メリエルを放り込んだり何だりする短編集   作:やがみ0821

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あるいは冬木の聖杯の前提条件を覆した編( ˘ω˘)



ケイネス先生が苦労する話 その8 1人だけグランドオーダー

 

 

 

「……私は何でここにいるんだろうか」

 

 白い髪に浅黒い肌という特徴的な彼はそう呟いた。

 ホテルで召喚された彼であったが、まず目の前の存在に驚き、そして周囲の面々に驚いた。

 

 サーヴァントが山ほどいるのに、何で自分を喚んだ、と。

 しかも、挨拶もそこそこに、更に彼のマスターは召喚していく。

 クー・フーリンが喚ばれた。

 故郷のアイルランドではないにも関わらず、圧倒的なまでの存在感を放っており、彼曰く、全盛期の完全な状態とのことらしかった。

 

 それで終わらない。

 次に喚ばれたのはハサン・サッバーハ。

 瑞々しい肢体の10代後半くらいの女性で、マスターはにこやかに握手をして、軽く抱きしめた。

 そしたら、ハサンは彼がドン引きする程度に、マスター一筋になった。

 どういうことだか分からなかったが、ハサンを解析して理解した。

 全身が毒の塊であることを。

 

 アレならば誰にも触れられず、孤独に苛まれることは間違いなく、そんな毒を物ともしないマスターに一目惚れでもしたんだろう、と彼は結論づけた。

 

 そして、他にも何人かの、一級の英霊が喚ばれていた。

 癖が強い者や、実直な者とこれまた様々だ。

 

 人類の危機か何かと見紛おう程に、その戦力は絶大だ。

 こと、聖杯戦争という側面から見ればもはやこの陣営が勝つことは確定していると言っても良い。

 

 しかし、面白いことに誰も彼もが聖杯に託すような望みがない、とのことだ。

 強いヤツと戦いたい、良い主人に仕えたい、とそういうものばかり。

 たまに、聖杯への望みがあると答えた者もいたが、ヤバすぎる願いを持った者以外は基本的に、その場でメリエルが傍にいることを対価に願いを叶えてしまうというのは色々な意味で聖杯戦争に喧嘩を売っているだろう。

 

 ちなみにだが、毒のハサンに対しては自らの毒を自由自在に出したり引っ込めたりできるように、その願いを叶える魔法を使っていた。

 

 

 彼自身は一応の望みはあるが、そもそも聖杯に託すような上等な願いではなく、さらには今回の現界では叶わぬものだ、と既に悟っていた。

 

 

 

「よう、台所の守護者。まだ生きてるか?」

 

 そんな声に、回想から復帰する彼――エミヤ。

 

「危うく、死にかけていた。ああ、こんなことは初めてだ」

「そいつは良かった」

 

 そう言って笑うのはクー・フーリン。

 彼は大量のスーパーの袋を両手に持っていた。

 

「これ、今夜の分だ」

「すまないな。ケルト神話の大英雄を買い出しに使うマスターなんぞ、ウチくらいなものだろう」

「守護者に台所を任せるのもウチくらいなものだろうよ。ま、良いマスター、良い戦士であるがな」

「だろうな。おふざけが無ければ完璧だった」

 

 おふざけをしなければ死ぬ病でも抱えているのか、という程に、彼らのマスターは自由奔放であった。

 暴君ネロを一番最初に召喚したというところから、そういう性質なのだろう。

 

 スーパーの袋を適当なところに置いて、クー・フーリンはやれやれ、と肩を回す。

 

「で、まあ、その我らがマスターの願いは知ってるだろ?」

「ああ、勿論だ」

 

 てっぺんとりたい、とそれはとても純粋な願いであった。

 戦士であるならば、それは誰もが思い描く理想。

 

「俺はそれに最適なヤツを知っている。だが、そいつを召喚できるかはわからん」

「……スカサハか。確かに、彼女の性質上、召喚するというのは困難だな。君が影の国まで案内した方が早いだろう」

「普通ならな。だが、メリエルは普通じゃねぇ。アレは文字通りの化け物、本来なら存在しえない筈の矛盾存在だ」

 

 キャスターとしての素質もあるクー・フーリンは面白いものを見つけた、と言わんばかりだ。

 

「つまりは結論から言うとだ……たぶん、召喚できるんじゃね? そんな矛盾したヤツなら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、クー・フーリンの師匠? 召喚しようそうしよう」

 

 提案してみたら、あっさりとメリエルはそう言った。

 彼女の周りは色々と酷いことになっている。

 

 アルトリア達とモードレッド――オルタではない、セイバーとしてのアルトリアはさすがに帰った――が大量のお菓子を貪り食っている。

 その中にさり気なく混じっている沖田総司。

 メリエルの傍にいて、メリエルを熱っぽい視線で見つめるハサン。

 同じく、メリエルの傍にいる清姫。

 

「旦那様、また増えるのですか?」

 

 そして、頬を膨らませて、私怒ってます、とアピールする清姫。

 

「また増えるのよ」

 

 そう言いながら、清姫の頭を撫でるメリエル。

 ネロはここにはいない。

 なぜならば、メディアに連行されてしまったからだ。

 可愛い服を着ないか、という言葉にネロはノリノリでついていった。

 

 そうであるが為、大広間にいるのはこんなものだった。

 

 

 メリエルがケイネスに頼んで手配してもらった、元々はエーデルフェルトが所有していたという双子館。

 結構に広い筈であったのだが、早くも手狭になっている。

 

「あ、それとリスト作ってみたけど、ちょっと召喚し過ぎたかなって」

 

 スッと差し出してきた1枚のメモ用紙。

 そこには今、メリエル陣営にあたるサーヴァントが名を連ねている。

 

 ネロ・クラウディウス

 モードレッド

 ランサー・アルトリア

 ランサー・アルトリア・オルタ

 セイバー・アルトリア・オルタ

 謎のヒロインX

 ジャンヌ・オルタ

 メディア

 ハサン・サッバーハ

 クー・フーリン

 エミヤ

 ナイチンゲール

 酒呑童子

 沖田総司

 清姫

 

 ジャンヌ・ダルク(引き込む絶対に、絶対にだ) 

 

 

 これは酷い――

 

 エミヤはそう思うしかなかった。

 1人で戦争でも起こすつもりなのだろうか。

 あと最後のジャンヌ・ダルクの括弧書き、これを知れば彼女は絶望するだろう。

 

「いやー、アルトリアのところは節約できたとはいえ、ちょっと指輪使いすぎちゃった。まあ、まだ在庫あるんだけど」

「君はいったいどこでそれを手に入れたんだ……」 

 

 エミヤは途方に暮れた。

 根本的に、魔術師が使役するサーヴァントは必要とする魔力の関係から1体が限界だ。

 なのにあろうことか、受肉化させて、生前の病とかそういうのまで治してしまうとかそういうのは聖杯戦争という枠組みの中でまったく想定外のところだ。

 そも、そんなことができる輩ならば聖杯に願う望みなど自分で叶えられるだろう。

 

「そんなことよりスカサハよ、スカサハ」

「いや、そんなに呆気なく決めていいのか?」

「いいのいいの。というか、スカサハの召喚は困難って言うけど、そもそも冬木だと東洋の英霊は喚べないとか何とかだけど、酒呑や沖田でちゃったし?」

「……それは聖杯に頼らず、自力で、あの魔法で召喚したということか?」

「なんかそうっぽいわよ。死んだ目で、メディアが言ってた」

 

 神代の魔術師が言うのならば本当なのだろう。

 そして、色々知識があるからこそ、彼女は死んだ目なんだろう、とエミヤは悟った。

 色々知識があるといえば彼の隣にいるクー・フーリンもそうであるのだが、特に気にも留めないのはクー・フーリンという男の気質にある。

 事実彼はスカサハ召喚を提案して以降、今に至るまで全く喋らず、ただ事態の推移を面白そうに見守っているだけだ。

 

 真面目だとメリエルの前では精神崩壊を起こしかねない。

 

 なんという存在自体が迷惑な輩なのだろうか。

 

 

「そいじゃ、早速、やりましょうー」

「その前にメリエル、今夜は何を食べたい?」

「牛肉食べたい。分厚いステーキ」

「……バーベキューにでもするか」

 

 肉野菜その他諸々をバランス良く買ってきたクー・フーリン。

 しかし、あの量でも足りなさそうで、追加で購入する必要がある、とエミヤは判断する。

 

 召喚が終わったら買い出しだな、と彼は決意した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、スカサハは滞りなく召喚された。

 召喚されたことに彼女は驚いていたが、召喚したメリエルを見て、更に驚いた。

 

「……なあ、アレは何だ?」

 

 思わず、傍にいた弟子――クー・フーリンに問いかけてしまう。

 

「異世界の天使の化け物だそうだ。分かるだろ?」

「分からん。光と闇を人間の魂のようなもので繋ぎとめているなど、正気の沙汰ではない」

 

 スカサハの見立ては善と悪を内包する人間の魂。

 それを核として光でありながら闇である、という矛盾を肯定しているとのことだ。

 

 メリエル自身、そういう魂的なことには全く興味がなかったので、そーなのかー、という程度にしか思えなかった。

 メリエルになったからメリエルである、我思う故に我ありの、そんな思考だ。

 

「何か望みがあるか、と聞かれたような気がしたから、死ねないから殺されたいと答えたらこうなっていた」

 

 スカサハの言葉に、メリエルはとてもとても良い笑みを浮かべた。

 虚空から剣を取り出して、軽く振ってみせながら、問う。

 

「本当に死なないの? 大丈夫? 殺してあげよっか?」

「……そんな良い笑顔で、そう言われるのも初めてだぞ。おい弟子、コイツ頭おかしいだろ」

「安心しろ、師匠。あんたよりはおかしくない」

 

 クー・フーリンが轟音とともに壁に埋まった。

 スカサハが裏拳でそうしたのだ。

 

「全くこのバカは。いつ私がおかしいことをしたんだ」

「こういう行動がおかしいって言うんだろ」

 

 瓦礫をどけながら、クー・フーリンはそんなことを言いながら出てきた。

 

「で、どうだ? そいつは」

 

 クー・フーリンの問いに、スカサハは肩を竦めてみせる。

 

「どうもこうもない。久しぶりに、楽しめそうなヤツじゃないか」

「良かったな、メリエル。合格だ。この世の地獄へようこそ」

 

 クー・フーリンが吹き飛んだ。

 スカサハがアッパーカットを決めたらしく、綺麗な放物線を描いて床に落ちた。

 

 それを見、メリエルは叫んだ。

 

「ランサーが死んだ! この人でなし!」

「この弟子は昔から一言余分だから仕方がない。あと生きてるぞ」

 

 そう言ってスカサハは改めて、メリエルを観察する。

 他者の素質と気質を見抜く鑑識眼を有する彼女には、メリエルが極めて異質に見えた。

 

 スカサハはメリエルに、その力に対して、技量をはじめ諸々のものが低い印象を受けた。先程、剣を振った時にそれらが見て取れた。

 

 まるで超人の肉体に、幽霊か何かが取り憑いているかのような、妙なチグハグさがあった。

 

 別段それは悪いことではない。

 何かしらの経緯があるのだろうし、もしメリエルの本体がまさしく、強い肉体に取り憑いて存在しているような亡霊みたいなモノでも構わない。

 取り憑かれる方が悪い。

 

 だが、非常にもったいない、もったいなさ過ぎる。

 十分に力を使いこなせればどれだけになるだろうか、それは見てみたい。とても。

 

 

 

 

 

 

 

「いい? 白いの。私は舐められっぱなしは性に合わないの!」

 

 気炎を上げるのはジャンヌ・オルタ。

 よせばいいのに、メリエルに対して反撃すると意気込んでいる。

 

 ここはジャンヌの部屋だ。

 やってきて、急にオルタはそう宣言したのだ。

 

 そんな彼女を見て、ジャンヌは溜息一つ。

 

「やめといたほうが良いですよ。絶対、面倒くさいことになりますから」

「大丈夫よ。私の宝具でぶっ飛ばすから」

「……宝具でぶっ飛ばせるのかなぁ」

 

 遠い目をするジャンヌ。

 かの騎士王曰く、約束された勝利の剣すら、防がれてしまったとのことだ。 

 

「とりあえず」

「とりあえず?」

「嫌がらせする!」

 

 子供か、とジャンヌはオルタの頭を軽く小突いた。

 

「何すんのよ!?」

「要するに、なんとかぎゃふんと言わせたいんですね?」

「そういうことよ!」

 

 再度、溜息を吐く。

 ぎゃふんと言わされるのがオチだろうに、とジャンヌは思う。

 

「ともあれ、やるわよ。絶対やるわよ」

「はいはい、私は巻き込まないでくださいね」

「はぁ!? 白いの! あんたもメリエルにはさんざんな目に遭わされているんでしょ!?」

「いや、それはそうですけど、死にたくないですし。っていうか、死なないように拷問とかされそうなので、勘弁してほしいです」

 

 あ、とジャンヌ・オルタは察した。

 

 死はこれ以上苦痛を与えられないという意味で安息である――

 

 そんな言葉が思い起こされる。

 

「……やっぱりやめておこ。戦略的撤退よ」

「それが懸命です。あと、なんかもう一体、サーヴァントを今さっき召喚したみたいですね。それも下手したら神霊クラスの」

 

 ルーラーとしてのクラス故か、ジャンヌは他のサーヴァントに対して敏感だ。

 

「あいつ、何したいのかしらね」

「もう私も諦めていいですか……」

「ちょっと白いの、あんたが諦めたら誰があいつの暴走にツッコミを入れるのよ?」

「あなたが頑張ってください、黒いの。もう正直疲れました」

 

 深く溜息を吐くジャンヌに、オルタは慌てる。

 これはヤバイ、重症だと。

 

「だ、大丈夫よ。っていうか、そうよ、もっとあなたも楽しめばいいじゃない? メリエルはなんだかんだで気前がいいから、食べたり飲んだり遊んで!」

「なんか知らないうちに、メリエルさんのサーヴァントになりそうで怖いんです……」

 

 駄目サーヴァント製造機という単語がオルタの頭を過る。

 

 そりゃ、お金の心配せずになんでもできるとなればそうなる、とオルタは納得する。

 きっとメリエルは白いのを快く自分のサーヴァントとして迎え入れるだろう、とも。

 

 

「あれ、どうされました?」

 

 そこへ扉が叩かれ、許可を出す前に開いた。

 そこにはせんべい袋を抱えた沖田総司がいた。

 

「何やら悩み事の様子。ここは一つ、この沖田さんが相談に乗ってあげましょう」

 

 そう言いながら、スッと袋を差し出してくる。

 

「騎士王軍団から分捕った……もとい、譲っていただいた戦利品です」

 

 ジャンヌとオルタは礼を言って、袋に手を突っ込んで、それぞれせんべいを取り出す。

 

「ところで、何でここに?」

「私が召喚されたとき、ジャンヌさんがとても暗い顔でしたので、それがどうも気になりまして」

 

 あー、とジャンヌとオルタは納得したように声を出す。

 冬木の聖杯戦争の根底をぶっ潰すような所業――西洋の英霊しか喚べない――にあのときのジャンヌはそれはもう闇を纏っていた。

 オルタが自分のアイデンティティを奪われた、と嘆いてしまう程には。

 

「まあ、要するにメリエルのせいよ。アレのぶっ飛び具合は分かるでしょ?」

「そうですか? 私は面白いと思いますが。それと斬り合いもしてくれましたし」

 

 召喚したサーヴァントの力を見るとのことで、館につくなり、掃除をエミヤに任せて、一通り軽く模擬戦をしたメリエル。

 英霊の力に彼女は大満足し、同時にサーヴァント側もメリエルの常識外の戦闘力に驚愕して終わったものだ。

 

「あの殺気はヤバかったですねー、あんなの初めてですよ。もう沖田さん大満足です」

「あんた、本当にセイバーなの? バーサーカーじゃなくて?」

「失礼な。セイバーですよ。そういえばメリエルさん、全力でやれば世界を丸ごと斬れるとか言ってましたけど、本当なんですか? 是非私も会得したいのですが」

「知らないわよ。そういうのは本人に聞いて頂戴」

「その本人ですけど、さっきスカサハさんとかいうクーさんの師匠となんか殺し合い始めてましたよ」

 

 容易に、その光景が想像できた。

 ジャンヌも、オルタも。

 

「いやー、斬撃って剣を一度振っただけで同時に10個も飛ばせるものなんですねぇ。それを簡単に受け流すスカサハさんもすごいです。私も弟子入りしようかなぁ」

「いやちょっと待って、おかしい……助けて白いの。私じゃどうにもならない」

 

 懇願するオルタに、ジャンヌは深く溜息を吐く。

 

「……仕方ありませんね。とはいえ、まあ、正直、私にできることは精々が諌めるくらい。ああ、なんと無力なのか」

「そんなに深く考える必要はないと思いますよ。せっかくの現世ですから、楽しめばいいでしょうに」

 

 バリバリとせんべいを食べる沖田。

 便乗して食べるオルタ。

 

「そうよ、白いの。このせんべい、美味しいわよ」

「頂きます……」

 

 とりあえずジャンヌもせんべいを食べることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「旦那様、素敵です……!」

 

 うっとりとした表情で見つめる清姫。

 その視線の先にあるのはメリエルだけだ。

 当のメリエルはスカサハ目掛けて、熾烈な攻撃を仕掛けているので清姫に構っている暇はない。

 館の裏庭はそれなりに広く、スカサハとメリエルが軽く戦うにはちょうど良かった。

 

 そんな清姫の横ではハサンがこれまた熱視線を送っている。

 他にもギャラリーは多い。

 

 幾百目かのぶつかり合いの末、スカサハが構えを解いた。

 

「ふむ……筋は良い。力そのものは上がらんだろうが、技量は上がるだろう」

 

 スカサハの言葉に、メリエルはレーヴァテインをインベントリにしまって、お洒落着へと瞬時に着替えながら、口を開く。

 

「やっぱりもうコレ以上、地力という点では成長し得ないのね」

「うむ。お前はもはや完成されている。とはいえ、戦闘での技術、いわゆる駆け引きだとかそういうところはまだまだ稚拙に過ぎる。十分に成長の余地があるから覚悟しろ。幸いここにはちょうど良い練習相手も多いからな」

 

 スカサハがそう言って視線を向けたのはギャラリーの面々。

 アルトリア達やクー・フーリンと歴史に名を残した面々が揃いに揃っている。

 

 ちなみにだが、スカサハがメリエルと比較しているのはクー・フーリンをはじめとした彼女の弟子達だったりする。

 つまり、彼女の弟子達と比較して、メリエルは地力はともかく、技量が低いということだ。

 

 

「旦那様、お疲れでしょう? さぁ、湯浴みを。妻である私がお背中をお流しします」

 

 にこにこ笑顔でやってきて、そう宣言する清姫。

 

「……なんだ、お前はそういう奴なのか?」

 

 ジト目でメリエルを見つめるスカサハ。

 しかし、メリエルは動じない。

 

「だって私、両性具有ですもの。とはいえ、私、安珍とか全く知らないっていうのに、たぶん生まれ変わりですらないのに、何でそこまで好かれるのかしら」

「旦那様は旦那様ですわ。人の姿も、龍の姿も、どちらも受け入れてくださるなんて……なんてお優しい方なのでしょう……これはもう夫婦になるしかありません」

 

 メリエル、お前何をしたんだ、とスカサハは一歩後ろに後ずさった。

 

「変身できるっていうから、変身してもらって、一通り攻撃してもらったんだけど……まあ、ダメージ通らないのよね。私に。ほら、私って防御力高いから……最後は丸呑みしてもらったんだけど、清姫の中、暖かいとか何とかてきとーに言ってたら、なんか惚れられた」

 

 真に生まれからして龍であるのならばいざ知らず、清姫の場合は生まれも育ちも基本は人間である。

 メリエルからすれば、ちょっと思い込みで龍に変身することもできる程度の可愛い女の子という認識でしかない。

 

「お前……変態だろ?」

「変態なんて失礼ね。私のどこが変態だというのよ」

「そうです! 旦那様が変態だなんて! いえ、ちょっとそういう旦那様も見てみたいなと思ったりもしますけど!」

 

 さらりと清姫がとんでもないことを言ったが、その程度の発言を気にする輩はあいにくとここにはいない。

 

「清姫がいい子過ぎて生きるのが楽しい」

 

 そう言って、メリエルは清姫をお姫様抱っこする。

 清姫は顔を真っ赤にして、きゃーきゃーと黄色い声を上げる。

 

「……いくらなんでも……いや、もういい何も言うまい」

 

 スカサハは天を仰いだ。

 色々と清姫の在り方は歪みに過ぎるのだが、きっとメリエルにとってそんなことは些細なことなのだろう。

 

「奏者よ! 見よ! この余を!」

 

 そんなとき、ドヤ顔でのっしのっしと歩いてきた輩がいた。

 いつもの赤いドレスではなく、その身に纏うのは純白のドレス。

 メディアが製作したもので、そのメディアもネロに少し遅れて館から出てきており、いい仕事をした、と、とても満足げな顔だ。

 

「これぞ、余の花嫁衣装である!」

 

 メリエルの目の前までやってきて、胸を張るネロにメリエルは冷静に清姫を地面へと立たせ、そして、今度はネロに抱きついた。

 

「やっぱりネロは良い」

「そうであろう、そうであろう」

 

 勝ち誇った顔のネロに、黙っている清姫ではない。

 

「旦那様? 早速浮気ですか? そこの暴君、旦那様から離れなければ焼き殺しますよ?」

「赤セイバー覚悟!」

 

 すかさず乱入してくるヒロインX。

 狙われたネロはメリエルをすぐさまにお姫様抱っこして、華麗にヒロインXの剣を避ける。

 

「清姫よ。妥協案を示そう」

「妥協案?」

「うむ。余は女としての奏者を娶る。故に、そなたは男としての奏者を娶れば良い」

「確かに、そうですね……しかし、わたくしは旦那様の全てを愛したい。男であることも、女であることも、わたくしを受け入れてくださったように、わたくしは受け入れたい」

「ならばもはや問答は無用。余から、奏者を見事奪い取ってみせよ!」

 

 はっはっはー、と高笑いしながら走り出そうとするネロ。

 しかし、そうは問屋が卸さなかった。

 

「何や、おもろいことしてはりますなぁ」

 

 はんなりとした言葉。

 纏う着物はその白い肌によく似合っており、かつ、立ち振舞は雅そのものであるが、頭部にある角が人でなしであることを明確に示している。

 

「メリエルはんの取り合いやろ? うちも混ぜておくれやす」

 

 ぬう、とさすがのネロもちょっと苦しい顔になる。

 

「……で、この寸劇というか、茶番はいつまで続くんだ?」

 

 スカサハは呆れ顔でそう言った。

 

 

 

 

 

 結局、スカサハの言葉がきっかけで、茶番は終わった。

 メリエルは誰のものか、ということで清姫とネロが論争になりそうであったが、メリエル本人が私のものは私のもの、あなた達が私のもの、と強引過ぎる論理を押し通して決着がついた。

 

 

 そして、夕闇迫る中、館の庭でバーベキューをしていると――

 

「おお! 宴か! 余も混ぜてくれ!」

「ちょ、ライダー!? てか、サーヴァント多すぎ!?」

 

 なぜか征服王が酒樽を抱えてマスターと一緒にやってきた。

 

 

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