9月19日ーー
地上本部及び機動六課襲撃から1週間がたった。 傷跡はまだまだ残っているものの、その期間に防衛を最優先して反撃の準備を進めていた。 そして修繕を終えたアースラに本部を移すことで、機動六課現状復帰。 ギンガとブリッツキャリバーも共々完治、そのまま現場復帰した。
現在の六課の捜査方針としてはレリックを追う事。 その捜査線上にスカリエッティ、及び他の組織がいた……という、何とも屁理屈極まりない方針だ。 地上の捜査は本局と空域の協力してもらい進めているが、どうも最高評議会の圧力が強く、上手く進んではいない。 そこため、機動六課……及び異界対策課がやるしかないのが現状だ。
「全く、面倒で嫌気がするよ」
「はあっ!」
「やあっ!!」
だが、たとえそんなややこしい事になってもやるべき事は変わらない。 襲いかかってきた剣と槍を弾いてそう思った。
「ソーマは最も足に剄を! エリオは速度が足りてない、まだまだ上がるはずだぞ!」
『はい!』
「とりゃあ!」
今はスバルの膝蹴りを避けながら指導していた。 子どもの頃よく使っていたアースラの訓練場で、前衛フォワード陣の訓練、最後の仕上げに入っていた。
ピーーー!
「ここまで。 3人とも、疲れを残さないようにな」
『りょ、了解です……』
四刀の刀を納め、訓練場を見回しながらそう言った。 さて、これで準備は整った……
「そういえばレンヤさん、昨日何かあったのですか? 何かヨレヨレっていうか……動きが悪かったですよ?」
「…………調子が、な」
「そうですか。 それで話は変わりますけど……今日のアリサさん達、どこか気合いが入っていませんでしたか?」
「あ、それ私も思った。 なのはさん達もそこはかとなく肌がツヤツヤしてたよ」
「………気にするな」
ソーマとスバルが疑問に思い、問いただそうとする。 俺は無言で2人に近付き……肩に手を置いた。
「いいか? 世の中には知ってはならないものもあるんだ……覚えておけよ」
『は、はい』
自分でも我ながらいい笑顔で言った。 それでどうしてか2人は引き下がった。
「まあでも……」
「?」
「自分の心に嘘をつくのはやめて、覚悟を決めた……とだけは言っておくかな?」
「は、はあ……」
ぶっちゃけ理解しなくてもいいしこれ以上追求して欲しくもないのでこれにてバッサリ話を切った。
その後アースラの下部と連結しているピット艦に向かい。 そこの作業場で、アリサとアギト、デバイスなどを調整しているすずかとアリシアがいた。
「アリシア、すずか、調子はどうだ?」
「私はバリンバリンのフル充電完了だよ!」
「すこぶる問題ないよ。 この子達も絶好調」
すずかはコンソールを操作しながら、目の前にあるレゾナンスアーク、フレイムアイズ、スノーホワイト、フォーチュンドロップに視線を向け。 デバイス達はそれに返事をするように一瞬光った。
「ロッサから連絡は?」
「ルーテシアのサーチャーでフェイクのアジトを摑まされて死にかけた以来連絡はないよ」
「シャッハとユエがついてるとはいえ、大丈夫かなぁ?」
ユエはロッサの護衛として同行、リヴァンは地上本部、ツァリは無限書庫に。 そしてシェルティスはユミィの捜索に当たっている……そろそろ動きいてもおかしくない頃だな。
「あの子達も仕上がったようね? これにデバイスのリミッターも完全に解除、総力戦になるわね」
「後は俺達とレゾナンスアーク達のリミッターだけだな」
次に戦闘になったら両者の総力戦となる。 技と腕が負けているつもりはないが、低スペックのデバイスと限定された魔力ではかなり部が悪い。
「……ねえアギト。 前から思ってたんだけどアギトとコルルっていうユニゾンデバイスとはどんな関係なの?」
唐突に、アリシアが手を動かしながら目線だけを向けて質問した。 誰もが疑問に思っていた
「簡単に言えば同じマイスターから作られた兄妹機だ。 アタシはコルルの後に作られた2号機……3つの魔力変換資質に対応したコンセプトで3号機も開発を予定していたが途中で放棄。 結果、アタシとコルルだけになった。 その後は封印処理されて眠らされ、その後お互いどうなったかは知らねえ。 起きたらアリサのとこに行くまで実験続きだったわけだ」
かなり重苦しい過去なのに、アギトは自身とは関係ないようにケラケラと笑いながら語る。
「そもそも、純正であるアタシ達は兵器開発のために生まれた。 こうして普通……なのかは分かんねえが。 まあ、今はマシな暮らしをしてるから十分満足してるさ」
「アギトちゃん、そんな悲しいことは言わないで……」
「あなたはもうアタシの家族、無下には絶対にしたりしない」
「……あんがとよ……」
アギトはアリサの差し出された手に乗り、肩に乗せられながら照れ臭そうに礼を言う。 その後、俺もデバイスの最終調整を済ました。
「あ……そう言えば老師から手紙が届いていたな」
今日届いた紙媒体による手紙。 このタイミングで来るとは何とも言えないが……とにかく封を開けて読んでみると……
〈激動の時代において、刹那でもあっても闇を晴らす一刀たれ。
草々 ユン・カーファイ〉
「………それだけ………?」
ペラッペラの紙にたったそれだけ、一文と名前しか書かれていなかった。
(とはいえ……まるでどこかで見ているかのようだ。 やっぱり老師には敵わないや。 八葉が一刀……見せるしかないか)
「ーーレンヤ! 何してんの!? 早くこっちに来て!」
「ああ! 今行く!」
気を取り直し、手紙をしまって作業を再開する。 その後、デバイスの調整がひと段落ついた時……突然アースラ内にアラートが鳴り響いて来た。 俺達は互いの顔を見合い、頷き。 すぐさまブリッジに向かった。 到着するとはやて達がディスプレイに向かい合っていた。
「はやて、襲撃か?」
「そうや。 戦闘機人の集団が地上にある3機のアインへリアルを破壊しにお出ましや」
ディスプレイ内では管理局員が制圧され、アインへリアルが攻撃されていた。
「……アリサ」
「ええ、戦闘機人の動きが格段に良くなっているわ。 どうやら先の戦闘のデータを共有したようね」
「他の組織は見当たらないけど……」
戦闘機人達が3機のアインヘリアルを完全に破壊、制圧した。 俺はすぐさま地上で警備をしていたゼストさんと連絡を取った。
「ゼストさん。 そちらは大丈夫ですか?」
『何とかな。 だが戦闘機人は撤退し拡散、置き土産にグリード置いて行った上に魔乖術師が出張ってきた。 悪いが我々はそちらを対処しなくてはいけない』
「……分かりました。 こちらは俺達が何とかします。 そちらも、どうかご武運を」
『お前達もな!』
激励をもらい、ゼストさんは通信を切った。 その間を置かず次はロッサから通信が入ってきた。
『レンヤ。 今、大丈夫かい?』
「全然大丈夫じゃないけど……見つけたのか?」
『うん。 ここに来るまでグリードに襲われまくったから時間がかかったけど……何とか見つけたよ』
「私がサーチャーを付けたもの、当然よ」
『ああ。 それならすぐにバレて、サーチャーはフェイクのアジトに置いてあったよ。 おかげで死にかけた』
「うぐ……」
折角の策も逆手に取られ、ルーテシアはぐうの音も出なかった。
「話を戻してくれ。 愚痴は終わったら聞いてやる」
『それはありがたい。 出来れば君の作ったケーキで茶会でもーー』
「早くしろ」
『了ー解。 それで地道によくやく見つけて……今はシャッハとユエ君が迎撃に来たガジェットとグリードを叩き潰している。 教会騎士団からも応援を要請しているけど、そちらからも戦力を送れるかい?』
『うん。 もちろんやけど……』
ロッサの要請に言葉を濁すはやて。 自体は複数同時に動いていて戦力投入も慎重にならなくてはならない。 アインへリアルから撤収した戦闘機人は地上本部に向かっている。
『! 星槍のフェロー、及び騎陣隊4名……別ルートから地上本部に向かっています!』
「………………」
「? アリシアちゃん?」
ディスプレイに映し出されたフェローを、アリシア……そしてシグナムは視線を逸らさずジッと見つめている。
「! これは……スカリエッティのアジト付近にオーバーSランクの魔力反応を確認!」
画面が切り替わり、スカリエッティのアジトの近くの何も更地に……異編卿第一位、白銀のアルマデスが目を閉じ、ポツンと立っていた。 するとゆっくりと開眼、大剣を片手で掲げ……
『ーーはあああああっ!!』
凄まじい気迫と共に振り下ろした。 大剣は地面を真っ二つに切り裂き、余波で地割れが全体に広がる。
そして、全体にミッドチルダ中に流れ出したスカリエッティと通信。 奴は狂ったように管理局と聖王教会を罵倒しながら、アルマデスの手によって割られた大地が隆起し始め、姿を現したのは……
「聖王の……ゆりかご……」
教団事件の時、魔乖術師集団が持ち去った古代ベルカの戦艦。 それが自身の機関を駆動させて空に向かって飛翔している。 だが、あれを起動させるのには聖王の血族が必要不可欠……今世にそれを持つのは俺と母、そして……ヴィヴィオだけだ。
その疑問に答えるように、次に映し出されたのは……聖王のゆりかご、その玉座で拘束されながら座るヴィヴィオの姿だった。 次いでゆりかごのシステムが本格的に駆動。 その意味は……鍵たる主人の生命力を奪うこと。 ヴィヴィオが泣き叫び、父親と母親を悲痛に呼ぶ声が館内を満たす。
「………………(ギリッ)」
「………あ………ああ………」
「ヴィ、ヴィヴィオ………ヴィヴィオ!」
『ここから夢の始まりだ! アハハ……アハハハハハーー』
バンッ!!
「……………………」
アリシアが無言でディスプレイを撃ち抜き、それ以上の耳障りな笑い声を消した。
「……行くぞ」
「ええ……」
俺とアリサ、すずかとアリシアは踵を返してその場から去ろうとする。
「ちょっと皆! 悔しくないの! ヴィヴィオがあんな……!」
「ーー悔しくないわけないだろ!」
怒りのあまり握り拳で壁に向かって振り抜き、ガンッ! という音を立て壁は凹んでしまう。
「こんなに怒りが胸の中に満ちるのは初めてだ。 今からスカリエッティの元に向かって八裂きにしたいくらいだ」
「レン、君……」
「だが聖王のゆりかごとスカリエッティのラボは別の場所。 片方しかいけない……だから別々で任務を行う。 はやて、指示を」
「……レンヤ君……うん、了解や!」
行こうとしたその時……またミッドチルダ中に映像が流れ出した。 今度は黒い服、黒い帽子を目深くかぶった人物、
「空白!?」
「今度はなんや……」
『ーー我々は異編卿。 この度はスカリエッティ氏の計画に便乗し、この場で我々の目的を宣言します』
固唾を飲んで次の言葉を待つ。
『……我々、異編卿の目的は……魔法文化の破壊』
「なっ……!?」
ただ聞くだけでは大それた夢見がちな野望だが、相手は異編卿。 大嘘を言うメリットはなく、逆に実行可能と言う可能性も出て来てしまう。
『世界は差別に、欺瞞に満ちている。 管理局は安全の為だという口達者な夢見がちな心理を押し付けている。 それが魔力を……リンカーコアを持たない人々が蔑まれ。 仮に持っていたとしても生まれながらの凡才に苦悩する……ならば! それを廃してしまおう! 世界は1度リセットされるべきなのだ!』
合うたびに不気味な奴だったが……今はどこか達成感があるのか、興奮の色が見える。 ホアキン並みに酔狂めいた事だが、ティアナは才能という言葉に反応する。
「何が押し付けよ。 あんた達も十分押し付けてるじゃない」
「でも、分からなくはないよ。 事実、魔力の有無による差別、暴力は存在する」
「でも、だからってあいつらの行いを容認するわけにはいかないよ!」
「止めよう。 スカリエッティも、異編卿も……必ず止めさせないと!」
と、そこで空白は画面から逸れ、こちらを急かすように態とらしくゆっくり横に歩きながら口を開く。
『ーーどうやって? という方も多いので方法を教えましょう。 まず、各次元世界に杭を打ち込みました。 それをこのミッドチルダを起点に魔力を破壊する波を連鎖させ全次元世界に流します。 芽の1つも残さず根絶やし、世界は生まれ変わります』
これで、空白が各世界に噂として現れているという説明がついた。 だが腑に落ちない部分もある。 奴が最初に現れてからの期間を考えればもっと早く襲撃しても遅くはなかったはずだが……
「……不可能ではないよ。 地上本部はミッドチルダの中心。 恐らくこの前の襲撃で最後の杭を打ち込んだんだよ」
「ようやく合致したな。 スカリエッティと異編卿の関係……お互いの計画にデメリットはなく、メリットしかないからな」
「魔法文化が無くなればガジェット、戦闘機人の有用性は確実なものになる……そういうことか……!」
「だから、私とキャロには見向きもしなかったのね……」
「! 待って……そんな事をしたら……使い魔であるアルフやリニスが……!」
「……例外なく、完全に消滅するわね……」
「リーゼ姉妹。 それにもしかしたらシグナム達、ヴォルケンリッターも……」
「当然。 アタシ達、ユニゾンデバイスもな……」
「そんな……」
「鏡界計画……まさかそんな巨大な計画だったとは……!」
「………! あれは……!」
突然、ディスプレイに映る聖王のゆりかごに変化が現れる。 ゆりかごから前後左右上下に何か丸い物体を合計6つ発射し、それが一定間隔で停止する。
次の瞬間、丸い物体が巨大化……6つの球体がゆりかごを囲うように菱形に線を繋げ、結界を張った。 そして今度はゆりかご本体に異変が起きる。 ゆりかごの至る所から瘴気のような黒々しい霧が発生、それが取り憑くように形なしていき……機械と生物が融合したような異形に姿を変えてしまった。
「……聖地より彼女の翼、異形となりて蘇る……異形過ぎるだろ」
「ザナドゥの全属性の特徴をグチャグチャに混ぜたような姿だね……」
少なくとも、どうやらあの場所に神話級グリムグリードはいるようだ。 複製ではなく……真正のが。
「どうやらあの球体をどうにかしないとゆりかご本体にはたどり着けないようやな。 地上の方もあるっちゅうのに……」
「だから役割を分担するんだ。
「どれも一筋縄ではいかない、覚悟を決める必要がある……これが最終決戦よ。 必ず奴らを打ち倒して」
「ヴィヴィオちゃんとイット君を取り戻さないとね」
『うん!』