廃棄都市では、フォワード陣と騎陣隊が雌雄を決するため、全力で交戦していた。
「ーー外力系衝剄……閃断!」
「はっ!!」
ソーマは飛び上がりながら衝剄を線状に凝縮して放ち、ラドムは迫ってきた衝剄を一刀で斬り伏せた。
「ソーマ、右翼から静寂が接近! スバル、ギンガさん、もっと隙間なく攻めて! 破滅を他とフォローさせない! サーシャはそのまま流動を抑えて!
『了解!』
ティアナはラドムと接近戦をしながらソーマ達に指示を出し、騎陣隊と対等に渡り合っていた。
「
サーシャは回転しながら色んな方向に輪刀を掴んでは投げ、掴んでは投げを繰り返し、騎陣隊の隊列を乱し始めた。
「ウルク!」
「了解!」
ウルクは盾の中に身を隠し、その状態のままサーシャに突撃してきた。
「ふうっ!」
「うっ……」
「はっ!」
「きゃあ!」
サーシャは輪刀の中に入り、輪刀を回転させてウルクの突撃を受け流したが……回避先にいたラドムに一太刀喰らってしまった。
「くっ……」
「大丈夫、サーシャ?」
「は、はい……大丈夫です」
すぐ様ティアナが魔力弾を撃って距離を取らせ、ソーマが近寄ってフォローした。 するとすぐにスバルとギンガがゼファーに弾かれて後退し、ティアナもファウレの鎌を避けて後退、そのまま5人は隊列を整えた。
「やっぱり強い……」
「うう……腕がビリビリするー……」
「まるで隙がないわね。 こっちの連携が全然通らない」
「彼らと比べれば、私達のは一朝一夕みたいなものですからね」
「それでもやるしかないのよ……気張りなさい!」
ティアナは激励を叫び、ソーマ達はそれに応え騎陣隊に向けて武器を構える。 すぐにスバルとギンガが左右から飛び出し、両側から放たれた蹴りをラドムとウルクが受け止め……
「……ふんっ!」
ファウレが高く跳躍して鎌を振り上げ、ソーマ達3人の元に落下と同時に振り下ろし、その衝撃で大地は砕ける。
「きゃっ……!」
「ティア、牽制!」
「分かってる!」
3人は横に跳躍して避け。 ティアナはもう片方の手にも銃を持ち、ファウレに向かって魔力弾を撃つ。 ファウレは片手で鎌を回転させて弾き、その間にゼファーが弾幕をかい潜って接近。
「せいやっ!」
「うあぁ!?」
ゼファーの真下からのアッパーでティアナは打ち上げられ、ゼファーはそのまま追撃をかけようとした。
「ティアナちゃん!」
サーシャは輪刀を振り回してその場で何度も回転して……
「
全力で輪刀をゼファーに向かって投擲し、高速で回転している輪刀はゼファーの二刀のソードブレイカーに衝突した。
「ぐうう……!」
咄嗟に身体を回転させて峰のブレイカーを使って輪刀を受け止め、回転により火花を散らす。
「……ふ」
そこにファウレが横から割り込み……鎌を振り上げて輪刀を打ち上げた。
「ーーそこ!」
《ファントムブレイザー》
それを狙い、ティアナがサーシャの後方で1丁のクロスミラージュを両手で構え……遠距離狙撃砲を発射、ファウレの上がっている腕を狙い撃って体勢を崩し……
「ーーせいっ!」
一瞬でサーシャが懐に潜り込み、甲冑に手を添えると……その状態で背負い投げを繰り出し、ファウレは硬い地面に叩きつけられた。
「がは……!」
「チッ……!」
牽制で放ったゼファーの斬撃をサーシャは跳躍して避け、空中に弾かれた輪刀を手にとって着地した。
「内力系活剄……
ソーマはラドムに接近しながら強力な気配を発散し、即座に殺剄を行い移動することで全体の知覚に残像現象を起こさせる。
「はあっ!!」
「甘い……!」
何人もの残像がラドムの横や上を通過し、本物が横から斬り込むと……ラドムは即座に反応して受け止め、刀身を掴んで棍のように回してソーマを上に投げた。
「ふっ!」
「っ!」
外力系衝系・
投げらたソーマは、回転して制動をかけながらすぐさま空いた左手の指の間に針のように細い剄弾を形成し放った。 ラドムはロングソードを一振りして払うが、一本が肩に刺さりよろめいた。
「ーー
それを狙い、魔力の放出と共にティアナの両腕と顔にオレンジ色の波打った紋様が浮かび上がってきた。
「はあああぁぁ!!」
クロスミラージュに魔力を込め、引き金を引くと……銃口から音速で魔力弾が撃ち出された。
「なっ……!?」
「なんて速度に威力……」
魔力弾はラドムのもう片方の肩に直撃し、大きく後退させた。 その速度にウルクも驚愕している。
「ティア、もしかして……!」
「ええ。 魔紋だよりだけど何とか形にできたわ」
ティアナが撃った魔力弾は質量兵器の銃を参考にした魔力弾だ。 今までのティアナの魔力弾は誘導などのコントロールをするため、速度と威力は低い、はっきり言えば銃型のデバイスを使わなくても杖型のデバイスでも同じ結果になる。
それをレンヤとアリシアに指摘され、教えられたのが超圧縮魔力弾。 通常サイズの魔力弾を銃弾の大きさに圧縮し、質量兵器の銃と同じ原理で発射させる技術……これを行うにはいくつもの行程があり、卓越した魔力制御が必要になる。 ティアナは試行錯誤の末に習得したが、10秒に1発が限度だった。それを魔紋によって2秒に1発に向上させた。
(使い方を間違えた大魔法は、使い方を工夫された小魔法に劣る……!)
アリシアから教えられた言葉が、失敗し独りだったティアナを前に進ませた。
「……今の魔力弾……オーバーS相当の魔力制御技能が必要、化けたね」
「おいおい、凡骨って言ったのはどこのどいつだよ?」
「……………………」
ゼファーのワザとらしい指摘にラドムは無言になりながらもスバルに一太刀入れ、次いでロングソードで腕を絡めて投げた。
「スバルちゃん!」
「だ、大丈夫。 まだ、まだやれる……!」
スバルは両手で拳を握って正面で打ち合わせ、呼吸を整えながら目を閉じた。
「ーー負けられない……負ける訳にはいかないんだ! 行くよ……マッハキャリバー!」
《オーライ、バディ》
リボルバーナックルのカートリッジを何度もロードし、足元にベルカ式の魔法陣を展開しながら拳を構え……
「……フルドライブ!」
《イグニッション》
「ギア……エクセリオン!!」
《ACS。 スタンバイ、レディ》
スバルの叫びに、マッハキャリバーが応答し。 左右のローラーブーツから青い翼が生える、駆動音が大きくなる。
「行きます……お相手、どうかお願いします」
「ふふ……いいでしょう。 来なさい」
拳を握り、両腕を頭の高さまで上げ。 緊迫した空気が流れ、そして緩やかな風が2人を撫でる中……
「ーーあ……」
不意にサーシャが一歩後退し、それによりビルの破片が落ち……地面にぶつかって砕け散ると……
「うおおおおっ!!」
「はあっ!!」
スバルはローラーブーツを火花を散らしながら駆け、ウルクは地が沈むほど蹴って同時に飛び出し。 リボルバーナックルと大盾が衝突した。
「おりゃあぁぁぁぁ!!」
「はあぁぁっ!!」
スバルは徐々に魔力と威力を上げながら隙間ないラッシュを繰り出し、その猛攻をウルクは盾を巧みに操って防ぎ、反撃していた。
「スバ……っ!?」
援護しようとギンガが前に踏み出した時……横から気配を感じ、蹴りを放つ鎌と衝突した。
「……無駄だよ」
「退きなさい……!」
「ギンガさん!」
「ソーマ、余所見しない!」
戦いは終盤に入り、ますます激しさを増していく。 くるくると戦う相手を変えて行けば攻防が入れ替わり、戦況が拮抗していた。
「どらあああぁぁぁぁ!!」
「ぐ……うあっ!」
スバルの隙間のない怒涛のラッシュで防御を崩して行き……渾身の一撃が盾ごとウルクを吹き飛ばした。
「よし!」
「ーースバル!」
ウルクを撃退したため気を抜いたのか、それを狙いラドムが間合いを詰めた。 ソーマが警告して叫ぶが……間に合ない。 スバルもダメージを覚悟した、その時……
「う゛っ……! カハッ!!」
「え………ギ、ギン姉!!」
咄嗟にギンガがスバルの前に出てラドムの剣を受け止めようとしたが……防御を貫通して剣が脇腹に入ってしまった。 ギンガは吐血し、吹き飛ばされてしまったが……
「い、行きなさい………スバルーー!!」
「ーーっ……う、うおおおおっ!!」
ギンガの叱咤を受け、スバルは後ろを振り返らず、叫びながらラドムに向かって行き。 6発の魔力弾を浮遊させて右腕を振りかぶり……
《マグナムフィスト》
「ぶっ壊れろぉぉぉぉ!!」
「くっ!」
スバルの拳をロングソードで防ぐが……魔力弾を炸裂した衝撃に弾き飛ばされ、間をおかず右手が腹部に押し当てられ……一瞬で5発、魔力弾を炸裂させラドムを吹き飛ばした。
「ウルク!」
「痛ッ………やられたわね……」
「…………負けない……!!」
ファウレはクールな雰囲気にしては珍しく声を上げ、鎌の刃に炎が灯った。
「はあぁぁぁぁぁぁ……!」
眼前で鎌を回転させ、徐々に炎の大輪が膨らみ……
「カマエル……ストリーム!!」
突如、直線的な火炎の放射が逆巻くように渦巻き……それを圧縮して球状にし、ソーマ達に向かって飛ばしてきた。
「な、なんて魔力の奔流……!」
「ギ、ギン姉! 早く立って!」
「無茶言わないでよ!」
「ーーやるしかない……」
「!? ソーマ!?」
ソーマは苦渋の決断を即座にし、腰に巻いてある
剣帯の金具をちぎって引き剥がすと、それを振り回す。 すると剣帯に収められていた無数の
「レストレーション!」
復元鍵語を叫び……その瞬間、宙に舞った錬金鋼が一斉に光を放ち、復元した。 落下しようとする剣の群が剄の光が纏われ……ソーマは手を天に掲げ剄を放出し、膨大な紺色の剄が新たに巨大な刃を形成した。
そして宙に舞っていた錬金鋼達はそのまま巨大な刃に吸い寄せられ、まるで七支刀のような形状をとり、新たな光を放って剄の刃を生み出していく。
所持している錬金鋼の全てに連弾による剄を流し込む。 そして、今から放つのはたった一度だけの大技……
外力系衝剄・
「いっけえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
無数の錬金鋼と剄によって生み出された刃はの大樹は迫り来る巨大な炎球と衝突し、衝撃による形態維持の限界を達して爆発した。 膨らむ衝撃波が炎を吹き散らす。
結果は確かめない。 ソーマの足は止まらない。 分断した炎の真ん中を突っ切る。
「無手で何が出来る!」
「うおおおぉぉぉぉ!!」
炎の中を真っ直ぐ駆け抜けるソーマ、ゼファーが道を塞ぎ、ソードブレイカーを振り下ろした時……
「なっ……!?」
「ーー我、天の力を借りて……陣を示す!
ゼファーの眼前から忽然とソーマが消え、次に中が魔力で満たされ波打っている輪刀が横から割り込み、振り下ろされたソードブレイカーが弾かれた。
「今だよ!」
サーシャの背後には2丁のクロスミラージュを構えたティアナが控えており。 2つの銃口の先にはサッカーボール台の高圧縮された魔力弾が控えており……
《マキシマムショット》
「外さない……!!」
引き金を引くと、魔力弾が高速で発射された。 魔力弾はそのまま輪刀の輪を潜ると……オレンジの魔力弾に青白い魔力が纏われ、高速で輪刀から2度目の発射をがされた。
「これは……!」
「くっーー」
四隊士は迫り来る魔力弾に対処し……直撃すると大きな爆発が起き、爆風でソーマ達5人の身体が煽られる。
「ス、スゴ……」
「でも、これなら……!」
「……だと、いいんだけど……」
ソーマは懸念するように舞い上がる砂煙を静かに睨む。 そして一陣の風が吹き、煙が晴れていくと……そこには
「あ、あれでも倒れないの……!?」
「さすがは騎陣隊、ね」
「っ…………ギンガさん、下がっててください!」
「ここは私達が!」
「ダ、ダメ……!」
ギンガはもう戦闘不能……5対4でようやく拮抗していた。 いくら相手が消耗しているとはいえ苦戦は免れない。 と、その時、いきなりラドムが後ろを……地上本部の方にバッと振り返った。 それに他の3人も反応し、なにかを感じ取っていた、
「…………! マスター!?」
「地上本部から離れた……?」
「……行こう」
そのファウレの一言で騎陣隊の四隊士は何も言わずに一斉に踵を返し、地上本部方面に向かって跳躍して行った。
「あ、ちょっと待ちなさい!」
「追いかけるわよ!」
「うん!」
先に全員の応急処置を済ませ、ソーマが負傷したギンガを抱きかかえ少し遅れながらも騎陣隊を追跡した。 ソーマの背に針刺すような視線を3つ受けながら……
「ああもう! 雑魚だけど数が多過ぎ!!」
「
アリシアとシグナムはフェローを追って地上本部に向かっていたが……その道をガジェットとグリードに塞がれ、手をこまねいていた。
『! 星槍のフェロー、本部に突入しました! マズイです!』
「っ……!」
「ゼストが側に居ないのに……! ……レジアス中将……」
アリシアは地上本部から目を離しグリードとガジェットの軍団を睨め付ける。
「チンタラしてられない……! フォーチュンドロップ! 全魔法陣砲門……展開!!」
《オープンアップ》
アリシアを全方向に魔法陣が展開、その前に同じ数の魔力スフィアと魔力弾が展開され……
《ミリオンブリッツ》
「魂のカケラも残さない!!」
2丁拳銃のトリガーを引き、砲撃が魔法陣を通過。 周辺にいた敵性勢力に砲撃が転送され。 さらに魔力弾は上空から落として爆発し……ものの数秒で殆どを撃墜させた。
『す、すごいですぅ……』
「ボサッとしない! サッサと追いかけるよ!」
「あ、ああ……」
道が開け、アリシア達は地上本部に向かった。 そのまま人気のない通路を進み、フェローの目的であるレジアス中将の元に向かう途中……
「ーーあ……」
「すみませんね、ここは通行止めです。 迂回路は……どこにもありません」
ユニゾンデバイス、コルルが通路に障壁を展開し、それに寄りかかって道を塞いでいた。 まだ余裕があるのか冗談をアリシア達に言った。
「あなたは……」
「姉さんは自分の使命を……彼の罪を見定めに行っただけだよ。 ねえ、少し僕と話をーー」
コルルは時間稼ぎのようにヘラヘラするが……だが、シグナムは聞く耳持たず、レヴァンティンを振り下ろし、障壁を破壊した。
「やれやれ……せっかちだねぇ……」
「こちらは元より事情を聞くのが目的だ、無駄話に付き合う義理はない」
「事件の根幹に関わることなら尚更、ね」
シグナムはレヴァンティンを鞘に納めながらユニゾンを解除し、出てきたリインはコルルの前に向かう。
「コルルさん、あなたは後先考えない軽い性格なのかもしれません」
「いきなりズバッと言うね……」
「でも、だからこそ私はあなたの正体を知っても嫌えなかったんだと思います。 本当のあなたは誰隔てなく優しいから……アギトちゃんの事も、心配していたのでしょう?」
「………………」
コルルは顔をリインから背け、照れ臭そうに人差し指でポリポリと頰を掻いた。
アリシア達はそのままコルルを連れ、レジアス中将のいる執務室に向かった。 その途中……進行方向から爆発音と衝撃が届いてきた。
「なっ!?」
「まさか……!」
急いでその地点に向かい、レジアスの執務室に入ると……まず目に入ったのはどことなく悲しそうなフェロー、その手のランスには血が滴っている。 その次に横で倒れているオーリス。 そして……胸から血を流して机に倒れ伏しているレジアス中将と、戦闘機人と思わしき金髪の女性が同様に腹部から血を流しながら倒れていた。
「そんな……」
「姉さん……」
「……彼にはその口から、本心から聞きたい事があった。 その罪を背負い進むだけの意志があるかどうかを。 しかし……それも半ばにして……私もまだまだですね、無用な殺生をしてしまいました。 彼も含め、願わくば女神の元に……」
フェローは目を閉じ胸に手を当て、レジアス中将と戦闘機人に向かって黙祷をした。
「……雷帝よ。 これがあなたが成すべき使命だったのですか?」
「ーーいいえ。 これは使命の過程で私自身が確認したかった事……もうここには用はありませんが……」
シグナムの問いに即座に首を振って否定し、黙祷をやめてランスを一振りし血を払い踵を返して歩き始めた。 その道をシグナムが手で塞ぐ。
「どこへ?」
「最後にもう一つ、やらねばならぬことがあります。 それを果たしに……」
「あ……姉さん」
フェローはそのまま歩き……シグナムの横を通り過ぎた。 コルルは少し困惑しながらもフェローの後に続いた。
「ちょっとシグナム、行かせていいの?」
「あ、ああ、もちろん追いかけるが……」
「何か気になるのですか?」
「……いや、私の知るフェルベルト卿と、改めて差異がない事に気がついてな。 義を持ってことを成せ、不義には罰を……変わらないな」
シグナムはフェローの背を見て……少しだけ顔に笑みを浮かべていた。
「行くぞ」
「は、はいです!」
アリシアはせめてオーリスだけでもと救護隊に連絡を入れ、3人はフェローを追って部屋を後にした。