ラブライブ!サンシャイン!! Aqoursの戦国太平記   作:截流

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どうも、截流です。

今回は本日2回目の更新となります!


それではどうぞお楽しみください!!


30話 愛された少年

「ほう、そんなことがあったのか。」

 

「はい、養父上。」

 

その日の夜、三郎は久野にある幻庵の屋敷に立ち寄って昼にあった氏政たちとの出来事を幻庵に話した。

 

「上杉に行く件についてはわしから氏康に伝えておくでな。」

 

「かたじけのうございます。」

 

三郎はそう言って幻庵に頭を下げる。

 

「なあに、わしとお主は今や親子同士。そう改まって礼を言う必要はないぞい。」

 

「いえ。だからこそ礼を言わずにいられないのです。」

 

「む?」

 

「私が上杉に行くという事は、養父上との養子縁組を取り消すという事になります。養父上はそれでも私のために・・・。」

 

三郎は幻庵との間にある養子縁組を取り消すことに罪悪感を感じていた。

 

「三郎は優しいのぉ、こんな老いぼれのためにそこまで気を遣ってくれるとは・・・。その優しさは氏政にそっくりじゃ。じゃがこの乱世では時として情に流されずに決断することを迫られることも多い、今もその一部じゃ。」

 

幻庵は三郎の言葉に目を細める一方で、厳しい面持ちで三郎をたしなめる。

 

「はい。」

 

「そんな時こそ花丸どのがお主に常々言っておった『やりたいかどうかが大切』という言葉が生きてくる。そういう時こそ己の心に従い悔いのない道を選ぶのが大切なのじゃ。」

 

「はい。しかし、私がいなくなってしまっては養父上のお家は・・・。」

 

「なんじゃ、そんなことは気にせんでもよい。確かに氏信に長順と息子たちには先立たれてしまったが、幸いなことに氏信は菊千代を遺してくれた。それに万が一、菊千代が元服する前にわしが死んでも氏規か六郎か四郎に後見させればよいしの。ほっほっ。」

 

幻庵は朗らかに笑いながら三郎が懸念していた養子縁組取り消し後の自分の一族の行く末をどうするかを語った。『三郎がおらずとも我が家は安泰だ』という事なので現代的な目線で見ると三郎に対して冷たいのではと感じる人も多いかと思われるが、この時代において家を残すという事は最上級の使命なので、それを気にする三郎に対するこの言葉はむしろ彼に対するフォローのようなものであった。

 

「・・・重ね重ねのお心遣い、誠に痛み入ります。」

 

三郎は養父の厚意に目頭を熱くしながら頭を下げる。

 

「なに、これくらいしかわしにできる事はないもんでな。上杉に行っても達者で暮らすんじゃぞ。」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

翌日、三郎は改めて氏政に自分が越後に行くと伝えた。氏政も氏邦を通じて謙信に三郎を養子に出すことを承知したことを伝えた。謙信はそれを聞くと、氏政に三郎を4月中に沼田城へ向けて送って欲しいという旨の書状を送った。

 

そしていよいよ三郎が北条家を起つ前日の夜の事。

 

「養父上からお屋敷へと御呼び出しを受けたが一体如何なる御用なのだろうか・・・。」

 

幻庵から屋敷に来るように呼び出された三郎は呼び出された理由が思い当たらず、不思議に思いながら幻庵の屋敷にやって来た。

 

「確か養父上は大広間で待っていると仰せだったか。」

 

三郎がそう呟いて屋敷の大広間に入ると、

 

「噂をしとったら今日の主役のお出ましじゃな。」

 

「おお!やっと来たか三郎!」

 

「しばらく見ねえうちに色男になったもんだな!」

 

「久しいな三郎、息災にしてたか?」

 

「元気そうで何よりですね。」

 

そこには幻庵だけでなく、氏政をはじめとした三郎の4人の兄たちがいた。

 

「養父上、これは一体どういう・・・!?」

 

まさか兄たちと一堂に会するとは夢にも思っていなかった三郎は戸惑いながら幻庵に兄たちがいる理由をたずねる。

 

「ん、言っておらんかったかの?今宵は三郎が越後に立つ前夜であるがゆえ、送別の宴を催すと・・・。」

 

「大叔父上・・・。言ってなかったから三郎はここまで戸惑っておられるのでは?」

 

「そのようじゃな、ほっほっほ・・・。」

 

氏政に三郎への伝達に問題があったことを指摘された幻庵は笑ってそれを認めた。

 

「ここ数年、忙しくて三郎に会える機会がなかったもんでな。」

 

「北条にいられる最後の日くらいは一緒にってな!」

 

「そんなわけで大叔父上と兄上に呼ばれたんですよ。」

 

氏照、氏邦、氏規の3人もそれぞれ滝山、鉢形、韮山といった要衝を任された身でありながら、三郎のために駆けつけたのだという。

 

「しかし、それでは兄上たちの城は・・・!」

 

「心配はいらん。滝山は泰光に任せておるからな。」

 

「俺は鉢形を大福(おふく)の兄である重連(しげつら)に鉢形城を任せてるぜ。」

 

「韮山城は康英どのにお任せしているので心配ないですよ。」

 

3人ともそれぞれ自分の城を信頼できる人物に任せてくるという念の入れっぷりであった。それほど三郎の門出を祝いたかったのだろう。

 

「もちろん氏忠と四郎も来ているぞ!」

 

「それにしては2人の姿が見えませぬが・・・。」

 

三郎は氏政に言われて氏忠と六郎の姿を探して辺りを見回すが2人はどこにもいなかった。

 

「あいつらは千歌どのたちの手伝いをしてるんじゃなかったか?」

 

「そうそう、確か『ちぇんばろ』なる楽器を運ぶのを手伝っているとか・・・。」

 

「ちぇんばろ・・・ですか?聞いたことのない楽器ですね。」

 

「うむ、それは南蛮の楽器でな。梨子どのは曲を作る際は『ぴあの』なる楽器を使うそうだがこの時代には無いらしくいのだ。代わりにたまたま来ていた南蛮人が持っていたそれにそっくりな楽器を千歌どのたちに求められて買ったのだ。」

 

「なるほど、そのような事があったのですね。何から何まで本当にありがとうございます・・・。」

 

氏政たちの話を聞いた三郎は兄弟だけでなく花丸たちもが自分のために祝う準備をしてくれていることを知り、思わず目頭が熱くなったが、それを隠すように頭を下げて礼を言った。

 

「俺たちは兄弟なんだ、そうかしこまる必要なんてないぞ三郎。さ、宴の前に一献飲んでくれ。」

 

「はい、氏政兄上。」

 

氏政はにこやかに三郎の盃に酒を注ぎ、三郎もそれを受けた。それからしばらくの間、氏政兄弟と大叔父の幻庵は酒を肴に色々な思い出話に花を咲かせていた。

 

そして氏政たちが酒を飲み始めてから1時間ほど経った頃・・・。

 

『氏政兄上~!!』

 

と、2人の若者が慌ただしく氏政たちのいる部屋に駆け込んできた。

 

「氏忠も四郎もどうしたんだそんなに慌てて。」

 

「緊急事態というわけではないのですが・・・。」

 

「千歌どのたちが『らいぶ』の準備を終えられたそうです!」

 

「ゆえに兄上たちを庭に呼ぶように言伝を頼まれてきました。」

 

先ほどまで庭で千歌たちと一緒にライブの準備を手伝っていた氏忠とその弟である四郎(のちの氏光)は肉体労働をした後だからか息を切らしながらライブの準備が終わったことを氏政たちに伝えた。

 

「おおそうか!よし、ではみんな!大叔父上!千歌どのたちの待つ庭へ行こう!!」

 

氏政が場にいた者たちにそう言うと、氏政兄弟と幻庵は特設のライブ会場である庭へと足を運んだ。

 

 

 

 

 

『おお!』

 

縁側に出てきて庭を見た氏政たちは驚きの声を上げた。久野屋敷の庭は普段は飾り気のない素朴な美しさを持つ庭園であったが、庭の中心に木材で作られた簡易ステージが配置されており、さらにステージの四隅には煌々と燃える松明が照明代わりに設置され、どこか浮世離れしている幻想的な雰囲気を醸し出していた。

 

「あ、氏政さんたちやっと来た!おーい!!」

 

氏政たちの姿に気づいた千歌は彼らに大きく手を振った。

 

「しっかし見事な舞台だなこりゃ!」

 

「なかなかの職人技だな・・・。お主らが一から作ったのか?」

 

「ううん。もちろん大工さんたちに手伝ってもらってるよ!」

 

「でもこのステージは小田原の復興の時にやったライブで使ったものを幻庵さんの屋敷でも使えるように少し小さく作り直したものなんです。」

 

氏照にステージを作ったのかをたずねられると、千歌と曜がそう答えた。彼女たち曰く、このステージは氏照たちが三増峠で戦っている最中に小田原の城下町を直す民たちを励ますために行ったライブ(26話参照)で使ったものを再利用しているとのことだったという。

 

「いや~、しっかしまた千歌どのたちの歌を聴けると思うと胸が高鳴るな!」

 

「うむ、私と氏邦は千歌どのたちが初めて小田原に来て歌った時以来全く聞いておらなんだからな。」

 

氏邦と氏照は千歌たちの歌を聞くのはかれこれ8年ぶりなのでワクワクすると同時にある種の懐かしさも感じていた。

 

「えー。今日歌う曲は、私たちが暮らしている時代で日本一のスクールアイドルを決める『ラブライブ』という大会の予選で歌った曲です。その時は、梨子ちゃんがピアノのコンクールがあったので予選には参加できず、8人で歌うことになりましたが、梨子ちゃんがくれたこのシュシュをみんなで付けてそれぞれライブとコンクールに臨みました。」

 

千歌はシュシュを付けた右手を上に掲げながら氏政たちにこれから歌う歌の説明をした。

 

「三郎くんはこれから越後の上杉謙信さんの養子になるから氏政さんたち兄弟やおらたちとは離れ離れになっちゃうけど、それでも心はずっと一緒だよって事を伝えたくってこの曲を選んだずら・・・じゃなくて選びました!」

 

そして千歌の説明に続き、今から歌わんとする一曲に籠められた『離れていても三郎との絆は不朽であれ』という願いを花丸が語った。

 

「花丸さん・・・。」

 

千歌と花丸が語り終えると9人はステージに登り、それぞれのポジションにつく。

 

「梨子ちゃん、チェンバロの調子はどう?」

 

「うん。ピアノとはだいぶ勝手が違うけどちゃんと練習したから大丈夫だよ。」

 

梨子は曜にそう言うと、チェンバロの前に座り、呼吸を整える。

 

「じゃあみんな、用意はいい?」

 

『うん(ええ)!!』

 

千歌はみんなの返事を聞くと大きく深呼吸をした。

 

「それでは聞いてください、『想いよひとつになれ』!」

 

 

 

「想いよひとつになれ♪この時を待っていた~♪」

 

『♪~♪~』

 

千歌のソロと梨子のピアノソロからイントロが始まり、9人は笑顔で精一杯に庭の真ん中に作られたステージの上を舞い踊った。

 

「やはり千歌どのたちの歌はいつ見てもいいものだ。」

 

「ああ、私も一曲吹きたくなって来たぞ兄上!」

 

「お!いいねえ、氏照兄貴の笛と千歌どのたちの歌と踊りが混ざったら最高じゃねえか!」

 

千歌たちの歌を聞きながら氏政は彼女たちの歌と踊りに酔いしれ、氏照は笛を吹きたくなるほどに心を沸かせ、氏邦は酒が入ってるせいかいつも以上に晴れやかな様子で氏照の肩を組んで彼の言葉に同意していた。

 

「・・・。」

 

「どうかしましたか三郎。」

 

「・・・。」

 

氏規は三郎に声を掛けたが、三郎はステージの方を一心不乱に見ていて心ここにあらずといった様子で氏規の呼びかけに応えるそぶりを見せなかった

 

「見入っておるようじゃ、邪魔はせんでやろう氏規よ。」

 

「ええ、そうですね。」

 

幻庵はステージを見ている三郎の表情を見て何かを察してそっとしてやるように氏規に言って、氏規も幻庵の言わんとしてることを察して幻庵と共に三郎の側から離れた。

 

「・・・。」

 

三郎は千歌たちのパフォーマンスに見惚れていた。彼は千歌たちが幻庵に北条家の成り立ちを聞くために久野の屋敷に遊びに来ていた時に、彼女たちのパフォーマンスを一度だけ見ていた。彼の脳裏にはその時の情景が走馬灯のように駆け巡っていた。

 

(そういえば2年ほど前にも彼女たちの歌と踊りを見せてもらったことがあったな・・・。今の物と比べれば即興のものであったがゆえに簡素でしたがそれでも私の知らない美しさを放っていた・・・。)

 

そして彼の視線は花丸の方に移ろっていく。

 

(今も昔もそうだが、皆さんの踊る姿は美しいが中でも花丸さんは格別に美しい・・・。私が知る限り、花丸さんは温厚で書物と食べることが好きで、側にいると不思議と心が安らぐ方で・・・。国府台の戦では氏政兄上のお側で戦っていたと言われるがそのような荒々しい様は微塵も浮かんでこない、その名のように野に咲く花のような素朴な美しさや愛おしさを纏っていた方だ。)

 

三郎は踊っている花丸を目で追いながら、彼女と過ごしてきたおよそ8年間の思い出を思い返していた。

 

(そんな花丸さんでも、ひとたび踊りだせば花の蕾が開くように一気に華やかになっていく。ああ、初めて花丸さんたち9人の踊りを見せてもらった時も同じような事を考えていたな。全く、私という男は・・・。)

 

 

 

『想いはひとつだよと~♪違う場所へ~♪向かうとし~ても~♪信じてる~♪』

 

いよいよ最後のサビが終わり、アウトロが梨子の演奏で奏でられ、曲は終わりを告げた。

 

『ありがとうございましたー!!』

 

曲が終わると千歌たち9人は縁側に座っている三郎たち兄弟と幻庵に挨拶をした。

 

「うむ、実に見事だった!」

 

「いいぞ~!!」

 

「これが千歌どのたち『あくあ』の歌と踊り・・・!素晴らしいものだな四郎!」

 

「はい!氏忠兄上!!」

 

氏政と氏照は喝さいを送り、そして氏忠と四郎は初めて見るAqoursのパフォーマンスに感激していた。

 

「いい歌だったぜお前ら~!!ううう~!」

 

「氏邦兄上、酔ってらっしゃるんですか?」

 

「酔ってねえよ!あまりにもいい歌だったから酒飲む手も止まっちまったぜ!!」

 

「ほほほ、酒よりも酔いしれる事のできるものを見つけられたというわけじゃな。」

 

氏邦は感激のあまり号泣し、氏規と幻庵はそんな彼の様子を見て笑っていた。

 

そんな中、花丸はいきなりステージから飛び降りて三郎の元に走り寄った。

 

「三郎くん!おらたちの踊り、どうだったずら?」

 

花丸は目を輝かせながら三郎に感想を聞いた。

 

「ええ、とても素敵な歌と踊りでした。」

 

三郎はにっこりと微笑んで花丸にそう言ってからふと立ち上がって、

 

「皆さんも私のためにこのような素敵な歌と踊りを見せてくださり、本当にありがとうございました!!」

 

と頭を下げて礼を言った。

 

「あ、そうだ!おらたち、三郎くんと氏政さんたちに渡したいものがあるんだ!」

 

「渡したいもの、ですか?」

 

花丸の言葉に三郎は首を傾げた。

 

「氏政さーん!氏照さーん!氏邦さーん!氏規さーん!渡したいものがあるのでちょっと来てくださーい!!」

 

いつの間にかステージから降りて三郎と花丸の側にやって来た千歌は氏政たち4人を呼び寄せた。

 

「ん?どうしたのだいきなり?」

 

氏政たちは突然呼び出され、何が始まるのかと首を傾げていた。

 

「せ~の!」

 

『じゃ~ん!!』

 

千歌の音頭から9人が大声を出すと、花丸は背中に隠していた両手を出した。その両手にはそれぞれ黄、青、赤、黒、白の一色で染められた5つのお守りが出て来た。

 

「これは・・・!」

 

「北条の五色じゃねーか!!」

 

「そのとおり!私たちのこのシュシュみたいなのが氏政さん達にもあれば三郎さんが遠くにいても心が1つだってことを証明できるかな~なんて思ってみんなで作ったんだ!!」

 

千歌がドヤ顔でふんぞり返りながら氏政たちに説明した。

 

「なるほど、一色づつ染めて五つ合わせて五色になるとは考えましたね千歌どの!」

 

「あ、でもこの色のアイデアを考えたのは花丸ちゃんなんだよね~。」

 

「花丸どのが考えられたのですか・・・。確かに幻庵大叔父上の元にいただけに発想が実に雅ですね。」

 

氏規はお守りをまじまじと見ながら感心していた。

 

「まず、黄色は氏政さんで赤は氏照さん、青が氏規さんで黒は氏邦さん。そして三郎くんには白のお守りずら!」

 

三郎はそれぞれのお守りを渡した。

 

「色には何か意味があるのか?」

 

氏政がたずねると、

 

「黄色は五色備えのリーダーの綱成さんの色だから長男の氏政さんに、氏照さんは兄弟の中で一番戦上手と伺ったので炎をイメージして赤、氏邦さんは黒備えの部隊を率いてると伺ったので黒、氏規さんは水軍を率いていて海が似合いそうだということで青ってみんなで決めたのです。」

 

とダイヤが説明した。

 

「それで、私が白なのはどういう理由があるのでしょうか?」

 

三郎が自分のお守りの色が白である理由をたずねた。

 

「三郎くんのお守りが白なのは、白は何色にも染まれる可能性の色だからずら!」

 

花丸は三郎の問いに自信満々な様子で答えた。

 

「可能性の色・・・ですか?」

 

三郎は花丸の言わんとしていることが一瞬理解できずに首を傾げた。

 

「絵をかく紙も最初は全く何もない白色でしょ?そして三郎くんも今は元服したばかりでスタートラインに立ったばかりずら。つまり今の三郎くんなら自分のなりたい者に何でもなれる!白い紙に自分の描きたい絵をかいたり、自分の好きな色を塗るように、三郎くんが越後に行っても自分のやりたい事ができるように何色でもないまっさらな白を選んだずら!」

 

「花丸さん・・・!」

 

花丸の言葉を聞いて三郎は感激のあまり言葉を失った。

 

「あれ、おら何か変な事言っちゃったかな?」

 

「い、いえ!そのような深い意味で私にこの白のお守りをくださり、感謝してもしきれません!先ほどの素敵な歌といい、このような素敵なものまで受け賜われて私は幸せです!」

 

三郎はすさまじい勢いで頭を下げながら花丸にお礼を言った。

 

 

 

 

(『想いはひとつだよと、違う場所へ向かうとしても信じてる』という歌に籠められた言葉といい、私の可能性を信じて贈ってくださったこの白いお守りといい・・・。私は兄上たちと同じように愛され、そしてこのように門出を祝ってもらえ、私はなんという果報者なんだろうか。期待をかけてくれた兄上たちのため、北条家のため、ここまで祝ってくれたAqoursの方々のため・・・。そして私を弟のように慈しんでくださった花丸さんのために、私は越後へ行こう!)

 

心の中で改めて越後に行くための決意を固め、右手にある白いお守りを強く、そして優しく三郎は握りしめた。




いかがでしたでしょうか?


三郎が出てくる歴史小説やその他の媒体の創作物では氏政たち兄弟とは腹違いであったことから捨て石のように上杉家に送られるパターンが多いですが、この話を書くために越相同盟についていろいろと調べてみると、実は三郎はかねてより謙信に『人質』ではなく『養子』と望まれて越後に行くことになっていたという事を知りました。そして三郎が一時期幻庵の養子として北条家の柱石になる事を望まれた人物でもあった事と合わせて前回と今回の話を書きました。

さて、次回はいよいよ三郎と越後の龍と呼ばれたあの英雄と邂逅するかも・・・!?



それでは次回もまたお楽しみください!!

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