原作キャラでつくられたハーレムが修羅場な件について 作:勠b
子供の頃、両親は俺達兄妹を残して消えた。
良くは知らないけど、結婚を反対されていた両親。
そんな2人の捨て子である俺達は様々な親戚の家にたらい回しに会うわけで。
そんな生活が嫌で嫌で……
そんな生活から逃げ出したくて。
妹にだけでも幸せな生活を味わってほしくて。
だから俺は、高校に入学することなく就職をした。
決して高くはない賃金を貯めて妹に満足な生活をしてあげるために努力した……
自画自賛なんかじゃない。
昼は事務員として働いて、夜は工事現場で働いて。
そんな生活を毎日毎日やっていた。
嫌じゃ、無かった。
二人っきりの貧しい生活はとても幸せとは言えなかったが、それでも俺達の生活には笑顔があった。
幸せだったんだ。
妹が高校を出て、大学に通い始めた時の出来事。
大学を卒業できる程度には資金が溜まった時のこと。
俺は、恋をした。
同じ職場の女性に。
順風満帆だった。
妹とも仲良くしてくれて、俺達の生活に理解を示してくれた彼女。
そんな彼女と妹が俺の傍から離れた。
理由は、わからない。
でも分かるのは俺はまた捨てられたという事実のみ。
その事実が胸に突き刺さる。
だからだろう。
全てを失った俺は、夜空を写す海辺に来ていた。
もちろん、海水浴なんかではなく。
ゆっくりと足から入っていく。
冷たい感覚が少しずつ全身を襲ってくる。
重い水圧がまるで俺を引き離すように。
だが、俺はもう生きていても仕方がない人間だ。
俺はゆっくりと歩みを進めた。
いや、止めていた……だろう。
俺の人生をとめるために歩み始めた。
だからこそだろう、次に目にした景色に驚愕を隠せないでいるのは。
深い深い闇の中にいるような、どす黒い世界。
自分が上を向いているのか下に落ちているのかすらわからなくなるのうな世界。
死後の世界なんだろうか。
身体に力が入らない。
途方もない脱力感がただただ襲う。
そんな世界に留まっていると、声が聞こえた。
愛されたいか
その声に俺は━━━
━━━━━━
「くっ……!!」
その声を聞くと同時に俺は勢いよく上半身をベッドから起こす。
身体の気だるさを感じつつ、大量の汗のせいでまとわりついてくるシャツの気持ち悪さに今がげんじつなんだと再確認させられる。
落ち着かないせいか呼吸が荒い。
手元にあるコップに水を注ぎそれを勢いよく飲み込む。
「なんなんだよ、本当に」
何度になるかわからない呟きをしつつ俺はベッドから離れる。
落ち着いたからか、呼吸の荒さはなりを潜めた。
近くの洗面台に行きつつ窓ガラスに目線を移す。
カーテンの隙間からは真っ黒な闇が見え隠れしていた。
早起きにしては早すぎるな。
洗面台に着くと真っ先に自分の顔を見る。
何も俺の顔を見たいわけではない。
確認だ。
最も、今は大丈夫だとは思うが。
それでも、この眼で見なければならない。
見て落ち着かなければならない。
この忌まわしき瞳を。
鏡に映るのは普通の日本人の顔だ。
何も特徴がないありふれた顔。
それでいい。
俺は自分の右目を手で覆い隠す。
忌まわしき瞳を。
魔眼
それが、この瞳の秘密。
ただの瞳とは違う、力を持つ瞳。
望みもしない力そのもの。
あの日、自ら歩みを止めた俺への罰なのか、それとも愛されかった人生を歩んだ俺への祝福なのか。
わからないが、こんなものを望んで手に入れたがる者なんていないだろう。
少なくとも俺はいらない。
こんなモノなかったって━━━いや、ない方が幸せだ。
だが、ある以上は仕方がない。
受け入れるしかない。
それが、今の俺のできる償いだから。
この瞳から眼を背けるわけにはいかない。
俺はもう……逃げれないんだ。
軽く溜め息をしつつベッドへと戻り近くのテーブルに置かれた日記を手に取る。
最近買ってきたこの日記は俺が現状把握のために使っていた頃の名残。
だいたいのことを掴めた今となっては必要のないモノだがそれでも俺は今日という出来事を書く。
ここで生きているということを自覚させるために。
表紙と共に何枚かのページを捲ると半分ほど書かれたページが見つかる。
対となるページは白紙。
それは今日の出来事を書く所だ。
日付が変わってまだ数時間もたってないが……まぁ、新しいページでいいか。
俺は新しいページに一言書くためにペンを走らせる。
悪夢を見た。俺は何時になったらこの世界から消えれるのだろうか。っと。
ただそれだけを記入して再び横になる。
悪夢を見て起きた日は必ずまた悪夢を見ることになる。
それを知ってるにも関わらず俺は再び眠ることにする。
逃げちゃ駄目だ。
そう、思うから。
自らの行いから逃げないために。
━━━━━━
声が聞こえた。
優しそうな声が。
でも、何処か慌ててる様子を伺わせる。
「……きて」
少しずつたが声が大きくなってくる。
そのたびに声は緊張感を感じさせる。
必死さを露わにさせる。
「おきて」
何故だろう。
何故声なんかが聞こえるのだろう。
わからない。
あぁ、天国にでもこれたのだろうか?
だとしたら、幸せ者だな。
「早よおきて!!」
会心のその一声に身体が反応する。
とっさに上半身を起こし、声がした方を見据えるとそこには1人の少女がいた。
俺と目が合うと心配そうな顔つきは一転し溜め息と共に落ち着く。
「なぁ、こんな所でなにしてんの?もう遅いから帰り」
こんな所……?
そうだ、俺は!!
視線を彼女から周りへと移す。
自然豊かな草原。
その言葉が相応しいと思えるような景色の中に少女がいて、少女の前には呆けている俺がいて……?
少しずつ覚醒し始めている頭を酷使して情報を理解しようとする。
周りの草木を揺らす心地よい風に囲まれながら横になっていたのは何故だろうか。
何故だか驚くほど俺は落ち着いていた。
嫌、違う理解が追いつかないだけか。
もう一度周りを見渡すとそこは最後に見た景色とは全く違う世界。
暗闇の海の中ではなく夕方の森の中だ。
……なんだこれは。
叫びたくなる思いに刈られるがそこを堪える。
そんな様子の俺を見ておかしかったのか、少女は笑いながら手を差しのべる。
「ほら、早よ帰らんと夜になるよ?
親が心配する前に帰り」
「親に心配……?
そんな年に見えるのか?」
急な展開に思考が追いつかないせいか思わず少女に対して辛辣な言葉を吐いてしまった。
……そうだな、彼女は心配してくれて言ったんだ。
謝ら「見えるよ」……ないと?
「だって」
予想外の言葉に言葉と共に思考を奪われていると、少女は手を上に上げる。
何をする気なんだろうか。
大人をからかおうとする少女の一挙一動に注目しているとそれは直ぐに理解した。
優しく乗せられたら頭上の手。
暖かい体温を感じる小さな手はまず間違いなく目の前の少女のもの。
ただ問題がある。
「だって、私とあんまり年齢変わらなそうだもん」
クスクスと笑う仕草はまりで年下をあやすような微笑み。
当然、それを受けているのはこの場にいる俺1人。
だからこの困惑だ。
社会人の俺がこんな少女と見た目が同年齢な訳がない。
なのに、なのにだ。
少女の瞳に写るのは、とても社会人には見えない子供の顔。
そして、その顔は間違いなく目の前にいる俺の顔。
視線を自分に向ける。
小さな手足に胴体。
とても社会人には見えない。
「何で……?」
「なにが?」
小さな呟きに首をかしげる少女。
そんな少女の相手を出来るほど俺に余裕はなかった。
自分自身のみに何が起きたのか理解ができなかった。
ただただ困惑。
思考はもはやまともに動いてはいなかった。
完全に止まっていた思考を動かしたのは、額に来た軽い衝撃だった。
「いたっ」
「もう、人の話し聞いとるの?」
出会って数分も満たない他人にでこぴんを食らわさせた少女は口を尖らせて明らかに不満そうな顔をする。
そんな顔をされても、この子に構うほどの余裕は俺にはなかった。
だが、彼女とここにあったのは何かの縁。
……色々と情報を集めないと。
停止していた思考を再開させる。
それと同時に解けない疑問を頭の淵に追いやった。
「私の名前は八神はやて。君は?」
「俺は……」
名前を言おうとして一瞬戸惑う。
俺の名前は何だ?
もしも使い慣れた名前でいいのなら、すぐに言える。
でも、この身体の俺は……今の俺は誰だ?
またしても疑問の波が襲ってくるが、それをまた淵に追いやる。
戸惑う俺に何処か疑うような目線を送る少女に対して、これ以上の不信感を与えるわけにはいかない。
彼女は現状、今を知るためのキーパーソンなのだから。
だから。
「鳴神湊、よろしく」
使い慣れた名前を口にして手を差し出すと、少女……八神ちゃんは笑みを浮かべてその手に応える。
その瞳に疑惑の念は感じ取れない。
一先ずは、これでいい。
先ずは色々と知らないとな。
今後の不安を外に出さないように気を付けつつ俺は八神ちゃんから手を離した。
この時はまだ幸せだっのかも知れない。
何も知らなかったから。
もしも、この時にはやてから離れていたらまた違う生き方が出来たのかもしれない。
それを知るのはこれから数日後の話し。
この時の俺が瞳の事を知るはずがないのだから。
それを知るのもまた、数日後の‼
これはただの出会い。
俺の呪いに魅了された少女との━━━
最初の出会いなのだから。
更新頻度はかなり遅くなると思いますが、頑張りたいと思います。