五分程歩いた後、保管庫に着いた。
「さて保管庫の中でもかなり面倒くさい部類に入るものも渡す。ある程度は保守義務も課される。」
「そんな事には慣れてる。」
「まぁ、そうだろうな。」
そう言って保管庫の鍵を開け扉を開く。
すると少しカビ臭い臭いがしてきた。
「この奥か?」
「そうだ資料自体は奥にある。免許は別の人間が持ってくる。」
「あまり足踏みをしていられんな。さっさと取ってこよう。」
「そうだな。私も此処に長居はしたく無い。」
そうして資料を取ってくると職員室の方から走ってくる人影が一つ。
「先輩、免許持ってきましたー。」
と言って千冬に手渡す。
「すまないな、真耶。」
俺の方に向き直り
「鷹野、真耶に自己紹介してもらってもいいか。」
「ん?あぁ、鷹野 正義だ。宜しく。」
「えぇ!あ、すいません。山田 真耶です。此方こそ宜しくお願いしますね。」
と、若干引きつった笑みを浮かべながら返された。反応から察するに男慣れしてないようだが、どうしたものか…
「どうお呼びすればいいですか?」
「ひゃ、ひゃいっ、普通に苗字でも名前でもどちらでも構いませんよ。」
「では、真耶さん。今後ともよろしくお願いします。」
「はい!此方こそ。」
やはりと言うかまだ引き攣った笑みを浮かべながら返してくる。
まぁでも、あと数回合えば慣れてくれるかな。
「それでは、先輩、そろそろ仕事に戻らないといけないので。」
「すまないな真耶。」
「いえ、大丈夫ですよ。」
そう言って再び走って職員室に戻っていく。
「さて、今日渡すものはそれで全てだ。あとは部屋に戻ってよく読んどいてくれ。」
「分かった。生徒に見つからないうちに戻らせてもらう。」
「そうしてくれ」
そうして見つからないように帰ろうとしたが、そうは問屋が卸さないとばかりに、更識に見つかった。
「あら、これからどうするの?」
「部屋に戻って資料を読ませてもらう。そんな事より授業はいいのか?」
「私は生徒会長だから受けなくていいのよ。」
「そんなこと言っても学生だろ。受けとけ。大人になってから学ぶことの出来ないことも学べるからな。」
「貴方が思うほど学が無いわけでも無いのよ。」
「流石、ロシア国家代表といったことか。」
「あら、よく調べてるのね。」
「というより、一度会ったことがあるはずだぞ。」
「えぇ!?何処で?」
「NATO及び日本、台湾の合同演習にオブザーバーとして参加していたな?」
「確かに参加していたけど…あっ!あの時の案内してくれた人?」
「そうだよく覚えていたな。分かるとは思うが、あの時は案内と同時に監視も任されていたのでな。こう見えても警備隊なんでね。」
「だからずっと近くにいたのね。すっかり忘れてたわ。」
「仕方あるまい。此処で生活するなら否応無しに勉学第一だろうしな。」
「ごめんなさいね。」
「気にするな。一回しか会ったことの無い人間の顔など、そうそう覚えているものでもあるまい。」
「そうさせてもらうわ。」
そう言って更識は立ち去った。ようやく部屋にたどり着き書類に目を通す。内容は、何処の学校でもやるような一般教科のカリキュラムだった。そして最後に残った<IS学園教員規則>と書いてある物を手に取る。㊙が左上に印が押されており、物々しい雰囲気を放っている。この手の書類は其れなりに見てきた中でも面倒くさそうな物だ。
中身を見てみるとなんのことは無い普通の業務員規則だったが、最後の漏えいした場合への処分が他の所とは違っていた。
“この書類及び内容を外部に漏洩した場合、各員母国の最も重い刑罰を処す„
と書かれている。俺の場合は首吊りになるわけだが、それ以外の国の場合はどうするのか、今度聞いてみるか。
教育免許を受領してから、早くも一週間を過ぎようとしていた。生徒たちが授業を受けている場合はある程度は動いてもいいと言われたが、実際はそんなに動けるはずもなく、部屋にカンズメとなっていた。
昨日終業式も終わり、今年度も残すところ二週間といったくらいになってきた。そして今日、あまり気の気乗りはしないが教員同士の顔合わせとなっていた。千冬によると、新人は自分だけらしい。なんともキナ臭い臭いしかし無いが、出るしかあるまい。
ドアがノックされ、開けると千冬がいた。
「準備はできたか?」
「特に問題は無い。」
そう返し、歩き始めた千冬の二歩後ろを歩くすると千冬は此方を見ずに
「何があっても相手に負傷させるなよ。向こうから手を出して来た時は別だが。」
「分かっている。物を投げつけてきたりしたら、叩き潰すがな。」
「その時は止めんよ。」
そう言い合っていると、職員室の前に着く。
「先に私が入る、お前は私が合図したら入れ。」
「了解。」
そう言って千冬は職員室に入っていった。2分ほどすると中から
「それでは新しい教員を紹介する。」
という声が聞こえたので、一拍置いてからドアを開ける。
「さて、この中には何度か見かけた事がある者もいるとは思うが、気にしないでくれ。鷹野、自己紹介をしてくれ。」
「ご紹介に預かりました鷹野 正義です。未熟者ですが、宜しくお願いします。」
「聞きたい事がある者はいるか?」
すると何人かが手を挙げた。
「それでは真耶から順番にしろ。」
「えぇっと、山田 真耶です。鷹野さんが前にいた職場は何処ですか?」
「此処に来る前は軍の憲兵隊にいました。勤め場所は百里です。」
「軍人さんですか。」
「今は軍装ですが、明後日には普通のスーツに変わるのでご理解下さい。」
「わかりました。」
「では次の者。」
千冬がそう言った瞬間、自分に向かってペンが飛んできた。さすがに服にインクをつけられても困るので掴み取る。
「へぇ、今のとれるのね。刺さるように投げたんだけど。」
事前に千冬に言ったが流石にいきなりはマズイので合図を送る。すると頷いたので投げつけてきた女に近ずく
「何よ。文句があるの?」
無言で襟首をつかんで引き倒す。
「ギャッ……、何すr「いい加減黙れよ。軍人に喧嘩売って無事に帰れると思うなよ。」っ!!」
そう言って、相手の右腕に足を載せ、体重を徐々にかけていく、
「痛い、痛い!、痛い!痛い!助けて!」
泣き叫ぼうが何しよが止めない。
「止めて!なんでも言うこと聞くから!」
力を込めるのを止める。
「ほぅ、その言葉に二言は無いな。」
「守るわよ!だから早く止めて!」
この女、これごときで泣くとは…此処は想像以上にダメかもしれないな。
「ならば、その甘ったれた考えを直せ。そして男を舐めるな。大方、女尊男卑主義者だろう。男を舐めてるとこれ以上に酷いことを味わう羽目になるぞ。いいな。」
と声を低くし、脅しをかけるように言う。女は泣きながらコクコクと何度も頷いたので、解放してやる。そして周りを見渡すと誰も近くにいなかった。
助けようとする気概もなかったのか。それともこいつがいらない存在だったのか。取り敢えず千冬のところに戻る。
「少しやり過ぎたか。」
「そうだな、だが今叩いたのはこの学校でも筋金入りの女尊男卑の人間だ。私も気に入らないから叩き潰してくれて清々してる。」
「お気に召したようで結構。さてもう一声かけるか。…今ので分かったと思うが、男を舐めないほうがいい。これは生徒にも伝えろ。以上だ。」
「…ふむ、特に無いな。鷹野には社会科及び射撃に関する教科を担当して貰う。それでは解散。」
その一言を合図に俺と千冬はさっさと職員室から出る。
「それでは来月の二日から仕事だ。それまでは今まで通り過ごしてくれ。」
「了解」
次回から本編入ります。
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