君の名は。見てきた記念( ˘ω˘)
「彗星、見に行こうぜ!」
時は10月3日。
ティアマト彗星が地球に最接近する前日、メリエルは朝食時にそう宣言した。
「おお、行くぞ行くぞ!」
「行く行く!」
目を輝かせるネロにモードレッド。
興味なさそうな振りをしているが、それを隠せないセイバー・オルタやらランサー・アルトリアやらランサー・オルタにヒロインX。
「彗星ですか、1200年に一度だそうですね……ええ、ぜひ見ておくべきです」
アルトリアがそう言って鷹揚に頷いた。
聖杯戦争後、何だかんだあって結局、メリエルのサーヴァントとなった彼女である。
ナイチンゲールは全世界の病根絶のため、国境なき医師団に所属してあちこち駆けずり回っているので、ここには残念ながらいなかった。
「いや、あの、あんまり目立つ行動は……あ、いえ、なんでもないです」
ジャンヌのその言葉は横合いから伸びた、ジャンヌ・オルタの手に止められた。
アマチュア天文学者のオススメスポットなる雑誌に書かれていた、岐阜県飛騨の山奥にある糸守町へとメリエルらはやってきていた。
「なんかちょうどお祭りやってるみたいね」
お祭りと聞いてわくわくするアルトリア達。
「わかり易すぎない? そんなお祭りくらいで」
「オルタ、あなたも浮かれていませんか?」
「そ、そんなわけないわよ!? お、お小遣いの準備は万全よ!」
ダメだこれは、早くなんとかしないと……
ジャンヌは天を仰いだ。
そうして彼女らは秋祭りを堪能している最中であった。
ティアマト彗星が割れて、それらの破片がいくつも夜空を流れていく。
「……メリエル、すごく危険な感じがします」
アルトリアの言葉に、セイバー・オルタら、他のアルトリア達もまた同意する。
彼女らの直感は全力でここから離れることを警告していた。
ふむ、とメリエルは空を見上げた。
彗星の片割れは紅蓮に燃え、徐々に高度を下げているように見える。
「ジャンヌ、人助けは善行よね?」
ジャンヌには、それで言わんとしていることが理解できた。
あんまり目立つ行動は控えて欲しい、だが、それは目の前に助けられる命があるのに、助けないという選択を選ぶことではない。
「やむを得ませんね。しかし、できますか?」
ジャンヌ・ダルクの問いに、メリエルは視線を今度はアルトリア達に向ける。
「一つ聞きたいのだけど、あなた方は石を粉々に砕くことはできるかしら?」
アルトリア達は迷いなく頷き、代表するかのようにアルトリアが口を開く。
「無論です。星の輝きをお見せいたしましょう」
メリエルは満足げに頷き、ジャンヌへと視線を再度向けた。
それを受け、ジャンヌは頷く。
「ここから少し降りたところに、迎撃するのにちょうど良い、開けた場所があります。人気もありませんでしたから、大丈夫でしょう」
「綺麗……」
三葉は空を見上げて、そう呟いた。
ティアマト彗星の片割れは赤く輝き、空を駆けている。
彼女の背後には友人の勅使河原克彦と名取早耶香もまた空を見上げていた。
「……ん?」
そのとき、勅使河原があることに気がついた。
ほんの数十m程の先にいつの間にか、幾人かの見目麗しい集団が現れていることに。
「おぉ……」
思わず、そっちに視線を移してしまう克彦に、隣の早耶香もまた視線を移す。
そして、克彦をジト目で見た。
「え……」
後ろの様子に気づかず、ただ空を眺めていた三葉は彗星の破片が迫り来る事に気がついた。
光が徐々に周囲を照らし、昼間のように明るくなる。
ヤバイ――
そう感じた直後であった。
彗星の光よりもより強烈な、黄金の光が周囲を照らす。
それはまさに星の輝きそのもの。
人類の願いを星が鍛え、生み出した一振りの剣である、最強の幻想。
三葉は黄金の光を発する方向を見た。
視界は黄金で、しかし、だが、不思議と見えた。
あるいは特殊な力を持つとされる宮水の血筋であったからかもしれない。
白銀の鎧を身に纏った、少年のような少女の剣士。
黒く染まった鎧を身に纏った、その少女剣士と瓜二つの剣士。
なぜかジャージ姿の少女もいた。
そして、彼女らが大人になったらそうなるのではないか、という女性が2人。
最後に、黄金の長い髪を風に揺らしている、女神のような少女の姿。
ふと、その少女がこちらを向いた。
視線が合う。
少女はにこりと微笑み、口を動かした。
最後はやっぱ、ハッピーエンドでしょ?
そう三葉には読めた。
黄金の光はますます強くなり、彼女らの姿は見えなくなった。
その直後であった。
黄金の光が地上から空へと解き放たれた。
片割れとはいえ、大質量の隕石。
生半可なものでは効かぬ。
しかし、刮目せよ。
生半可なものでは効かぬなら、尋常ならざるものをぶつければ良い。
人々が願う、最強の幻想。
ただ大きくて重くて速いだけの隕石程度がその輝きに抗うすべなどない。
閃光
しかし、それはすぐに収まった。
収まった後、彗星の片割れは消えていた。
夜空には本体のティアマト彗星と、小さな破片の幾つかがあり、それらは糸守町を通り過ぎていく。
黄金の閃光は災厄を消し去っていた。
「……夢や妄想じゃなかった。糸守町は本当にあった」
3年後、1人の青年がお供を2人連れて、糸守町を訪れた。
「マジで? いや、マジで?」
「嘘でしょ? 信じられない」
お供2人――彼の友人の司とバイトの先輩の奥寺が信じられないとしきりに言っているが、彼――立花瀧にとってそこはどうでも良い。
散々なデートの結果やらその他諸々、色々と言ってやりたいことがたくさんある。
瀧は意を決したかのように、走り出す。
あ、待て、と司の声が聞こえた。
夢で見た、否、入れ替わっていたとき、歩いた道を辿っていく。
やがて、神社にたどり着く。
そこの境内を掃除している巫女がいた。
髪を組紐で結んでいる。
その巫女は人の気配に気づき、ゆっくりと彼へと顔を向け――
「……瀧、くん?」
「……三葉」
なお、彗星迎撃時、ジャンヌとジャンヌ・オルタとネロとモードレッドはめちゃくちゃ祭りを堪能してた。
ジャンヌ「あれだけいれば、彗星の百や二百は大丈夫でしょう」