魔法少女リリカルなのは 軌跡を探して   作:にこにこみ

185 / 198
185話

 

 

フェイトがスカリエッティを制圧、拘束し。 シャッハとユエ、ロッサの無事を確認していた時……突然アジト内に警報が鳴り響いた。

 

すると通路が魔力障壁で封鎖され、それと同時に地震が起き始めた。

 

「これは……一体……?」

 

「なんかスゲェ嫌な予感がするんだけど……」

 

「ーーフフ……クアットロが、この拠点の破棄を決意したようだ」

 

「止めさせてください…………と、言っても、無駄なんでしょうね」

 

すずかがクアットロの無慈悲な決断の理由が分かっていた。 先ほどスカリエッティの言った事が真実なら、目の前のスカリエッティが死んでも問題ないということが。

 

「…………! ユエ君とシスターシャッハ、ロッサは一足先に脱出するみたい! フェイトちゃん、私達はーー」

 

「分かってる。 この人達を救わないと……!」

 

2人は頷き、空間ディスプレイを展開し。 このアジトのシステム侵入した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ダメ……ツァリ君と繋がらなくなっている……」

 

「そろそろゆりかごが軌道ポイントに到達する。 タイムリミットまであまり時間が残されていないのに……」

 

念威探査子(ねんいたんさし)も機能を停止しているし、何かあったのか?」

 

なのはは手のひらの上にある色を失った花びら……探査子を見せて呟く。 エルドラドをソファーさんに任せ、俺達は心身ともに疲労が蓄積されるのを自覚しながらも速度を落とさず、敵を退けながら迷宮を駆け抜けていたが……突然、ツァリの通信が途切れてしまったのだ。 何かあったに違いないが、ツァリがいるのはアースラ……かなり心配になってくるが……

 

「ーー見えた! あの先が玉座の間だ!」

 

「ツァリやアースラの皆は大丈夫よ……信じて、私達は目の前の事を……!!」

 

「了解だ!」

 

「ヴィヴィオ、イット……!」

 

懸念を頭の隅に追いやり、そのまま終点の広間にたどり着いた。

 

「ここは……」

 

迷宮を抜けた先にあったのは……大きな広間だった。 いわゆる玉座の間の手間にある広間、奥の巨体な扉の先に……と、そこでその扉を背に高等部くらいの黒髪の少年が片手で太刀を抱いて地べたに座っていた。

 

「あれは……」

 

「……………………」

 

「あ、レン君!」

 

俺は無言で前に進む。 問いかける必要はない、今は……

 

「……こうなる運命だったのかもしれませね」

 

広間の中心……円形の広間に差し掛かると少年が口を開き立ち上がった。 太刀を腰に佩刀し、円形の広間に入って俺と対面する。

 

「結局、俺は何者にもなれず……何もなし得る事は出来なかった。 出来るはずもなかった……」

 

「……見てくれが大きくなったからって、何を悟っているんだ……イット」

 

男子三日会わざれば刮目して見よとは言うが……これはないだろ。 イットは赤い旅衣装のような服を着て、顔を俯かせていた。

 

(……深く精神操作が施されているな。 これじゃ操られているのも自覚はないし、恐らくヴィヴィオにも……)

 

《彼からレリックの反応が検出されました。 その影響なのかは不明ですが、身体年齢が上がっているようです》

 

「なんて事を……!」

 

「まさか……ヴィヴィオにも……!」

 

「……なのは、アリサ。 先に進んでくれ。 ここは俺が引き受ける」

 

2人の前に出て、そう懇願するように声を強めながら言った。 これは、俺自身がやらなければ……成さなければならない事だ。

 

「で、でも……」

 

「行け! 俺は子どもの想いを受け止められないような父親じゃない。 2人もヴィヴィオの事、頼んだぞ」

 

「行くわよ、なのは。 ここは任せましょう」

 

アリサは了承してくれ、なのはは少し渋るが……決心して頷いてくれた。

 

「……気をつけてね」

 

「ああ……」

 

2人はイットの横を通り過ぎ……横目でイットを見ながらも玉座の間に入っていった。 その間、イットは2人には手を出さず、微動だにしなかった。 イットも奴らの手の中にありながらも、何とか争い……俺との一対一を所望したようだ。

 

「……言ってたよな? イットは生きることに意味があるとか……」

 

「………………」

 

「そんなもの……自分で見つけろ」

 

「!?」

 

意外だったのか、イットは顔に出さなくとも反応で驚きを見せた。

 

「俺だって生きる意味なんて質問されたら即答できない。 目的はある、成すべきこともある……けど、生きるとはなんだ? 日々の繰り返しか? 命を落として死ぬまでが生か? 答えられる者はいないだろう……」

 

一歩前に踏み出し、自分の考え……思いを言い続ける。

 

「だから自分で見つけるしかない。 当たり前な日々の中で……友達と、仲間と、家族と過ごす中で見つけて、それを大切にしていきたい。 その中にはイット、お前はもちろんヴィヴィオも入っている」

 

左手で鞘を掴み、右手で腰に差していた刀を抜刀し……

 

「だからこそ! 俺はこの戦いでは……八葉一刀流しか使わない!」

 

「!?」

 

「これが今の俺に出来る……ただ一つ、今のお前に示せる勲だ!」

 

レゾナンスアークに3本の短刀を収納させながら、俺は残りの長刀を抜刀して……剣先をイットに向けて豪語する。 イットは驚愕の表情を見せ……太刀を握る力がこもる。

 

「後悔しないで下さいよ……! ーーうう……ウオオオオッ!!」

 

イットは胸を押さえ……鬼の力を解放した。 髪は白く、瞳は紅く変わり。 赤と黒が混じった魔力が溢れ出す。 それに対して、俺は冷静に一歩前に出る。

 

「正式な弟子じゃないし、お前と比べれば遥かに劣るだろう。 だが……それでもあえて、俺はこう名乗る!」

 

その間にお互い魔力を高め合い、放出された魔力が両者の間で衝突する。 そして左手で刀を逆手に持ち替え、軽く右手を添えて居合いの構えを取る。

 

「ーー八葉一刀流、初伝………神崎 蓮也! 己の矜持を示す為……イット! お前を自由にする一刀を届かせる為……いざ、推して参る!!」

 

「ウオオオオオオオッ!!!」

 

同時に地面を蹴り上げ、広間の中央で振り抜かれた刀と太刀が衝突……強烈な衝撃が辺りに響かせる。

 

「うおおおおおっ!!」

 

「アアアアアアッ!!」

 

力が拮抗し、互いに力を増しながら鍔迫り合いになる。 どうやらイットは理性を持ちつつも鬼の力に身を任せている……そんな風になって戦っているようだ。 精神操作の影響かもしれないが……厄介には変わりない。

 

「シャアア!!」

 

「はあっ!」

 

力を加え、またもや同時に弾かれ……すぐにイットの前から消え横から接近、斜めに薙ぎ払が、イットはその攻撃に反応し防御。 そこから一瞬の間に何度も刀をぶつけ合った。

 

「な!?」

 

「シャアッ!」

 

高速に繰り広げられていた剣戟の嵐……その途中で防御を抜けられ、鋭い一刀で脇腹を斬られてしまった。

 

「カハッ! くっ……! (体格が大きくなった事で、老師との……子どもと大人の体格の差がなくなり、太刀筋が定まって剣の冴えが上がっている!)」

 

「オオオオッ!」

 

痛みをこらえ刀を納刀し、休まさせずに振り抜かれた太刀を紙一重で避ける。

 

「ーー伍の型……残月!」

 

身体が逸れながらも重心が安定しているおかげで瞬時に抜刀し、斬り返しで2度、力の乗った刀を斬りつけた。

 

「グウゥ……!」

 

刀は浅く肩と腕を斬り、追撃をかけるも一転して放たれた太刀に弾かれて阻まれてしまう。

 

「弧影斬!!」

 

「ソコダ!!」

 

後退し距離を取り、納刀から抜刀により放つ飛ぶ斬撃……それを同時に放ち、中央で衝突し消えてしまう。 と、次の行動を起こそうとした時……イットはその場で太刀を顔のある位置で突きを放つ構えを取り……

 

「ウオオオッ……!」

 

「がっ!?」

 

「シャアッ!!」

 

一瞬で消えたと思ったら10メートルの距離を半秒以内で詰め、一太刀入れ離脱。 さらに抜刀によって放たれた衝撃波で追撃をかけられてしまった。

 

(い、今のは疾風……だが速すぎる上に追撃をかけられた! 派生技か……!)

 

俺が知る八葉一刀流は基礎の8つの型のみ。 そこから派生した技は自分が編み出した伍の型だけで少なく……対応が遅れてしまった。

 

(基礎の8つの型ではダメだ。 勝機があるとしたら……伍の型だけだ……)

 

伍の型だけは自分が編み出した派生技がある。 状況はこちらが圧倒的に不利だが……そこに道を見出すしかない。

 

「ホロビヨ……」

 

「! それは……焔ノ太刀か!」

 

初伝でも威力が高い技……イットは太刀の持ち手を上げて剣先を下に、刀身を自身の隣にしながらもう片方の手で刀身に手を添え……刀身に紫色の禍々しい焔が纏われる。

 

「ウオオオオオオッ! シャアッ!!」

 

距離を詰められ……紫の焔ノ太刀の連撃を受け切った。

 

「ぐっ……ハアハア……」

 

何とか耐え抜いたが……身体中のあちらこちらに火傷を負ってしまった。 体力も削られたが、大技を出した後でイットの動きは鈍い……

 

「四の型……紅葉切り!!」

 

痛みを堪えながら駆け出し、すれ違い間際に一閃して斬り付け。 さらにそこから一転し、横に薙ぎ払い追い撃ちをかける。

 

「グウッ……!」

 

「……………………」

 

「ウゥ……ウオオオオオオッ!!」

 

「!!」

 

追い撃ちの一刀を受け切ると……イットの纏う鬼気が一層増してしまった。 一瞬で距離を詰め、太刀を振り下ろす。 だが……

 

(少しずつ太刀筋がブレ始めている……身体も体力も限界に近付いている。 このまま続けるとマズイ!)

 

このままでは命に関わる……時間はかけていられない。 だが、イットの怒気迫る剣戟、その剣戟を交じあわせる……その刹那の隙を狙い、一瞬で決めるしかない!

 

「オオオオッ!!」

 

「!」

 

今だ……この瞬間を……掴め!

 

「シャアアアアアッ!!」

 

「……八葉一刀流、秘技……虚月(こげつ)!!」

 

地を蹴り上げ、迫ってきたイットの背後に一瞬で回り刀を鞘から振り抜いた。 そしてイットに背を向け……大きく鍔鳴りを響かせながら納刀と同時に斬撃を飛ばす。 そして刹那の間が遅れ、イットに2つの一閃がばつ印に走った。

 

「ガアアアアア……ッ!!」

 

「これでもダメなのか……!」

 

《マジェスティー、過剰に魔力を蓄積させ。 レリックを外に放出、破壊するしかありません》

 

「くっ……イット、耐えてくれよ……!」

 

最後の最後、これが失敗すれば……そう考えて頭を振り払う。

 

(失敗を考えるな。 今は、己が出来る一刀を振るうのみ……!!)

 

「アアアアッ…………れ、れんや、サン……」

 

「ーー白夜を閃めかせるは虚無の一刀……」

 

目を閉じて精神を統一し、納刀の状態で刀身に収束魔法のブレイカーの抜刀を発動させた。

 

「疾ッ!!」

 

抜刀の構えを取り一瞬で飛び出し……抜刀。 背を向けて刀を振り抜きながらイットの横をすり抜き間際の刹那の間に7回斬り、斬撃がイットを中心に飛び散り……

 

「はあああああああっ!!」

 

刀を手放して踵を返し飛び散った斬撃……虚ろな刀を掴んで斬り、それを刹那の間にまた7回繰り返した。 飛び散る魔力を押し込んで、魔力が飽和させて魔力ダメージを与え続け……するとイットの胸元から赤い結晶、レリックが姿を現した。

 

「ウアアアアア……!!」

 

「終ノ太刀……(おぼろ)!!」

 

空に停止していた実刀を掴み一閃、レリックを真っ二つに斬り裂いた。 次の瞬間、レリックが破壊された影響か、イットを中心に魔力が爆発した。

 

「ぐっ…………イット!!」

 

咄嗟にレゾナンスアークが障壁を展開してくれ。 足腰に力を入れて踏ん張り、爆風に耐えながらイットの名を叫ぶ。 数秒で爆風は収まり、中に舞う砂煙が少しずつ晴れていくと……元の姿に戻ったイットが太刀を杖にして足がガクガクになりながらも立っていた。

 

「イット!」

 

「……はあはあ……」

 

倒れまいと踏ん張るイットに駆け寄り、倒れるすんでのところで受け止め。 回復魔法をかけながら優しく横たえた。

 

「済まない……俺がもっとしっかりしていれば。 お前を救ってみせると誓ったのに……」

 

「……いいえ……レンヤさんが気にする事はないですよ。 俺が不甲斐なかっただけですから……」

 

「そうか……っ!?」

 

その時……この奥、玉座の間で大きな魔力の奔流を感知し。 間をおかず大きな轟音と衝撃が辺りに響いて来た。

 

「うわっ!?」

 

「っ……この魔力、なのはか……また無茶して……」

 

イットにこの場に留まっていろと言い。 すぐになのはの元に向かおうとすると……身体に激痛が走り、膝をついてしまった。

 

「レンヤさん!?」

 

「痛っ……俺も人の事は言えないか。 大丈夫だ、すぐに良くなる」

 

「で、でも……!」

 

その時、辺りに警報が鳴り響いた。

 

『駆動路破損、管制者不在。 聖王陛下、戦意喪失』

 

どうやらこの奥で何があったに加え、はやて達がやったようだ。 こうしてはいられない……!

 

『これより、自動防衛モードに入ります。 艦載機、全機出動。 艦内の異物を、すべて排除してください』

 

「急がないと……くっ!」

 

「だ、ダメです! 傷に響いてしまいますよ!」

 

イットに身体を支えながら進行を抑えられ、それでも前に進もうとすると……前触れもなく周囲に白い光が溢れ出した。 そして驚く間も無く……異界は収束し、辺りは彼女の記憶にあるゆりかごの中と同じ風景になった。

 

「これは……」

 

「異界化が解かれた……? どうして突然、前触れもなく……」

 

恐らくはやて達の駆動炉破壊を引き金に収束したのだろうが……とにかくこうしてはいられない。 治癒魔法で身体を治しながら玉座の間に急いだ。

 

イットにささえながら玉座の間に入ると……中は爆煙に包まれており、何も見えなかった。

 

「なのは、アリサ!」

 

「ヴィヴィオー!」

 

少しずつ煙が晴れると……なのはとアリサがヨロヨロと立ち上がっていた。 その2人の先、玉座の間の中央は大きく陥没していた。

 

「アリサ、無事か?」

 

「え、ええ……何とかね」

 

「………ヴィヴィオ……?」

 

無事を確認すると、なのははフラフラになりながらも着弾地点に歩み寄る。

 

そして煙が完全に晴れると……着弾地点の中心にヴィヴィオが倒れていた。

 

「ヴィヴィーー」

 

「大丈夫……!」

 

歩み寄ろうとするなのはをヴィヴィオは一声で止めた。 だが、それは拒絶ではなく……

 

「ちゃんと……自分で……立ち上がるから。 今が……その時だから……」

 

ゆっくりと、フラフラしながらも立ち上がる。 一歩、また一歩と確実になのはに歩み寄る。

 

「強くなるって……パパと、ママ達に……約束したから……!」

 

なのはは目尻に涙を浮かべ、ヴィヴィオに駆け寄って抱き締めた。

 

「ママ……」

 

「ヴィヴィオ……」

 

強く抱き合う2人を見て、俺達は微笑む。 と、その時レゾナンスアークから情報が入った。 どうならゆりかごの船速が落ちたようだ。 次元航行艦隊の到着が間に合いそうだな。

 

『ーー聖王陛下、反応ロスト。 システムダウン』

 

そう思った時、ゆりかごが警報とともに突然アナウンスが流れ始めた。

 

「ーーレンヤ君! なのはちゃん!」

 

それと同時に、恐らくリインとユニゾンしているはやてとシェルティスと……どうしてか気絶している行方不明のユミィを抱きかかえていた。

 

「はやてちゃん!」

 

「皆、無事なようだね?」

 

「戦闘機人達はクイントさん達に預けて脱出した、後は私達だけや」

 

となると長居は無用だな。 それと気になっていたんだが……

 

「どうしてユミィがここに?」

 

「……僕にもよく分からない。 空白(イグニド)に囚われていたのを助けたんだ。 巻き込まれたのか……意図があって空白に攫われたのか……でも、今はそれどころじゃない」

 

「ええ、どうやら駆動炉の破壊とヴィヴィオを取り除いた事でゆりかごの最終防衛機構が発動したわ。 すぐに脱出をーー」

 

『艦内復旧のため、全ての魔力リンクをキャンセルします。 艦内の乗員は、休眠モードに入ってください』

 

アリサの言葉を遮り、そんなアナウンスが立て続けて流れ、今までにない以上に強力なAMFが発生する。 その瞬間、なのはが発動していた飛行魔法がキャンセル、さらにはやてとリィンのユニゾンが解かれてしまった。

 

「くっ!」

 

「なのは!」

 

大した高さを飛んでなかったとはいえ体勢が崩れたが、なのはとはやては何とか体勢を立て直して着地する。

 

これでは脱出が出来なくて味方の手によって天に召されてしまう。 そんな気はさらさらないので……はやてがなのはの壁抜きで制圧した戦闘機人を回収し、とにかく今は足で脱出した。 俺はイットを背負い、なのははヴィヴィオを抱きかかえると玉座の間を出て来た道を引き返した。

 

「!」

 

どうにかしてクイントさん、メガーヌさん、ソフィーさんと合流しようと模索してた時……進行方向から濃密な剣気が発せられて来た。

 

「な、なんて気圧……!」

 

「この剣気は……」

 

俺達は一斉に足を止め、この先にあった横に繋がる通路を睨んだ。

 

「ここであなたが立ち塞がりますか……」

 

「……異篇卿第一位、白銀のアルマデス……」

 

「ーー今だからこそ、意味があるのだ」

 

通路から出て来たのはその手に身の丈ほどの大剣を片手で持つ銀髪の男性……白銀のアルマデスだった。

 

「もうゆりかごは落ちる。 何を今更俺達の道を塞ごうとする?」

 

「ふ、愚問だな。 目的を……計画を達成せしめるためだ」

 

「達成もなにも、もうこれで終わりです」

 

「愚問と言ったはずだ。 異篇卿の計画……鏡界計画に、この事件は通過点に過ぎない」

 

「なっ!?」

 

この事件はスカリエッティ、魔乖術師集団、そして異篇卿によって引き起こされたもの。 確かに利害の一致で協力関係にあったと思われるが、こんな事をしでかしておいて通過点とは……

 

「この事件は所謂福音……スカリエッティがどうなろうとも、ゆりかごも、聖王も、俺にとっては関係ない。 空白(イグニド)自身を持って引き金は引かれ、鏡界計画の大半は終了した……後は」

 

そこで言葉を切り、片手を上げこちらに向けて指を差すと……

 

「その子どもを渡してもらおうか?」

 

「イットを!?」

 

イットに指を差し、声を強めながら答えた。 俺はイットをアリサに渡し前に出る。

 

「そう易々渡す訳にはいかない。 あんた達が何を企もうと、この子に手を出すなら……俺が相手になる……!!」

 

「ふ、いいだろう」

 

戦闘体勢に入り、視線を逸らさず睨み合いながら後ろに声だけをかける。

 

「シェルティス、皆を連れて離脱しろ。 ここは俺が引き受ける」

 

「で、でも、レン君1人だけじゃ……」

 

「ーー行け!!」

 

こちらに歩み寄ろうとする皆に大声で怒鳴り、足を止めさせた。 皆は少し顔を俯かせるが……すぐに顔を上げた。

 

「……気をつけてね」

 

「ちゃんと無事で帰ってくるんよ!」

 

「帰って来ても覚悟はして起きなさいよね!!」

 

「……………………」

 

アリサ達は激励を告げて迂回路を通る中、なのはだけが少し顔を俯かせながら近寄って来た。

 

「レン君……」

 

「なのは? 何をーー」

 

……それ以上の言葉を紡ぐ事は出来なかった。 ゆっくりとなのはは両手を自身の胸元に伸ばして寄りかかり、スッと流れるように背伸びをし……キス……してきたのだ。

 

「……必ず、必ず生きて帰って来てね」

 

「あ、ああ……」

 

なのはは身を離し、かなり頰を赤く染め。 俺は同様しながらも頷いた。 なんか……かなり恥ずかしい……

 

「な、なのは〜〜……!!」

 

「なのはちゃん……恐ろしい子や……」

 

「はわわ……! 大人だよ〜……」

 

「え、えーっとぉ……」

 

「あ、あはは……」

 

「……コホン、早く行け」

 

アリサ達はそれぞれの反応を見せ、軽く咳払いをし、声を強めて皆を行かせた。 改めて正面を向くと……アルマデスが笑いを堪えていた。

 

「ふふ……こんな時に女か。 噂は違わぬようだな」

 

「……一体どんな噂か問い詰めたいけど……これで邪魔は無くなった。 決着を付けよう……」

 

かなり気恥ずかしいが意識を切り替える。 今の状況では魔法はロクに使えない。 勝敗を決めるのは自分の剣の腕のみ……意識を切り替え、刀を構えながらアルマデスを見据える。 アルマデスも大剣を構え……剣呑な空気が辺りに充満する。

 

「はああぁぁ……!」

 

「こおおぉぉ……!」

 

呼気で自分の気を高め、勝負の開始を見極める。 それから数秒、数分たったのだろうか。 周りの音が聞こえなくなり、さらにそれが数秒続いた時……どこかで何が壊れる音が聞こえ……

 

『はあああぁぁっ!!/おおおおぉぉっ!!』

 

同時に床を蹴り上げ、互いの武器を衝突させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フェローと彼女が率いる騎陣隊が撤退した後、騎陣隊を追いかけていたソーマ達と合流した。

 

「皆さん!」

 

「お互い、何とか命はあるようね」

 

「まあ、そうだね」

 

「ボロボロだけど、命あっての何とやらだし」

 

お互い軽口を言いながらも無事を喜ぶ。 そこで上空でホバリングしていたヘリが着陸した。

 

「っ!? エリオ君、なんて酷い怪我を……!」

 

「あ、あはは……一矢報いましたぁ……」

 

「聞いてよ皆〜。 エリオ、あのフェローとやり合ったんだよ? それで一撃、入れたんだよね?」

 

「見てるこっちがヒヤヒヤしました。 もう絶対に、絶〜対に! 安静ですからね!!」

 

「は、はい……」

 

「キャロちゃんとルーテシアちゃんも! 追加でギンガもね!」

 

『は、はい!』

 

凄みのある声で言い、キャロ達3人は怯みながら返事をした。

 

「美由希さんとヴァイスさんも無事で良かったです。 あの魔乖術師が相手だったので心配しました」

 

「あはは、強敵だったけど……なんかね」

 

「締りのねぇ結末だったかんな」

 

サーシャの言葉に、2人は苦笑いしながらソッポを向いた。

 

「ガジェットは活動を停止、これで地上の騒動は残りグリードだけ。 これなら確実に収束しますね」

 

「そうだな。 さて……」

 

ヴァイスはヘリを降り、空を見上げる。 その視線の先にはゆりかごが飛んでいた。

 

「船の上昇は止められたみてぇだが……あの中じゃまだ、戦いが続いてんだ」

 

「突入したなのはちゃん達と、連絡がつかなくなってるの」

 

『えっ?』

 

ヴァイスとシャマルの言葉に、スバルとティアナは声を漏らす。 ソーマはそれを聞き、手に力が入る。

 

「インドアでの脱出支援と救助任務……陸戦屋の仕事場だぜ! お前ら、さっさと行くぞ!」

 

『はい!』

 

「……………………」

 

ヴァイスの言葉に、スバルとティアナは返事をし、ヘリの中に駆け込んだ。 ソーマも同行したかっだが……錬金鋼(ダイト)は全て使い果たし、何も出来ないのが歯がゆかった。

 

「ソーマ君、これを」

 

その時、シャマルがソーマの目の前に手を差し出した。 その手のひらの上には剣の柄だけのダイト……天剣があった。

 

「これは僕の天剣……!!」

 

「この状況で、今更局がとやかく言うつもりはないし、言わせない。 だからソーマ君、これではやてちゃん達の道を切り開いて」

 

「ーーはい!」

 

大きく返事をし、ソーマは天剣を受け取りヘリに乗り込んだが……

 

「さてと、エリオ君は………って、ああ!?」

 

「うわっ!? なになに?」

 

突然シャマルが大声を上げ、辺りを見回した。

 

「エリオ君とキャロちゃんがいない……まさか!」

 

「ええ、フェイトの応援に行くって言ってたわよ」

 

ゴチンッ!!

 

「ッ〜〜〜〜〜!!??」

 

あっけらかんとして言うルーテシアに、シャマルは怪我人など関係なく脳天に拳骨を振り下ろした。

 

「ッ〜〜〜〜!!」

 

(ポンポン)

 

「はぁ……全く、どうしてあなた達はこう……自分を顧みないというか……」

 

シャマルは殴った手をプラプラさせながら溜息をついた。

 

「スバル……」

 

サーシャに支えられているギンガがスバルを呼び止めた。

 

「ギン姉?」

 

「これを……」

 

そう言って自分のデバイス……ブリッツキャリバーを差し出した。 もう戦えない自分の想いを託すように……スバルは無言で頷くと、確かに受け取った。

 

次々と乗り込むと……既にヘリの中にはエナがいた。

 

「ヘイボーイ、私の後ろはいつでも空いてるよ?」

 

「よろしくね、エナ」

 

「あれ? エナは今までどこにいたの?」

 

「皆が強敵と、ファイトしている間に、シティ方面に向かった、エネミーを倒してたよ。 とても、デンジャラスなライディングだった」

 

「あ、そう……」

 

ティアナはむしろエナが防衛線をかき回していたと思ってしまったが……それを口にする事はなかった。

 

シャマル達が見送る中ヘリは飛び立ち、空へと向かっていった。

 

「ーーあれ? あのちっこかったコルルって子は?」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。