メリエルを放り込んだり何だりする短編集   作:やがみ0821

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令呪が現れたメリエルは当然、また召喚した。

戦いは数だよbyスターリン


ネロ=可愛い生き物(真理)
モードレッド=可愛い生き物(真理)

赤セイバーと赤のセイバーが一緒になって最強にみえる。


ケイネス先生は影も形もありません。


ケイネス先生が苦労する話 その3 叛逆の騎士爆誕編

 

 

「……状況は最悪だ」

 

 切嗣は重い表情であった。

 

 あのあと、ライダーもすぐに帰っていき、切嗣らはただちにメリエル陣営への対策を考えるべく、城へと引き上げていた。

 唯一、舞弥はメリエルに根こそぎ吹き飛ばされた箇所に罠を仕掛けて回っている。

 

 まさかのメリエルが召喚された英霊であり、しかもサーヴァントを従えている。

 おまけに、召喚主であるケイネスは遠く離れたイギリスの時計塔にいる上、ケイネスを倒してもメリエルは受肉していることから、消えたりはしない。

 しかも、メリエルが召喚したネロも受肉しており、メリエルを倒しても消えない。

 

 これは極めて厄介なことであった。

 

「メリエルは強い」

 

 セイバーは無視されても構わないとばかりに、静かに告げた。

 さすがの切嗣もこのような状況下にあっては無視するようなことはできず、ただセイバーの言葉に耳を傾ける。

 

「剣の技量は私が上です。しかし、彼女には私を上回る純粋な身体能力や強大な魔術がある。総合的には彼女が優っているといえましょう。空間転移を駆使され、奇襲された場合は対処できません」

 

 宝具も無力化されましたし、とセイバーは付け足した。

 

「アイリ、メリエルはあのとき、何をしたんだ?」

 

 切嗣の問いに、アイリスフィールは「たぶんだけど」と前置きして、言葉を紡ぐ。

 

「虚数空間を開いて、別次元に攻撃を逸らしたんだと思うわ。でも、それだけじゃないと思う。聖剣はアレを切り裂いていたもの。とはいえ、事前動作なしに、ただ唱えるだけでそんなことをできるなんて、並じゃない」

 

 切嗣は天を仰いだ。

 そんな彼にさらなる絶望の言葉がセイバーにより告げられる。

 

「メリエルが英霊であるならば、彼女もまた宝具を所持しているでしょう。私としては彼女が纏ったドレスやネックレスなどその全てが宝具のように見えましたが、実際に斬り合ってみたところ、あの剣が怪しく思えます」

「宝具か……あの落下してくる一撃じゃないのか?」

 

 切嗣の問いに、セイバーは首を左右に振る。

 

「あれはおそらくただの技名みたいなものでしょう。要するに自己暗示と同じで、ああすることで威力を高めるという……魔術師にとっての呪文です」

 

 いよいよもって、切嗣は溜息を吐いた。

 これはもうどうにもならない。

 似たような規格外な輩でも持ってこないかぎり、勝ち目がない。

 

 いっそのこと同盟でも――

 

 という考えが彼の脳裏に浮かぶ。

 そのとき、アイリスフィールはあることに気がつく。

 

「ところで、セイバー。メリエルに令呪はあったの?」

「いえ、アイリスフィール。私が見た限りでは彼女にそのようなものは……」

 

 そこで、アイリスフィールもセイバーも切嗣もハッとした。

 もし、ネロが令呪によらずに召喚され、令呪がなくても従っているのだとしたら――?

 

 メリエルがもし、未使用の令呪を持っており、聖杯戦争における正規の召喚を行ったら――?

 

「メリエルと同盟を結びたい。彼女らが聖杯に何を願うかは分からないし、単純にこちらを圧倒できる戦力だから、極めて分の悪い賭けだけど……」

 

 セイバーはそのとき、メリエルに呼び出されている旨を切嗣に伝えようか迷う。

 聖杯戦争とかは関係なしに、とメリエルが言ってきた為だ。

 

「切嗣、そもそもどうやって彼女達と接触するの?」

「こんな事もあろうかと、冬木のホテルや旅館の宿泊客リストは揃えてある。冬木ハイアットホテル、そこにメリエルらは泊まるらしい」

「……えっと、どういう名前で予約してあったの?」

「……普通に、メリエルとネロ・クラウディウスで」

 

 なんとも言えない空気が流れたが、逆にいえばメリエルらが誘き寄せているともいえるかもしれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 メリエルとネロはハイアットホテルにチェックインし、最上階のスイートルームでのんびりとしていた。

 セイバーとの待ち合わせまでには長い時間がある。

 故に、ルームサービスで料理やスイーツ、お菓子を片っ端から頼み、テレビを見ながら食べて過ごす。

 

 やがて日も暮れた頃、ある異変にネロが気がついた。

 

「そ、奏者よ! 大丈夫か? 痛くないか? 絆創膏を……いや、エリクサーを!」

 

 気がついたら、メリエルの左手の甲に痣ができていた。

 それを発見したネロは大慌て。

 あわあわしている彼女にメリエルはとてもシンプルな感想を抱いた。

 

 何この可愛い生き物――

 

 

「大丈夫よ。たぶんこれ、令呪じゃないかしら? ケイネスから貰い損ねたから、まあ、選ばれたんでしょうね」

「う、うむ。余は当然、分かっていたぞ。あえて演技として慌てて見せたのだ。そう、ローマ皇帝は如何なる時も慌てない!」

「さすがローマ。すごいぞローマ。でも最後はなんかグダグダだったぞローマ」

「全く、だらしがない。余が生きていればあんなことにはさせなかったものを」

 

 うむ、とネロは鷹揚に頷く。

 

「というわけで、召喚しようと思うんだけど、やっぱり美少女かしら? 個人的には男の娘というのもいいんだけど」

 

 メリエルの言葉に、ネロは深刻な表情となり、深く息を吐く。

 

「……ひどく、難しい問題だ。これは今後を左右するぞ、奏者よ」

「ええ……カッコいい系美少女美女というのもいいし、ボーイッシュもまた捨てがたい」

「ぐぬぬ……これは1000年掛かっても解けぬ難問」

「とりあえず、あれよ、おみくじ感覚で一発やってみようと思う」

「うむ。奏者なら、最高を引くと余は確信している」

 

 

 

 そんなわけで、召喚である。

 ホテルのスイートルームのリビング、その真ん中に、ケイネスから教えてもらった魔法陣を描く。

 

 ネロはその光景を見つつ、ルームサービスのスイーツをソファに座って食べる。

 

 む、このケーキは美味い。

 シェフを呼べ、余が直々に褒めてやろう――

 

 とかなんとかネロが思っているうちに、メリエルは魔法陣を描き終わった。

 そして、どこからともなく指輪を取り出した。

 既にネロの召喚と頭痛治しで2回使っている、流れ星の指輪《シューティングスター》だ。

 メリエルはコレを複数所持している為、中々に贅沢な使い方ができる。

 

 彼女は召喚の呪文を唱え、最後に一言付け足した。

 

「私と相性の良いサーヴァントよ、我が呼びかけに応じるならば来たれ、望むならば完全な状態で受肉せよ。ウィッシュ・アポン・ア・スター」

 

 魔法陣が発光し、エーテルが乱舞する。

 やがてエーテルは人型を作り――

 

 ネロはソファから立ち上がった。

 そして、渾身のガッツポーズ。

 

 でっかい兜と鎧を被っているが、ネロは分かった。

 少女である、と。

 

「サーヴァント、セイバーだ。よろしく頼むぜ、マスター」

「よろしく。私はメリエルよ。あなたはどこのどなたさんかしら?」

 

 ああ、悪い、とセイバーの声とともに、その兜と鎧が消失する。

 現れたのは騎士王そっくりの顔であった。

 

 今更だけど、ネロも騎士王やこの子と似てるわね、とメリエルは思いつつ、セイバーの答えを待つ。

 

「オレはモードレッド。ま、知ってるだろうが、オレは強いぜ」

 

 ドヤ顔のモードレッドに、メリエルはちょっとした悪戯心が湧いてくる。

 

「ランスロットとどっちが強い?」

 

 円卓の騎士最強の湖の騎士。

 しかし、モードレッドは動じずに、笑ってみせる。

 

「オレのがつえぇよ。アイツも王よりつえぇ。だが、オレの方がつえぇ。ちょーっと負けたこともあったがな」

 

 それを聞き、メリエルは鷹揚に頷く。

 故に、彼女は虚空より剣を取り出し、その剣先を向けた。

 

「じゃあ質問。私とあなた、どっちが強い?」

 

 メリエルは絶望のオーラⅤを全開に発動した。

 即死効果すらもあるその黒いオーラ。

 受肉しているとはいえ、サーヴァント――既に死んでいる存在に、即死効果は意味がない。

 しかし、その威圧たるや相当のもの。

 

 それを受けながら、モードレッドは笑った。

 

 

「お前、つえぇな。楽しめそうだ」

「ええ、あなたとは良い関係を築きたい……まあ、受肉してくれた時点で築いたようなものだけどね」

「ん? ああ、これか」

 

 メリエルが絶望のオーラを止めてそう言うと、モードレッドは今気づいたと言わんばかりに自分の体へと目を向ける。

 

「受肉してたほうが色々有利だろ? お前が死んでも、オレは聖杯を狙えるからな」

「私が死ぬってそれたぶん、世界終わる時よ。わりとマジで」

 

 具体的にはアラヤやらガイヤやらそこらの連中が束になって押し寄せてきた時。

 無論、タダで殺られるつもりはないが、まあそれでも精々世界に引っかき傷を残す程度で終わるだろうとメリエルは予想する。

 具体的にはユーラシア大陸を消し飛ばして、北米大陸をちょっと削るくらい。

 

「……てかよ、お前こそどこの誰だよ? この時代の魔術師とかじゃないだろ、お前。あんな殺気、オレの時代でも出せるヤツはあんまりいなかったぞ」

「いや、私にも色々あってね。そういや、ネロには見せたっけ?」

 

 そう言って、メリエルが視線をネロへと向けると、そこにはクッションを抱えて涙目のネロがいた。

 

 なにあれ、とメリエルはモードレッドへと視線を戻すが、オレが知るかと言わんばかりに首を横に振る。

 

「そ、奏者よ。あんな殺気を飛ばすなんて聞いてないぞ……こ、怖いではないか!」

 

 小動物のような姿と物言いに、メリエルは満面の笑みを浮かべた。

 

「で、そいつもお前のサーヴァントか。なるほど、オレを召喚した理由が分かった。あんなポンコツじゃ、不安にもなる」

 

 ふん、と鼻で笑ってみせるモードレッド。

 瞬時に、ネロはクッションを放り投げて立ち上がった。

 

「何を言うか、叛逆の騎士風情が! 余こそ、ローマ帝国5代皇帝にしてオリンピアの華。ネロ・クラウディウスなるぞ! ええい、頭が高い! 控えおろう!」

 

 ドヤ顔で腕を組むネロ。

 しかし、モードレッドは動じるどころか、再度鼻で笑う。

 

「なんだただの暴君か。オレや父上の足元にも及ばねぇよ」

「何だと!? 奏者よ、この粗暴な輩をどうにかせよ!」

 

 ネロはビシっとモードレッドを指差しながら、メリエルに訴える。

 当のメリエルはうんうんと頷き、そして告げる。

 

「モードレッド、あなたの父上も今回の聖杯戦争にいるっていうか、今夜、ちょっとお話するから、一緒にこない?」

「当然だ。オレも父上がいるから召喚に応じたんだ」

「余を無視するな! 泣くぞ! 本当に泣くぞ!?」

 

 叫ぶネロ。

 メリエルはそんな彼女にすっと近づいて、そのまま優しく抱きしめる。

 メリエルの豊満な胸に抱かれたネロは弛緩しきった表情となる。

 

「うむ、うむ……これは良いものだ」

 

 その感触を存分に堪能するネロに、モードレッドは呆れ顔になる。

 

「……いや、本当にコレ、大丈夫なのか?」

「ネロは万能の天才だから大丈夫大丈夫」

 

 あー、とモードレッドは頭を掻く。

 彼女の知り合いに、こういう自由過ぎる輩はいなかった。

 

「ところでモードレッド、私、何でも願い叶えることができるんだけど……あなたの願いって何?」

「王の選定のやり直しだ。父上でなく、オレが王になる」

 

 そう言って、モードレッドはハッとした。

 

 今、目の前のマスターは何と言った?

 

「じゃ、万が一聖杯を得られなかったら、私が叶えてあげる」

 

 にこにこと笑うメリエルに、モードレッドは訝しげな顔となる。

 

 本当にそんなことできるなら、何でコイツは聖杯戦争に参加してるんだ、とその顔は如実に語っていた。

 そんな彼女の疑問を察し、メリエルはドヤ顔で告げる。

 

「古今東西の英雄とガチで戦える、これほど胸躍ることがあるだろうか……いや、ない!」

「あー、お前、あれか。戦闘狂か。ウチにもいたなぁ、そういうの」

 

 円卓の面々を思い出すモードレッド。

 

「というわけでモードレッド。戦いましょう」

 

 満面の笑みで、それはそれは楽しそうにメリエルは言った。

 

 

 いや待て何でそうなる、とモードレッドは思ったが、彼女個人としてもメリエルの力は興味があった。

 しかし、そこでネロが待ったを掛ける。

 

「奏者よ、とりあえずモードレッドに教える意味も込めて、情報を整理した方が良いのではないか? 一応は戦争中であるからな」

「それもそうね。じゃ、そうしましょう」

「いやお前らそんな軽い感じでいいのか? オレが言うのもアレだけど……」

「いいのいいの。こういうのは楽しまないと損だから。あ、ルームサービスで料理頼みましょう」

 

 料理と聞いて、モードレッドは複雑な顔になる。

 彼女の中では料理=雑という方程式ができあがっている。

 

 そんなモードレッドを尻目に、メリエルは備え付けの電話で適当に料理を注文し、改めてモードレッドへ向き直る。

 

「さて、モードレッド。まずセイバーだけど、まあ、私が裏技使ってるから重複している。そこのネロもセイバーだし、アインツベルンっていうとこのサーヴァントもセイバーで、騎士王がやってるわ」

「裏技ができるもんなのか?」

「やってみたらできたの。それで、ライダーなんだけど、征服王イスカンダルですって」

「イスカンダルか……それで?」

「なんかでっかいチャリオットに乗ってたわ。あとマスターがヘタレっぽかった」

「眼中にないな。敵は父上唯一人だ」

「私もそう思う」

 

 意見の一致となったところで、ドアがノックされた。

 ネロが許可を出せば、先ほど頼んだルームサービスの料理が幾つか運ばれてきた。

 サラダなどの前菜だ。

 

「……オレ、今初めて召喚されて良かったって思った」

 

 単なる前菜といえど、ブリテンの料理と比較するのもおこがましいほどに、美味しそうであった。

 

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