きんいろモザイク~こいいろモザイク~   作:鉄夜

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第3話 このどうしようもない愚か者に説教を!

エレン達のクラスで一人の女子生徒がめんどくさそうに言う。

 

「はぁ、この教材全部職員室まで運ばなくちゃいけないのかぁ。

めんどくさいなぁ。

桐谷先生も少しは自分で持っていけばいいのに・・・。」

 

その生徒に隼人が近づいて声をかける。

 

「俺でよければ手伝うぞ?」

 

「え?いいの?島野くん。」

 

「ああ。」

 

それを遠くで見ていたエレンが口を開く。

 

「なぁ、お前隼人のことどう思う?」

 

「なんや急に。」

 

「いや、なんとなく。」

 

蓮は少し考えてから言う。

 

「お人好し、の一言に尽きるやろなぁ。」

 

「うん、私もそう思う。」

 

連の言葉に陽子も賛同する。

 

それを聞いていたほかのみんなも頷く。

 

「そうね、確かにお人好しね。

それも度が過ぎた。」

 

「スねぇ。」

 

「ジェントルマンなのはイイ事デスけどね」

 

皆の言葉を聞いたアリスは立ち上がって言う。

 

「もう皆!隼人はいいことをしてるんだからそんなふうに言っちゃダメだよ。」

 

「いやアリス、優しいってのはいいことだけじゃねぇんだよ。」

 

「せやな、とくにアイツの場合はな」

 

そう言って蓮は隼人の方を見る。

 

隼人は教材を持ち上げて生徒に聞く。

 

「職員室まで運べばいいんだな?」

 

「うん。」

 

「わかった。」

 

隼人は荷物を生徒にもたせると、お姫様抱っこで軽々と持ち上げる。

 

「え?え?」

 

持ち上げられた生徒は困惑する。

 

「しっかり捕まっていろよ。」

 

「え!?ちょっと島野くん!?このまま行く気!?

ちょっと待っtいやあああああああああ!!」

 

隼人はそのまま猛ダッシュで走って行った。

 

「・・・」

 

その様子をアリスはポカーンと眺めていた。

 

「とまあ、あんなふうにまちがった方向におせっかいを焼いたりする。」

 

エレンがそう言って呆れ返っていると隼人が帰ってきた。

 

「おかえり隼人、どうだった?」

 

綾が聞くと隼人は満足そうに答える。

 

「ん?ああ、礼を言われた。

・・・少し涙が目に浮かんでたのが気になったがな。」

 

「そりゃそうっスよ。

むしろよく叩かれないっスねぇ」

 

「悪気がないのがわかってるからきつく言えねぇんだよ。」

 

エレンが呆れながら言うと再び別の女子生徒の声が聞こえる。

 

「んー!届かないー!」

 

黒板の文字を消そうとしているようだ。

 

「すまない、少し行ってくる。」

 

「おう」

 

そう言って隼人は女子生徒のところに歩いていく。

 

「それでだアリス、俺はもうひとつあいつのことで危惧していることがある。」

 

「何?」

 

神妙に話すエレンにアリスが聞く。

 

「アイツが他人の事を考えるあまり、自分を危険な目に合わせないかどうかだ。」

 

「いやいや、流石にそれはないよ。

隼人だって流石にわかってるって。」

 

「・・・だといいんだけどね」

 

綾が心配そうに隼人の方を見る。

 

「よければ俺が消そう。」

 

「あ、島野くん、別に大丈夫だよ、椅子使うし。」

 

「そ・・・そうか。」

 

少し落ち込む隼人を見て女子生徒が慌てて言う。

 

「あ、じゃあ椅子支えといてくれる?

もし倒れたら危ないし。」

 

「分かった。」

 

女子生徒は椅子を持ってくるとその上に立つ。

 

隼人はその椅子が倒れないようにしゃがんで支える。

 

すると女子生徒の友達がからかうように言う。

 

「ねぇ大丈夫?島野くんにパンツ覗かれちゃうよ?」

 

「大丈夫。スパッツ履いてるもんね〜。」

 

そう言って女子生徒がスカートをペラペラとはためかすと、

 

「ブフォ!」

 

隼人が鼻血を吹き出して倒れた。

 

「わあああああ!ハヤトぉぉ!」

 

アリスが急いで駆け寄る。

 

「隼人が死んだ!」

 

「この人でなし!」

 

「二人ともふざけてないで早く隼人を保健室に運んでぇ!」

 

ふざける賢治と蓮にアリスが叫ぶ。

 

その様子を見てエレンが呆れながら言う。

 

「アイツ女子に対する耐性低いんだよなぁ。」

 

「いや、冷静に解説してないでお前も隼人運ぶの手伝ってこい!」

 

陽子がそう言ってツッコみエレン達の男衆3人係で隼人を保健室に運んだのであった。

 

#####

 

土曜日

 

アリスは楽しそうにひとりで散歩をしていた。

 

(シノと出かけるのも楽しいけど、たまには一人で出かけるのもいいなぁー。

ん?あれって・・・ハヤト?)

 

アリスの目線の先では隼人が柄の悪い男三人に絡まれていた。

 

そしてそのまま裏路地へと連れていかれる。

 

(ど・・・どうしよう・・・)

 

アリスは建物の影から様子を見ることにした。

 

#####

 

路地裏に連れていかれた隼人は面倒くさそうに言う。

 

「だから睨んでなどいないと何度言ったらわかるんだ?」

 

「うるせぇ!てめぇは確かに俺にガンつけてきたろうが!あぁ!?」

 

そう男が叫ぶと隼人はため息を吐く。

 

男の仲間が少し怯えながらいう。

 

「な・・・なぁ。

コイツやべぇんじゃねぇの?

結構タッパあるし絶対強ぇって。」

 

「バカ!見掛け倒しに決まってんだろ。」

 

不良たちがそんな会話をしている間、隼人は冷静に分析する。

 

(相手の人数は3人、どれも格闘技の経験が無い素人だな。

倒すのは簡単だ・・・だが。)

 

隼人はため息を吐いていう。

 

「わかった、俺を殴れ。」

 

「・・・はぁ?」

 

わけがわからないといったふうな男に隼人が続ける。

 

「そうすれば気が晴れるんだろ?

幸い俺は体が丈夫だ、これ以上の厄介ごとはゴメンだからな。

思う存分殴れ。」

 

その言葉に男は眉間にしわを寄せる。

 

「このやろう、舐めやがって・・・いいぜぇ・・・お望みどおりぶん殴ってやるよ!」

 

そう言って男は持っていたバットを隼人に向かって振り下ろす。

 

と、その時。

 

「だめぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

男と隼人の間に小さな影が割り込んだ。

 

#####

 

「だめぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

アリスはバットで殴られそうになっている隼人のところに走っていく。

 

そして両手を拡げて隼人をかばうように立つ。

 

振り下ろされるバットを前に恐怖で目を瞑る。

 

ガンッ!

 

と何かがぶつかり合う音が聞こえると、アリスはゆっくりと目を開ける。

 

すると。

 

「ぐっ!」

 

隼人がバットを右腕で防いでいた。

 

「ハヤト!」

 

隼人は右腕を抑えながらアリスに聞く。

 

「アリス、無事か?」

 

アリスがこくこくと頷くと隼人は優しく微笑む。

 

「そうか、よかった。」

 

そう言うと隼人は目の前の男達をギロりとにらみつける。

 

「ヒッ!」

 

隼人はゆっくりと男達に近づいていく。

 

隼人の眼光に、男達は怯み腰をぬかして尻餅をつく。

 

「・・・バットは流石に危ないだろ、気をつけろ。」

 

隼人がそういうと。

 

「す・・・すいませんでしたー!」

 

男達は走って逃げていった。

 

隼人は右腕を抑えてしゃがみこむ。

 

「大丈夫!?ハヤト!」

 

「あぁ、問題ない。」

 

「よかったぁ・・・。」

 

そう言ってアリスは女の子座りでしゃがみこむ。

 

そんなアリスに隼人は手を差し出して立ち上がらせる。。

 

「とりあえずここを出よう、ほかの人間が警察を呼んでいるかもしれない。」

 

「う・・・うん。」

 

アリスと隼人は2人で裏路地を出た。

 

#####

 

隼人とアリスは公園まで歩いていった。

 

「ふぅ、ここまでくれば大丈夫だろ。」

 

「うん、そうだね。」

 

二人は近くのベンチに腰を落ち着かせる。

 

「それにしてもアリス、なんであんな危ないことをしたんだ。

一歩間違えば大怪我だったんだぞ?」

 

「それはこっちのセリフだよ!なんであんな事言って避けようとしなかったの!?」

 

「俺は体が丈夫だから・・・」

 

「だからなに!?ハヤトはもっと自分を大切にしなきゃダメだよ!!」

 

「す・・・すまない。」

 

いつになく怒るアリスの言葉に隼人が謝罪の言葉が出る。

 

「ねぇ、ハヤトはなんでそこまでして人助けするの?」

 

「・・・そうだなぁ」

 

隼人は少し悩むが語り出す。

 

「俺はな、アリス。

正義の味方になりたかったんだ。」

 

「正義の・・・味方?」

 

「あぁ、世界中どこへでも飛んでいって苦しんでる人を助けるような・・・正義の味方にな。」

 

隼人はフッと笑って言う。

 

「だが現実は厳しくてな。

すべてを救うなんてこと、できるわけがないと知った。

だから・・・せめて、自分の手が届く範囲は・・・と思ってな。」

 

「・・・」

 

アリスはその話を無言で聞いていた。

 

「・・・ごい」

 

「え?」

 

アリスは目を輝かせて言う。

 

「すごいよハヤト!普通の人はそんな事考えもしないのに!」

 

「・・・笑わないのか?」

 

「笑う?なんで?人の夢を笑うわけがないでしょ?」

 

「・・・」

 

呆然とする隼人の前でアリスは立ち上がり、握りこぶしを作って言う。

 

「決めた!私ハヤトを応援する!

だからハヤト!頑張って正義の味方になってね!」

 

隼人は少しの沈黙の後。

 

「ふ・・・・あはははは!」

 

大声で笑い出した

 

「え?ハヤト?なんで笑ってるの?」

 

「いやぁ、アリスは本当に面白いやつだな。」

 

「え?」

 

「いや、なんでもない。」

 

隼人はアリスの頭の上にポンと手を置くと優しく微笑む。

 

「ありがとう、アリス。」

 

「う・・・うん//////」

 

アリスは照れて少し赤くなる。

 

「それじゃあ私、そろそろ帰るね。」

 

「家まで送ろうか?」

 

「ううん、大丈夫。

じゃあまたね!ハヤト!」

 

「ああ。」

 

隼人はアリスの姿が見えなくなるまで見送る。

 

「ぐっ!」

 

隼人の右腕に激痛が走る。

 

(帰ってから病院に行くか・・・)

 

そして隼人は帰路についた。

 

#####

 

月曜日。

 

隼人以外のメンバーがいつもの場所に集まっていた。

 

「よし、そろそろ行くか」

 

「え?隼人は待たないのか?」

 

陽子がそういうと蓮がヘラヘラと笑いながらいう。

 

「無理無理、どうせ人助けしてこうへんって」

 

「うーんそれもそうだな。」

 

陽子も納得して出発しようとした時。

 

「やぁ、皆。」

 

隼人の声が聞こえ、エレンが振り向く。

 

「なんだ隼人、めずらしいな・・・ってどうしたその腕。」

 

隼人はギブスをつけた右腕を布で方から吊り下げていた。

 

それを見たアリスの顔が青ざめる。

 

「あぁ、事情は歩きながら話す。」

 

隼人はエレン達と学校に向かいながら先日あった事を話した。

 

「なるほど、それで病院に行ったらヒビが入ってたと。」

 

「あぁ、そのとおりだ」

 

エレンの言葉に隼人がうなづいて答える。

 

「ごめんハヤト!私のせいだよね!」

 

「いや、アリスは何も悪くない。

これは俺の自己責任だ。」

 

「ハヤトは良くても私の気が済まないよ!」

 

「そうは言ってもなぁ・・・」

 

隼人が悩んでいると蓮が言う。

 

「それならアリス、お前が今日1日隼人の右腕になればええやろ。」

 

「私が?」

 

「せや。

右腕が使えんで不便な隼人の右腕になって手伝えばええねん。」

 

ヘラヘラとしながらそう言った蓮にエレンが呆れながら言う。

 

「蓮、お前面白がってるだけだろ。」

 

「おう。」

 

「いや、そこまでしてもらう必要は・・・」

 

隼人が苦笑いしながら言うと。

 

「そうか・・・そうだね!」

 

アリスが声高らかに叫ぶ。

 

「ア・・・アリス?」

 

陽子が恐る恐る声をかける。

 

「決めた!私、今日1日隼人の右腕になる!」

 

「あーあ。」

 

綾が呆れて溜息を吐いた。

 

「ア・・・アリス、俺は大丈夫だから別に・・・」

 

「ううん!私が決めたの!」

 

「あー、諦めたほうがいいっスねー、隼人」

 

「ああなったアリスはすごく頑固デスからネ。」

 

賢治とカレンがそういうと隼人は忍に助けを求める・・・が。

 

「あんなに張り切っちゃって、アリスったら可愛いですねぇ。」

 

通常運転であった。

 

#####

 

その後、アリスは宣言通り隼人の右腕になろうとしていた。

 

「この問題を島野・・・は怪我をしてるんだったか。」

 

「先生!私がハヤトの代わりに答えを書きます!」

 

数学の時間、隼人の代わりにアリスは黒板に数式と答えを書いていく。

 

「できました!」

 

「よし、不正解だ。」

 

「あれ!?」

 

その様子を見ていた隼人が立ち上がりアリスの横に立つ。

 

「ハヤト?」

 

「アリス、俺の言うとおりに書いてみろ。」

 

「う・・・うん。」

 

アリスは隼人の隼人と話しながら数式を解いていく。

 

「ここが、こうなるから、これを代入して」

 

「あ、そっか、ていうことは・・・」

 

そうして二人で問題を解き終える。

 

「できました!」

 

「正解、よく出来ました。」

 

「やったね!ハヤト!」

 

「ああ。」

 

隼人ははしゃぐアリスと左腕でタッチをする。

 

それを見ていた陽子は。

 

「右腕の意味が違う」

 

と、一人静かにツッコんでいた。

 

#####

 

「はい隼人、あーん。」

 

昼休みアリスはおかずを箸で挟み、隼人に差し出す。

 

「ア・・・アリス、別にここまでしてもらう必要はない。

頑張れば左腕でも食べられる。」

 

「いいからほら、あーん。」

 

「・・・」

 

隼人は恥ずかしそうにしながら差し出されたおかずを食べる。

 

「いやぁ、羨ましぃっスねぇ蓮。」

 

「せやなぁ、美少女にあーんしてもらうなんて光景生で見るとは思わんかったで。」

 

そういう2人を隼人は恨めしそうに睨む。

 

「面白がってるだろお前ら、それにそういう光景ならエレンと陽子も。」

 

「いや、あの2人はどっちかって言うと。」

 

蓮はエレンと洋子の方を見る。

 

「あ、エレン。

その唐揚げうまそう。」

 

「ん、ほれ。」

 

エレンは唐揚げを箸で挟み軽く放り投げる。

 

陽子はそれをパクッと口でキャッチする。

 

「んー、おいしぃ~」

 

陽子は幸せそうに笑顔になる。

 

「飼い主と犬やな。」

 

「そうっスねぇ。」

 

「そうね。」

 

「ん?なに?」

 

蓮と賢治と綾との言葉に、陽子は首をかしげた。

 

「それにしても良かったですねぇ、ヒビだけですんで。」

 

「金属バットで腕殴られたら普通なら折れるのに・・・ハヤトはすごくタフデスねぇ。」

 

忍とカレンがそう言うと隼人はため息を吐く。

 

「だが利き腕が使えないというのは不便だ。」

 

「なんでッスか?」

 

「人助けが出来ない」

 

隼人の言葉にエレンと蓮が呆れて言う。

 

「お前ってやつはこんな時まで・・・」

 

「このままやったらホンマに人助けで死ぬで?」

 

「・・・人を助けて死ぬ・・・か。」

 

隼人は少し微笑むと。

 

「それが出来れば、どれだけ幸福だろうな。」

 

「・・・お前」

 

エレンがなにか言う前に、

 

「バカァ!」

 

アリスが立ち上がって大声で叫んだ。

 

目には涙を浮かべている。

 

「・・・アリス?」

 

アリスは教室を飛び出していってしまった。

 

「今のは隼人が悪い。」

 

咎めるように言う陽子にエレンが続く。

 

「そうだな、正直アリスが動いてなきゃ俺がぶん殴ってた。」

 

「・・・すまん、軽率だった。」

 

「謝る相手がちゃうやろ、はよ捕まえてこい。」

 

「ああ、そうだな。」

 

隼人はアリスを追って教室を出で行った。

 

それを見送ると綾と忍が口を開く。

 

「まさかあそこまでとわね。」

 

「あんなに怒ったアリス、初めて見ました。」

 

その言葉にエレンが言う。

 

「そうだな、今回の事がいい薬になればいいが。」

 

#####

 

隼人は屋上に続く扉を開く。

 

屋上に出ると周りを探し始める。

 

「・・・見つけた」

 

アリスは、屋上のフェンス背中を向けて体育座りをしていた。

 

泣いているのか顔を隠している。

 

隼人はアリスの前でしゃがむ。

 

「ここにいたのかアリス、探したぞ。」

 

その言葉にアリスは答えない。

 

しばらく沈黙が続くとアリスは口を開いた。

 

「・・・なんであんな事言うの?」

 

「・・・」

 

「隼人が死んじゃったらお父さんもお母さんも悲しむんだよ?

なのになんであんなことが言えるの。」

 

「・・・両親はいない。」

 

「・・・え?」

 

隼人は静かに語り出す。

 

「俺が6歳の頃だ、住んでいた家が火事で焼けてな、その時両親は煙から俺を守るように二人で庇ってくれたんだ。

そのおかげで俺は、火傷はしたものの一命を取り留めた。

その後はずっと孤児院の神父様が俺の親代わりだ。」

 

「もしかして、隼人が人助けをするのって・・・。」

 

「あぁ、両親のように誰かを助けたい。

そう思って始めたんだ。」

 

「・・・ハヤトの・・・バカァ!」

 

ぺチン。

 

アリスは隼人の頬を叩いた。

 

「それならなおさら自分を大事にしなきゃダメだよ! 」

 

「今俺が生きているのは両親のおかげなんだ・・・だから俺は。」

 

「ちがう!ちがうの!お父さんとお母さんが隼人を助けたのは生きてて欲しいからなの!

自分を犠牲にしてでも人助けして欲しかったわけじゃない!

なんでそれがわからないの!?バカ!」

 

言い返せないでいる隼人にアリスは続けて叫ぶ。

 

「人助けなら好きなだけすればいい!

でもそれで隼人が死んじゃうのは嫌!」

 

そこまで言うとアリスの目から涙が溢れ出す。

 

「嫌だよぉ・・・ひっく・・・えぐっ。」

 

アリスらしい真っ直ぐで純粋な言葉を聞いた隼人は俯く。

 

「泣かないでくれ、アリス。

泣かれると俺も辛い。」

 

「泣かせてるのはハヤトでしょ!もう。」

 

アリスはハヤトの胸をポカポカと叩く。

 

「そうだな、すまない。

・・・アリス。」

 

「なに!?」

 

隼人はアリスの頭を撫でる。

 

「ちょ・・・ちょっと!私は今怒ってるんだよ!?」

 

「ありがとう、アリス。

お前に叱られなければ、俺は自分の間違いに気付けなかった。」

 

「わ・・・私は別に・・・/////」

 

アリスは少し恥ずかしそうにする

 

「俺はこんな性格だ、お前の忠告を無視してこれからも無茶をしてしまうかもしれない。

その時は、今回のように叱ってくれないか。」

 

アリスは涙を拭って言う。

 

「うん、分かった、何回でも怒ってあげる。

だからハヤトも約束して、もっと自分を大事にするって。」

 

そう言うとアリスは小指を差し出す。

 

「ああ、約束だ。」

 

隼人はアリスと指切りをした。

 

#####

 

大宮家の浴室、アリスは湯船に浸かりながらボーッとしていた。

 

「・・・」

 

アリスの頭の中には隼人の顔が浮かんでいた。

 

『ありがとう、アリス。』

 

あの時の隼人の笑顔が鮮明に浮かぶ。

 

(なんだろう、これ。)

 

アリスは自分の頭に手を置く。

 

(なんだか・・・顔が暑い・・・。)

 

アリスの顔はお風呂に入っているせいなのか、赤くなっていた。

 

#####

 

数日後、怪我が完治し包帯の取れた隼人は裏路地にいた。

 

周りにはこの間絡んできた不良たちが倒れていた。

3人で倒すのは無理だと判断して連れてきたのか、前回より多い数が倒れている。

 

「ちくしょう!なんだよ!この間は殴られてやるとか言ってたくせによ!」

 

悪態をつくチンピラを隼人が見て言う。

 

「すまないが、殴られるわけにはいかなくなった。

約束をしたんでな。」

 

「はぁ!?約束だぁ!?」

 

「・・・お前には関係の無いことだ。」

 

隼人は倒れている男にゆっくりと近づいていく。

 

「さて、どうしてくれようか。」

 

「ひ・・・ひぃ!」

 

後ずさりながら悲鳴を上げる男を見て隼人は。フッと笑う。

 

「やはり悪役は性に合わないな。」

 

隼人は男の前に立つと、

 

「つかまれ、殴ってしまった詫びだ。

何か奢ろう。」

 

そう言って、手を差し出した。




島野隼人

高校一年生。

趣味は人助け。

身長185cmの長身。

格闘技経験者でもあり、もしもの時にグループ内の女子達を守る最後の要でもある。

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