メリエルを放り込んだり何だりする短編集   作:やがみ0821

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アカメが斬る!の世界らしいっすよ。


メリエルが征く! その1

 

 

 

 オネスト大臣はとてもとても機嫌が良く、宮殿の廊下を歩いていた。

 

 彼の蓄財がうまくいっている、というのも勿論あるが、つい最近、宮殿の宝物庫で埃を被っていた帝具にそれはある。

 語られている48の帝具ではなく、49個目の帝具。

 目録に載ってこそいるが、帝具の試作品とされており、また効果自体も微妙で疑わしいものであった為にほとんど見向きもされなかった。

 

 オネストがそれを使ってみたのは単なる気まぐれであったのだが、彼は端的に言って幸運であった。

 

 

 やがてオネストは扉の前で足を止める。

 扉はとても豪華であり、ともすれば皇帝の私室とも見えるが、皇帝などではない。

 オネストからすればまさしく神に等しく、皇帝など取るに足らないと断言できる程の存在。

 帝国の安寧どころか、自身の安寧も約束されたものだ。

 

「……あんなにうまくやれるものなんですねぇ」

 

 自分のやり方よりも遥かにうまいやり方だ。

 あちこちからカネを集めるのが。

 その点でも彼女はオネストにとって神であった。

 

 それでいて横領などではない、平常の実務の一端をお願いしてみれば、そこらの文官程度では全く相手にならず、模擬戦をさせてみれば近衛兵が山になっても太刀打ちできない程に強い。

 彼女はブドー将軍との殺し合いを希望したが、あいにくとオネストは無論、彼にとって邪魔な良識派連中も一致団結して反対した。

 

 彼女の言葉を信じるならば、彼女が本気で戦えばそれこそ帝都が、というか帝国がこの世から消える。

 帝国の腐敗とか帝国の立て直しとかそういったものなど関係なしに、帝国が消える。

 物理的に。

 

 オネストは彼女に自らの直属の将軍としての地位を始め、自身の補佐官としての地位も与え、その他諸々数々の便宜を図った。

 誰も異議を唱えなかった。

 

 確かにメリエルを使えれば良識派とて容易く帝国再建はできることは分かる。

 帝国の武力すらも物ともしないだろうからこそ、真正面から叩き潰せる。

 

 しかし、あまりにも危険過ぎて、さすがに二の足を踏んでしまったのだ。

 

 

「失礼します、オネストです」

 

 自分が本当の意味で敬語を使うのも彼女だけだとオネストはふと気がついたが、これまでそうするに値する輩がいなかっただけ、と確信した。

 

 

 

 部屋はありていに言えば、豪華の一言に尽きた。

 彼女が持っていたという様々な家具や調度品が規則正しく置かれており、それら一つ一つがもし、店で売っていたならばオネストですら1つ買うのに躊躇する程の値段がつけられるだろう逸品だ。

 

 部屋の主はソファに寝転がりながら、近くのテーブルに置いた焼き菓子をばりばりと貪っていた。

 しかし、その美貌はその姿であっても息を呑むほどだ。

 

「あー、オネスト? 何か用?」

 

 そう言いながら、彼女はゆっくりと身体を起こす。

 

「はい、メリエル様。実はちょっとお願いがありまして」

「なになに? ついに世界を滅ぼす日がきたの?」

 

 わくわくと目を輝かせるメリエルにさすがのオネストも冷や汗を流す。

 

 ある意味、ドSの拷問好きとして名高いエスデス将軍よりも危ない人物だ。

 エスデスが仕込んだという拷問官の拷問を見て、とても優しいわね、とメリエルが言ったときはさすがのオネストも耳を疑った。

 しかし、メリエルにやらせてみたら、ああ、なるほど確かにエスデスは優しかったとオネストは拷問風景を見て嘔吐寸前になりながら納得もした。

 

 もっとも酷いのは、死んでもまた蘇生されて再度の拷問に晒される。

 少なくともエスデスには――というか、帝国どころか世界のどこを見渡しても、死人を蘇生できる存在はいない。

 

 幸いにも、エスデスは北方に出立した直後にメリエルをオネストが帝具で召喚した為、まだエスデスとメリエルは顔を合わせていない。

 

 

「実は少しばかり、北の方で手間取っているらしくてですね……どうでしょうか?」

「北には例のエスデスがいるのよね。勿論いいわよ」

 

 メリエル本人はとてもエスデスに会いたがっているので、渡りに船といったところだろう。

 しかし、オネストの狙いは別にある。

 エスデスは生粋の戦闘狂だ。

 メリエルもまたおそらくはそうなのだろう。

 だからこそ、2人が顔を合わせて戦わないはずがなく、被害が帝国内に及ばないようにする為だ。

 

 帝国内で顔を合わせてドンパチされるよりはよほどに安全だろう。

 

「……ところでメリエル様。必要であれば色々と用意いたしますが?」

 

 オネストの権力は絶大だ。

 それはメリエルが来てからより一層に。

 故に、彼としてはメリエルに対する畏れもあるが、単純に何かしらの恩返しをしたいと思っていた。

 そうであったが故、聞いてみたのだ。

 

「帝具などどうですか? 中々面白いものかと思いますが」

 

 少し前の自分であったなら、絶対にしなかった提案だな、とオネストは思いながらも提案した。

 そもそも金塊などを簡単に自分で作り出せる上、国どころか世界を滅ぼせる力を持つメリエルが帝具の一つや二つをもったところで、大して変わりがない。

 メリエルからすれば変わったオモチャ程度の認識だろう。

 

 オネストもメリエルが持つという数々の武具を見せてもらったことがある。

 その一つ一つが帝具に匹敵するか、あるいは上回るような、とてつもない力を秘めていることが素人目にもよく分かった。

 

「帝具? うーん、まあ、合うのがあればいいけども。レーヴァテインがあるからねぇ」

 

 レーヴァテインという単語にオネストは引きつった笑みを浮かべる。

 いくつか実験をメリエルは行っていたのだが、このレーヴァテインに関する実験がもっとも結果において凶悪であった。

 

 実験結果から分かったことは端的に言えば、メリエル以外の者が触れると、触れた瞬間に灰も残さずに焼き尽くされた。

 意思のようなものがあるのか、定かではないが、ともかくメリエル以外は触れることもできないのだ。

 

「帝具にも面白いものがありますからね。幾つか用意しておきましょう」

「一番良いものを頼むわ。例えばこう、誰も起動できないとか、女の子が出てくるとか」

「ええ、それでしたら早速、宝物庫に行きましょう」

 

 

 

 

 

 

 そして、オネストと共にメリエルは宝物庫へとやってきた。

 メリエルは宝物庫に収められた数々の財宝を見ても、大して興味を示さなかった。

 

「さすがに、金塊を作り出せるとなると、この程度では興味も湧きませんか?」

 

 気になったオネストの問いに、メリエルは指を顎に当てて告げる。

 

「欲しいと思ったらすぐに手に入るから、まあ、別に」

 

 それってつまり、欲しくなったら帝国潰すってことですよね、とオネストは思い、冷や汗が出た。

 つまるところ、今この瞬間も帝国が続いているということは、メリエルにとっては暇つぶしであると同時に、その方が都合が良いということなのだろう。

 

 絶対の強者というのはかくもこういうものなのか、とオネストは戦慄しつつ、声色も表情もまったくいつも通りに振る舞う。

 

「今、帝具をお持ちしますので」

 

 オネストはそう言うも、メリエルが手で制する。

 はて、と疑問に思う彼に、彼女は告げる。

 

「帝具っていうのは持ち主を選ぶんでしょ? なら、呼びかければくる筈よ。たぶん」

「……いや、さすがにそれはちょっと」

 

 いくらなんでもないんじゃないか、とオネストは思う。

 しかし、メリエルならなんかやってしまいそうだ、とも思えてしまう。

 

 メリエルは両目を閉じ、ゆっくりと両手を広げた。

 

「おいで。私に相応しい帝具」

 

 そう呟いた。

 静寂が辺りを支配する。

 

 オネストは息を呑んだ。

 

 そして、たっぷり1分程の時間を掛けて――

 

「何もきませ――」

 

 オネストが言いかけた直後。

 すーっと音もなく、1つの鈍色のブレスレットが飛んできた。

 それはメリエルの目の前で止まり、片方の手首に収まった。

 

「きたわね」

「……あっはい。えーと、しばしお待ちを」

 

 信じられないものを見た、という思いに駆られながら、オネストは手元に予め持ってきていた帝具の目録を捲る。

 そして、見つけた。

 

「どう?」

 

 問いかけるメリエルにオネストはすぐに返答をすることができなかった。

 

 オネストのこれまでの、メリエルを召喚する前であったならば、その帝具はハズレもいいところだ。

 その帝具とは単純倍加《ツヴィリンク》

 主となった者の全ての能力を2倍に引き上げるしか効果がないのだ。

 

 それこそただの人間の能力が2倍になった程度ではどうにもならない。

 とはいえ、オネストには配下に羅刹四鬼という下手な帝具使いを上回る連中がおり、彼らに与えようと思ったが、誰一人適合せず、埃を被っていたものだ。

 帝具を用いず、帝具使いと同等かそれよりやや劣る程度の実力者が使えば強力なもの。

 もっとも、そんな輩がそう簡単にいるわけがない。

 

 しかし、しかしだ。

 ここにきてメリエルという規格外の輩が現れて、まさかの適合してしまった。

 

 ただでさえ、桁が違うメリエルの全ての能力が2倍になる。

 これはもはや悪夢と言っても過言ではない。

 

「えー、えーと、ですね。それは単純倍加《ツヴィリンク》と言いまして、持ち主の全ての能力を2倍に引き上げます」

「あら素敵ね。発動させても?」

「……屋外でやってください。屋内だと、きっと城が吹き飛びます」

「そうするわ」

 

 そう言って、メリエルはツヴィリンクに口づけする。

 

「で、どうします? 帝具使いとか配下にします?」

「え、いいの?」

「ええ、構いませんよ」

 

 下手に帝具発動させて戦闘でもされたら地図を毎回書き換える必要が生じる。

 そんなことをされたらオネストにとっても都合が悪く、無論帝国自体にとっても都合が悪い。

 

 つまるところ、露払い役として2、3人の帝具使いをつけて彼らに戦闘をさせ、彼らでは、どうにもならなくなったらメリエルが出る――そうすれば被害は最小限に抑えられる筈だ。

 

「じゃあ、可愛いのと綺麗なのと……あと、スタイリッシュとかいうヤツは欲しいわね」

 

 そこに目をつけたか、とオネストは戦慄した。

 確かにスタイリッシュは――感性はともかくとして、頭と腕は確かだ。

 そして、そんな彼が未知の存在であるメリエルを知れば、放っておく筈がない。

 

 とそこまでオネストは考えて、再度思った。

 

 ああ、こんなこと考えていても意味がない。

 どうせメリエル様が本気出したら、1分もかからず帝国は消し飛ぶんだから、と。

 

「可愛いのや綺麗なのでしたら、私直属の部隊から何人か回しましょうか? たとえばクロメという者がいるのですが、容姿も能力も中々ですよ」

「あー、例の暗殺者養成機関の? 前、報告書読んだけど、よくもまあ、あんな無駄遣いできたわねー」

 

 オネストはピシリっと固まった。

 しかし、そんな彼を放置して、メリエルは続ける。

 

「確かに育てればいい手駒だけど、かかる費用と期間が大きすぎてダメだわ。数もあんまりいないし、それならまだ爆弾でも体内に仕込んで標的のところで遠隔で爆発させるような形のがいい。兵士はじっくり育てた方がいいけど、それ以外で人間を使うなら基本は使い捨てにしないとダメよ」

「こ、今後の参考にします」

 

 オネストは引きつった笑みを浮かべ、そう言った。

 

「ま、あとであなたが思う人材を連れてきて頂戴な」

「はい、分かりました」

「それじゃ、ちょっと帝具を試してくるから」

 

 

 

 

 

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