ラブライブ!サンシャイン!! Aqoursの戦国太平記 作:截流
今回は連続更新第2弾目にして、いよいよ氏政夫妻離縁騒動の決着です!結末をその目に刻んでください!!
それではどうぞお楽しみください!!
千歌たちが氏康に対して氏政と梅の離縁を取り止めるように説得をしている最中、氏康の正室である瑞穂が現れた。彼女は氏康とほぼ同年代とされている説が有力であったが、その姿は夫と比べると実に若々しかった。
「氏康さんの奥さま・・・初めて見ましたわ・・・!」
「ていうかなんか氏康さんに比べると若くない!?」
ダイヤが驚くのも無理はない。何故ならAqoursは氏政の屋敷にいるので、氏康の屋敷にいる瑞穂とはほとんど会ったことが無いのだ。
「失礼ですが・・・、おいくつなんでしょうか?」
「ふふ、いくつに見えます?」
「だいたい・・・30代から40代前半・・・?」
梨子が質問すると、聞き返されたので真剣に考えて言うと、
「おほほ、はずれです。私は今年で49になります。」
と朗らかに笑って言った。
『えええええええ!?』
梨子たちは見た目の若さと年齢のギャップに驚いた。
「それはわしの自慢の妻だからな!・・・ではなくて何故ここにいるのだ?」
「それは私が呼んだからです!!」
氏康が瑞穂にたずねると、代わりに千歌がドヤ顔で答えた。
「千歌さんが呼んだんですか?」
「おら達聞いてないずら~。」
「えへへ、ごめんね~。ホントは皆に言おうと思ったんだけど忘れちゃってて・・・。」
「千歌さんらしいうっかりですわね・・・。」
千歌はルビィと花丸に平謝りすると、ダイヤは呆れたようにため息をついた。
「話はこの子から聞きましたわ。」
「う、うむ。」
「我が子が恥辱を加えられたからと言って、その責を相手の子に背負わせるのは良くありませんよあなた。あの時に何があっても守ってくれると言った人が息子の妻を追い出そうとするだなんて、それではあなたがあの時理不尽に思ったお義父さまと同じになってしまいますわ?私はあなたのそういう姿を見るのは非常に悲しく思います。」
「うむ・・・。」
普段は威厳に溢れる氏康であったが、妻に諭されるその姿はまるで叱られてしょげる子供のようであった。
「なんだか、これでもう解決しそうだね。」
「うん。これなら『秘策』は必要なかったかもしれないわね。」
「本当は秘策だけじゃ足りないかなって思って瑞穂さんに声を掛けたんだけどね~。」
千歌と曜と梨子の3人が話していると、
「ん?そう言えばさっきから言ってる『秘策』とは一体何なんだ?」
と氏政が千歌たちに話しかけると、千歌たち9人は笑って、
「それはですね・・・。」
「噂をすれば来たみたいですわよ。」
と果南とダイヤが言うと、どこからか『どどどどど・・・。』と小走りしているような足音が聞こえてきた。するといきなりまた千歌たちの後ろの襖が開き、
「父上!!」
と一人の女性が怒鳴りながら入って来た。その姿を見た氏康は大いに驚いた。
「あ、綾!?」
そう、彼女こそが今川氏真の妻で、今回の離縁騒動の理由の一つでもある綾姫であった。
「父上!話はそこの子たちから聞いたわ!!なんで私が這う這うの体で帰って来たからって氏政の奥さんの梅さんが追い出されなきゃいけないのよ!!」
綾は氏康に掴みかからんばかりの勢いで詰め寄る。
「そ、それはお前や氏真どのを追い落とした信玄への報復措置であってだな・・・。」
「それは信玄が悪いんであって梅さんは何も悪くないでしょう!?それに私だってもう30過ぎてんのよ!?それなのにそんな風に子供の喧嘩に親が出てくるみたいな真似されたらこっちが恥ずかしいからやめてよね!!」
「す、すまぬ・・・。」
「あ、姉上。流石に皆の前で父上をそこまで責めるのは・・・。」
恥ずかしい話を暴露され、母に諭されるだけでなく、姉に責められる父の姿を不憫に思った氏政が綾を止めようとすると、
「新九郎!あなたもあなたよ!!夫なら妻のことをしっかり守りなさいよ!昔っから押しが弱いのほんとに変わらないわね!?助五郎(氏規)よりも年下の女の子に助けてもらうなんて恥ずかしいわよ!!」
と、氏政もとばっちりを喰らう羽目になった。
「なんか凛さんよりも気が強いかも・・・。」
千歌がそう呟くと、Aqoursの他のメンバーもみな頷いた。
「言ったろう?凛は姉上と似てるって・・・。凛は見た感じが大人しいからまだしも・・・。」
「姉貴は見た感じも勝ち気に見えるからなあ・・・。」
氏照と氏邦は苦笑いしながら千歌たちに小声で語った。
それから綾による説教は1時間ほど続いた・・・。
そして1時間後・・・。
「と、いうわけで此度の氏政とその正室である梅どのの離縁は取りやめることにする。」
『やったあ~~!!』
「はい!!ありがたき幸せにございます父上!!」
氏康の宣言に千歌たちAqoursは歓喜の声を上げ、氏政は感謝の言葉と共に平伏した。
「ありがとうAqoursのみんな!!みんなのおかげで梅を失わずに済んだ!!本当にありがとう・・・!」
氏政は千歌たちに礼を言った。
「いえいえ!私たちはほとんど何もしてませんよ~。お礼を言うなら綱成さんと幻庵さんと瑞穂さんと綾さんに言ってください!」
千歌は照れ臭そうに言った。
「そうだな!綱成どの、大叔父上、母上、そして姉上!みんなのおかげで妻を失くさずに済みました!!そして父上、此度は寛大な処置に感謝いたします!!」
と氏政は今度は氏康たちに頭を下げた。
「頭を下げずともよい。わしも年老いたのか感情的になりすぎた。これからは国だけでなく家族も守っていくのだぞ。」
氏康も先ほどと打って変わって優しげな声で氏政に言った。
「そんなことより、愛しの妻に報告したらどうだ?」
「そうそう、梅さんに離縁しなくていいってこと教えてあげなさいよ。」
「ああ!言ってくる!!」
氏政は綱成と綾に促されると駆け足で梅の下へ走っていった。
「綾さん、まだ病み上がりなのに力を貸してくれてありがとうございました。」
千歌がそう言って綾に頭を下げると、
「いいのよお礼なんて。家族の絆を繋ぎ止めるのが長女の仕事ですもの。氏親兄さまとの約束でもあるしね。」
綾は手を振りながら言った。
「氏親さんってお兄さんがいたんですか?」
「ええ、子供の頃に死んじゃったんだけどね。死ぬ前に兄さまに言われたのよ。『もし家族の誰かが仲違いしそうになった時は間に入って仲直りさせてやってくれ』ってね。」
綾は遠くを見るような目で千歌たちに話した。あまり知られてはいないが、氏政は長男ではなく次男であり、新九郎氏親という兄がいたのだが、氏親が若くして亡くなった事で嫡男となったのだ。
「そんなことがあったんですね。」
「ええ、だから私もあなた達の誘いに乗ったのよ。あ~でもほんと疲れた!じゃあ私は屋敷に戻って休むわね。」
綾はそう言うと屋敷に戻っていった。
「じゃあ私たちも氏政さんの屋敷に戻ろっか。」
曜がそう言って千歌たちが部屋を出ようとすると、
「待ってくれ。」
と氏康が呼び止めると、いきなり頭を下げた。
「千歌どの。先ほどは感情に任せてとんでもないことを言ってしまった。どうか許してほしい。」
「そ、そんな!私も調子に乗っていろいろ言いすぎました!!だから頭を上げてください!!」
千歌も慌てながら言うと、
「わしは危うく過ちを諫めてくれる者を罰するところであった。その詫びと言ってはなんだが、何か褒美を与えたいのだが・・・。」
と氏康は頭を上げて言った。すると千歌は首を横に振り、
「いいえ、私たちはご褒美が欲しくてやったんじゃなくて、氏政さんと梅さんの笑顔を守るためにやったので・・・。だからご褒美は私たちが何か手柄を立てた時で大丈夫です!では、私たちはこれで。」
と笑顔で言って、他のメンバーと一緒にお辞儀をしてから部屋から出て行った。
「そうか・・・。実に清廉潔白な者たちだ。いずれ元の時代に帰すことになると思うと実に惜しいものだ。」
氏康は千歌たちの背を見ながらしみじみと呟いた。
そして氏政の屋敷にて・・・。
「梅!梅ー!!」
「まあ氏政さま、どうかなさったのですか?何やらとても嬉しそうですが・・・。」
梅は部屋に駆け込んできた氏政を見て怪訝そうな表情をして言った。
「梅、落ち着いて聞いてくれ。俺たちは離縁する必要が無くなったのだ!」
「・・・え?」
梅は一瞬理解できなかったのか首を傾げた。
「だからお前は武田に帰らずともよくなったのだ!!」
氏政が大げさな身振りで言うと、
「つまり、氏政さまと国王丸たちと・・・子供たちと一緒にいても良い、ということですか・・・?」
と梅は氏政に聞き返した。
「ああそうだとも!これからもずっと一緒だ!!」
氏政は満面の笑みで答えた。
「・・・夢ではないのですね?」
「ああ、夢じゃない。夢じゃないとも・・・!」
氏政が梅の肩を優しく掴みながらそう言うと、
「嬉しい・・・!あなたとこれからもずっと一緒にいられるなんて、梅は幸せです・・・!」
梅は大粒の涙を流しながら氏政の胸に飛び込んだ。もちろん、その表情は曇り一つない笑顔であった。
「俺もお前とこれからも一緒にいられる事ができて幸せだ!これからもお前を守り続けるぞ・・・!」
氏政も、涙を流しながら梅を優しく抱きしめる。
「うう・・・、氏政さんも梅さんも本当によがっだね゛・・・!!」
「もう、千歌ちゃんってば泣きすぎだよ・・・。」
「曜ちゃんだって泣いてるじゃない・・・。」
「だ、堕天使はこんな純愛ラブストーリーで泣かないんだからね・・・!」
「善子ちゃん、そんな事言ってるけど目が真っ赤になって顔もぐしゃぐしゃになってるずらよ?」
「お姉ちゃん、よかったね・・・!氏政さんも梅さんも嬉しそう・・・!」
「ええ、やはりあのお二人は一緒が一番ですわ・・・。」
「ほんと、無事に済んでよかったね。」
「これこそ本当の愛の力ってヤツね!ワンダフル!!」
部屋の外から二人の様子を見守っていたAqoursも、みんな号泣していた。
「・・・歴史は変わってしまいましたが多分これでいいのでしょうね。」
ダイヤが小声で呟くとそれを聞いたルビィが、
「え!?私たち歴史を変えちゃったの!?」
と驚き、他のメンバーにも緊張が走った。
「ダイヤさん、本当の歴史だと2人はどうなってたの?」
千歌がたずねると、
「2人はそのまま離縁することになってましたわ。もちろん氏政さんは国境まで見送ったそうですが、梅さんは氏政さんと別れた悲しみによる心労で一年余りで亡くなってしまったそうですわ。」
とダイヤは答えた。
「ねえ千歌、私たち歴史を変えちゃったけどこの後はどうするの?」
「そうだね。もしかしたら歴史が変わって私たちも・・・。」
果南と曜が千歌にそう言うと、
「大丈夫だよ!私たちの絆は歴史が変わった程度じゃ切れないよ!!だって今も私たちはこうして一緒にいるんだよ?だから絶対大丈夫だよ!!」
と、千歌は屈託のない笑顔でそう言った。
「千歌っちの言う通り!私たちAqoursは何者にもバラバラにできない強い絆があるんだからそれを信じましょ!」
「鞠莉さん・・・。そうですね、私たちの絆は不変にして不滅!その言葉を胸に刻みましょう!!」
『おお!』
鞠莉の言葉を聞いたダイヤの鼓舞に千歌たちは小声で応え、しばらくそのまま部屋で寄り添っている氏政夫妻を見守った。
戦国時代に舞い降りた少女たちは、一組の夫婦の愛と絆を救うために歴史を変えた。
歴史が変わった以上ここから先は何が起こるかは誰にも予測できない。だがこれだけは断言できる。彼女たちの絆は絶対に絶えることは無い・・・と。
そして彼女たちは一組の夫婦の愛と絆を救った喜びを胸に抱きながら、戦場へと歩みを進める。
いかがでしたでしょうか?
展開自体は少しばかり粗削り感がありますが、やはり北条家ファンとしてこの北条氏政とその妻である黄梅院(梅)の離縁はなんとしても防ぎたかったのでこのような展開となりました。
さて、次回から遂に武田軍との戦いが幕を開けます!私の作品を読んでくださっている方々なら知っているかもしれないあの人物も千歌ちゃんたちと出会いますので、楽しみにしていてください!!
それとUAが5000を突破しましたので、この場でお礼を申し上げます!この作品を読んでくださり、本当にありがとうございます!!
それでは次回もまたお楽しみください!!