魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

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126話

 

 

捜査を開始し、ネクターの使用の疑いのある市民の元を辿れていたが……いく先々、その人物がクイラさん同様に行方不明という事だった。 このタイミングで例外なく失踪している事実……自体は急速に進んでいるようだ。

 

「一体どこに行っちゃったんだろうね?」

 

「自発的だとしても、拉致されたとしても、何らかの事件に巻き込まれたのは事実のようね」

 

「現状では情報が少なすぎて、その両方の可能性も考えられるね」

 

「…………俺達が把握している失踪した人達は氷山の一角かもしれない。 クラナンガン全体ではかなりの人数が失踪している可能性が高そうだな」

 

おそらく俺達が把握しきれない程の人数はいるだろう。

 

「ええ……一体どれだけの人達が消えたのか……」

 

「どうする、レンヤ。 1人1人探すのは流石に難しいよ?」

 

「ああ……捜査部に圧力がかかっている以上、他の部署にも同様に圧力がかかっているだろう。 増援は望めそうにないな……」

 

「まあ、同時に失踪したから、同じ場所にいるかもしれないけど……」

 

ピリリリリリリ♪

 

と、そこで前触れもなく、俺のメイフォンに通信が入ってきた。 どうやらゼストさんからのようだ。

 

「はい、異界対策課、神崎 蓮也です」

 

『ゼストだ、急で悪いが何か変わった事はないか?』

 

「? いえ、特に以上はありません。 現在は薬物捜査に専念していますが……」

 

『そうか……事情を話したいが通信ではさし障る内容だ。 フェノールの事務所に来てくれ』

 

それだけを言い残し、通信を切られた。

 

「……………………………」

 

「ゼスト捜査官から? 何かあったの?」

 

「いや……」

 

俺は皆にゼストさんとの通話内容を伝えた。

 

「なにそれ」

 

「フェノール商会で何かあったのかなぁ?」

 

ネクターをフェノール商会が所持している可能性はある。 それに服用の疑いのある市民の失踪が関係しているなら……フェノール商会にも何かあったのかもしれない。

 

「よし、行ってみようか」

 

「そうね……失踪者にマフィアが絡んでいるなら大義名分は立つと思うわ」

 

「このタイミングでフェノールが……無関係ではなさそうだね」

 

「ああ……フェノール商会に急ごう!」

 

俺達は頷くと、すぐさま車に乗り込んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

車を飛ばしてミッドチルダ西部に向かい、そのままフェノール商会前に行くと……そこには誰もいなかった。

 

「見張りが1人もいないわ……」

 

「うん、昨日見た時は普段より多いくらいだったけど……戦闘の後も見当たらないし」

 

「ああ、もしかしてヘインダールの報復があったかと思ったが……」

 

虚空を使い、中を探ってみると……建物の中から人の気配が感じられなかった。 正確には見覚えのある気配が1つあるが、それ以外は誰もいなかった。

 

「どういう事だ……?」

 

「静か過ぎるね……どうなっているんだろう?」

 

「中に入って確認してみましょう。 なにが起きているのか分かるかもしれないわ」

 

「おそらくゼストさんも先にいるだろうし、事情を聞いてみよう」

 

ドアを開け、数ヶ月ぶりにフェノール商会の事務所に入った。 すると玄関先にゼストさんがいた。

 

「ーー来たか」

 

「ゼストさん、これはどういう事ですか?」

 

「どうもこうもない……事実だけを言えば、フェノールが失踪した」

 

市民に続いてフェノールまで……室内を見渡すが、争った形跡はなく。 改めてヘインダールではない事もわかる。

 

「あれ? 確か捜査部は、フェノールの動向を監視していたよね? マフィア達がいつ消えたから把握してないの?」

 

アリシアのその質問に、ゼストさんは口籠るが……ここで時間を取られたくないのかすぐに口を開いた。

 

「……昨晩、地上本部に犯行予告が届けられた。 ミッドチルダ空港に爆発物を仕掛けるという予告だ」

 

「爆発物……⁉︎」

 

「そんな事が……」

 

「急遽、捜査部が集められ、空港での警戒にあたる事となった……上からの指示でフェノールを監視していた人員をそちらに回すという形でな」

 

「あ……」

 

また上からの圧力か……ここまで来ると嫌気を超えてため息しか出てこない。

 

「それで監視が引き上げた後に消えちゃったわけか……」

 

「……怪しいね。 それと、その爆発物の予告はどこまで本当なのですか?」

 

「さあな……まったく、上層部は何を考えている……!」

 

「ゼスト捜査官……」

 

ゼストさんは行き場のない怒りを抑え、拳を固く握り締めた。 ゼストさんの気持ちは分からなくもないが……

 

「ーーいずれにしても、このままでは何が起きているのか把握することすら困難です。 ここは建物内部を一通り調べてみませんか?」

 

「なに……?」

 

「管理局とフェノールの微妙な関係はもちろん理解しています。 捜査令状がない状態で家宅捜査を行なったらどんな反撃材料を与えるか……そのリスクも重々承知しています」

 

「レンヤ……」

 

「……ならば何故、そんな無謀なことを言い出す?」

 

「“それ所ではない状況”になっている可能性が高いからです。 昨日から今朝にかけて明らかになった事をお伝えします」

 

緑色のタブレットが、あのD∵G教団が作り出した薬物である可能性が出てきたこと……そして薬を使用していた人達が一斉に姿を消した事を説明した。

 

「なるほど……奴等は息を潜めていたわけか。 だがしかし……」

 

「事は人命に関わる話です。 もしかしたら失踪者達の情報がここに残されているかもしれません。 ゼストさんが納得できないのなら、せめて俺達の……いえーー俺の独断専行をこのまま見逃してくれませんか?」

 

俺の責任問題だけなら、俺が隊長を辞めるだけで済み。 対策課が取り潰さることはないだろう。

 

「ちょっとちょっと、自分ひとりで責任を被ろうとしないでよ。 水くさいなあ」

 

「もちろん、私達も付き合うわ。 対策課が取り潰しされたとしても、見過ごせる状況じゃないもの」

 

「そうだよ、レンヤ君。 それに、私達はいつでも一蓮托生なんだから」

 

「皆……」

 

3人の言葉に、思わずジーンと来てしまった。

 

「ふ、強引だな……違法捜査による証拠物件は法的な証拠能力を認められない。 連中がどんな証拠を残していても見て見ぬフリをする必要があるぞ?」

 

「それは構いません。 今、必要なのはこのミッドチルダにおいて何が起こりつつあるのか……それを見極めることですから」

 

「……ふ、一丁前に言う。 だが、それが分かっているのならとやかく言うつもりはない。 ならば私の後に付いて来るといい」

 

「え……」

 

突然の申し出に、少し呆けてしまった。

 

「別に付いてこなくても構わないのよ?」

 

「ゼストさんの立場もありますし……」

 

「お前達に腹をくくらせておいて、私が背を向けるわけにはいかん。 今からお前達は私の指揮下に入ってもらう。 全責任は私が持つ……異論は認めんぞ?」

 

「はい……!」

 

「やれやれ、素直じゃないなぁ」

 

もちろんバレた時にはちゃんと名乗り出るが、今はこれでいいだろう。 そしてゼストさんの先導でフェノール商会事務所内の捜索が開始された。先ずは正面にある以前に通された応接間に入った。

 

「あんまり……証拠になりそうなものはないね」

 

「こんな場所に置いておく程、間抜けになっているわけもないからな」

 

あるとしたら会長室のはずだが……と、その時すずかが辺りを見回した。

 

「すずか、何か気付いたの?」

 

「うん……なんだかこの部屋、機械の駆動音が聞こえるの。 この部屋に仕掛けがありそうだね」

 

「そうか。 俺も似たような感じがする。 以前にも気付いたけど、この部屋のどこからから風を感じる……下からだ」

 

あの時はふと気付いただけだし、目の前にゼアドールもいたから頭の隅に置いていたけど……

 

「下? よし、ここをーー」

 

「打ち抜くのはやめろ」

 

アリシアを止めた後に応接間の中を探し回り、大きめの草原ーーおそらくアルトセイム辺りーーの絵が飾られていた。

 

「この絵……」

 

「絵は一級品だけど、額縁が合ってないわね。 もしかしてーー」

 

アリサが額縁の出っ張りを押すと……絵が横にスライドして2つの鍵穴が出て来た。

 

「これは……」

 

「すずかの予感が的中だね。 なんか鍵穴みたいなのが2つ付いているけど……」

 

「仕掛けのスイッチみたいなものだね。 両方解除したら何かおこるかも」

 

「……ここにそれらしき鍵はないな、他の場所を捜索するぞ」

 

「はい」

 

ここの捜索を後にして、部屋を出た。 と、部屋を出る前にアリシアが金の台座を持って来た。 アリサいわくメッキらしいが、念のため持って行った。

 

次に他の部屋や、上の階を調べ。 3階の倉庫に入いり、ふと本棚に不自然な隙間が空いているのを見つけた。

 

「なんだ? 誰かがここの本を持って行ったのか?」

 

「ここの人が読書家とは思えないけどねぇ……」

 

「ーーううん、違うみたい」

 

すずかは隙間に手を起き、しばらくして手を離した。

 

「どうやら感圧装置が下に取り付けられているみたい」

 

「まったく、セキュリティのつもりか。 アリシア、あの台座を置いてみろ」

 

「あ、そうか」

 

アリシアはあの金の台座をその隙間に置くと、台座は隙間にぴったり収まり……そして駆動音が聞こえると横の壁が下がって道が開いた。

 

「しかしまあ、随分と趣味的な仕掛けだね。 何で普通の鍵とかにしないのさ」

 

「し、しかもかなりの費用がかかりそうだね……」

 

「カクラフの趣味だろう。 目新しくケレン味のあるものがとにかく好きだと聞いている」

 

「付き合わされる部下は大変ね」

 

軽く同情するが、先に進めるのならと割り切る。 先に進み、今度は倉庫らしき場所にたどり着いた。 外で見たことのある古めかしい建物の内部のようだ。

 

「ここは……古い建物を改修した倉庫みたいですね」

 

「捜査部の推測によれば、連中の武器庫になっていると目されているエリアだ。 実際に入るのはもちろん初めてだがな……」

 

「ーーん? この気配は……」

 

その時、アリシアが何かを感じ取った。 辺りを警戒すると、奥の方から何か……いや、覚えのある気配。 これはーー

 

「グリードが来るよ! 気を付けて!」

 

「なに……⁉︎」

 

陰から現れたのは機械型のグリードだった。 デバイスを起動し、卵型で目玉のついたグリード……RD006ーF数台と向かい合った。 現存する異界迷宮で見たことのあるタイプだが、現実世界にいるとは思わなかった。

 

「これは……!」

 

「操るマフィアもいないのになんで⁉︎」

 

「詮索は後、来るわよ!」

 

RD006ーFはミサイルポッドをせり出させると、ミサイルを何発も撃ってきた。

 

「室内でミサイルを撃つなっての!」

 

《モーメントステップ》

 

地面を踏み込み……一瞬で刀を振り上げながらミサイルを通過すると、ミサイルは全て斬り裂かれ、爆発した。

 

「だったらミサイルを斬るんじゃないわよ!」

 

「アリサちゃん、文句は後だよ」

 

《スナイプフォーム》

 

後方に向かった爆風はアリサが剣を振り、剣圧で爆風を相殺し。 すずかが全てのRD006ーFの目玉らしき部分を狙撃した。

 

「よし、纏めてーー」

 

《エナジーボム》

 

「吹っ飛ばす!」

 

間髪入れずアリシアが手の平サイズの魔力弾を投げ、小規模だが連続して魔力エネルギーの爆発が起き……全てのRD006ーFを一気に吹っ飛ばした。

 

「出る幕もなかったか……いいチームになったな、レンヤ」

 

「いえ、そう褒めることのでもないですよ」

 

「でも、何でグリードが……」

 

「あの犬型グリード以外にも取ってきたのがいたんだろう。 まったく、悪趣味なセキュリティな事だ」

 

「どこかの次元犯罪者が闇から流したという噂はあるが……一体どれだけのグリードを所持しているのだ?」

 

「ふう、いかにもあの会長らしい趣味ね」

 

「簡単には進めなさそうだね……」

 

それから武器庫内を捜索し、フェノールが失踪した手がかりを見つけられなかったが、応接間に使える鍵を見つけた。 その後も密貿易用の倉庫にも入り、グリードに阻まれながらも同様に鍵を見つけた。 フェノール商会の事務所内を捜索し、手に入ったのは2つの鍵……これを持って応接間に向かい、先ほどの鍵穴に差し込んで回した。 すると応接間にあったテーブルが床に沈んで行き、地下に向かう階段が現れた。

 

「まさかこの部屋にこんな仕掛けがあったなんて……」

 

「しかも足跡を見る限り頻繁に使っているみたいだ……」

 

「カクラフあたりが嬉々として使っていそうだな。 となると……この先が奴の私室か?」

 

「そういえば、会長室とかそれっぽいのは無かったな」

 

「この先に、何か手がかりがをあるかもしれないね」

 

「よし……降りてみよう」

 

隠し階段を降りると、少し長い通路が奥に続いていた。 警戒しながら進むと、突き当たりに今までとは雰囲気の違う扉があった。

 

「あそこがカクラフ会長の私室か?」

 

「いかにも豪華そうで、それっぽいね」

 

「……とにかく中に入ってみるぞ。 そろそろ連中が消えた原因を見つけなければーー」

 

その時、目の前の空間が歪み……赤い渦が現れると一体の機人型のグリードが現れ、その左右に支援機らしきグリードも出現した。 それぞれ武器を構え、グリード……レジェンネンコフと向かい合う。

 

「これは……!」

 

「さしずめ、ここの主かもね⁉︎」

 

「でもどうやって現実世界に……⁉︎」

 

「お前達、気合いを入れろ! 今からこのグリードを撃破する!」

 

「了解です!」

 

レジェンネンコフは手に持った刀を振りかぶると、力任せに横に振ってきた。 回避しようにもこの通路は狭く、受け止めようとした時……ゼストさんが槍を構えて前に出た。

 

「ふんっ!」

 

ゼストさんが渾身の槍を振るい、レジェンネンコフの刀と衝突した。 その衝撃は凄まじく、衝突による余波が辺りに響いた。

 

「ゼストさん!」

 

「行け!」

 

「! ……了解!」

 

ゼストさんがレジェンネンコフと鍔迫り合いをしている隙に、もう片方のグリードに向かって行く。 そこにアリシアが並んで走って来た。

 

「レンヤ! 繋げるよ!」

 

「え、繋げる?」

 

「フォーチュンドロップ!」

 

《スタイルチェンジ、リンクスタイル》

 

フォーチュンドロップがアリシアのバリアジャケットの細部を変化させ、アリシアが俺の肩に手を置くと……何かの繋がりを感じた。

 

「これは……」

 

上手く説明出来ないが、アリシアの動きや次の行動が手に取るように分かった。

 

「レンヤ!」

 

「ああ!」

 

その掛け声だけでお互いの行動を理解し、俺とアリシアは取り巻きのグリードを踏み付けるに蹴り。 その勢いでレジェンネンコフの背後から接近して交差するようにお互いの刀で斬りつけた。

 

《リンケージオールグリーンです》

 

「当然! 私とレンヤは相性抜群なんだから!」

 

「……よく分からないが、これはお互いの動きが分かるシステムなのか?」

 

「そうだよ、互いに魔力を共鳴させることで繋がり、高度な連携攻撃へと発展させる新しいスタイル……その初歩の運用がこの陸上戦戦闘システム……戦術リンク!」

 

初歩でこれとは、発展したらとんでもない物になりそうだな。 戦術リンク……チームにおいては画期的な発明だな。 それにやっぱりとんでもない物を作ってたな……

 

「っていうか、これ絶対適正とか必要だろ! 何の断りもなく勝手に俺に使うな!」

 

「ま、まあ……結果オーライ?」

 

「ふざけるな!」

 

リンクスタイルの説明と無駄話をしている間にも俺とアリシアは攻撃の手を緩めてはいなく。 隙間ない連携でゼストさんのフォローをしている。

 

「すずか、こっちも負けていられないわよ!」

 

「うん!」

 

レジェンネンコフが刀を頭上から振り下ろした瞬間にアリサが飛び上がり、刀を横に弾き。 すぐさますずかが槍で三段突きを繰り出した。 続けてゼストさんが追撃をかけようとするが……レジェンネンコフは回転斬りで俺達に距離を取らせ、その隙に取り巻きのグリードがレジェンネンコフを修復した。

 

「させないわよ!」

 

《カノンフォルム、ブレイズキャノン》

 

アリサが修復を止めようとフレイムアイズを射撃形態の変化させ、炎を纏った魔力弾でグリードを撃ち抜き、光となって消えて行った。

 

「おおおおっ!!」

 

裂帛の声と共にゼストさんがレジェンネンコフの頭に捻りで勢いのついた槍を振り下ろし、膝をつかせた。

 

「スノーホワイト!」

 

《アイスブランチ》

 

槍を地面に突き刺し、氷の枝がレジェンネンコフに伸び。 氷の枝がレジェンネンコフを拘束した。

 

「飛ぶぞ!」

 

「了解!」

 

そして俺とアリシアは戦術リンクの恩恵で同時にレジェンネンコフの左右に飛び上がり……

 

四剣(しけん)交牙刃(こうがじん)!』

 

二刀による4つの斬撃がレジェンネンコフの胴体に重なった2つのX字に斬り傷を作り……光を放ちながら消えて行った。

 

「ふう、手こずったな……」

 

「なんでアレをヘインダールにぶつけなかったのか不自然なくらいだよ」

 

「おそらく制御が難しかったんじゃないかな? 一歩間違えれば暴走する危険もあるし……」

 

「もし市街地に放たれていたら大変なことになっていたわね……」

 

「ああ、まったくだ……」

 

今のフェノールにある少しの理性に感謝し、本来の目的である会長室に入った。 中はいたるところに高級そうな調度品があり、とても豪華そうな部屋だった。 今までこういった物を何度も見たが、やっぱり違和感を感じて慣れない。

 

「豪奢な部屋だね……さすがにアザール議長の部屋ほどでは無いけど……」

 

「まあ、あれと比べたらなぁ………あ」

 

すぐ側にゼストさんがいるのについうっかり口を滑らせてしまった。

 

『ちょっと2人共……!』

 

『迂闊過ぎるわよ!』

 

「えっと、これにはその……」

 

「ふ……何を今更焦っている? 黒の競売会(シュバルツオークション)についての経緯はとっくに聞いている。 捜査部としては長年狙っていた獲物を横取りされた気分だがな」

 

知りたいが故に出しゃ張り過ぎた感もあったが、あの時は招待状が手に入ったチャンスをものにしたかったので隅に置いていたが……

 

「は、はは……そ、それはともかく、やはりここが会長室のようですね。 それで、フェノール内を一通り探し回りましたが……」

 

「ああ……結局マフィアは1人も残っていなかったし、失踪者もここに居いようだ。 何か手がかりがあるとしたらこの部屋以外にあり得ないだろう……時間が惜しい、手分けして調べるぞ」

 

「はい!」

 

「さぞ色々なものが見つかりそうね……」

 

手分けして物色を開始し、しばらく続けると奥の方に頑丈そうな金庫があった。 鍵穴を見ると前みたいにピッキングツールで解除するのは難しそうだ。

 

(んー、他に目ぼしい場所はないし、ここが1番怪しいか。 そうなると……鍵がないか探してみるか)

 

あの会長が鍵を携帯してない事を前提にすればこの部屋にある可能性が高い。 となると人目に触れない、もしくは会長以外が触ってはいけない場所にあるかもしれない。 戸棚にはビンテージ物の高級酒が並んでいた。

 

(流石に高級そうなものばかりだな……ひょっとしたら……)

 

俺はボトルを1つずつ持ち上げて下を確かめると……金庫の鍵を見つけた。

 

大正解(ビンゴ)……!)

 

部下達が間違っても触れそうにない場所……ありきたりな隠し場所だが、ここは素直に貰っておく。 すぐにこの鍵を使って金庫を開けると、中に幾つかファイルがあった。 とりあえず手に取ると、それはネクターの入荷リストと出荷リストだった。 これは決定的な証拠だ。

 

(あった……! やっぱりマフィアが薬物を……そしてネクター……教団が造った薬物……一体どんな関係が)

 

ここで1人で考えても仕方ない。 皆を呼び、他の資料も持ってテーブルに広げ、ゼストさんはリストに目を通した。

 

「ーー失踪した市民は全てリストに記載されていた。 これでマフィアが薬物を広めた裏付けは取れたわけだ。 そして例の教団が造ったというネクターとやらか……」

 

「一体どうしてマフィアがそんなものを……入荷リストによれば何者かの提供を受けているのは間違いなさそうね。 やはりその人物が教団関係者なのかしら……?」

 

「間違いないだろう。 書類によると、数年前から付き合いのある人物みたいだな。 グリードに薬物を投与して簡単にコントロールする技術なんかも提供していたらしい」

 

「なるほどー、機械だけでどうやってあんな大量に操っていたか不思議に思っていたけど……」

 

「全てはその教団関係者が協力していたわけか。 しかし、何者だ? やり取りの頻度から見てミッドチルダの人間であるのは間違いないようだが……」

 

「……分かりません。 ですが、失踪者達の行方もマフィア達の不在の理由も……全てはその人物が握っているのではないかと思います」

 

それにしても犬型のグリードはともかく機械型のグリードにまで通用する薬物か……それほどの腕の持ち主なのか、それとも……

 

「まずは奴らの拠点を見つけないとね。 それからそれ相応の報いを受けさせないと……」

 

「うん、どう考えてもブチのめす事、確定の外道だしね。 でもそうなると……どうやって炙り出すかだけど……」

 

「そうね……人手が必要になるわ。 消えたマフィアの対処と失踪者の捜索に加えて、空港の爆破予告もある……上層部の圧力が無ければ何とかなったでしょうけど……」

 

「クッ……まさか警邏隊局長までもが完全に取り込まれていたとはな。 そうでなければ全管理局を挙げた対策本部を設立できたものを……!」

 

ゼストさんは怒りのあまりリストをテーブルに叩きつけた。

 

「ゼストさん……」

 

「……とにかく一体ここから出ましょう。 ゼストさんは引き続き上層部の動向を見つつ空港の警備を続けてください。 後は俺達が引き受けます」

 

「だが、どうする気だ? 人手も時間も足りない筈だ」

 

「俺達なら大丈夫です。 そう……俺達、VII組なら」

 

「え、まさかなのは達に協力を⁉︎」

 

「今は四の五の言っていられない。 VII組は優秀だ、こっちも管理局とかの体制を気にしていられない。 それにVIIなら上層部の虚をつけるかもしれない」

 

たが急がないといけないかもしれない。 俺達は異界対策課、今やっている事ははっきり言えば捜査部の真似事……この事が露見したら対策課まで動かなくなってしまう。

 

「……分かった。 そちらはお前達に任せよう。 だが気をつけろ、今回の相手は一筋縄ではいかないぞ」

 

「分かっているよそんなの。 それにそろそろ教団とは決着を着けたいし」

 

「これも私達の選んだ道です。 最後まで進まないと、気が済みません」

 

「それにいつもの事よ、気にしなくてもいいわよ」

 

 

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