ラブライブ!サンシャイン!! Aqoursの戦国太平記   作:截流

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どうも、截流です!

皆さん長らくお待たせしました!何とかチマチマ書いていた戦国太平記の続きを更新することが叶いました!!

ホントに事情があるとはいえお待たせして申し訳ありませんでした!そしていつの間にか4000UA突破ありがとうございます!


それではどうぞお楽しみください!!


18話 Aqoursの懐柔作戦その2

「ええ!?なんでダメなのよ!」

 

「いやあ、私も協力したいのはやまやまなんですがねえ・・・。」

 

そう言って元から細い目をさらに細めながら顎ひげを撫でるのは、北条五色備えのうちの一角である黒備えの大将にして、氏康の参謀を務める多目元忠である。

 

「元忠さんは五色備えの一人で、しかも御由緒六家?とかいうのの一人でもあるんでしょ?だったら問題ないんだと思うんですけど!」

 

元忠に対して不平を漏らすのは善子であった。彼女は風魔小太郎にゲリラや攪乱戦術や破壊工作などを習うと同時に、元忠からも軍略の講釈を受けており、黒備えに所属していないにも関わらず黒備えの鎧を着けるお墨付きを得ていた。善子はその縁を活かして元忠に協力を仰ごうとしたのだが、結果は見ての通りである。

 

「確かに私は御由緒六家ではありますが・・・、正直なところそこまで政治的な要職に就けるわけじゃないんですよねぇ。」

 

「嘘ぉ!?幻庵さんが言ってたわよ!御由緒六家って初代の早雲さんの頃からの重臣だって!」

 

善子は納得のいかない様子で反論するが、

 

「確かに御由緒六家は義祖父(じい)さまの代から仕えた重臣ではあるが、お前ら元忠と政繁以外の連中を見たことあるか?」

 

反論をしたのは元忠と一緒に碁を打っていた北条五色備えの赤備えの大将、北条綱高だった。

 

「え?そ、それは・・・。」

 

思わぬ反撃が返って来て善子は困惑する。

 

「荒木、在竹、荒川、山中・・・。大道寺と多目以外の御由緒六家の連中はみんな俺たち五色備えか『衆』の麾下に入っちまって実質格落ちしちまってるのが現状さ。まあ、このご時世家柄だけじゃやってられないって事さ。でもあいつらは無能ってわけじゃないから五色備えより下の『二十将』に就いてるがな。」

 

「へえ・・・ってなんで綱高さんがこんなとこにいるのよ!!」

 

「なんでってずいぶんな言い草だなオイ。俺と元忠が碁を打ってるところにお前さんが来たんじゃねえか。」

 

「綱高どのとは古い付き合いなんですよ。」

 

「そうなの?」

 

「おうよ、俺は元忠の親父どのである元興どのから兵法を習ったんだからな!」

 

「まさか紅蓮の闘将が漆黒の謀将の兵法の極意を掴んでたなんて・・・!」

 

善子は脳筋だと思われがちな綱高の意外な一面に驚きを隠せなかった。

 

「何言ってるかは分からんがすげえ失礼な言われ方してるのはなんか分かるぞ。」

 

「まあまあ、とにかく善子どのに頼まれた件に関しては重要な支城を任されてるわけでも無い私には政治的な影響力はあまりありませんので他の人に頼んだ方が得策でしょうね。あ、署名は書かせてもらいますね。」

 

「俺も一応氏康どのとは義兄弟だけど、就いてる役職があれだからなあ・・・。」

 

「あれって何なのよ?」

 

「俺、玉縄城の城代なんだよ。だから俺に頼むよか綱成と康成に頼んだ方が早いぜ。あ、俺も署名書くから元忠、書き終わったら筆貸してくれ。」

 

 

 

 

「はあ・・・。せっかく青木城まで来たのにこれじゃ他の子たちみたいな大きな収穫が無いじゃない!」

 

善子は元忠と綱高からもらった署名を片手に、ふて腐れながら帰っていた。青木城とは今の横浜のあたりにあった城で、多目家の持ち城となっている。

 

「他の人を当たろうにももう他の子たちが着いてる頃だろうし・・・。タイムスリップしても不幸な運命から逃げられないなんて、ヨハネはどうすればいいのよー!!」

 

「なるほど、お主らAqoursの面々が裏で何やらこそこそ動き回ってると思ったらそういうわけだったか。」

 

善子が一人で不平不満を吐き出していると、いつの間に何者かに背後をとられていた。

 

「なっ!?・・・って風魔さんじゃない、脅かさないでよ。」

 

善子は自分の背後に立っていた風魔小太郎の顔を見てため息をつく。

 

「別に我は驚かせる気は微塵もなかったのだがな。それよりもお主らは重臣たちの屋敷に出入りしているが一体何をしておる。もし北条に刃を向けるのならお主らには消えてもらわねばならんぞ。」

 

小太郎は善子に向けて少しだけ殺気を放つ。

 

「別にそんなことしないわよ!ヨハネたちは氏政さんと梅さんの離縁を止めたいだけなの!」

 

「ほう、氏政さまの命を受けて重臣たちを工作しているのか。」

 

「違うわ!これはヨハネたちが勝手にやってることよ!氏政さんは関係ないわ!!」

 

「何故介入しようとする?」

 

「不幸を背負うのはこの堕天使ヨハネだけで充分・・・。不幸に見舞われる者がいたら肩代わりしてあげるだけよ・・・。」

 

そう言う善子の脳裏には氏政と梅の悲しげな顔が映っていた。

 

「・・・。」

 

小太郎はそれを黙って聞いていた。

 

「・・・そうだ!ねえ風魔さん!ちょっと頼みたいことがあるんだけど!」

 

善子は突然、何かを思いついたのか目を輝かせながら小太郎に詰め寄った。

 

「いや、我は特に何をすると言うわけでも無いんだが。」

 

「とにかく!聞くだけ聞いて行ってよ!!風魔さんにしかできないことなんだけど・・・。」

 

善子は小太郎に思いついた策を伝えた。

 

「ふむ、それだけでよいのか?」

 

「ええ、それだけでいいわ!!」

 

「承知した。一度だけなら弟子の頼みを聞くのも悪くはないな。」

 

小太郎はそう言うと姿を消した。

 

「・・・全く、ヨハネってば堕天使なのに堕天使らしくないことをしてしまったわね。」

 

小太郎が消えた後の静かになった道端で善子は、誰に言うでもなく静かに呟いた。

 

 

 

 

場所は変わって小田原城の城下のとある屋敷にて・・・。

 

「おっほん!私が松田憲秀である。お主と話をするのは初めてであるな、黒澤ルビィどの。」

 

「ぴぎっ・・・!初めまして、黒澤ルビィです・・・。」

 

ルビィの正面に座っている男の名は松田憲秀。彼は北条家の家臣の中でもトップクラスの家柄を誇る三家老の中でも最も位の高い松田家の当主である。その領地は幻庵のものを除けば最も広く、その権力も北条家一門に次ぐものである。その佇まいも筆頭家老らしく大道寺政繁とも違う余裕と威厳に満ちていた。

 

(憲秀さん、すごい口髭だなあ・・・。)

 

ルビィは憲秀の顔を見ながらそんなことを考えていた。彼の口髭は某共産主義国家の某独裁者を彷彿させるような立派なものであった。こんなことを言うと脂ぎったおっさんの姿を連想するかもしれないが、彼は氏政とは3歳しか歳が違わなかったりする。(氏政はこの時31歳、憲秀は34歳)

 

「そういえばルビィどのはダイヤどのの妹であったかな?」

 

「は、はい!そうです・・・。」

 

父親以外の男性が相手でもちゃんと会話できるようになってるのは修行の賜物である。

 

「うむ、ダイヤどのは年若い娘でありながら知恵のある聡明な娘であるが故、私も評定衆の面々も評定(会議)が捗って助かっておるのだ。いずれ何かしらの礼をしなくてはならんのう。」

 

「は、はあ・・・。」

 

突然世間話を始めた憲秀に対してルビィは呆気にとられた様子で返事をした。

 

「して、一体この私に何の用があるのかねルビィどの?お主の姉であるダイヤどのには世話になっているから私のできることであるなら何でも言ってみるといい。」

 

「本当ですか!?」

 

ルビィは憲秀のその言葉を聞いて表情を晴れやかにした。

 

「うむ、私にできることなら何でも構わんよ!」

 

ルビィの言葉に対して憲秀はドヤ顔で答えた。

 

「じゃあ・・・、氏政さんと梅さんの離縁を阻止するのに協力してください!!」

 

「なんだ、その程度のことならこの松田憲秀に任せ・・・ってぶほっ!!?ゲホッゲホ!!」

 

憲秀はルビィの言葉を聞いて思いっきりむせ返った。

 

「大丈夫ですか憲秀さん!?」

 

「ゴホゴホッ・・・。る、ルビィどの・・・。いくらなんでもそれはできんよ君ィ・・・。」

 

「ぴぎ!?ど、どうしてなんですか・・・?」

 

「うむぅ、私は筆頭家老だ。それはつまり氏康さまと氏政さまの両方に仕えるという事だ。ただでさえ奥方様と離縁するようにという氏康さまのお言葉を氏政さまに伝えたことで、氏政さまからの覚えがめでたく無くなってる可能性があるのだ・・・。かと言って氏政さまに味方して離縁を止めようとすれば今度は氏康さまからの覚えがめでたく無くなる・・・。つまり今の私は氏康さまと氏政さまの間で板挟みとなっておるのだ・・・。」

 

憲秀は頭を掻きながら動けない理由をルビィに話した。

 

「そうだったんですか・・・。でも、憲秀さんはどう思ってるんですか?」

 

「どう思ってるか・・・か。私としてはあまりこのような家中に波風を立てるようなことは起こって欲しくないと思っておる。」

 

「じゃあ・・・!」

 

「とはいえ私は動くことは出来ん、私は中立を貫かせてもらうよ。悪く思わないでくれたまえ・・・。」

 

憲秀は力なくそうルビィに語った。

 

(どうしよう、このままじゃ・・・。こうなったらお姉ちゃんが教えてくれた『いざという時のための技』を使うしか・・・!)

 

ルビィは憲秀の言葉を聞いて思い悩むと同時にダイヤから授かったとっておきの策を思い出した。

 

「あの、憲秀さん!本当に・・・本当にダメなんですか・・・?」

 

「すまんルビィどの・・・。私にも私の立場があるのだ・・・。」

 

憲秀はそう言い、その場から去るために席を立った。

 

「本当に・・・ダメなんですね・・・?」

 

ルビィは俯きながら自分の胸を掴んで涙声で声を絞り出す。

 

「る、ルビィどの?す、すまぬ!泣かないでくれたまえ・・・!」

 

驚いた憲秀はルビィをなだめるためにもう一度ルビィと向き合う。ルビィはそのタイミングを見計らって、

 

「憲秀さん、おねがぁい!!」

 

目を潤ませておねだり攻撃を放った。とっておきの策というのはダイヤ直伝の『南ことりのおねだり攻撃』だったのだ。

 

(ぬおお!?なんだこれは!?ただでさえルビィどのはAqoursの面々の中でも庇護欲をそそる面立ちをしていると家中では評判であったが、そのつぶらな瞳を潤ませ、鈴を転がすような声でねだられては・・・。いや、流されるな憲秀!私は北条家筆頭家老だぞ!このようなものに屈しては・・・!だがしかし・・・。)

 

憲秀は脳内で葛藤しながらもう一度ルビィの顔を見た。

 

「だめ、ですか?」

 

ルビィはダメ押しと言わんばかりに首を傾げてみせる。

 

「あ・・・。」

 

憲秀の中で、何かが切れた。

 

 

 

 

「ごめんなさい憲秀さん、ルビィのわがままを聞いてもらって・・・。」

 

「よいのだルビィどの。筆頭家老たる者、下の者の頼みを聞くのも役目のうちだ。上手くやりたまえよ。」

 

「はい!ありがとうございます!!」

 

ルビィはそう言って憲秀の署名を持って帰っていった。憲秀はその背中を見守っていた。

 

「申し訳ありません、氏康さま・・・!」

 

憲秀は小田原城の方を見て頭を下げて呟いた。

 

(なんだろう、私は何か大事なものを失くしたかもしれん。だが、それなのに何故か清々しい気分だ・・・。)

 

その顔はどこか晴れやかなものだったと、憲秀の屋敷に仕えていた者たちは語っていたという。




いかがでしたでしょうか?


今回は善子ちゃんとルビィちゃんのターンでした!元忠さんと綱高さんは五色備えの大将であったという事以外の詳細な役職の記録が全然残ってなかったので二人に関しては苦労しました・・・w


ちょっと若干短いと思われますが、実は1話にまとめていたダイヤさまと花丸ちゃん、そして千歌ちゃんの懐柔作戦が思いのほか長編になったので、何とか区切りのいいここでカットさせてもらうことになりました。

懐柔作戦その3も近いうちに更新しますのでご期待ください!!



それでは次回もまたお楽しみください!!

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