ラブライブ!サンシャイン!! Aqoursの戦国太平記 作:截流
今回もいつもに比べて早い更新となります。
そして今回は、というか前回のラストで遂にあの男が登場しました!!果たして彼は何を語るのか・・・。
それではどうぞお楽しみください!!
薩埵峠付近の森で交戦していた千歌たちAqoursと武田勝頼の間に現れたのは、なんと武田軍の総大将である武田信玄だった。
「でもどうしてお姉ちゃんはあの人が信玄さんだって分かったの?」
「それはあの兜ですわ。あの兜は武田信玄が被っていた物として私たちの時代まで長く伝えられていて、武田信玄を知る人たちは多分あの兜をかぶってる姿をイメージしてますの。もちろん私も例外ではありませんが。」
ダイヤはルビィやみんなに自分が壮年の将が武田信玄だと分かった理由を教えた。
「父上、何故ここに!?」
勝頼もまた父がこの場に現れたことに驚きを隠せなかった。
何故なら信玄は用心深い性格で自分にそっくりな弟の信廉を影武者に仕立て上げたり、戦では基本的に前線には出ずに本陣で床几に腰かけながら軍勢を手足のように指揮していることから、このような場所に来るわけがない、と勝頼は考えていたからだ。
「なあに、弾正から四郎が信豊と共に物見に出たというのを聞いてな。お主は義信に代わる次代の武田を担う男なのだから軽々しく前線に出るなといつも言っておるではないか。」
「ですが父上!俺は元はといえば諏訪家を継ぐはずであった身、それ故に本家に出戻ってきたことを快く思わない者も少なくないのです!!だからこそ俺は前線に立ち、手柄を立て、武田の次代を担うに相応しい男であると家臣たちに証明し続けなくてはならないんです!!」
「・・・。」
信玄は勝頼の勇猛さをたしなめたが、勝頼はそれに反発した。
「何を話してるんだろ?」
「分かんない。でも勝頼さんと信玄さんの間にも何か複雑なものがあるんじゃないかな・・・。」
千歌は首を傾げ、曜もまた詳しいことは分かっていながら勝頼の表情から何かがあることを察していた。
「千歌どのー!!Aqoursの方々ー!!」
『氏政さん!!?』
千歌たちが信玄と勝頼の話を聞いていると、今度は彼女たちが来た道から氏政がわずかな供を率いてやって来た。
「どうしてここに!?」
「それはだな梨子どの、何せお主らがなかなか戻ってこない上にこっちの方から爆音やら煙が上がったりしていたものでな。もしやと思って駆けつけてみたらこの有り様ということだ。」
「そうなんですか。」
氏政は千歌たちに来た理由を説明すると信玄たちの方に視線を移した。
「お久しぶりです、信玄どの。そしてお初にお目にかかる、勝頼どの。北条左京大夫氏政です。」
「おお婿殿・・・いや氏政よ、久しぶりであるな。最後に会ったのは永禄6年(1563年)の松山城攻めの時だったかな?」
氏政が信玄に語り掛けると信玄もまたそれに応じる。
「ええ、そうですね。」
「あの時はまだまだ柔弱な面持ちであったが、5年も経てば見違えるものだのぉ。梅は息災か?」
「はい。梅は息災にしております。子宝にも恵まれております。」
「ふふ、いくら敵になったとはいえ嫁いだ娘は心配でな。噂によれば氏康め、梅をこちらに突き返すつもりであったとか。」
信玄はどこから聞きつけたのか、梅が氏政と引き離されそうになったことを氏政にたずねた。
「はい。私は反対しましたが父上の意思は固いものでした。しかしここにいる千歌どの達の尽力で何とか離縁を免れることができました。」
「ふむ。そういえば、この娘たちは先ほどまで四郎と戦っておったが何者なのだ?もしや妾などというわけではあるまい?」
「そのようなものではございません。彼女たちは400と数十年先の時代からやって来た者たちで、北条家の客将なのです。」
氏政は千歌たちの事を信玄に紹介した。
「400と数十年先の時代・・・とな。にわかには信じがたいが、確かにこの時代の民と比べると何かが違うようにも見えるな。それに9人がかりとはいえ、あの四郎を相手に善戦し傷まで負わせるのだから女であっても武士としてはなかなかのものだな。」
信玄は千歌たちの事を品定めするように見ながらそう言った。
「あの、信玄さん。」
「む、何かね。」
「一つ聞きたいことがあるんですけどいいですか?」
すると千歌が前に出て信玄に声を掛けた。
「別に構わぬが、お主が未来から来たという者たちの頭か?」
「はい!高海千歌って言います!!」
千歌は信玄に対しても臆することなく名を名乗った。
「ふふ、わしを前にして怖気づかぬとはなかなか剛胆な娘じゃ。それで千歌どのと言ったな、何が聞きたいのだ?何でも答えてやろうぞ。」
信玄は千歌の態度が気に入ったのか嬉しそうに笑いながら言った。
「信玄さんはどうして同盟を破って、息子さんを殺してまで今川さんを攻めたんですか?」
「ちょっ千歌ちゃん・・・!流石にそれは・・・!」
千歌のあまりにも思い切った質問に梨子をはじめとしたAqoursのメンバーは驚きを隠せず、梨子もそれを諫めようとするが、
「信玄さんも甲斐と信濃を持ってる大大名なんですよね。それなのに何で味方だった今川さんを攻めて駿河を奪ったんですか?そのせいで綾さんは徒歩で小田原にまで逃げ帰らなきゃいけなくなって、それに氏康さんが怒って梅さんを氏政さんから引き離そうとしようとすることになっちゃったんですよ?」
千歌はそれでもやめようとしなかった。
「それに関しては私からもお聞かせ願いたいものです。なぜ信義に背いてまで駿河を欲したのかを・・・!」
氏政もまた、信玄にたずねた。
「簡単な話よ、甲斐は貧しい。だから民を食わせるには領土を広げねばならんのだ。信濃は甲斐に比べれば土地も肥沃であったがそれでもまだ足りず、わしは海を目指したのだ。」
「海、ですか?」
信玄の言葉に千歌は首を傾げる。
「うむ、海があれば買わずとも塩が取れる上に交易で莫大な富を得ることが出来る。だが南には義元や氏康といった強豪がいるので進めぬ。だからわしは越後を目指した。もっとも、上杉謙信がいたのは最大の誤算であったがな。だがわしにもツキが来た。義元が桶狭間で死に、跡を継いだ氏真には大名としての器が無い。だからこそ織田や徳川に駿河を取られる前にわしが取ろうと思ったのだ。」
信玄は利益のために氏真を攻めたことを語った。
「そんなの、自分勝手じゃないですか!それで自分の息子さんを殺して、梅さんまで不幸にするなんて・・・!」
千歌は信玄の言葉に怒りを覚え、彼に反論したが、
「そうとも、わしは勝手な男じゃ。だがその勝手さがあるからこそ甲斐の、武田の民は飢えずにすむのよ。人間の欲とは際限ないものだ。ひとたび何かを手にすればさらに欲しくなるからな。」
信玄はどこ吹く風といった様子で千歌に言い返した。
「それに欲とは人として生きる以上切り離せないものだからのぉ。それを捨てるというのは人であることを辞めることと同じじゃ。そんなことができる者などそうそうおらんわ。もっとも越後の、己を『毘沙門天の化身』とうそぶいてるうつけ者がいるが、あれは例外だな。」
信玄は上杉謙信を引き合いに出しながら自分の『欲』に関する持論を千歌たちに語り聞かせた。
「・・・。」
千歌もそれに反論することが出来なかった。
「ですが、信玄どののやり方は間違っている。筋が通っていない。そのような節度を持たないやり方ではいつか・・・。」
「この乱世で節度なんぞ守って何になるというのだ。太平の世なら信義や節度は必要かもしれんが乱世には不要なものだ。乱世に必要なのは欲と力よ、お主の曽祖父も祖父も、父である氏康もそうやって領土を拡大してきた。それにお主のその『節度を貫く』という思いも『欲』の一種だとは思わんか?」
「それは・・・。」
「まあ、お主も義信と同じくまだまだ青い。いずれわしの言葉の正しさが分かるはずじゃ。ではさらばだ、次は戦場で会おう。行くぞ四郎。」
信玄はそう言うと馬に乗り、勝頼たちと共に去ろうとしたが、
「待ってくれ信玄どの!」
と氏政が呼び止めた。
「まだ何かあるのか?」
「これを梅から渡してほしいと。」
氏政は梅から託された書状を渡した。信玄はそれを受け取ると、
「うむ、ではな。」
とだけ言って去っていった。
「なんか納得いかないな~。」
本陣へ戻る道の途中で、千歌は不満げに呟いた。
「信玄さんが言ってた事?」
「うん。」
曜がたずねると千歌は頷いた。
「まあ、確かに信玄さんのやり方がいいものとは思えないけど信玄さんの言い分は分からないでもないと思うよ。」
「そうだね。人ってどこかわがままなところがあるものね。」
「信玄さんはきっと企業の社長になればすごく活躍すると思うわ!性格はともかくハングリー精神は一流ですもの!」
「信玄さんもお寺に入って修行すればきっと煩悩もとれるはずずら~。」
「花丸さん。信玄さんは一応出家してますわよ。」
「人間とは欲に塗れた罪深い存在・・・。だから人は堕天するのよ。」
「善子ちゃんのそれはなんか違うと思うよ。」
曜たちもそれぞれ自分たちが思ってる事を話した。
「千歌だって、美渡姉とプリンを取り合ったりしてるじゃんそれと一緒だよ。」
「嘘だぁ!」
「ほんとほんと。」
千歌は果南の言葉に納得いかない様子だった。
「じゃあ信玄さんは私と美渡姉の喧嘩とやってることが変わらないってことなのかなぁ。」
「まあ、変わらないっていうか・・・、規模がすごく大きくなってるだけだと思うよ。」
梨子が千歌の言葉に対してそう付け加えると、
「な~んだ。なんか深刻に考えるのが馬鹿馬鹿しくなってきちゃうな~!」
と千歌は笑って言った。
「そう言えば氏政さん。」
「どうした曜どの。」
「さっき信玄さんに書状を渡してたけど、あれって何?」
曜は氏政に、信玄に渡した書状の中身をたずねた。
「あれか。あれの中身は梅に見せてもらったが、信玄どのはきっと驚くぞ。」
「なになに?中身は何なんですか!?」
曜が目を輝かせながら聞くと、氏政は笑いながら語った。
「それはだな・・・。」
その夜、武田軍の本陣。
「父上、それは一体?」
「うむ、梅からの書状じゃ。」
「姉上からの?」
「ふふふ。実はな、梅には北条に嫁ぐ前に『もし盟約が破れる事があれば、北条の情報をわしに流せ。』と言っておいたのじゃ。」
「しかし、氏政はその中身を読んでるのでは?」
勝頼は訝しげに言うが、
「心配いらんよ。あの男は梅に惚れきっておる。万が一にも疑うようなことはせんじゃろう。さ~て、さっそく読むとするか。」
信玄はそれを笑い飛ばして書状を開き、中身を読んだ。
「・・・。」
「どうしたんだ父上?いきなり黙りこくって。」
梅からもたらされた情報が入っているなら喜びでもしそうなはずなのに、まったく言葉を発しない信玄に勝頼は不思議に思いながら話しかけると―――――
「なんじゃこれはあああああ!!あの若造め、よくもうちの娘をたぶらかしてくれたな畜生おおおおお!!もう今日は寝る!!ふて寝じゃふて寝!!」
といきなり激高すると書状を地面に投げ捨ててそのまま寝所に行ってしまった。
「な、なんだいきなり・・・。それにしても何を書いたんだ姉上は?」
勝頼は呆然と父の背を見送り、投げ捨てられた書状を見た。
『拝啓 父上様。
お久しぶりです、お元気ですか?私は氏政さまと、国王丸ら子供たちと共に健やかに暮らしております。父上が盟約を破り駿河をお攻めになったこと、しかとこの耳に入れました。父上は『盟約が破れた時は速やかに北条家の内情や機密を流せ。』と仰っておりましたが、私は北条家当主たる左京大夫氏政の妻であり、北条家の女であるのでそのような事はできません。そういうわけですのでこの文にてそれをお伝えします。』
書状にはそう記されていた。
「ふ、ははははは・・・。姉上もなかなか面白いことをなさるものだ。」
信玄の事を大名や武将として尊敬こそしているが人間的にはあまりよく思ってなかった勝頼は梅の書状を見てひとしきり笑うと、それをかがり火にくべて燃やし、自分もまた寝所へと向かった。
―――――――薩埵峠の対陣の最中に起きた奇妙な一日は、静かに幕を下ろすのであった。
いかがでしたでしょうか?
今回はいつもに比べて更新が早いですが、大体更新が早い時は一話分で投稿するには長すぎると感じた話を半分にカットして調節したりしてるという横着があったりしますw
そして次回は綾姫の夫である最近えらく再評価されてるあのファンタジスタが登場します!どんな感じの人なのかは次回を読んでのお楽しみです!
それでは次回もまたお楽しみください!!