自称凡人も異世界から来るそうですよ?-『異常な普通』の箱庭活動記録- 作:FGMe/あかいひと
死ぬこと、即ち生きること。
頻繁に生と死を逝ったり来たりする僕が、強く思うことである。なお、誤字にあらず。
人は何の前触れもなく死んでしまう。それはどう仕様もないことで。それでも、だから足掻いて生きるんだなぁと。
強く、鮮烈に生きれば、その死も同じだけの色を放つ。
死んだように生きていれば、その死は生前と何ら変わらないありふれたものと化す。
…………それでいくと、死に嫌われた僕は。多分、この世で最も生と死から程遠い冒涜的な生命体なんだろうな。
◇◇◇
なぁーんてポエミーなことを考えている内に意識は浮上。死んでるのに思考できんのかってツッコミは聞かない。真面目に言うなら走馬灯的な何か。
これぐらいならリスタートに1秒も掛からない、不自然に思われることなく意識を取り戻すと、現在道の隣にあった川へと落下中。おおう、神様は僕に厳しいね。
しかし死に戻りのこの状態なら、僕の異能も使えるだろう。あまり見せられたものではないが、まあ僕の手札を仲間に見せる必要はあるし。
「…………それでは、[停止]」
ビシリ、と世界が止まる。ついでに僕の落下も止まる。俗に言う『世○《ザ・○ールド》』というヤツだ。いや違うけど。確かに時間停止ではあるが、時間制限も何もないのだから。
「お次に、[収束]」
落下している最中の身体と、ぶっ飛ばされた地点との距離を0と塗り潰す。体の硬直を解き、とりあえず立ち上がって背伸び。んー、バキバキ言うね!
そして停止した世界を見渡そうと周囲に視線を向けようとすると、黒ウサギと問題児ーずが少なくない焦りを見せながら川の方に視線を向けていた。黒ウサギに至っては髪の毛を紅くし、今にも飛び込みそうな体勢だ。うん、心配かけてごめんよ。
そして下手人であろう…………なんだこのツノ付き白髪着物ロリは。こいつは吃驚した様に尻餅ついていたが…………想定外だったのかね? あ、そういや黒ウサギィ! とか叫びながら突進してた様な気もするし、丁度黒ウサギを庇う位置で構えたからモロに当たったということなのね。うぅん、この運の悪さよ。
ま、それはともかく、だ。これが普段は死なない凡人の如き能力しか持たない僕の、死に近づくことで振るえる能力、その一部。その異能は、与えられたルールを世界に強いるというモノ。わぉ、厨二的だね! 恥ずかしい!
もっとも、代償はあるし、そもそも使用条件として死に近づく…………と言うよりは、与えられた
「では、解除」
時間停止を解除、すると途端に世界は動き出す。
「───n太さんッ!」
おっと、既に健太のケの辺りは黒ウサギに叫ばれていたらしい。そう言いながら、彼女は飛び出し…………僕が川の方にいないことに目を疑う様な顔を作った。
「はぁい、黒ウサギ。どうしたの?」
「「「「え?」」」」
問題児ーずと黒ウサギの声が被る。そして、
「え、ちょ、あわわわわ───!!?」
そのまま、黒ウサギはその勢いのまま、じゃぼん! と着水しましたとさ。…………うん、なんかゴメン。
「うぅ……一体誰だ、私が黒ウサギを堪能しようとするのを邪魔する輩は……」
「黙れ和服ロリ! そっちの所為で死に掛けたんだけど!?」
とはいうものの、結構痛そうなので手を差し伸べる。女子供には優しく、男にはそれなりに優しく、身内にはゲロ甘が僕のモットーなのでね!
「まあなんだ、ぶつかって悪かったっすよ。怪我はない?」
「……この私が、怪我の心配をされることがあろうとはな。それはともかく心配には及ばんよ小僧、謝る必要はない。此方の落ち度である故な。寧ろすまなかった」
そう言って、彼女は僕の手を借りて立ち上がった。ん、こっちはこれでいいな。
さて、次は黒ウサギ。まだ能力使用の制限時間は来てない様なので、遠慮なく使おう。川に落ちた黒ウサギと跳躍点の距離を0、浴びてしまった川の水を消してしまう。まあこんなところか。
「え、アレ…………え?」
「やあ済まないねぇ黒ウサギ。心配かけてしまった様で」
「えっと、今のは……健太さんが?」
「いえす、ざっつらい!」
そう言って、まるで御呪いをかける様に人差し指をクルクルと回してピッと突きつける。中々様になってると思うのだが、友人の間では『死の宣告の様だ』と不評らしい、解せぬ。
「で、ですが健太さんの
「そこも含めて、後でお願い。勿論みんなもね? ほら、その為にここに来たわけだしサ」
…………うん、さっきから問題児ーずの視線も凄いんだ。特に僕(あるいは同姓同名の別人)を知っている様なそぶりを見せた逆廻クンと春日部サンがすっごい見てくる。
「それで、いつになったら呼ばれるのかねぇ…………件の階層支配者殿の準備が整うのかねぇ」
「あ、あの…………そのことなんですが…………」
「…………?」
そう言って、黒ウサギはどこか難しいことを考えてる様な顔で僕の方…………と言うよりも、後ろに視線を向けた。
なので後ろを見てみる。和服ロリがいる。
…………え、まさか? そんな筈はないと思いながら、黒ウサギに視線を戻す。すると、コクコクという首肯を返された。
「うむ、待たせてすまぬの。如何にもこの私がコミュニティ『サウザンド・アイズ』の幹部にして、箱庭の東地区第四層以下の『
こいつ、ロリババアかよと思った僕は、悪くない。
◇◇◇
内容が内容だけに、私の私室で勘弁してくれ。と、案内された和室っぽい部屋。お香が焚かれていて結構匂いが…………庶民には合わないなぁとは思いつつ、無視することに。なお、鼻が利きそうな春日部サンもムズムズしていた。
その道中なんか珍品やら傍目から見てもお宝っぽいなにかが展示されてたり、お店の外観に合わないサイズの庭園があったりしたが、ファンタジーだと割り切ることにした。うん。
まあそんなこんなで、改めて自己紹介をされたり、簡単に箱庭の構図を説明されたりと、知識欲が満たされる平和な時間が少しの間流れた。箱庭がバームクーヘンみたいなのになってるとは。
「それで、例の不埒な虎を老衰させたという勇者は誰なのだ? 立場故に干渉できずに放置するしかなかったため、ぶっちゃけると結構胸が空く思いでの。礼を言いたい」
ビクン! と跳ねてしまいそうになるが堪える。傍目から見ても、それは素晴らしく面の皮の厚い人間に見えたことだろう。
「それならこの凡人(笑)だぞ」
「ちょ、おま。なんでバラしやがる」
「静観決め込もうとしやがるからだ」
だが速攻で崩された。おのれ規格外め。
「ふむ、やはりな」
「え、しかもばれてたとか」
「単純な2択だ。傍目であんなことをできそうな可能性を持つ者は、お主とそこの金髪の小僧であろう。そして、そこの小僧は昨日事件が起こったのと同時刻、私が神格を与えた者とのギフトゲームに勝ったそうではないか。ならば、必然答えは一つしかあるまい?」
そう言ってニヤニヤと笑いながら扇子を開くロリババ改め白夜叉サン。すっげぇイライラする☆
「しかし、神格も持たずに神を倒す小僧に、ギフトを消す小僧。この2人だけ見ても当たりと言える上に、将来有望そうな娘も2人! 黒ウサギ、これは流れが来てるやもしれんぞ?」
うん、まあ流れは来てるかもしれないね。正直自画自賛しているようで嫌になるが、僕の対異常相手のトラブルシューティング能力だけは凄いと思ってる。そこに神様もぶっとばせる規格外に、命令を強いるとかいうなんだそのギ○スはと言わんばかりの久遠サンに、動物との言葉の壁がない上に恐らく素のスペックもかなりのものだろう春日部サン。…………うん、コレいけんじゃねーの?
「……あの、神様というのは、こちらも神様でなければ倒せないものなのかしら?」
そこで少し疑問に思ったのか、久遠サンがそう口にした。しかしこの質問なら、僕でも答えられる。
「別にそうでもないよ? まあ元々が神として生まれた様な連中は倒すのは普通無理だろうけどね。でも、元が別の何か…………人間だったり動物、それこそ蛇だったりが信仰を集めて神として祀られた様なのだったら、まだなんとかなるんじゃないの? そも、神格……ざっくり言うと神様の資格みたいなののことなんだけど、こいつを持ってると自分の種としての霊格……地力のイメージでいいかな、を限界まで上げちゃうものなんだよね。だから、人間や蛇みたいな雑魚が持っても、確かに絶大な力は手に入るけど、多寡が知れてるのよな。だから、神格に匹敵する様なギフトを持ってたり、出し抜く知恵を持ってさえすれば、覆せない差じゃ無くなるわけですよ」
「ふぅん、成る程ね…………というか、意外に物知りなのね貴方」
「あははは…………そりゃ、そーゆーのとドンパチやってりゃ嫌でも知識が身につくってモンですよ」
「……とりあえず、聞かなかったことにすればいいのかしら?」
嫌だやめて、そんなジト目で見ないでくださいましおじょーさま。
「確かに小僧にしてはよく知っているではないか。付け加えて言うなら、その差を覆す様な恩恵は珍しく、知恵で神格持ちを相手取るとするなら砂漠で一粒の欠片を見つけ出すようなものだということか。間違っても、そこの小僧の様にさらっと『いけるのではないか?』などと言える様な相手ではないことを覚えておくがいい」
え、そうなの? でも僕とか相棒とか、普通に神殺し一歩手前まで…………あ、いえなんでもないです。
「……そういえば、気になることがあった」
と、ここで逆廻クンが口の端をニィと釣り上げて、獰猛な笑みを浮かべた。
「さっき、オマエは『私が神格を与えた者』と言った。それだけ、オマエは強いという認識で構わないのか?」
「応とも。私はこの東側の『階層支配者』。東側、四桁以下にあるコミュニティでは並ぶ者が居ない、最強の
フフン! と胸を張り、威圧する姿は、例え幼女の見た目をしているといえど、その言葉相応の圧を伴って僕たちを襲う。…………ふむ、値踏みとはいい趣味をしている。勿論、悪い意味で。
それが、僕らに火を点けた。
「……黒ウサギから聞いた通り。ということは、私達が貴女のゲームをクリアすれば、私達が東側最強?」
「無論、できればだがの」
「それはいいことを聞いたわ……ええ、とても」
逆廻クンと同じく、久遠サンと春日部サンにも闘志の火が。そして僕も。店の前でたしなめた側とは思えない程に、スイッチが入っている。
「手っ取り早く名前を売ろうと思ったら…………うん、やっぱり名を上げることだよね」
「ちょ、ちょっと御四人様!?」
黒ウサギが慌てるが、しかしそれで止まる様な可愛げのある連中じゃないだろう。僕も、みんなも。
そして、目の前の異常は楽しそうに笑い、黒ウサギを手で制した。
「よいよ、黒ウサギ。私が挑発をした様なものだからの。ふむ、胆力に関しては肝が据わっていると判断すべきか」
「分かった上で、まだ値踏みってか?」
「ふふ、そういきり立つな。よかろう、遊び相手になってやろうではないか。私も、常に相手には飢えていての。しかし、一つ聞いておかねばならんことがある」
目が細められ、部屋に殺気が充満する。その発生源は、疑うことなく目の前の壮絶な笑顔を浮かべた彼女。
彼女は着物の懐から一枚のカードを取り出した。向かい合う二人の女神が描かれた紋が入っている…………確か、店の前に掲げられていた旗にも、同じしるしが。
「おんしらが望むのは『挑戦』か──────それとも『
瞬間、僕らの周りの景色が巡るましくかわり、足の踏み場がなくなる。
浮遊感が僕を襲い、吐きそうになる。そして…………
「…………ぐがっ!?」
急激な体温変化に、僕は頭痛と同時に視界を暗くしてしまった。
死因→急激な温度変化による血管収縮によって発生した脳血管障害、脳卒中