自称凡人も異世界から来るそうですよ?-『異常な普通』の箱庭活動記録-   作:FGMe/あかいひと

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(ふふふ…………ユーザネームを変えてることに気がついてる人は誰もいるまい…………)


記録その9-誇りを胸に立ち向かえるからこそ、彼は異常な普通

 

脳卒中で殺られるとかワロス。そう思いながら、着地するまでにはなんとか意識を取り戻し再生に至った模様。ふぅ、異世界には死亡に繋がるモノが多過ぎる。

 

しっかし寒いな…………どこよここ、というか僕以外のメンツは大丈夫? え、全然平気? …………うーん、みんな頑丈だね。あ、それどころじゃないんですねごめんなさい。

 

とりあえず分かるのは、ここは異空間であり、白い雪原が広がる中で凍った湖畔の存在する…………太陽が水平に廻る場所だということ。

 

太陽が水平に…………即ち白夜、場所によって起こりうる太陽が沈まない現象。そして夜叉とは、水と大地の神霊……鬼神でもあるが。で、その複合でこのフィールドと、『白夜叉』という名前なのか。言葉遊びとは笑うまい、信仰対象はその言葉遊び一つでその姿や力を変える。

 

呆気に取られた僕らに、彼女は再び問いかけた。

 

「今一度名乗り直し、問おうかの。私は『白き夜の魔王』、太陽と白夜の星霊:白夜叉。おんしらが望むのは、試練への『挑戦』か? それとも対等な『決闘』か?」

 

星霊、星霊と来たか…………やっばいねこりゃ。いや、想定はしていたけれど…………うん、荷が重いね全く。

 

「……白夜と夜叉。そうか、あの水平に廻る太陽とこの土地は、オマエを表現しているってことか」

 

少しばかり呆れていると、同じ結論に逆廻クンも辿り着いたらしい。マジかよ、一応専門家に近い僕とほぼ同じ早さで答え出すかよ、キモい。

 

「如何にも。この白夜の湖畔と雪原。永遠に世界を薄明に照らす太陽こそ、私が持つゲーム盤の一つだ」

 

そう言って、彼女は両手を広げる。すると、遠く広がる雲が晴れ、沈まぬ太陽が現れ、地平線が晒される。

…………ゲーム盤か、()()()。やんなっちゃうね全く。

 

「して、おんしらの返答は? 『挑戦』であるならば、手慰み程度に遊んでやろう。…………だがしかし、『決闘』を望むなら話は別。魔王として、命と誇りの限り戦おうではないか」

 

「「「…………っ」」」

 

…………ダメだ、みんな気圧されてる。『勝てない』と、勝ち目がないと諦めた。

そして、彼らが振り上げた拳を、売り付けた喧嘩を、こんな形で取り下げるのは…………なら、うん。やるか。

 

「おっけ、分かりましたとも。やりましょうよ、『決闘』」

 

白夜叉サンの顔は、想定外と言いたげに驚愕に彩られ、後ろにいるみんなは恐らく、『またか』といったところかな? うん、またなんだ。すまない。

 

「……その言葉の意味を、理解した上でそう言っておるのだな?」

 

「ええ、分かっていますとも。僕は、簡単に殺されてしまうでしょう」

 

そう言ってケラケラ笑うと、鋭い殺気が飛んできた。おっかねー。

 

「戯け、貴様が不死身だということは、既に調べがついておる。もしそれだけの理由で、死なないから大丈夫だろうという軽い気持ちで臨むのであれば…………再起不能も、視野に入れようぞ」

 

「…………は?」

 

え、なに? 僕は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

は、ははははは…………うん、トサカにキた。

 

「…………舐めんじゃねぇぞ理不尽(クソメロウ)。死ぬ死なないなんざハナっから勘定に入っちゃいねぇ。これは、僕にかかった期待と、僕の誇りに応えるための宣言だ」

 

「……ほう?」

 

「僕が対魔王最大戦力だと悔しそうに言った馬鹿がいる、僕の能力が羨ましいと言った世間知らずがいる、僕と友達になろうといった阿呆がいる、僕如きに頭を下げた非常識がいる! そして、それが嬉しくて嬉しくて、報いたくてどうしようもない化物(ぼく)がいる! 今此処で退いたら、『景山健太』という『人間』は死んでしまう! 命は助かっても、それは僕にとっての『死』に他ならない!」

 

まったく、どいつもこいつもロクでもない! そんでもってちょろ過ぎるだろう僕! でも、そんな自分が僕は大好きなんでね!

 

「だから、その証明を。僕は最大戦力で、羨まれる能力を持った、友達甲斐のある、ノーネームの救世主だって! 最強の主催者!? 太陽と白夜の星霊!? 大魔王!? おととい来やがれクソッタレ! そんなの、僕が退く理由になんて欠片もなりはしないよ!」

 

拳を突き出し、もう一度宣言を。

 

「僕の名前は景山健太。ノーネーム所属の、ちょろくて意地っ張りでどうしようもなく弱い、人間にしてバケモノだ! もう一度言おう白夜叉殿、僕は自分の誇りを胸に、貴女に『決闘』を申し込むッ!」

 

…………静寂が、辺りを包む。でも、程なくしてそれは破られる。白夜叉サンの、笑い声で。

 

「クッククク…………全く、これだから人間は面白い。いや、人間ではなくてバケモノか? まあ、どちらでも良い」

 

相変わらず、殺気は飛んだままだ。でも、その顔は心底楽しそうに歪んでいる。

 

「その宣言、しかと受け取った。よかろう、相手をしてやろう…………と、言いたいところなのだが」

 

……あれ、空気が霧散した?

 

「私は今、とある事情で全力を出せる状態でない。そして全力を出せたとしても、お主を屈服させるのは骨が折れそうだ。そして時間をかけることは、これから忙しいであろうお主にとっても本意ではあるまい?」

 

「え、ええまあ」

 

確かに厳しいっちゃ厳しい。やることは確かに山積みで、あまり時間を拘束されると面倒だ。

 

…………にしても全力を出せない癖に命と誇りを賭けてとか、よく言えたなこの女郎。

 

「それに関しては済まぬ、と言っておこう。侮っていたと言い換えてもいい。全力を出せないとはいえ、この状態でもおんしらを片手間に倒すことはできよう。だが、それでもなお心折れずに逆に叩きつけてくるとは思わなんだ」

 

「…………いや、まあ。分かりますけどね。要は大海を教えてやろうってつもりなのは」

 

まあ思惑通りになってやるものか、と思ってこうなったわけですが。

 

「しかしそれでは格好がつかん。故に、だ」

 

そこで白夜叉サンはさっきのカードを取り出した。すると、何やらピッカピカに輝く羊皮紙が。それに、彼女は何事かを記入していき…………

 

「ふむ、こんなところかの」

 

◆◆◆

 

ギフトゲーム名:最弱の勇者

 

・プレイヤー:景山 健太

 

・クリア条件:ホストマスターとの戦闘で生き残る。

・クリア方法:ホストマスターを一歩以上移動させる。

・敗北条件:降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

 

サウザンドアイズ 印

 

◆◆◆

 

…これは?

 

「その誇りと覚悟に、実力が伴っているか…………私が直々に見さだめようではないか」

 

「分かりました」

 

もうゲームは始まっている。彼女は腕を組み、どっしりと構えてこちらを見据えている。

 

…………うん、舐めてるつもりは無いんだろうけど、殺すつもりも無いよね? これ、降参狙い? まあ、正しい判断か。死なないと能力起動しないし。

 

でも残念、さっきの温度変化で殺られた時に起動した分が、まだ稼働中だということをっ!

 

必要なのは不意を突くこと、そしてそこから済し崩し的に動かす! 最初の一回をしくじれば、僕に勝ち目は無い。

 

「では失礼して」

 

ゆっくりと近づき、テレホンパンチを繰り出す。

 

ゴイン! とおおよそ生物を殴ったとは思えない音とともに、右の拳が複雑骨折をした…………凄く痛い。

 

「……どうしようもなく弱いと自称しておったが、本当だの?」

 

「ええ、本当に」

 

そして僕は、悟られぬようにあるものを[0]にした。

 

「単純に、質量上げてきましたね。太陽と同じぐらいでしょうか? そんなのが人型に収まってるとか」

 

「ほう、よく分かったな」

 

うん、本当自分でも思う。ここに来てから、自分の思う自分よりも頭が回ってる気がする。…………異常事態に適用しようと、リミッターが外れているのかな? それならまだ分かるけれど。

 

「では、()()()()()()

 

「……ほう?」

 

そう言って僕は、左腕を勢いよく突き出し、拳が彼女に当たる瞬間に、もう一つ、能力を発動した。

 

「[≠0(Reject)]」

 

瞬間、僕と白夜叉サンは磁石が反発するように弾けた。

 

あまりの勢いに腕がひしゃげ、肉を食い破って折れた骨が顔を出す。が、白夜叉サンは動いた、少なくとも一歩以上動いた。

 

さて、ゲームの決着ついたしもういいよね!

 

「本日3回目ェ、逝ってみよォ!」

 

吹っ飛ばされた勢いで縦回転、そしてみんなの呆れたような視線を最期に、地面に頭を叩きつけて絶命した。

 




死因→頭部損傷、脳漿離散
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