケド、本当に邪気眼とかあるんですからね! 洒落にならないのが!」

 

…………うん、知ってる。知り合いにリアル邪気眼の厨二病を拗らせた奴いるから。

大丈夫かなぁあいつ。本当なら普通の厨二病で済んでたのに、下手に自分の妄想した設定に沿った能力が左目に宿るもんだから、現実と幻想の境目が曖昧に…………カウンセリング依頼されて、なんとかだましだましやってきたけど…………まだ完全に洗の、教育が終わってないんだよな。健太くんマジ不安。

 

「と、ともかく。幸いなことに支店が近くにありますので」

「しーつもーん!」

「はい、健太さん」

「そういうところって、格式高いイメージなんですけど。なんか、ノーネームお断り! とか、旗なしは御遠慮! とか、そういうのあったりとかしない?」

 

前の世界にいた頃、そういうお店やパーティーに顔出す機会があったからね、悲しいことに! ドレスコードはまだいいけど、社会的地位が無いと駄目とかなんなん? 向こうから誘っといていじめ? 普通の中高生相手にそんなん求めんな!

 

「本来ならば、あります。『サウザンドアイズ』は、ノーネームお断りの店ですね」

「駄目じゃん!?」

「ですが、今回ばかりは問題ありません。本当ならば、黒ウサギの個人的なコネを使う予定でしたが、その必要は無くなりました。貴方のおかげです、健太さん」

「へ?」

 

黒ウサギからの不意打ち気味なカミングアウトで、思考が真っ白になる。でも、周りのみんなはどういうことなのか分かったみたい。

 

「なるほど。フロアマスターってのがどんな奴なのか分からなかったが、『サウザンドアイズ』の関係者ってなところか」

「ありゃ、説明をするのを忘れていたようですね。申し訳ありません」

「け、結局どういうこと…………?」

「健太、起きた時に説明しなかった? フロアマスターから健太に報酬が出るって」

 

起きた時? …………あ、クソ虎の一件か!

そうだよ、サラッと聞き流したけれど、フロアマスターってなんだよって話だよ。

 

「とりあえず、簡潔な説明ぷりー!」

「了解デスっ! 『階層支配者(フロアマスター)』というのは東西南北、それぞれの地域に存在しており、箱庭の秩序を守る者なのデス! さらに言うと、担当する地域では並ぶ者がいない、最強の主催者(ホスト)でもあります」

「「「最強の主催者?」」」

「あー…………気持ちは分かるが落ち着きな問題児共。そんな簡単に倒せる相手とは思えない」

 

ちょっぴり呆れつつも、とりあえず最低限フロアマスターについては分かった。

 

「んで、そのフロアマスター様の1人が、『サウザンドアイズ』の関係者と?」

「関係者もなにも、幹部でございますよ?」

「わぁ」

 

商業コミュニティの幹部が、秩序の守護者でいいのん? それ、実業家が大統領やるような物じゃん…………国益と企業の利益がぶつかったとき、どーすんだろね?

 

「なので堂々と、しかし粗相の無いように向かいたいと思います! いいですか皆様、くれぐれも喧嘩などをふっかける様なことが無い様に!」

「「「「はーい」」」」

 

 

◇◇◇

 

 

というわけで、現在僕らは黒ウサギを先頭に、件の『サウザンドアイズ』、その支店を目指して歩いていた。

 

店へと向かう道中。僕ら4人は見慣れない街並みということもあって視線が興味津々の一色だ。

 

石造で整備された通り、脇を埋める街路樹、そんでもって隣に見えるは浅い水路。日本ではお目にかかれないと思う光景…………なのに、僕は実家の様な安心感を得ていた。なぜかって? 街路樹が桜で、満開と言っていいほど咲き乱れていたからだ。

 

「桜の木…………ではないわよね? 花弁の形が違うし、真夏になっても咲き続けているはずがないわ」

 

と、ここで後頭部を直撃するかの様な衝撃、という名のセリフが僕を襲う。え、これ桜じゃねぇの?

 

「いや、まだ初夏になったばかりだぞ。気合いの入った桜が残っていてもおかしくはないだろ」

「…………? 今は秋だったと思うけど」

 

と、ここで僕は閃いた。というか、このメンツの中では僕と、おそらく逆廻クンしか知らないだろう事実。

 

「んー。思うに、僕らは異なる時間軸から呼び出されたと思うんだよね。下手すれば、平行世界の可能性も」

「おや? 気がついてらしたのですか?」

「気が付いたのは偶々なんだけどね」

 

と、軽く視線を向けると、逆廻クンの方も気がついたらしい。理解の色を目に灯していた。

 

「まあ、今から詳しい説明を始めますと1日2日では足りませんのでまたの機会で。今は、皆様がそれぞれ違う世界から召喚されていて、元いた時間軸の他に、歴史や文化、生態系など、ところどころ違っている個所がある…………という認識で構いません」

 

なるほど、分かった。が、面倒な話は御免なので僕はこれ以上の話は聞かないことにしよう。

 

それはそうと、どうやら件の店へと着いたらしい。商店には、青い生地に互いが互いに向かい合う女神の像が描かれた旗が掲げられている。もっと、おどろおどろしい物を期待したのだが…………ま、コミュニティの顔だもんな、見れる物じゃないとダメだってことなんだろうね。

 

と、そんなことを思っていると、黒ウサギがトテトテと駆けはじめて、店の前にいた、割烹着姿の店員らしき女性に話しかけていた。

内容は聞き取れないが、少し言葉を交わすと、その店員らしき女性が店の中へと消えていく。

 

「今取り次いでもらっているので、もう少しだけお待ちいただいてもよろしいですか?」

「いや、別に構わんけど…………ッ!!?」

 

そのとき、僕の頭に電流走る! なにがなんだかわかんねーが、なにやらまずいことが起こる前触れだ! だいたいこういうときの僕の直感は馬鹿にならない!

 

「気をつけて、何か来るッ!!」

 

僕の張り詰めた声に、皆の顔も穏やかなそれから一転。

まさか、もう来たってのか? いいだろう、この景山健太を敵に回したことを後悔させて─────────

 

 

 

 

 

 

 

「いぃぃぃぃぃやっほぉぉぉぉぉおおおおおおおっ!!! 久しぶりだ黒ウサギィィィイイイイイイッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

なにがなんだか分からんがただ一つ。

僕は跳ねられた。

 

 




死因→胸部強打による心肺停止
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