ラブライブ!サンシャイン!! Aqoursの戦国太平記   作:截流

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どうも、截流です!


今日はにこちゃんの誕生日ですね。そんなわけで今日は『若虎と女神たちの物語』と一緒にダブル更新させていただきました!!


今回は『第二次国府台合戦』の前哨戦が終わった後の北条、里見両軍のお話し。

果たして両陣の将兵たちは何を想うのか・・・。



それではどうぞお楽しみください!!


11話 国府台宿命戦 一時の休息

正木信茂の部隊を寡兵で退けた氏政と千歌たちはそのことを報告するために氏康たちがいる本陣に戻ってきた。

 

「よくやったな氏政。それでこそ北条の次代を担う当主よ。」

 

「あの槍大膳の息子を退けるとはなかなかやるな!!」

 

氏政の報告を聞いて、氏康と綱成は氏政を褒め称えた。氏政も父とその右腕とも言える綱成に褒められて満更でも無い様子であった。

 

「千歌ちゃん達もすごく活躍したんだってね。」

 

梨子が千歌に話を振ると、

 

「うん!ようやく私もみんなに追いつけた気がするよ!」

 

と千歌は自慢げに答えた。

 

「梨子ちゃんの方はどうだったの?直勝さんと綱景さんは大丈夫だった?」

 

と千歌が聞くと、梨子は顔を俯かせた。それを見た曜は、、

 

「ねえ梨子ちゃん、何かあったの・・・?」

 

と恐る恐る聞いた。すると梨子は震えた声で、

 

「直勝さんは無事だったよ・・・。でも、綱景さんは・・・。」

 

と言ったので、

 

「嘘…?もしかして綱景さんは・・・。」

 

と曜が言おうとすると、

 

「綱景どのは残念ながら討ち死になされた・・・。綱景どのの兵に聞いた話では太田康資と一騎討ちをして敗れたそうだ・・・。」

 

と康英が千歌たちに説明した。

 

「嘘!そんなこと聞いてないよ!」

 

と千歌が康英に抗議すると、

 

「すまない、それは私の独断でお主たちに教えなかったからだ。」

 

と氏政が康英をかばった。

 

「なんで、なんで教えてくれなかったんですか!?梨子ちゃんが辛い思いをしてたのに・・・!」

 

と千歌は氏政に詰め寄った。

 

「千歌さんお止めなさい!氏政さんも本当は私たちに教えて梨子さんのところに行かせたかったのですよ!ですがその時は戦の最中で、千歌さん達が抜けたら私たちは相手を押し返すどころか逆に全滅させられてたかもしれませんのよ!?氏政さんはそれを避けるために、身を切られるような思いで千歌さん達に敢えて伝えなかったんですよ?」

 

ダイヤはいつもの厳しい口調ではあるが、少し声を震わせながら千歌をたしなめた。

 

「そうなんだ・・・。ごめんなさい、氏政さん。」

 

とダイヤの言葉を聞いた千歌は氏政に謝り、

 

「ねえ梨子ちゃん。梨子ちゃんは綱景さんの最期は見たの?」

 

と聞いた。梨子は首を横に振り、

 

「ううん、見てないわ。私は綱景さんが康資さんの所に行くのを止めようとしたんだけど、綱景さんは自分がこの戦で死ぬ事を覚悟して戦ってるんだって気づいて、強く止められなくて、見送るしかなかったの・・・。」

 

と答えた。

 

「そうなんだ・・・。」

 

「綱景さんが死ぬ事はなんとなく分かってたの。でも万が一生きて帰ってこれるように『絶対帰ってきてくださいね』って最後に綱景さんに言って、私は戻って行ったの。」

 

と梨子はその時の綱景の堂々とした後ろ姿を思い出しながら語った。

 

(なるほど、それで伝令が綱景どのが討ち死にしたと伝えた時もさほど動揺しなかったわけか・・・。)

 

康英は、梨子の言葉を聞いて彼女に綱景の死が伝えられた時、そこまで激しく取り乱さなかった理由を察した。

 

(尤も師であり、父のような存在であった綱景どのが死んだと聞いて辛くないわけなどないというのに、なんとも健気な娘だ・・・。)

 

康英は梨子の心情を察してやるせない気分になった。

 

「なるほど、そのようなことがあったのだな。」

 

そう言って出てきたのは直勝であった。心なしか顔の所々が赤く腫れていた。

 

『直勝さん、その顔はどうしたんですか?」

 

梨子が不思議に思って聞くと、

 

「これか。これは綱成に殴られたのだ。」

 

とあっさりと答えた。

 

「「「殴られた!??」」」

 

氏政や千歌たちは驚いた。

 

「うむ、俺たちが無茶な先行をした事に綱成はカンカンに怒ってな・・・。」

 

「そんで俺が『二度とそんな真似するんじゃねえぞ!!』っつって殴ったわけなんだ。」

 

綱成は苦笑いしながらそう言うと、

 

「やれやれ、お主は馬鹿力だから止めるのには苦労したんだぞ・・・。」

 

と綱高はため息をつきながら言った。それを見て梨子は、

 

「ふふっ・・・、そんな事があったんですね・・・。」

 

と笑った。そんな梨子の様子を見て、千歌たちや氏政は少し安心したようだった。

 

 

 

そんな千歌たちをよそに松田憲秀は、

 

「御本城さま、国府台城に籠っている里見はいかがいたしましょうか。」

 

と、里見軍をどうするかを氏康にたずねた。

 

「うむ、直勝の隊は半壊、綱景の隊に至っては康英がまとめてくれたとはいえ、綱景でなく隼人佐や舎人までもが討ち死にして壊滅状態と言っていいほどの損害を被っておるな。無理な戦は望ましくないが、上杉政虎が関東にやってくるまでにはけりをつけたいものだが・・・。」

 

「里見軍は恐らくかなり用心しておりましょうな・・・。」

 

そう言って氏康と憲秀はため息をついた。

 

「いいえ、心配には及びません。」

 

氏政はそう言って氏康の前に現れた。

 

「なに?それはどういうことだ?」

 

氏康が理由を聞くと、

 

「先ほどの戦で里見軍が撤退していく際に我が隊の兵士を二人ほど紛れ込ませて城の様子を探らせておいたのです。先ほど帰ってきたので話を聞いてみれば敵方は我らを打ち破ったのと、兵士たちの正月祝いを兼ねて祝宴を行っているようです。」

 

と、国府台城の様子を氏政は伝えた。

 

「なるほど、敵は油断しているというわけか・・・。よし、ではわしの本隊は国府台から見えるように西へと向かう。その隙に氏政と綱成は国府台城の南に、憲秀は北、氏照と氏邦、そして政繁らは東に回り込み夜陰に乗じて国府台城を包囲するのだ!そして夜が明けると同時に氏政と綱成が南から城に攻撃を仕掛けたら他の隊も城になだれ込み里見軍を押しつぶすのだ!!」

 

と氏康はその場にいた将たちに指示を出した。

 

「「「おおお!!」」」

 

 

 

 

そして軍議が終わった後、氏政の陣にて・・・。

 

「さっきはごめんね梨子ちゃん・・・。」

 

「どうしたの千歌ちゃん・・・?」

 

「遠山さんのこと、知らなかったとはいえ梨子ちゃんが辛い思いをしたっていうのにそれを思い出させるようなことを言っちゃって・・・。」

 

「気にしないで千歌ちゃん、私はもう大丈夫だから・・・。」

 

「梨子ちゃん・・・。」

 

 

「あー・・・。取り込み中であったか、失礼した。」

 

千歌と梨子が話しているところに康英がやってきた。

 

「康英さん、どうかしたんですか?」

 

梨子が聞くと、

 

「康英さん、梨子ちゃんに渡したいものがあるんだって。」

 

康英の後ろから出てきた曜が説明した。

 

「うむ、先ほど渡そうと思ったのだが、なかなか渡せる機会が伺えなくてな・・・。」

 

そう言って康英は一通の書状を梨子に差し出した。

 

「これは・・・?」

 

「それは綱景どのが梨子どのに向けて書いたという手紙だそうだ。康資と戦う前にしたためて兵士に渡していたものをそれがしが代わり受けたのだ。ではそれがしは氏康さまと共に動くのでこれにて・・・。」

 

康英はそう言って去っていった。

 

「綱景さんから私に向けて・・・。」

 

「ねえねえ、何が書いてあるのよリリー!」

 

「そうだよ!読んでみてよ!」

 

「いけませんわ!これは綱景さんが梨子さんに宛てたもので・・・。」

 

梨子への手紙を見て、千歌たちが騒ぎ立てた。

 

「みんな静かにして!今ここで読むから・・・。」

 

梨子はみんなを静かにさせると書状を開いた。

 

 

 

 

拝啓 桜内梨子どの

 

 梨子どのがこの手紙を読んでいるという事は、もう私は既に浄土に旅立っていった後なのでしょうね。まずは梨子どのに辛い思いをさせてしまったことを深くお詫び申し上げます。

 

 おそらく梨子どのは私を討ち取った者を恨みに思うことでしょうが、我ら武士にとってこのような形で死ぬことは本来ならば当たり前の事であるので、私を討ち取った者を過剰に恨むようなことがあってはいけません。強く恨めば恨むほど、それに身を任せて動くようになり、大事なものを見落とし、この戦での私のように無謀な働きを行なってお家や仲間に迷惑をかけてしまうことになるでしょう。ですから、いつものように落ち着いた心持ちで物事にあたってください。

 

 あなたと出会ったことで充実した一年を過ごすことができた私は最高の果報者です。この一年の思い出はどのような誉れや報償よりも素晴らしいものだと私は存じています。

 

 最後に、もし私の倅と共に働くことがあれば、その時は倅をよろしくお願いします。

 

 それではさようなら、桜内梨子どの。貴女と出逢えて本当によかった。

 

 

遠山丹波守綱景

 

 

 

 

「綱景さん…。本当に死ぬつもりだったんだね・・・。」

 

「でしょうね。それでこのような手紙を・・・。」

 

「遠山さんは最後まで梨子ちゃんのことをお弟子さんとして大切に思ってたずら・・・。」

 

「うう・・・。」

 

「なんだろう…。遠山さんは梨子のお師匠さんでありながら、お父さん代わりにも思えてくるね・・・。」

 

「梨子の方こそグレートなマスターを持てて幸せだったでしょうね・・・。」

 

「遠山綱景・・・。リリーのマスターに相応しい男だったのね・・・。それだけにこんな形でいなくなってしまうなんて・・・。」

 

曜、ダイヤ、花丸、ルビィ、果南、鞠莉、善子は梨子への手紙の内容を聞いてそれぞれ綱景へ思いを馳せた。彼女たちは綱景と接することは滅多になかったが手紙の内容から、とても優しい人物であったことを察した。

 

「ねえ、梨子ちゃん。」

 

千歌は肩を震わせていた梨子の肩を優しく叩いた。

 

「何、千歌ちゃん・・・?」

 

「綱景さんは最後に梨子ちゃんと話してた時、別れる前になんて言ったの?」

 

千歌は梨子に、綱景が彼女にどのような言葉を遺したのかを聞いた。

 

「確か・・・、『強く生きろ、梨子。』って言ってた・・・。」

 

梨子はポツリと綱景が最後に言い遺した言葉を口にした。すると千歌は突然梨子のことを抱きしめ、

 

「梨子ちゃん。その言葉・・・、絶対に忘れちゃ・・・ダメだからね・・・!!」

 

と強く言った。だが、その声もまた震えており、最後に至っては嗚咽交じりであった。

 

「うん・・・。うん・・・!!」

 

梨子は涙を流しながら千歌の言葉に何度も頷き、

 

「綱景さん・・・、綱景さん・・・!うわああああああああん!!」

 

と慟哭した。

 

梨子の哀しい叫びは夜の空へ響き渡っていた。この日の夜空は悲しいほどに美しく星々が煌いていた。

 

それはまるで綱景の死を弔うかのようであった・・・。

 

 

 

 

一方国府台城では、北条軍に大打撃を与えた事を祝すのと、兵士たちの正月祝いを兼ねて、酒宴が催されていた。

 

「おおーい、みんな!!北条軍が引き上げていくぞー!!」

 

櫓の上から一人の雑兵が北条軍が西に去っていくのを城内にいる将兵たちに大声で伝えると、国府台城は歓喜の声に包まれた。

 

「おお!北条が逃げていきおったか!!一時はどうなることかと思ったが、これも資正どのと康資どのが遠山と富永を叩きのめしてくれたおかげであるな!!」

 

義弘は上機嫌で功労者である資正と康資を褒めた。

 

「いやいや、それがしは富永直勝をあと一歩というとこで仕留めそこなってしまった故、褒めるなら康資どのを褒めてやってくだされ!!」

 

「康資どのは江戸城代である『北条三家老』の一角を担う遠山丹波守綱景を一騎討ちで仕留めたのでございます!!間違いなく此度の功労者は康資どのでございましょう!!」

 

資正と信茂は康資の手柄を義弘に教えた。

 

「おお!それは見事だ!!政虎どのが関東に攻め入り、江戸城を攻め落とした暁にはお主が江戸城の城主になれるように政虎どのに話しておかなくてはだな!!」

 

義弘が康資に笑顔でそう言うと、

 

「お、おお!それは嬉しゅうございます・・・!」

 

少し上の空気味だった康資は慌てて義弘に感謝の言葉を述べた。

 

「ん?康資殿、いかがなされましたか?どこかお体でも悪いのですか?」

 

まだ若い信茂は康資の様子を見て、具合が悪いのかと思って康資を気遣うが、

 

「ああいや、今日は早朝からの戦であった故、終わってから気が抜けたのか少し眠気が出てな・・・。」

 

と康資は言った。

 

「では今宵は早めにお休みになられた方が・・・。」

 

「いや!せっかく悲願の江戸城城主への道が切り開かれたのだ!今宵は存分に飲ませてもらいますぞ!!」

 

そう言って康資は盃に酒をなみなみと注いで飲み始めた。

 

(そういえば遠山丹波守は康資どのの舅だと聞いたな・・・。信茂どのは気づいていないようだが、舅を自らの手で討ち取ったことを気に病んでいるのかもしれんな・・・。まあ、このような祝いの席でするような話ではないから黙っておくか。)

 

康資と親族同士であり、彼の事情をそれなりに把握していた資正は康資の心情を察したが、康資の気持ちを慮ってそれを口にすることは無かった。

 

国府台城における里見軍の酒宴は夜通し行なわれて、朝方になるころには兵士たちはみんな甲冑や武器を外してそこらじゅうで雑魚寝をしているという有様であった。

 

 

 

 

一方、千歌たちがいる氏政隊は綱成隊と共に国府台城の南側に回り込んでいた。

 

「どうして里見さんたちが酒宴してて油断してるって分かってるのにこんなに進むのが遅いの~!?今なら絶対寝てるだろうからもうちょっとサクサク進んでもいいと思うんだけどな~!」

 

愚痴をこぼしていたのは千歌であった。今は1月なので明け方は寒いし、動きは極めてゆっくりとしたものなので彼女が愚痴をこぼすのも無理は無かった。

 

「ダメよ千歌ちゃん。昨日は綱景さんや直勝さんが相手の伏兵に襲われたせいで大打撃を受けたんだから同じミスがあっちゃいけないのよ。」

 

梨子は凛とした表情で千歌を諭した。その表情はどこか憑き物が落ちているように見える。

 

「うむ、梨子どのの言う通りだ。相手が油断しているとはいえ、万が一のことを想定して慎重に動くのが北条のやり方だ。」

 

氏政も梨子の言葉に同意した。

 

そんなわけで氏政と綱成は、ある程度進むと斥候を送って、伏兵がいないことを確認しながら進んでいた。

 

そしてそんなこんなしているうちに部隊は大手門の前までやってきた。

 

「俺たちはいつでも行けるぞ。」

 

氏政の右隣に馬首を並べていた綱成は小声で氏政にいつでも突撃する用意が出来ていることを伝えると氏政は無言で頷き、軍配団扇を振るい、

 

「突撃せよ!!」

 

と号令を下した。号令を受けた綱成や兵士たちは大手門に攻め上がり、氏政やその周りにいた千歌たちAqoursもその後に続いていった。

 

 

 

 

国府台城の中では急に地響きや鬨の声が聞こえてきたので、何人かの兵士が寝ぼけ眼をこすって起き上がると、

 

「なんだ、地震か・・・?」

 

「いや、地震ってこんな大きな音なんてしねえだろ・・・。」

 

「じゃあなんなんだよ・・・。」

 

などと他愛もないことを話していたが、城門が打ち破られ、

 

 

「「「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」

 

 

と、北条軍の兵士たちがなだれ込んでくると眠気や酔いなどは吹き飛び、城内は大混乱の喧騒に包み込まれた。

 

「敵襲だあああ!!」

 

と一人の兵士が叫ぶも、

 

「うおお!!勝った勝った!!今さら叫んでも無駄だぞ!!勝ったと思い込んで油断して酒宴なんて開きやがって、山内上杉と扇谷上杉と古河公方の河越での失態を忘れたか!!」

 

と綱成の剛槍による一突きで黙らされた。

 

 

氏政と綱成の突撃を皮切りに城の周りに布陣していた他の部隊も次々と国府台城になだれ込んできた。

 

「くそっ!!昨日引き上げていったのは囮だったか!!」

 

義弘は悔しそうにそう叫ぶと、資正や信茂とともに将兵たちを励まして回った。

 

国府台城の中は文字通りの大乱戦となった。

 

 

「よし、千歌どの!みんな!!このまま突っ込むぞ!!これが決戦だ!!」

 

「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」

 

氏政は千歌たちを鼓舞すると、自らも刀を抜いて大手門に飛び込んでいき、千歌たちもまた、氏政に続く形で乱戦に身を投じていった。

 

 

 

 

1564年1月8日の早朝、北条家と里見家による房総半島の覇権を懸けた真の決戦がここに幕を開けた。




いかがでしたでしょうか?


遂に本当の決戦が幕を開けました!!北条軍と里見軍が入り乱れる中、果たして今回の戦でも千歌ちゃんたちは活躍できるのか!?

次回はAqoursの全員が同じ戦場に揃った初めての戦いなので必見ですよ!!



それでは次回もまたお楽しみください!!

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